I.衛星放送?
A007.複合汚染と社会問題
「有吉佐和子さんが『複合汚染』を書いたのは、1975年ころだったと思います。『複合汚染』というのは、ただ一つの物質では起こらない症状でも、二つの物質あるいはそれ以上の物質が化学反応することで起こるというのです」
石井は水素と酸素が結合して水になるのを中学生のときに学んだことを思い出した。目に見えない水素と酸素が、水になるなんて、なんて不思議なことだろうと思ったものである。
「今は、1975年に比べて格段と科学物質は増えたわけです。もしかしたら、この『複合汚染』で自殺者が増えているのではないかという学者もいます。私なんかもそうだろうと思っています。まあ、素人の憶測ですけどね……、ありえないことじゃないと思うんですよ」
自殺者はたしかに増えていると書いてあった。しかし、それが複合汚染だなんていう人に出会ったのははじめてであった。
「そうなんですか……」
目を白黒させる石井。
「近ごろの自殺者の中には、原因がわからないというのがあるそうなんですよ。遺書もないし、自殺するほどの原因はないのに、自殺している人たちがいるんですよ。そういう話を聞きませんか?」
「聞いたような聞かないような」
あまり景気のいい話はきかない。恐ろしいニュースが多いが、聞かないようにしている。まともに聞くと不安になってしまうからである。
「魚を好んで食べる人は自殺率は低いと新聞にかいてあったような気がします」
「私も読みました。食べ物によって人は作られているんです。だったら食べ物によって人の行動も決まることがあるかもしれませんよ。最近の子どもたちは男性は女性化して、女性は男性化しているともいわれていますね」
「ええ、そうですね。それも食べ物と関係があるのですか」
「そういわれてもいます。食肉では、早く肉をつくるために、家畜に成長ホルモンという薬物を与えているんですよ。その成長ホルモンを食べさせられた家畜の肉を食べて何にもないと考える方がおめでたいのではないでしょうかね。それだけでなく、環境ホルモンということが騒がれていましたね」
環境ホルモンによって、精子減少などが起きているという。ホルモンという用語は医学用語にはない。それに環境、つまり人体の外にホルモンが存在しているわけでもない。正式の用語は『内分泌かく乱物質』といわれている。ホルモン(内分泌)の働きを異常にする物質のことである。
「今は、問題にされていないけれど、実は人体に有害な物質だといわれることもありそうな気もします。あまり心配しても仕方がありません。病は気からともいいますからね……」
石井は水俣病や広島の原爆症の裁判のとき因果関係が立証されていないとされていたのを思い出した。
「しかし、裁判とかになると立証しなければならないことですし……。どうなっているかはわからないと困ったものですね」
「そのとおりです。わからないからといって何も問題がないとはかぎりませんからね。気をつけて下さい。『複合汚染』を科学的に立証するのは難しいのです。温度によっても化学反応は変化しますからね」
石井は少しの風邪薬でも、輸血を受ける患者には危険であるのを思い出した。世の中にはいろいろな人がいるのだ。その食べ物にある薬に異常に反応する人もいればそうでない人もいるかもしれないと思った。
「『複合汚染』ですか、ぜひ読ませてもらいます」
「ええ、ぜひ読んで下さい。そうしたら、有機野菜に興味を持たれるかもしれないので、私の名刺を差し上げておきます。現在のお米は地力がない田圃で育てられたお米なんですよ。それは化学肥料や農薬で汚染された田圃だからです。三年たって、種籾たねもみ(たねもみ)として植えても芽を出さなかったそうです。ところが、天保の種籾は植えると芽を出したんですよ。有機農法はそこまではいかなくとも、かなりいい線はいっていると思いますよ」
「生命力が違うというわけですね」
「そうです。その生命力の差を科学では証明できていませ。栄養価だけを比較しているのはナンセンスだと僕は思います」
「そうでしょうね、生命力の差など考えたことがありませんでした」
「ぜひ、読んで下さい。有吉佐和子さんは科学者ではないけれど、熱心に取材して書いていますし、不幸にも問題の多くは、今もほとんどのことが通用しています。有吉佐和子さんは、素晴らしい小説家で、環境問題を身近なものに感じさせてくれますよ。これは現実で起こっていることなんですから。それを伝えることは数値よりも大切なことじゃないでしょうか。有吉さんのころは、環境問題なんて用語はなかったんですが、基本は同じですよ。近ごろアトピー性皮膚炎とか、花粉症の人が増えているでしよう。それも予防や改善はできるんです」
「自然食品を食べている人の中でアトピーがなおったとかの記事を読んだことがありますよ」
「そうです。有機食品の我が店でも、お母さんたちに喜ばれていますよ。しかし、価格がねえーとは、よくお客さんから言われますよ」
「でも、アトピーが直るなら、お母さんたちだって真剣でしょう」
「そうですよ。だから、こっちもいい加減な商品は売れませんよ」
「いいですね」
石井は献血マニアの男の顔を見ていった。
「何がですか」
「やりがいのある仕事じゃないですか。生きるということに直接関っている仕事じゃないですか」
「まあ、そうなんですけど……。いやー、誉められちゃったなあー」
会社に帰り、石井は考えごとをする。風邪薬が輸血した人に作用したり、トマトジュースが血肉になるなんて考えることは、あの献血センターに行かなければ考えなかっただろう。
石井は、献血してよかったと思っている。そして、日曜日に図書館へ行き、『複合汚染』の本を借りた。近くの書店では売られていなかったからだ。
献血マニアのあの人の血をもらった人の方が、石井の血をもらった人よりも幸運だろうと思えた。なぜなら、血液の中に農薬などの科学物質が少ないからである。
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A007.複合汚染と社会問題
「有吉佐和子さんが『複合汚染』を書いたのは、1975年ころだったと思います。『複合汚染』というのは、ただ一つの物質では起こらない症状でも、二つの物質あるいはそれ以上の物質が化学反応することで起こるというのです」
石井は水素と酸素が結合して水になるのを中学生のときに学んだことを思い出した。目に見えない水素と酸素が、水になるなんて、なんて不思議なことだろうと思ったものである。
「今は、1975年に比べて格段と科学物質は増えたわけです。もしかしたら、この『複合汚染』で自殺者が増えているのではないかという学者もいます。私なんかもそうだろうと思っています。まあ、素人の憶測ですけどね……、ありえないことじゃないと思うんですよ」
自殺者はたしかに増えていると書いてあった。しかし、それが複合汚染だなんていう人に出会ったのははじめてであった。
「そうなんですか……」
目を白黒させる石井。
「近ごろの自殺者の中には、原因がわからないというのがあるそうなんですよ。遺書もないし、自殺するほどの原因はないのに、自殺している人たちがいるんですよ。そういう話を聞きませんか?」
「聞いたような聞かないような」
あまり景気のいい話はきかない。恐ろしいニュースが多いが、聞かないようにしている。まともに聞くと不安になってしまうからである。
「魚を好んで食べる人は自殺率は低いと新聞にかいてあったような気がします」
「私も読みました。食べ物によって人は作られているんです。だったら食べ物によって人の行動も決まることがあるかもしれませんよ。最近の子どもたちは男性は女性化して、女性は男性化しているともいわれていますね」
「ええ、そうですね。それも食べ物と関係があるのですか」
「そういわれてもいます。食肉では、早く肉をつくるために、家畜に成長ホルモンという薬物を与えているんですよ。その成長ホルモンを食べさせられた家畜の肉を食べて何にもないと考える方がおめでたいのではないでしょうかね。それだけでなく、環境ホルモンということが騒がれていましたね」
環境ホルモンによって、精子減少などが起きているという。ホルモンという用語は医学用語にはない。それに環境、つまり人体の外にホルモンが存在しているわけでもない。正式の用語は『内分泌かく乱物質』といわれている。ホルモン(内分泌)の働きを異常にする物質のことである。
「今は、問題にされていないけれど、実は人体に有害な物質だといわれることもありそうな気もします。あまり心配しても仕方がありません。病は気からともいいますからね……」
石井は水俣病や広島の原爆症の裁判のとき因果関係が立証されていないとされていたのを思い出した。
「しかし、裁判とかになると立証しなければならないことですし……。どうなっているかはわからないと困ったものですね」
「そのとおりです。わからないからといって何も問題がないとはかぎりませんからね。気をつけて下さい。『複合汚染』を科学的に立証するのは難しいのです。温度によっても化学反応は変化しますからね」
石井は少しの風邪薬でも、輸血を受ける患者には危険であるのを思い出した。世の中にはいろいろな人がいるのだ。その食べ物にある薬に異常に反応する人もいればそうでない人もいるかもしれないと思った。
「『複合汚染』ですか、ぜひ読ませてもらいます」
「ええ、ぜひ読んで下さい。そうしたら、有機野菜に興味を持たれるかもしれないので、私の名刺を差し上げておきます。現在のお米は地力がない田圃で育てられたお米なんですよ。それは化学肥料や農薬で汚染された田圃だからです。三年たって、種籾たねもみ(たねもみ)として植えても芽を出さなかったそうです。ところが、天保の種籾は植えると芽を出したんですよ。有機農法はそこまではいかなくとも、かなりいい線はいっていると思いますよ」
「生命力が違うというわけですね」
「そうです。その生命力の差を科学では証明できていませ。栄養価だけを比較しているのはナンセンスだと僕は思います」
「そうでしょうね、生命力の差など考えたことがありませんでした」
「ぜひ、読んで下さい。有吉佐和子さんは科学者ではないけれど、熱心に取材して書いていますし、不幸にも問題の多くは、今もほとんどのことが通用しています。有吉佐和子さんは、素晴らしい小説家で、環境問題を身近なものに感じさせてくれますよ。これは現実で起こっていることなんですから。それを伝えることは数値よりも大切なことじゃないでしょうか。有吉さんのころは、環境問題なんて用語はなかったんですが、基本は同じですよ。近ごろアトピー性皮膚炎とか、花粉症の人が増えているでしよう。それも予防や改善はできるんです」
「自然食品を食べている人の中でアトピーがなおったとかの記事を読んだことがありますよ」
「そうです。有機食品の我が店でも、お母さんたちに喜ばれていますよ。しかし、価格がねえーとは、よくお客さんから言われますよ」
「でも、アトピーが直るなら、お母さんたちだって真剣でしょう」
「そうですよ。だから、こっちもいい加減な商品は売れませんよ」
「いいですね」
石井は献血マニアの男の顔を見ていった。
「何がですか」
「やりがいのある仕事じゃないですか。生きるということに直接関っている仕事じゃないですか」
「まあ、そうなんですけど……。いやー、誉められちゃったなあー」
会社に帰り、石井は考えごとをする。風邪薬が輸血した人に作用したり、トマトジュースが血肉になるなんて考えることは、あの献血センターに行かなければ考えなかっただろう。
石井は、献血してよかったと思っている。そして、日曜日に図書館へ行き、『複合汚染』の本を借りた。近くの書店では売られていなかったからだ。
献血マニアのあの人の血をもらった人の方が、石井の血をもらった人よりも幸運だろうと思えた。なぜなら、血液の中に農薬などの科学物質が少ないからである。
閑話休題 ぼくは子どもの時からの花粉症です。 花粉症だけではなく、アレルギー体質です。 アトピーにも悩まされました。 皮膚病だとだけ思っていて、 薬に頼ってばかりいては、だんだん 大変なことになると思います。 アトピーには食事をきちんととることが大切だと 思います。 薬万能のように書く人たちもいますが、 ぼくは体験からして、それは間違いだと思います。 薬には必ず副作用があると思ったほうがいいとも聞きます。 ただ、体質改善をするのには、 体質によってよくなったり、そうでなかったりもします。 いろいろな問題がアトピーにはあります。 カルト教団がいんちき薬を売ったりするほど、 悩んでいる患者さんが多いのです。 騙されないようしてくださいませ。 |
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