『岩波科学ライブラリー157 猿橋勝子という生き方』
米沢富美子・著/岩波書店2009年
第五福竜丸事件や、放射能雨のことで貢献された猿橋勝子のことが書かれてあります。
--この人のおかげで、ガンの発生がおさえられて、無事いきている人がいることでしょう……。その人たちは、猿橋の名前すら知らないかもしれないが……。
「執筆までの経緯」 下「」引用。
「本書は、地球化学者・猿橋勝子(一九二○年~二○○七年)の評伝である。
猿橋は、女性が理系の学問を追求する道が開かれていなかった時代に生きて、地球化学の分野で世界的な業績をあげた。さらに、後進の女性科学者を励ますために、「女性科学者に明るい未来をの会」を創立し、自然科学系の女性科学者を対象に「猿橋賞」を設けて顕彰する事業を、定年後に始めた。-略-
しかし、その賞を設立した猿橋勝子の、「科学者としての業績」や「人間としての生き方」については、ほとんど知られていないのが現状である。
そういう状況は残念この上ないので、評伝を書いて猿橋勝子の軌跡を多くの人たちに伝えようと考えたのが、本書執筆を企画した第一の動機である。-略-」
マイトナー「核分裂」実験の成功。下「」引用。
「ドイツのカイザー・ウィルヘルム研究所(現マックス・プランク研究所)の、リーゼ・マイトナー(物理学部門主任)、オットー・ハーン(化学部門主任)、フリッツ・シュトラスマン(マイトナーの助手)のチームが、殊勲者だった。しかし、マイトナーか女性でありユダヤ人であるという事実に、ハーンの功名心も加わって、核分裂発見におけるマイトナーの貢献は消された。-略-
なお、マイトナーの功績は戦後になって復権された。一九六六年にはアメリカ合衆国原子力委員会のエンリコ・フェルミ賞を、マイトナー、ハーン、シュトラスマンの三人が共同受賞した。「核分裂発見に対する貢献」が受賞理由である。
さらに、一九八二年には、マイトナーの功績を讚えて、原子番号一○九の元素が「マイトネリウム(Mt)」と名づけられた。」
しかし、倫理ぬきの評価ではないか?
--倫理ぬきの評価は異常でしかないとボク思う。
猿橋はこのような人間ではなかったようだ……。
--卒業生が軍関係のところに就職する時に、猿橋は軍がキライなので、給与のおよ半額の中央気象台に勤務。
老教授などは、猿橋に対して「非国民」といったそうである……。
微量分析の達人・猿橋勝子。 下「」引用。
「第五福竜丸が持ち帰った白い灰は少量したない貴重なもので、分担ごとに少しずつ配分されて、さまざまな検査に使われて、さまざまな検査に使われていた。化学分析に使える白い灰は、たかだが数粒である。
化学分析を手がける研究者は、そのころも何人もいた。しかし、資料が極微量の場合は分析は困難で、誰にでもできるものではなかった。-略-
当時この分野に、知る人ぞ知る「微量分析の達人」がいた。-略-」
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平塚らいてうが派遣する。下「」引用。
「一九五八年六月にウィーンで開催される国際民婦連主催の第四回世界大会に、代表を送るための作業を平塚は始めた。
まず、その代表にふさわしい人物について、平塚は専門家に諮問する。その結果、候補の一人として気象研究所の猿橋勝子の名があがった。猿橋が、原水爆実験に起因する放射性降下物の研究に携わっており、その業績が外国の専門家の間でも高く評価されていることを、平塚は調査報告書で知る。」
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