八、それでも地球はまわる
97.地球はまわる
病気なのに、夜ふかししてしまった。翌日、体の調子がさらにひどくなって頭がふらふらする。
まるで、地球がまわっているみたい。いや、地球はまわっているのだ。そんなことを考えると、よけいに目がまわってくる。あまりにも目がまわるので、腹ばいになって敷布団のはしをしっかりと押さえつけた。それでも、地球は止まらなかった。
「何をうんうん、うなっているの」
母が雄二を心配してきいてきた。
雄二は説明して、それでも地球はまわっていると言った。
「ガリレオみたいなこというのね……。そうとう気分悪いみたいやね。目まいと地球がまわっているの同じにしんときや」
母は雄二の頭に手をおいた。雄二は母の話した意味が理解できず、地球はどんなに努力しても止めることはできないと、地球を止めることをあきらめた。眠りたくないのに、体は重い眠気に沈められて行く。うす目を開け、カーテンを見る。カーテンは緑と白地で、木々の模様がある。
「体温、計りや」
母が体温計を脇にはさんでくれた。
月の黒い部分がうさぎに見えるように、カーテンのしみが鹿に見える。うとうとして瞼が下がり光をさえぎる。そしてまた目を開ける。カーテンのしみの鹿まで消える。目を開け直して、鹿を見る。鹿よ、消えないでと、雄二は思う。一点を凝視していると、残像が残る。目をつむっても鹿に見える残像が残る。
「雄二、熱高いな。頓服(とんぷく)も飲みや。これ解熱剤やからね」
母は雄二を抱き起こして、赤い包みの薬を飲ませる。
「雄二、眠りよし」
母は布団を整えながら話した。
何となく興奮していて、眠りたくない。脳は興奮しているのに、体は眠ろうとしている感じである。とても不快である。うすぼんやりした感じになる。ふらふらしてもいる。
鹿よ、消えるな。目をつぶっても鹿は消えない。カーテンの林のなかを鹿は跳びはねる。鹿よ、消えるな。雄二は鹿を見失わないように目で追った。鹿はいきよいよく、跳びはね、あっちの木、こっちの木と自由自在だ。
雄二もいつのまにかカーテンの林のなかにいた。きっと、鹿を追いかけてきたからだなーと思った。鹿は吉田神社で見るのと同じくらいの大きさになっていた。
雄二は鹿といっしょに走った。しかし、鹿は機動隊員の催涙弾の音をきいて逃げて行った。機動隊員も宇宙飛行士のような大きなヘルメットをしている。でも、黒づくめだ。
「それでも、地球はまわっている」
ジュラルミンの楯で雄二を地面におさえつける。そして、笛の音とともに機動隊員は靴音をさせて走り去って行った。
雄二は地べたに寝ころがっていた。花田が雄二の顔をのぞきこんだ。
「おっ、雄二、月には兎なんておらへん。そんなの迷信や。この世界はみんなのもんや。みんなの世界だから、皆がしっかりしなければならない。法律はいつも正しいものとは限らない。ぼくらは、法律さえ、かえていかねばならない。主権は国民にあるのだからね。それが、民主主義の世の中だ」
花田は自信満々である。
機動隊と学生が暴力でぶつかりあっているところに花田は走って行く。花田の体は成長し大人になり、ヘルメットをかぶり、角材を手にしている。花田はデモのなかに吸い込まれていく。
「雄二、何をしている。見てみろ、戦争と同じことや」
父が照明弾を指さした。
救急車が走ってきた。学生や機動隊員が怪我をして運ばれていく。それでも、戦いはやまない。
「戦争や!」
曽我のおばあさんが叫んでいる。
軍隊は平和のための戦争だという。戦争をひき起こしてしまえば平和はなくなるというのに……。
「雄二、わが祖国のため、わが命おしまず」
花田が軍服を着ていた。ヘルメットも軍隊のにかわっていた。
「大日本帝国、万歳!」
旗をふる大人たち。
「万歳! 万歳!」
曽我のおばあさんと花田は日の丸の旗を振っている。
戦争は激しくなってくる。ミサイルやロボットまで使っている。
国民服を着た父が走ってきた。
「撤退、雄二、この勝負は見えた。防空壕に撤退」
父と雄二はコンクリートの穴に入っていく、とっても、息が苦しい。
テレビのスイッチを父が押した。
「新型爆弾が使用されます」
と、アナウンサーはまじめな口調で話した。
閑話休題 DEF TECH の歌がBLOGで生まれたと知って、 ぼくも地蔵盆の唄をつくろうかと思いました。 ううーん、どうしたら、ええねん! 歌をつくったこともないから、 わからへん。(-_-;) でも、作詞はできるかもしれない。 【♪地蔵盆の唄 たのしい地蔵盆】 ♪あかりをつけましょう、あんどんに。 おはなをあげましょう、地藏さんに。 六人の地蔵は六地蔵? 今日はたのしい地蔵盆♪ なにか、かえ歌って感じになりました。 まあ……。 『失敗は成功のマザー!』 と、長嶋茂雄さんが教えてくれました。 めげずに長嶋流に生きましょう! |
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