磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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93.隠れ家

2005年09月13日 | 【作成中】小説・メリー!地蔵盆



七、学園紛争と秘密基地

93.隠れ家





 京大の学園紛争で、水をかけられた雄二は、風邪をひいて寝込んだ。病気が治った雄二は犬のジョンの頭をなでていると、幸江が息せききって走ってきた。

「雄二、池山がおかしい」
 雄二の方をみて、ふくれ面をしていた。

「吉田神社の境内に、子どもの家をつくろうとしているのよ」
 雄二と幸江は吉田神社の大元宮の境内に走る。鮮やかな朱色の鳥居を通りぬけると、境内の東側の少しだけ小高くなっているところに、池山は大きな穴をあけている。

「何をしている」
 雄二と幸江は池山にたずねた。

「見たらわかる。隠れ家や」
 池山の心のなかでは、子どもの家が、いつのまにか、隠れ家になっていた。

「神社の境内に隠れ家なんて、おかしいよ」
 幸江は辛そうだった。

「どうして」
 池山はスコップを地べたに突き刺した。

「たくさん人が来るところに、隠れ家なんておかしいよ」
「そこが盲点や。灯台もと暗しともいうやんか」

「そんなの、おかしいよ」

「それにや、穴を掘った家やったら、火事おこしても、大丈夫やろ」
 池山は社会の授業で習ったことを話していた。それにしても横穴というよりも、地下の部分が多いだろうにとも雄二は思った。

「そうか、前の子どもの家は、火事を起こしたものねえ」
 雄二が病気で寝ているとき、子どもの家は火事になった。恭子たちだけで、ロウソクをつけて遊んでいた。恭子たちが外で遊んでいるうちに、子どもの家は火事になった。
 通りがかりの人が、煙が上がるの見て、火を消したそうだ。

「それにしても、なんで境内なんかに。反対の斜面やったら、人目にさらされないのに」
「あかん、反対側の斜面は、大きな根や石があって、スコップが通らない。ここは赤い粘土やから、大きな木も石もなくって、ええんや。掘りにくいけどな」
 幸江と雄二はボーと見ていた。

「こんな所に、隠れ家なんて作っていいのかしら」
「できたら、ちゃんと枝や葉でカムフラージュして隠すに決まっているやろ」
 池山は、まっ赤な顔をしている。

 吉坊は手伝いながら、
「ドロンコ、ドロンコ」
 と喜んでいる。

 雄二も手伝ってやることに決めた。幸江が睨みつける。
 こぎれいな服を着たおばあさんとおじいさんが神社に参拝に来た。

「何、してはりますねん。……防空壕なら、私も掘った」
「防空壕なんて掘るわけないやろ。隠れ家や」
 池山は荒っぽく話した。

「ほー、こんなところに隠れ家ですか」
 おじいさんもあきれていた。

「やめようよー、神社の人が、怒ってくるよ。下の池でざりがに釣りをしただけで怒られるにゃもん」
 幸江は言い終わると、頬を膨らませていた。

「せっかく作っても、神社には境内を守ることをお仕事にしている人がいはるから、見つかりますわよ」
 おばあさんは優しく話してくれた。

 池山はあきらめた。いや、あきらめたように思った。でも、池山の心のなかでは、子どもの家が隠れ家になったように、いいや、それ以上に隠れ家から秘密基地になっていた。

 しかし、そんなことは今はわからず、雄二も幸江も穴をうめるのを手伝っていた。




閑話休題

隠れ家といえば、
アンネ・フランクの『アンネの日記』を思い出します。
アンネの日記は、「後ろの家」という題がついていたと思います。
それはアンネ自身がつけたタイトルだそうです。

アンネ・フランクの場合、
ナチス・ドイツにユダヤ人ということで、
姉マルゴットが強制労働をさせられることになり、
隠れ家にうつり住んだそうです。

そこで、アンネ・フランクは日記を書きました。
正確にいえば、隠れ家にうつる前から書いてました。

アンネ・フランクが「キティーへ」と書いているのは、
小説の登場人物だそうです。
想像の人物に書いていたそうです。
ぼくも、平和日記を若いころに書きました。
いちいち、「アンネへ」とはじめのころは書いてました。
日記ぎらいの僕がかけたのも、だれかに書いていると
思えるからだと思いました。

今はだれかに本当に読んでもらっているようで、
ありがたいです。

僕は「『アンネの日記』物語」というお話をかきました。
かなり面白いのですが、著作権の問題があるので、
発表はできないと思います。

アンネのばらは世界的にも、
けっこう有名らしいです。

平和というのに、日本人がアムステルダムを訪れると、
ナチスの同盟国だった日本人が……という人もおられるとか。
オランダがアンネや、
戦後アンネの父になしたことを知らないから
いえるのだろうと思います。
結局、アンネのことも何一つ理解されていない
とさえ思えてきます。










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もくじ[メリー!地蔵盆]


風呂好き象さんシャンポー

2005年09月13日 | 短編など

お風呂ぎらいな子どもが、
好きになるようにと思い書いたものです。

昔は銭湯で、
風呂ぎらいな子どもがいたら、手をつかって、
シャボン玉でつくったりして
あやしている親を見たものです。



風呂好き象さんシャンポー


1

アキラ君はお風呂がだいきらいです。
「いやだったら、いやだよ」

今日もお風呂にはいりたくないので叫んでいます。

ママは、
「どうして、そんなにお風呂がきらいなの。女の子に嫌われちゃうわよ」
とお説教です。

アキラ君は、
「嫌われたっていいさ」
と、すねています。


2

布団に入ってから、アキラ君はお風呂はきらいだけど、みどりちゃんに嫌われたら、いやだなあーと思いました。

今、アキラ君のいる日本のお空はお星さまでいっぱいです。

「もしもしアキラ君」
アキラ君はねむい目をこすりながら、
「あれ、だあれ」
アキラ君はとっても驚きました。

「わたしかい」
 それは大きな象でした。

「私はシャンポー。お風呂の大好きな象さんだぞ~ん」


3

アキラ君は、
「この象さんは、女の子にもてるのかなあー」
と、心の中で思いました。

「シャンポーって変な名前だね」
アキラ君は女の子にもてる象さんがうらやましくって、意地悪なことを言ってしまいました。

「そうかい。僕はシャンポーっていう名前が好きだぞ~ん。大きな体の私はジャンボとシャンプーと、シャボン玉が好きだから、3つの言葉がまざって、ふわふわくるっとさかわやかな名前、シャンポーが生まれたんだぞ~ん」

アキラ君は大きな象がシャンプーをし、シャボン玉のなかにいる象さんを思いうかべました。


4

アキラ君は腕ぐみをして、だるまのような顔をしています。
「でも、おかしいよ。シャンポーってる小さい時から大きかったの。名前は赤ちゃんのときにつけらるんでしょう」

「大きくなって、自分で名前をつけたんだぞ~ん」

「そうか、自分でつけたから、気に入っているんだね」

アキラ君はへんな名前の象さんが気に入りました。
「ぼくもアキラ君なんて名前じゃなくって、楽しい名前をつけてやろう」
と思いました。


5

アキラ君はシャンポー象さんの頭を呼びさして、
「君の帽子は大きな木の洗面器じゃないの。桶って、おじいさんはいってたぞ」

「そうだぞ~ん。僕はお風呂が大好きなんだぞ~ん」
と、楽しそうに言いました。

アキラ君は
「何か、こりゃまた、けっこう」
と、テレビのお笑い芸人のように言いたくなりました。

シャンポーは鼻さきをアキラ君に見せて、
「僕の鼻はシャワーだぞ~ん。それに、しっぽはブラシだぞ~ん」
と、得意そうに言いました。

アキラ君は、
「君は本当にお風呂が好きなんだね。僕はお風呂はきらいだけど、シャンポー象さんは好きだなあー」
と、照れながらいいました。


6

シャンポー象さんは帽子を床におきました。
シャワーの鼻からお湯をだしました。

アキラ君はお腹をおさえて、
「おいおい、シャンポー象さん。僕、お風呂なんかに入りたくないよ」
と、むくれていました。

シャンポー象さんは
「お風呂に入る。そんなことじゃないよ」
といいながら、鼻でキバをぬきました。
キバはボディー・シャンプーと、シャンプーでした。

帽子の桶をとって、そこに湯をためて、
シャンプーをいれて、シャボン玉をつくりはじめました。

「ほーらー、楽しいぞ~ん」
「わあ、シャボン玉だ」


7

アキラ君はお風呂に入れといわれなくてよかったと思いました。

「わあ、シャンポー象さん。一度に沢山のシャボン玉をつくるんだね」

シャンポー象さんは、
「楽しいかい」
と聞いてきました。

「楽しいよ」
アキラ君は笑いました。


8

シャンポー象さんは何度もシャボン玉をつくりました。

アキラ君は胸に手をあてて、
「僕もシャボン玉、ふきたいなあー」
と目を輝かせていました。

「よしよし、アキラ君にストローをあげよう」

アキラ君は、シャボン玉をつくりました。

「お風呂はきらいたけど、お風呂好きのシャンポー象さんは好きだなあー」
アキラ君もシャンポー象さんも楽しいそうでした。


9

シャンポー象さんはノシノシと風呂場に行きました。
池のような湯ぶねからお湯をいっぱい吸うと、ポパーと空に湯を吹きつけました。

アキラ君は、
「わあ、きれいな虹が出ている」と、
跳び上がりました。

シャンポー象さんは、
「シャボン玉と虹、とってもきれいだぞ~ん」
と言いました。

アキラ君はシャボン玉をまたふくらませました。
2羽の小鳥が飛んで来ました。

「チュンチュン。水あびをして、とても気持がよかったなあー。
まあ、きれいな虹だこと」

「チュンチュン。お風呂に入った君はいちだんときれいになったよ」
「そう、チュンチュン」
 小鳥さんたちはキスをしました。

アキラ君は、
「やーだ。小鳥さんたちキスしているよ」
と、おおはしゃぎです。


10

小鳥さんはシャンポー象さんに、
「きれいなシャボン玉ですね」
と言いました。

アキラ君はおふろに入らないと女の子にきらわれるわよというママの言葉を思い出しました。

アキラ君は、
「お風呂は好きじゃないもん」
と、またすねました。

シャンポー象さんはアキラ君を見て、
「お風呂も入ってないのに、真っ赤な顔をしているの」
と、驚いていました。


11

アキラ君は、
「何でもないよ。あれ、いつの間にはだかになったんだろう」
と、驚きました。

シャンポー象さんは、
「アキラ君、アキラ君。シャボン玉がアキラ君のパンツを運んでいるよ」
と、言いました。

アキラ君のパンツの空中をフワフワと浮いています。

シャボン玉たちは、
「あんまり、君のパンツが汚いからさ」
と言って、川でパンツを洗いはじめました。


12

川上から桃が流されてきました。

シャボン玉たちは、
「汚いパンツがきれいなった」
と、喜んでいました。

川上から流れてきた桃が、
「きれいなパンツ、僕にくれ」
と言いました。

パンツは、
「せっかく、お風呂に入ってきれいになったのに、バッチィ。アキラ君なんかになんかはかれたくないよ」
と、クシャクシャになりながら言いました。


13

桃はパンツに近づきながら、
「ドンブラコ、ドンブラコ。私はきれいな桃だ」
と誘いかけました。

アキラ君の水着が走ってきました。
水着は、
「待ってください、パンツ君。アキラ君は市民プールでおぼれちゃったんだ。それで水が怖くなって、お風呂に入れなくなったんだ」
と、教えてくれました。

桃は、
「ドンブラコ、ドンブラコ。私が泳ぎを教えてあげよう」
と、やさしくパンツに話しかけました。

アキラ君は、
「パンツは僕のだぞ」
と、おこりました。


14

シャンポー象さんはアキラ君を鼻でだきしめて、
「僕もついてるぞ~ん」
と応援してくれました。

水着は、
「これで、心配ないよ。アキラ君」
と、呼びかけました。

アキラ君は、
「そうだね」
と胸をなでおろしました。

パンツが、
「がんばって」
と、応援しています。


15

シャンポー象さんはアキラ君に
「ずっと、お風呂がきらいだったんじゃないんだろう」
と話しかけました。

「そうだよ」
アキラ君は小さな声で話しました。

小鳥たちは木の枝にとまって、
「きれいになったら、素敵になるね」
と、さえずるようにささやきました。


16

パンツは、
「そうしたら、僕、アキラ君がきらいじゃなくなるよ」
と話しました。

シャンポー象さんは、
「僕のシャワーで体を洗おうね」
と、やさしく話しました。

アキラ君は、
小さな声でうなずきました。

水鳥が、
「あんなにやさしい象さんだもの、怖くいなわね」
と、いいました。


17

水着はパンツに
「いやまこと、こわいことをするのは勇気がいるね」
と言いました。

シャンポー象さんはアキラ君に、
「目をつぶって」
と、やさしい低い声ではなしました。

象さんの鼻のシャワーでお湯をアキラ君はあびました。
「やったー!」
みんなは声をあげました。

すっかり、アキラ君はきれいになりました。


18

パンツ君は、
「僕をはいてもいいよ」
と、明るい声でいいました。

アキラ君とシャンポー象さん、池で泳いでいます。
パンツは
「お風呂は泳ぐところじゃないよ」
と言いました。

シャンポー象さんは
「ここは池だぞ」
と陽気に話しました。

アキラ君はパンツ君に
「冷たいね」
と、明るい声でいいました。


19

朝です。ママの声です。
「アキラ君。朝ですよ、もうおきなさい」

「パンツ冷たいね」
アキラ君の寝言でした。

「まあ」
ママは布団の中に手をいれました。
「やれやれ」
と、あきれていました。

その日の夕方、アキラ君はお風呂に入りました。

ママは物干し台から、アキラ君のお布団を取り込みました。






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