磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

鱧男の小説などをUP。環境問題に戦争・原発を!環境問題解決に民主主義は不可欠!

89.キャンパスへ

2005年09月09日 | 【作成中】小説・メリー!地蔵盆



七、学園紛争と秘密基地

89.キャンパスへ






「なあ、わしらは何をしたらいいんや」
「まず、この食料を届ける。それで、おまえたちを仲間に入れていいか、きいてみる。おれにも仲間が欲しいからな。食料調達は大切なことなんや、兵糧攻めという作戦もあるくらいやからな」

「それなら、わかるで、豊臣秀吉が得意としていた戦法やろ!」
「そうや、“武士は食わねど、高楊枝”なんてことはない。飢えれば戦うことはできないからなあー。ところで、池山くんは、足は早いか」

「早い、早い、運動会じゃ、いつも一番だよ。香取ちゃんは遅いよ。いつもビリだよ」

「大丈夫、逃げ足だけは一番やから」
 花田が笑った。幼稚園のときも悪戯(いたずら)をよくしたものだ。

「普段は遅いけど、逃げるときは一番足が早い。知らなかったの?」
 花田はけらけら笑っていた。

「あんまり、笑うなよ」
 雄二らは、いざ行動をとる。

 花田は石垣を上り、木の陰に隠れた。そして、手招きをした。雄二も池山も石垣を登り、花田の後に続いた。
「誰にも見られてへんな」
「うん、大丈夫」
 池山は返事をした。

「よし」
 花田は指笛を鳴らした。生け垣の向こうの板一枚が動いた。

 竹をもったゲバルト学生がいた。顔にまいたタオルをとって、
「早く、中へ入れ!」
 小さな声で早口だった。

「了解」
 花田はその板の隙間から中へ、池山、雄二も続いた。すぐに板は閉じられる。
 大学の中は嘘みたいに静かだった。

 黄色のヘルメットをつけた人が口元のタオルをどけて、
「何、買ってきてくれた」
 と笑顔できいてきた。

「缶詰めとビスケット」
「そうか、ありがとう」

「この子たちは」
「ぼくの友人です」

「ほお……、援軍かいな」

「ねえ、お兄さん、京大の学生なの」
 池山がきいた。

「うん、そうだよ」
「アパートの曽我のおばあさんが、あんな頭の悪いことするのは、京大生じゃないっていっていたよ」

「そんなことないよ。みんな、大学生だよ」
 板塀を監視している学生もいた。ヘルメットはよれよれの黄色の工事現場のやつだった。見かけた学生は、みんなそうだ。ペンキがはげかけた中古品ばかりだった。機動隊のピカピカした上等なヘルメットとは大違いだった。そして大学生のヘルメットにはペンキで字が書いてあった。

「あのね、本物の京大生だよ。ぼくが保証するよ」
 花田は笑った。京大の職員の息子が言うのだから、本当だろうと思った。






閑話休題

昨日の続き。

1960年代には、セクシャルハラスメントという
言葉を知っている人は少なかったのではないでしょうか。

小学生の私はもちろん聞いたこともありませんでした。

「美人!」というのも、
セクシャルハラスメントだそうで、
美人というのは女性を商品化しているから
そう表現をとると書かれてあるのを見て、
そういうものかと思いました。

また、ランドセルの色が男なら「黒」
女の子なら「赤」と決めているのも差別とか。
そこまで書くのかあーと驚いてもいました。

「男性も男らしくしなさいといわれて、無理じいされている」
と書いてあるのを読んで、
男もジェンダーで苦しんでいるのではないかとも
思えました。

男らしいとか、女らしいより、
自分らしいが大切という考えは素敵だと思いました。

サッカーをがんばってやっている女性を応援したくなります。

男なら、暴力的にならなければならないって、
そんなことはないと思います。
人間として考えたいとも思っております。

まあ、これが私の自分らしさと思っています……。










↓1日1回クリックお願いいたします。

ありがとうございます。





もくじ[メリー!地蔵盆]


象さんのアップリケ

2005年09月09日 | 短編など
象さんのアップリケ



坊やはベッドに入りました。
でも、なかなか寝つけませんでした。

ベッドから出ました。
「ママ、何かお話をしてよ」

ママは編み物をしていました。
「お話……」
そういうと、編む手をとめました。

「うん、お話をきいたらねるからさ」
 ぼうやは頭をかきながらいいました。

「じゃーね」
 と、ママは絵本をとりだしました。

 坊やはベッドにはいりました。
「ママ。一度、読んでもらった本はダメだよ。もう、おもしろくないから……」

「そう」
 といい、ママは別の本をさがしました。

「ジャックと豆の木は?」
 ママはぼうやを真剣なまなざしで見つめました。

「読んでもらったよ」
「じゃー、一寸法師は?」
「読んでもらったよ。ママ、忘れたの」

ママは本棚の本をさがしました。

「そうね。じゃー、新しい本はないわ」
「ないの」
坊やはがっかりしました。

「どうしようかしらね。がまんしてくれる」
「ママのお話をきかせてよ」

「ママのお話……」
 ママは考えました。

坊やのパジャマのポケットについているアップリケを見ました。

「むかしね、アップリケの大好きな王様がいたのよ」
 思いつきのお話をママは考えたのです。

「アップリケ」
 坊やは胸を指さしました。

「そう、そのアップリケの大好きな王様がいたのよ。そして、ある日ね、となりの国の王子様の坊やがね」

 坊やはつぶっていた目をあけて、
「僕くらいの」
 と、たずねました。

「そうよ、まだ小さいのよ。その王子様がね、アップリケをしていたの。そのアップリケを見てね、王様はアップリケほしいなあー、あんなのいいなあーと召使いのばあやさんにねだりました」

「王様が」
「そうよ、アップリケの大好きな王様だもの。そして、王様はね、ばあやさんにね、パジャマにね、象さんのアップリケをつけてもらうように頼んだのよ」

「象、じゃ、僕のといっしょだね」
「そうよ」
「だったら、素敵だね。ぼくだって、象さんのアップリケ大好きだもん」

「ところがね、そのアップリケの象さんはねも、風船を持っていなかったの。でね、王様は、風船がないよーってね、わんわん泣いたのよ」

「わんわん」
 坊やは掛け布団をパンパン叩いて大喜びしました。

「じゃー、もう遅いから、これでおしまいよ。だから、おやすみなさい」

ママは時計の音をききながら、編み物をつづけています。
もうすっかり眠ったのよね……。
ほっとしました。

坊やは眠っていますが、笑顔でいました。

「象のアップリケに風船がなかったのは、大変なことなんだよ」

「あれ、だあ~れ」
 坊やは驚きました。

「うっほほぉーん、王様だ、えへん!」
 王様は咳払いしました。
「あっ、アップリケの大好きな王様」
 坊やは目を大きく見開きました。

「そうだよ」
 アップリケの大好きな王様は象に乗ってあらわれました。

「象のアップリケに風船があるということは、大変重要なことなんだよ」
 王様は人さし指をたてて横にふった。

「どうして?」
「ほら、私の胸をみなさい」
 王様は空色のパジャマを着ていました。そこに風船を持った象の形をしたのが白くありました。

「坊や、自分の胸のアップリケを見てごらん」
 坊や胸のアップリケを見ると、胸のアップリケはぐんぐん大きくなりました。

子象が長い鼻で、赤い風船を持ってあらわれました。
「それが君のパジャマのアップリケの象くんだよ」

坊やのパジャマの胸の部分には風船をもった象の形が白くありました。

王様の象はりっぱな大人の象でしたが、坊やの象は小さな子象でした。

「風船があるのと無いのとでは大違いの、こんこんちきなのだよ」
 王様はご自慢のヒゲをさすって、風船を持ちました。
 王様はぐんぐんと、空にうかんでいきました。

「おーい、坊やも、私のように風船を象さんからもらいなさい」
 王様は空高くいいました。

「はーい」
 坊やは大きな声で返事してから、象から風船をもらいました。

「うーわー」
 坊やは王様のように、空にぐんぐん浮いていきました。
 王様の風船は黄金色。坊やの風船は深紅でした。

「坊や、象が風船を持っているのと、持っていないのとでは大違いだろう」

「はい」
 王様はとても満足そうな顔をしていました。

下を見ると象は豆つぶのように見えました。
家もまるで玩具のように見えました。

「王様、僕、もうおりたいよ」
「簡単です。さあー、私を見ていなさい。象さん、頼んだよ」
 豆つぶくらいの象は鼻を空にむかって上げました。
 鼻で吸って、王様を地上に降ろしているのです。

「坊や。坊やの象さんに頼むんだよ」
「はい。象くん、下におろしてよ」
 子象も鼻を天にむけました。

だんだん家も大きくなりました。
象もだんだん大きく見えました。

地上におりると、王様は坊やを子象の背中にのせてくれました。

「どうだ、坊や。象のアップリケに風船があるのと無いのとでは大違いだろう」
「ええ、王様」

「じゃあーねー」
 王様は手をふりながら、象と去っていきました。

王様が見えなくなると、また坊やは眠くなってねむりました。






↓1日1回クリックお願いいたします。

ありがとうございます。