磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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91.心やさしき人たち

2005年09月11日 | 【作成中】小説・メリー!地蔵盆



七、学園紛争と秘密基地

91.心やさしき人たち





「あの何か、手伝いましょうか?」
 池山は食べ物をもらったので、恩返しをしようとする。

「それなら、石を集めてよ」
「石?」

「ああー、わかった。警官の頭をかち割るんやろ」

「何をいうのよ! 私たちは、そんなつもりはないわ」
 女の人は、目を白黒させていた。

「ああ、あそこに石がいっぱいあるよ」

「駄目だよ、あそこは花壇だから、花がかわいそうだろう。あの石は、雨のときなんかに流されないように、花を守っているからなあー」
 無精髭のいかつい男子学生がそう話した。

「えっ! ゲバルトやっている学生のいうことかいな」
 池山は予想外なことを学生が話したので、驚いていた。

「そうだよ。ぼくらは心が優しいからゲバルトをしているのさ」
「そうなの、わからんな」

「難しいか。まあ、それは大人になったら、わかることだろうなあー」
「チッ!」
 花田が舌打ちをした。

「その言葉、嫌いだったよなあー。大人になったら、わかるってこと」
「うん、そう……」
 と相づちは送るけれど、花田はにが虫をつぶしたような顔をしていた。

「じゃ、そこの道をこのツルハシで砕く、それをバケツに入れてくれ」
「わかった」
 花田は経験があるらしく、器用にコンクリートの道をつぶしている。

「そんな細かいのは、バケツにいれるなよ」
 学生は注意した。

「どうして、小さい方がよく飛ぶよ」
「飛ばなくっていい。大きな石なら、機動隊の人が怖がるだろう。本当にぶつけたら、かわいそうじゃないか!」

「えっ!」
 予想外のことを言われてびっくりした。

「もし、ぶつけることが目的なら、パチンコの玉をゴムのパチンコで飛ばしたら、すごい破壊力があるぜ」
 花田は冗談で話した。

「ぶつけることが目的じゃないってこと?」
 雄二は学生に質問した。

「そうだよ。大きいのを選んであげてね」

「わかった。何か気が抜けるな」
「ほんまやな」

「きみたち、何を期待してやってきたの」
 女の人が白い目で雄二らを見ていた。

「戦争!」
 雄二と池山は声を揃えていた。

「ほんものの戦争を見たかったってわけね。そんなことにならないように、私たちは運動をしているのに、どうして、そんなことをしなければならないの。私たちは機動隊と戦うことが目的じゃないのよ。本当の敵は政治家とか偉い人たちなのよ。それを勘違いしちゃ、おかしいわよ」

「そうだよ。機動隊の人は命令が下りたから、仕事をしているだけさ。気の毒と言えば気の毒だよ」

 雄二たちは気の毒と思うなら、しなかったらいいのにと思った。

「そうか。なんだ~、テレビで騒いでいるのと違うな」

「そうでしょうね。テレビとかマスコミは面白ければいいのよ。それで、偉そうに物をいっていられたら、この世は平和とでも思っているのよ。たとえ、その前のフィルムで人が殺されたのを流していても、平和と言っているのよ。そんな人たちの言っていること信じられないわ」

 雄二らは、こんなことをいう人たちもいるのかと驚いた。

 バケツに三杯ほど、石を集めた。雄二も生まれてはじめて、ツルハシを使ってコンクリートを割った。

「きみたち、お握り食べていきよし。お腹すいたやろ」
「うん、まあね」

「食べたら、食料調達に行ってきます!」
「がんばるわね」

「学生運動って楽しいね」
 池山はお握りをほうばりながら、そう言うと、まわりの人たちは爆笑していた。

「あのな、今夜くらいから山だから、子どもは中に入れるなよ」
 眼鏡をかけた賢そうな学生が指示した。

「キャプテン、わかりました」

「うん、怪我でもさせたら、困るからな。これは、われわれの闘争であって、子どもたちの未来のためにもあるのだが……。今日くらいで食糧の調達もいいよ。こっちで何とかするよ。これで防御もなんとかできたからね。きみたち、ありがとう」
 キャプテンはコーヒーか何かを飲んでいた。

「それに、今日ここに来たことは、親には言わない方がいいよ。きっと、叱られるに決まっているからね」

 大学生は雄二らのことを心配してくれた。インテリとは、こういう人のことをいうのだろうと思った。ジョンさんを思いだした。でも、ジョンさんなら、きっと暴力いけませんというだろうなあーと思った。





閑話休題

田辺聖子さんは、
小説で学園紛争を書いておられます。

それは、親の目をとおして書かれた作品です。
『夕ごはん食べた?』というタイトルの作品だったと思います。

京大生の方はふだんよりも、
食生活が豊かだった人もいたようです。

親として子どもの将来や、
健康を心配するのは当然なことでしょう。

しかし、彼らが夢や希望をもち、
今の若者たちより、仲間意識を強くもっていたことは
書かれてないと思います。

でも、彼らの夢や希望がどうなったかは、
書くまでもないと思いますが……。
大人なら、それ見たことじゃないといわれることでしょうね。

学園紛争という言葉自体が、
あのことを否定的にとらえているらしいです。

肯定的にとえらる人たちは、
学園闘争と表現するらしいです。

この後にあらわれる三無主義の学生に
くらべたら素敵な人たちです。

また、立身出世のためだけに、
勉強をしている物悲しい方たちよりも、
彼らは幸せそうでした。











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