ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

夏の1冊

2014-07-23 22:05:05 | Weblog
そういえば15年くらい前に、
毎年夏は、1冊、先の大戦関連の本を読もうと思った。

で、いま、
ほとんどそういう本ばかり読んでいる自分に気がついた。

昨日読み終わったのは『関東軍』(島田俊彦著)。
小さい頃、はじめてこの関東軍という言葉を聞いたとき、
関東地方を守っている自衛隊のことだと思った。
私が住んでいる東京は関東軍によって守られている、と。

全然違った。

戦前生まれの人が反省の気持ちをこめてまとめた本は、やはり重みが違う。
それは単なる土下座でもなく、中国に対するお詫びだけでもなく、
日本も含めた、あの時代への反省だ。

この本は、高度経済成長期に書かれ、
かすかに残っている祖父たちが語った戦争の話と、
その話から伝わってくる匂いを、思い出させてくれた。

今では、盧溝橋事件に関しては、コミンテルン陰謀説があるし、
ノモンハン事件も、その勝敗について、日本の勝利と言う説もあって、
この本で語られていることには、
すでに新たな研究に寄って書き換えられたれたものもあるだろう。
でも、あの当時を知っている人によって書かれた本は、
私たちの世代が知らない「実感」を伴っている。

同時代の人として語られる張作霖や張学良。毛沢東。
満洲という土地を踏んだことがある人による分析。

読後、つくづく思ったのは、関東軍はアメーバのような存在で、
どこかにしっかりとした頭があったわけではなく、
ずるずると実態なく広がり、南方戦線によって精鋭をそがれ、
そもそもの目的だったソ連に対しては、
組織的な反抗をできないまま崩壊した、やっぱりよくわからない軍隊ということだ。

名前が有名な割に、よくわからない。イメージ先行型すぎる。

関東軍だけじゃなくて、あの時代の日本が全体的にそうだったのかもしれないけど。
戦争中、あれだけ内閣が変わった国も珍しいだろうし。

でも、戦争をして、人を殺したり、殺されたりしたのは、軍じゃなくて「ある人」。
個人で背負うには重過ぎる運命だ。