金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

87:草野たき 『ハーフ』

2007-07-12 10:18:59 | 07 本の感想
草野たき『ハーフ』(ポプラ社)
★★★☆☆

父さんと「母親」である犬のヨウコと三人で暮らすぼく。
ヨウコを妻だと思い込む父さんのふるまいに危うさを感じながらも、
三人で楽しく暮らしていたが、ある日突然ヨウコが姿を消し……

*************************

籐子ちゃんのレビューを見て。
草野さんの本で男の子が主役なのは初めてですね。
ピンチを切り抜けるべく、父さんやおばさんに対して
子どもらしくふるまおうとする主人公の男の子が
痛々しくて、かわいい。
ハッピーエンドといえばハッピーエンドなのだけれど、
本当にそうかと言われればちょっとためらってしまうようなラストだし、
いろいろ解決してないこともあってもやもやしちゃうんだけど、
大きくて強い三浦ちゃんの乙女心に胸キュン

デビュー作『透きとおった糸をのばして』をはじめとする
中学生の女の子を主人公にした作品のやるせなさとは
ちょっと雰囲気がちがって、新鮮でした。

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86:太宰治・井伏鱒二 『走れメロス・山椒魚』

2007-07-11 12:42:13 | 07 本の感想
太宰治・井伏鱒二 『走れメロス・山椒魚』(講談社)
★★★☆☆

【収録作品】
太宰治:走れメロス/富嶽百景/晩年(抄)/雪の夜の話/御伽草子
井伏鱒二:山椒魚/屋根の上のサワン/遥拝隊長

少年少女日本文学館のシリーズ。
仕事用にいただいたのだけれど、二色刷りで、
注が本文の後ではなく本文の中にあるのがいいね。

「富嶽百景」と「走れメロス」は再読。
太宰治は「人間失格」も「斜陽」も特に好きじゃなかったのだけど、
「富嶽百景」のユーモラスで明るい雰囲気と、
「走れメロス」の短文を畳み掛けるような文体は好きで、
その二つが収録されているため、この本の好み度はややアップ。
「雪の夜の話」も可愛い。

井伏の代表作たる「山椒魚」はおもしろさがよくわからず。
そして「遙拝隊長」でずいぶん気が滅入る。

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85:芥川龍之介 『鼻・杜子春』

2007-07-10 10:21:00 | 07 本の感想
芥川龍之介 『鼻・杜子春』(フォア文庫)
★★★★☆

【収録作品】
杜子春/鼻/羅生門/芋粥/トロッコ/蜜柑/地獄変/
大導寺信輔の半生/白/槍ヶ嶽紀行

久しぶりの感想です
このところは仕事で芥川・太宰・井伏の短編をちょこちょこ
読んでいるため、一冊の本として感想が書けないというのもあるし、
とにかく読むのに時間がかかる。
言葉が難しくて読みづらいというわけではなくて、
よしもとばななが以前、
「一週間で書いたものは一週間で読み捨てられていく」
というようなことを言っていたのだけれど、
おそらくはそれと逆のこと。
文体意識とか、美意識みたいなものが、隅々まで
はりめぐらされているので、読み流したり飛ばし読みしたりという
おろそかな読み方ができないという感じ。

で、この芥川の短編集。
フォア文庫というのは児童文学を出している4社によって
協力出版されたものだとかで、収録作品のセレクトも子供向け。
「杜子春」「蜜柑」「白」のような優しい物語や、
比較的毒の少ない作品が中心。
しかし自伝的小説「大導寺信輔の半生」には
暗澹とした気分にさせられる。
なんかこう、痛々しいというか、身につまされるというか……。
そして、女性よりも「美少年」に愛されることに
重きを置いているような表現がしばしば出てくるのには、
やっぱりそういう時代だったのね……と
友情の文学誌』、『超恋愛論』で語られていたことを
あわせ考えて納得。

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84:高橋英夫 『友情の文学誌』

2007-07-04 21:40:34 | 07 本の感想
高橋英夫『友情の文学誌』(岩波書店)
★★★★★

正岡子規と夏目漱石、森鴎外と賀古鶴所、
武者小路実篤と志賀直哉、芥川龍之介の周辺……
師弟という縦の関係、同年代間の友情という横の関係を中心に、
西欧思想もからめながら文学史上の「友情」について語る一冊。

おもしろい!
わたしの好きな森鴎外と、個人的№1イケメン文豪・志賀直哉に
スポットライトをあてているというのもあるのだけれど、
書簡や日記を引用したそれぞれの世代・主義の「友情」が
バラエティに富んでおもしろく、飽きさせない。
鴎外を褒める漱石にヤキモチを焼く子規、
子どものころの鴎外について語る鶴所……
同性愛的な友情になにやらトキメキをおぼえてしまい、
ボーイズラブを愛する世の女性たちの気持ちが
初めてわかった気がしました

そして反自然主義で結託して四誌が合同しようとしたり、
武者小路と志賀が鴎外を気に入らないためにそれに抵抗したり、
この人たち、なんだか熱いよ~!
大学時代、安保闘争のノリで熱弁を振るう一部の人々を、
「こういう人たちってまだいたんだね」
「なんかうらやましいなあ」
とまるで時代の遺物を発見したかのように友だちと話していたのを
思い出したり。
「最近の若い人たちは本当に政治に無関心だ!」
と職場の大御所たちが嘆くそのすぐ隣でぼんやりしている
すべてに無関心な若者代表のわたしなのでした。
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