羽生飛鳥『蝶として死す』
★★★☆☆
【Amazonの内容紹介】
寿永二年(一一八三年)。
源氏の木曾義仲軍から逃れるため、
平家一門は都を捨て西国に落ち延びた。
しかし、異母兄・清盛に疎まれ、折り合いが悪かった
平頼盛は一門と決別。
義仲の監視を受けながらも、妻子やわずかな家人と共に
都に留まっていた。
そんな頼盛に、彼が一門きっての知恵者であると聞きつけた義仲は、
意外な頼み事を申し入れてきた――
「三月前の戦で落命した恩人・斎藤別当実盛の屍を、
首がない五つの屍から特定してほしい」。
恩人を弔えぬのは武将の恥、断れば頼盛を討ち、
己も自害すると義仲に押し切られ、
頼盛は難題に挑むことにするが……。
『平家物語』や謡曲『実盛』にも取り上げられている
実盛の最期を題材にした、
第十五回ミステリーズ!新人賞受賞作「屍実盛(かばねさねもり)」ほか、
全五編収録。
清盛が都に放った童子は、なぜ惨殺されたのか?
高倉天皇の庇護下にあったはずの寵姫は、
どのようにして毒を盛られたのか?
平家の全盛期から源平の争乱へとなだれ込んでゆく時代に、
推理力を武器に生き抜いた頼盛の生涯を描く、歴史ミステリ連作集。
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この時代を扱った本は、どんどん出て欲しいと思っているので
あまりネガティブな感想は書きたくないのだけど……
まあ、合わなかったのだろうな。
平頼盛を主人公にしたミステリー ということで、
わくわくしていたのだけども、
頼盛の人生とミステリーが両立せずに
どちらも中途半端になってしまった印象。
長いスパンで描いているから仕方ないのだけども、
清盛との確執をメインに進めていくのかと思いきや
あっさり清盛は死んでしまうし、
「一族を守り切った!」という成果も、
立場の危うさにウエイトを置いて描いていないから
宙に浮いてしまった。
ミステリーとして、
「おお、そうだったのか!」と思えたのは
「葵前哀れ」のみ。
あとは、わりとすぐに方法に見当がついてしまったり、
明らかになった動機がまったく腑に落ちず、
「そうですか……」としか感想を抱けなかったり。
「知恵者」という設定のわりに、
頼盛にあまり賢さが感じられなかったのも残念。
「頼盛は家人や容疑者の女、時政に対してまで、
なぜ『某』という一人称を使うの??」
(この時期はまだ、バリバリに謙譲の一人称だったのでは?)
とか、
「あだ名として『女御』はありうるが(祇園女御の例もあるし)、
実際に松殿の養女→女御にするのは無理だろう……」
とか、
「いや、この時期、頼朝はそいつらに遠慮しなきゃいけない
状況じゃないのでは……?」
とか、そういう細かいところが気になっちゃったのも、
話に乗れなかったためかも。
おもしろかったら、そういうのは帳消しになっちゃうから。
でも、作者さんには歴史ミステリーの書き手として活躍してほしい!
という気持ちがあるので、次の本が出たらまた買います。