金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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110:藤沢周平 『一茶』

2017-12-02 20:23:43 | 17 本の感想
藤沢周平 『新装版 一茶』(文春文庫)
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

生涯、二万に及ぶ発句。
稀代の俳諧師、小林一茶。
その素朴な作風とは裏腹に、貧しさの中をしたたかに生き抜いた男。
遺産横領人の汚名を残し、晩年に娶った若妻と
荒淫ともいえる夜を過ごした老人でもあった。
俳聖か、風狂か、俗事にたけた世間師か。
底辺を生きた俳人の複雑な貌を描き出す傑作伝記小説。

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小林一茶の実像というものが、

雪とけて村いっぱいの子どもかな
やせ蛙まけるな一茶これにあり
我ときて遊べや親のない雀

などの句からイメージされるような好人物ではない、
ということはすでに評論で知ってしまっていたので、
そういう点では驚きはなかった。
でも、教科書に取り上げられているような句しか
知らなかったら、この小説も衝撃的だっただろうな。

おもしろいか? といったら否。
継母との不仲から故郷を離れて江戸に出て、
俳諧師としての道を歩み始めたものの、
経済的にも困窮し、義母や異母弟と父の遺産をめぐって争い、
田畑をふんだくった挙句、年若い妻の体におぼれ……と
まったく美しくない、胸のすくような展開がひとつもない伝記。
自己中心的で根性がねじ曲がった男の一代記としては
予想通り。

ただ、俳諧師として大成できずに歳をとっていくことに対する焦り、
生活の苦労を知らなかったり、
有名になりもてはやされたりする俳諧仲間に対する
妬みやひがみの感情なんかは、身につまされてしまう。

コメント
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