Loss of function of the Pad-1 aminotransferase gene, which is involved in auxin homeostasis, induces parthenocarpy in Solanaceae plants
Matsuo et al. PNAS (2020) 117:12784-12790.
doi:10.1073/pnas.2001211117
受粉せずに子房が果実へと成長する単為結果は農業形質として魅力がある。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 野菜花き研究部門の松尾らは、タキイ種苗(株)が単離したナス単為結果変異体parental advice-1 (pad-1 この変異体名は日本のことわざ「親の意見と茄子の花は千に一つも仇はない」に由来する)の準同質遺伝子系統(NIL)を解析し、pad-1 変異体の子房のオーキシン(IAA)含量が野生型よりも約6倍高いことを見出した。マップベースクローニングの結果、Pad-1 遺伝子は9のエクソンからなる394アミノ酸のタンパク質をコードしており、pad-1 変異体では第4イントロンから転写終結点の8塩基上流までの約4558 bpが欠失していた。Pad-1 はシロイヌナズナVAS1 遺伝子と高い相動性を示すアミノトランスフェラーゼをコードしていた。RNAiによってPad-1 を発現抑制した形質転換ナスは、単為結果性を示し、子房のIAA量が増加していた。また、Pad-1 を発現させたpad-1 変異体は、単為結果性が失われ、子房のIAA量も減少した。単為結果性を示さない通常のナスのPad-1 RNA量は、花弁、若い葯、根で比較的高く、子房の発達過程では、未成熟の段階では低いが、徐々に増加して開花期に最大となり、その後減少していった。野生型の未成熟子房のIAA量は高いが、徐々に減少して開花期まで低い状態が続いた。一方で、pad-1 変異体の子房のIAA量は開花期に増加した。野生型とpad-1 変異体の子房でIAA前駆体の量を比較したところ、トリプトファン(Trp)含量に差はみられなかったが、インドール‐3‐ピルビン酸(IPyA)含量がpad-1 変異体で多くなっていた。シロイヌナズナVAS1はIPyAをTrpに転換する過程を触媒しており、Pad-1タンパク質もその活性を有していた。この反応はオーキシン生合成酵素トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(TAA1/TARs)の逆反応にあたる。よって、Pad-1は子房が発達する過程でのオーキシン量の調節に関与していると考えられる。ナス以外のナス科植物のPad-1 遺伝子オーソログも単為結果性をもたらすかについて、トマトPad-1(SlPad-1 )のRNAi発現抑制系統、ピーマンPad-1 のナンセンス変異体Capad-1 を用いて調査したところ、これらの植物の果実も単為結果性を示し、花や子房のIAA含量が増加していた。以上の結果から、Pad-1は子房のオーキシン量の維持に関与しており、その機能喪失はオーキシン含量を増加させることで単為結果性を引き起こすと考えられる。
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