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論文)ジャスモン酸による側根形成の阻害

2018-08-29 22:58:10 | 読んだ論文備忘録

Jasmonic Acid Inhibits Auxin-Induced Lateral Rooting Independently of the CORONATINE INSENSITIVE1 Receptor
Ishimaru et al. Plant Physiology (2018) 177:1704-1716.

doi:10.1104/pp.18.00357

東北大学上田らは、シロイヌナズナをジャスモン酸(JA)の鏡像異性体で処理すると側根数が減少し、その効果は(+)-JAの方が(-)-JAよりも強いことを見出した。また、JA処理による側根数の減少はcoi1 変異体においても観察されることから、JAによる側根形成の阻害はCOI1とは独立した現象であることが示唆される。生物活性のある他のJA誘導体での処理では側根数の減少は見られなかった。マイクロアレイ解析の結果、JA処理はオーキシンが発現を誘導する側根形成関連遺伝子のPUCHILATERAL ORGAN BOUNDERIES DOMAIN 29LBD29 )の発現量を減少させることが判った。JAによる側根形成阻害はオーキシンを同時処理することによって抑制された。オーキシン処理によるDR5::GUS レポーターの発現はJA処理によって阻害された。したがって、JAはオーキシンシグナル伝達を低下させていると思われる。そこで、オーキシンシグナル伝達センサーDII-VENUSを用いて解析を行なったところ、(-)-JAもしくは(+)-JA処理は根の成熟領域でのDII-VENUS蛍光の蓄積を引き起こすことがわかった。また、JAのJA-Ileへの転換を抑制してJA濃度を高める効果のあるjarin-1を同時に添加することで蛍光は強まり、オーキシン(IAA)を同時に添加すると蛍光は減少した。よって、JAはAux/IAAを安定化させる作用があると考えられる。オーキシン受容体の変異体tir1 afb2-3 およびafb5-5 を(-)-JAもしくは(+)-JAで処理すると、tir1 afb2-3 変異体は側根数が減少したが、afb5-5 変異体は(-)-JA処理による側根数の減少が弱まり、(+)-JA処理では側根数の減少が見られなかった。Pseudomonas syringae が生産するコロナチンは、 メチルジャスモン酸(MeJA)のアナログの1つであるコロナファシン酸(+)-CFAとコロナミン酸が縮合した構造をしている。野生型植物を(+)-CFA処理すると側根形成が劇的に抑制された。(+)-CFA処理は、根の重力屈性、オーキシンによる根毛形成誘導に影響を及ぼさなかった。また、(+)-CFA処理によってDII-VENUS蛍光の蓄積が起こった。さらに、JAの場合と同様に、(+)-CFA処理によってtir1 afb2-3 変異体の側根数が減少し、afb5-5 変異体では側根数の減少に対して抵抗性を示した。以上の結果から、JAおよび(+)-CFAは、Aux/IAAを安定化させることで、COI1を介したシグナル伝達とは独立して側根形成を阻害していると考えられる。

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