Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
ホームページの更新情報

論文)ショ糖トランスポーターSUC2の活性制御

2020-03-30 20:55:49 | 読んだ論文備忘録

Carbon export from leaves is controlled via ubiquitination and phosphorylation of sucrose transporter SUC2
Xu et al.  PNAS (2020) 117:6223-6230.

doi:10.1073/pnas.1912754117

シロイヌナズナを強光に曝すと光合成が高まり、葉や篩部のショ糖含量が増加する。この時、ショ糖を篩部維管束組織へ輸送するトランスポーターSUCROSE TRANSPORTER 2SUC2 )の発現量に変化は見られないが、SUC2タンパク質量は増加する。中国 西北農林科技大学Liesche らは、この現象を詳細に解析し、強光条件ではSUC2 転写産物の翻訳効率に変化は見られないが、SUC2タンパク質のプロテアソーム系による代謝回転が低下し、SUC2タンパク質がリン酸化されることを見出した。そこで、SUC2と相互作用をし、代謝回転に関連しそうなタンパク質を探索したところ、UBIQUITIN-CONJUGATING ENZYME 34(UBC34)がSUC2と強い相互作用を示すことがわかった。ubc34 変異体は、野生型よりもSUC2タンパク質量が多く、葉の可溶性糖類や篩部滲出液のショ糖量が増加していた。また、ubc34 変異体は、成長が旺盛で、光合成速度、ロゼット葉の直径、生重量と乾物重、種子重量、デンプン含量が野生型よりも増加していた。ubc34 変異体での強光に応答した篩部滲出液ショ糖含量の増加とSUC2タンパク質量の増加は、野生型よりも少なくなっていた。したがって、UBC34 は光に依存したSUC2量の増加と篩部へのローディングとって重要であると考えられる。通常光条件下で育成したubc34 変異体のSUC2タンパク質の代謝回転速度は野生型よりも非常に遅くなっており、ユビキチン化されたSUC2タンパク質量が半分に減少していた。ubc34 変異体のSUC2タンパク質量は強光条件下で殆ど変化しないが、ショ糖滲出量は有意に増加する。強光条件でSUC2タンパク質のリン酸化が促進されることから、リン酸化によってSUC2のショ糖輸送活性が制御されているのではないかと考え、SUC2と相互作用をするキナーゼのT-DNA挿入変異体を解析したところ、WALL-ASSOCIATED KINASE LIKE 8(WAKL8)の変異体wakl8 の篩部ショ糖含量は野生型よりも少ないことがわかった。また、WAKL8はSUC2をリン酸化してショ糖輸送活性を高めることがわかった。以上の結果から、UBC34によるSUC2のユビキチン化とWAKL8によるSUC2のリン酸化が強光条件でのショ糖の篩部ローディングを調節していると考えられる。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 論文)MYC転写因子の量を調節... | トップ | 論文)PHYTOCHROME-INTERACTI... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読んだ論文備忘録」カテゴリの最新記事