Arabidopsis thaliana class-II TGA transcription factors are essential activators of jasmonic acid/ethylene-induced defense responses
Zander et al. The Plant Journal (2010) 61:200-210.
DOI: 10.1111/j.1365-313X.2009.04044.x
植物は病傷害を受けるとサリチル酸(SA)、ジャスモン酸(JA)、エチレンといった植物ホルモンのシグナルが発せられ、様々な防御機構が作用する。ドイツ ゲッティンゲン大学のGatz らは、SAによる全身獲得抵抗性の誘導に関与することが知られているシロイヌナズナ塩基性ロイシンジッパー(bZIP)型クラス-ⅡTGA転写因子TGA2、TGA5、TGA6の三重変異体tga256 は、JA/エチレンシグナルによって防御応答が誘導される灰色カビ病菌(Botrytis cinerea )に対する抵抗性が野生型よりも弱いことを見出した。この変異体の芽生えではJA/エチレンシグナルで誘導されるPDF1.2 やb-CHI の発現が低下しており、JAシグナルだけで誘導されるLOX2 やVSP2 のJAによる発現誘導は野生型と同等だった。よって、TGA転写因子はSAシグナルに加えてJA/エチレンによる防御機構の活性化にも関与していることが示唆される。PDF1.2 遺伝子のプロモーター領域にはTGA転写因子の結合するTGACGモチーフが存在するが、この配列に変異を与えてもPDF1.2 プロモーターのJA/エチレンによる発現誘導活性は失われなかった。よって、TGF転写因子は直接PDF1.2 の発現を制御してはいない。そこで、JA/エチレンによるPDF1.2 発現誘導シグナル伝達経路に関与することが知られている転写因子ERF1 とORA59 のtga256 変異体での発現を見たところ、どちらの転写因子もJA/エチレンによって発現誘導されていた。この時PDF1.2 の発現は誘導されないことから、TGA転写因子はERF2、ORA59 以外の調節因子の発現を介してPDF1.2 の発現を活性化しているものと思われる。灰色カビ病菌を感染させたtga256 変異体ではERF2 の発現誘導は正常に起こるが、ORA59 の発現誘導量が野生型の半分になっており、TGA転写因子はORA59 を高発現させるために必要であると思われる。PDF1.2 のJA/エチレンによる発現誘導はJAシグナル伝達に関与している転写因子AtMYC2により抑制されることが知られており、AtMYC2 遺伝子の変異体であるjin1 ではJA/エチレン処理によるPDF1.2 の発現量が野生型よりも40倍高く誘導されるが、tga256jin1 四重変異体でのPDF1.2 のJA/エチレン処理による発現誘導は野生型と同程度にまで低下していた。また、jin1 変異体でのJA/エチレン処理によるPDF1.2 の発現量増加はSA処理することでtga256jin1 四重変異体と同程度まで低下した。ORA59 のJA/エチレン処理による発現誘導もjin1 変異体では野生型よりも高く、同時にSA処理することによって誘導量が半分に低下した。よって、PDF1.2 とORA59 のSA処理による発現量の変動パターンは類似しているが、薬剤誘導プロモーター制御下でORA59 を過剰発現させた個体においてもPDF1.2 の発現がSAにより抑制されることから、SAはORA59 の発現抑制とは別のところでPDF1.2 の発現を抑制していると思われる。以上の結果から、クラス-ⅡTGA転写因子はSAにより誘導される全身獲得抵抗性に加えてJA/エチレンによる病害抵抗性にも関与し、AtMYC2によるJA/エチレンシグナルの抑制に対して拮抗的に作用していると考えられる。
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