葉の表(向軸側)と裏(背軸側)の決定は幾つかの遺伝子によってなされており、シロイヌナズナでは、向軸側決定因子としてクラスⅢホメオドメインロイシンジッパー(HD-ZIPIII)、ASYMMETRIC LEAVES2(AS2 )、トランス作用siRNA tasiARF が、背軸側決定因子としてKANADI (KAN )、YABBY (YAB )、AUXIN RESPONSE FACTOR (ARF )、LITTLE ZIPPER (ZRP )、およびmiRNA のmiR165/miR166が知られている。幾つかの遺伝学的解析から、これらの因子は対立的に作用することが示されている。本論文では、これらの向軸-背軸側を決定する因子の相互作用について解析を行なっている。EMS処理で誘導したしたシロイヌナズナ突然変異体の中から、葉が平らもしくは上向き側にカールして葉全体が向軸側化した優性突然変異を選抜した。この変異体の表現型はAS2 を異所的に発現させたものに非常によく似ていたので、AS2 遺伝子の周辺領域の塩基配列を調査したところ、AS2 の開始コドンから1,484塩基上流のGがAに置換していた。この突然変異体as2-5D のプロモーター領域にレポーター遺伝子GUS を繋いで発現パターンを見たところ、正常なAS2 プロモーターでは葉原基の向軸側で発現が見られるのに対して、as2-5D プロモーターでは葉原基全体で発現していた。このことはas2-5D のプロモーター領域の塩基置換は、AS2 の背軸側での発現を抑制している転写因子の結合を妨げていることを示唆している。as2-5D 変異体の表現型は、背軸側の決定因子であるKAN1 の機能喪失突然変異体ともよく似ていることから、KAN1 とAS2 プロモーター領域との相互作用について幾つかの実験をしたところ、KAN1 はAS2 プロモーターのas2-5D で塩基置換の入った領域に結合してAS2 の発現を抑制していることが確かめられた。よって、as2-5D 変異体で見られる表現型は、KAN1 の発現している背軸側でAS2 が発現していることによって引き起こされているものであり、AS2 の発現する領域はKAN1 および背軸側で発現している他のKAN 遺伝子の発現によって決定されていると考えられる。KAN1 プロモーターにGUS を繋いで発現パターンを見ると、野生型の葉原基では背軸側が染色されるのに対して、as2 機能喪失変異体では葉原基全体が染色されることから、AS2 もKAN1 遺伝子の発現を何らかのかたちで抑制しているものと思われる。
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