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論文)花器官の脱離にMAPキナーゼカスケードが関与している

2008-10-20 00:05:52 | 読んだ論文備忘録

Regulation of floral organ abscission in Arabidopsis thaliana
Cho et al.  PNAS (2008) 105:15629-15634

植物は、不要になった器官を離層の細胞層で細胞壁修飾酵素や加水分解酵素等を発現させて細胞分離させることで脱離させる。これは遺伝的にプログラムされた機構によりなされるもので、離層形成/脱離のシグナルが発せられることにより引き起こされる。シロイヌナズナの花器官の花弁等の脱離に異常の見られる突然変異体の解析から、分泌型の小タンパク質 Inflorescence Deficient in Abscission (IDA )、レセプター様プロテインキナーゼの HAESA (HAE )および HAESA-like 2 HSL2 )がこの過程に関与していることが報告されているが、本論文では、これらの遺伝子とMAPキナーゼカスケードとの関係を調査した。MAPキナーゼキナーゼのMKK4MKK5 をRNAiで発現抑制した形質転換シロイヌナズナ(MKK4-MKK5RNAi )の中に、花器官が脱離しない表現型のものが得られた。この個体の器官離脱前の離層は野生型と変わりはないが、器官を脱離させるためには力を加える必要があった。野生型において器官脱離を促進する植物ホルモンのエチレンをMKK4-MKK5RNAi  個体に与えたが、脱離欠損の表現型に変化は見られなかった。これらのことは、MKK4MKK5(すなわちMAPキナーゼカスケード)は離層形成ではなく、その後の細胞分離による器官脱離の過程に関与していることを示している。MKK4-MKK5RNAi  個体の表現型と、idahae hsl2 変異体の離層や細胞分離の状態の類似性から、これらのタンパク質は器官脱離を制御するシグナル伝達経路上で機能していると考えられる。そこで、これらのタンパク質がシグナル伝達経路上での位置づけを、機能喪失変異体で他のタンパクを過剰発現させることでの表現型の変化から推定したところ、IDAHAE およびHSL2 → MAPキナーゼカスケードという順序になることを示唆する結果が得られた。

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