PIF4 Coordinates Thermosensory Growth and Immunity in Arabidopsis
Gangappa et al. Current Biology (2017) 27:243-249.
DOI: 10.1016/j.cub.2016.11.012
気温が上昇すると植物の成長は促進されるが、防御応答が弱くなり、罹病性が高くなることが知られている。英国 ジョン・イネスセンターのKumar らは、温度変化に応答した成長制御に関与していることが知られているPHYTOCHROME INTERACTING FACTOR 4(PIF4)が高温時の免疫性の変化にも関与しているのではないかと考え、解析を行なった。シロイヌナズナ ヌクレオチド結合ロイシンリッチリピート(NB-LRR)タンパク質SUPPRESSOR OF npr1-1, CONSTITUTIVE 1(SNC1)の変異体snc1-1 は、恒常的に防御応答が活性化し、成長が抑制さていれるが、高温条件(27℃)では成長が回復し、Psudomonas syringe pv. tomato(Pto )DC3000に対する抵抗性が低下して野生型と同等となる。しかし、snc1-1 pif4-101 二重変異体ではどちらの表現型も高温による変化が起こらなかった。この結果から、PIF4による温度受容シグナル伝達は、温度上昇による防御応答の抑制にも関与していることが示唆される。pif4-101 変異体では、成長に関与しているPIF4のターゲット遺伝子ATHB2 、EXP8 、XTR7 の発現が減少していたが、防御応答に関与しているPR1 、PR5 、PBS3 の発現量は増加していた。RNA-seq解析の結果、pif4-101 変異体では防御応答関連遺伝子の発現量が高くなっていることがわかった。また、pif4-101 変異体やpifQ (pif1 pif3 pif4 pif5 )変異体はPto DC3000抵抗性が野生型よりも高くなっていた。PIF4の塩基性ドメインを欠いたPIF4Δbは、過剰発現させることによって優性阻害を引き起こし、成長が抑制され、成長関連遺伝子の発現量が減少し、防御遺伝子の発現量が増加してPto DC3000抵抗性が高くなった。また、PIF4 を過剰発現させた系統は、成長関連遺伝子の発現量が増加し、防御遺伝子の発現量が減少してPto DC3000罹病性が高くなった。これらの結果から、PIF4は免疫性の負の制御因子として作用していることが示唆される。フィトクロムBは、光刺激に応答してPIF転写因子の分解を制御をしており、機能喪失phyb 変異体ではPIFを介した成長が強まるが、Pto DC3000罹病性が高くなっていた。また、PHYB 過剰発現系統は、成長関連遺伝子の発現が減少して成長が抑制され、防御遺伝子の発現が増加し、Pto DC3000抵抗性が高くなっていた。シロイヌナズナの自然変異のNossen(No-0 )は、Columbia(Col )-0 よりも成長が旺盛で、成長の温度感受性が高い。No-0 は成長関連遺伝子の発現量が高く、防御関連遺伝子の発現量が低下しており、Pto DC3000罹病性が高くなっていた。よって、No-0 の温度による成長促進は免疫性性の低下を引き起こしている。No-0 の成長や防御に関する表現型はphyb 変異体の表現型と類似しており、No-0 とphyb 変異体とのF1雑種はphyb 変異体の表現型を相補しなかった。よって、No-0 ではPHYBの機能が低下していると考えられる。しかしながら、No-0 でのPHYB の発現量はCol-0 と同等であった。No-0 のPHYB 遺伝子座には幾つかの多型が見られ、それらはPHYBの機能と関連していることが知られていることから、No-0 はPHYBの機能に異常があると考えられる。Col-0 とNo-0 を交雑して作出したF2個体の解析から、成長や防御に関する表現型はPHYBに支配されていることがわかった。また、No-0 でCol-0 のPHYB を発現させることで、成長、遺伝子発現、Pto DC3000抵抗性といった表現型がCol-0 と同等になった。PHYBはPIF4を負に制御しているので、No-0 ではPIF4 の発現量が増加していた。また、No-0 でPIF4Δbを発現させると、成長が抑制され、成長関連遺伝子の発現量が減少し、防御遺伝子の発現量が増加してPto DC3000抵抗性が高くなった。したがって、No-0 での成長と防御のバランスの変化は、PHYBの機能低下によるPIF4の増加によって引き起こされていると考えられる。シロイヌナズナの自然変異体のPHYBアミノ酸配列を比較したところ、Edinburgh(Edi )-0 、Kashmir(Kas )-1 、Shakdara(Sha ) にもNo-0 と同じアミノ酸置換が見られ、No-0 と同じ表現型を示した。17℃で育成したCol-0 はPto DC3000抵抗性が高く、育成温度を22℃、27℃と上昇させるに連れて抵抗性が低下する。17℃および22℃で育成したPIF4 過剰発現個体の抵抗性は、それぞれ、22℃および27℃育成したCol-0 と同程度であった。よって、PIF4が温度上昇による罹病性誘導をもたらしていることが示唆される。phyb 変異体やNo-0 は低温時の抵抗性が低下していた。また、PIF4Δbを発現させた系統は、対照よりも27℃での抵抗性が高くなっていた。これらの結果から、PIF4による温度受容シグナル伝達系は防御応答の温度感受性の制御において重要であると考えられる。
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