The Arabidopsis NRT1/PTR FAMILY protein NPF7.3/NRT1.5 is an indole-3-butyric acid transporter involved in root gravitropism
Watanabe et al. PNAS (2020) 117:31500-31509.
doi:10.1073/pnas.2013305117
シロイヌナズナは硝酸・小ペプチド輸送体ファミリー(NPF)タンパク質を53種有しており、そのうちの幾つかは植物ホルモンを輸送することが知られている。理化学研究所 環境資源科学研究センターの瀬尾らは、根において硝酸やカリウムのトランスポーターとして機能することが報告されていたNPF7.3/NRT1.5の変異体npf7.3 の芽生えが、縦型プレートで栽培した際に野生型よりも根の波状のうねりが多くなり、重力屈性が低下していることを見出した。根の重力屈性にはオーキシンが関与していることから、酵母を用いたいトランポートアッセイを行なったところ、NPF7.3はインドール酢酸(IAA)よりもインドール酪酸(IBA)を効率よく細胞内に輸送することが判った。また、npf7.3 変異体は根のIAA含量に変化は見られなかったが、IBA含量が野生型の半分程度に低下していた。IBAは外部から添加した際にペルオキシソームにおいてIAAに変換されることが知られている。そこで、npf7.3 変異体にIAAを添加したしたところ、重力屈性の低下が部分的に回復した。しかしながら、IBAの添加による回復は見られなかった。次に、根でのIAA分布をオーキシン応答マーカー(DR5rev:GFP 、DR5:GUS )を用いて観察したところ、npf7.3 変異体では野生型と比較してレポーターのシグナル強度が低い、IBA処理によるレポーター発現誘導量が低い、根に重力刺激を与えた際のレポーター発現の不等分布があまり顕著ではないことが判った。また、野生型植物にIAAもしくはIBA処理をするとレポーターのシグナルが強まり、根端部でシグナルが不等分布を示すが、npf7.3 変異体ではIAA処理ではシグナルの不等分布が形成されるが、IBA処理では見られなかった。NPF7.3に最も近いホモログで低親和性硝酸トランスポーターNRT1.8として知られているNPF7.2をNPF7.3 プロモーター制御下でnpf7.3 変異体で発現させたところ、重力屈性応答が回復した。NPF7.3 は主に成熟根の内鞘細胞で発現しており、主根の根端部の中心柱細胞やコルメラ細胞でも発現していた。npf7.3 変異体はIBA処理による側根形成に対して感受性が高く、主根の伸長阻害に対しては感受性が低かった。以上の結果から、細胞へのIBAの取り込みはNPF7.3を介して行われており、この輸送は根の重力屈性に必要なIAAの生産に寄与していることが示唆される。