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論文)ジベレリンによる花成を制御するbHLH転写因子

2017-08-07 05:40:03 | 読んだ論文備忘録

Two DELLA-interacting proteins bHLH48 and bHLH60 regulate flowering under long-day conditions in Arabidopsis thaliana
Li et al. Journal of Experimental Botany (2017) 68:2757-2767.

doi:10.1093/jxb/erx143

ジベレリン(GA)は植物の生活史において多くの成長過程の制御を行なっている。GAシグナルは、転写調節因子のDELLAタンパク質の分解によって伝達される。DELLAタンパク質自体にはDNA結合ドメインがなく、様々な転写因子と相互作用をしてそのDNA結合能を阻害してシグナル伝達を抑制している。中国科学院 西双版納植物園Yu らは、酵母two-hybrid系によりDELLA(RGL1)と相互作用をするシロイヌナズナ新規タンパク質の選抜を行ない、bHLH転写因子bHLH48(At2g42300)を見出した。bHLH48はbHLHサブグループXIIに属しており、bHLH48との類似性が高いbHLH60(At3g57800)もDELLAとの相互作用を示した。BiFCアッセイから、bHLH48とbHLH60は生体内においてもDELLAと相互作用をすることが確認された。bHLH48 およびbHLH60 を過剰発現させた形質転換シロイヌナズナは、長日条件で育成すると花成が野生型よりも早くなった。一方、短日条件では早期花成の表現型は見られなくなった。bHLH48 およびbHLH60 の単独変異体は、日長条件に関係なく花成時期に野生型との差異は見られなかったが、二重変異体は長日条件での花成が野生型よりも遅延した。bHLH48にリプレッサードメインを付加した融合タンパク質(bHLH48-EAR)を過剰発現させた形質転換体は長日条件での花成が著しく遅延した。これらの結果から、bHLH48とbHLH60は長日条件での花成を正に制御していることが示唆される。bHLH48 およびbHLH60 の過剰発現個体では、FLOWERING LOCUS TFT )の転写産物量が増加してしいた。しかし、FT 発現の概日リズムに変化は見られなかった。一方、CONSTANSCO )やGIGANTIAGI )の発現には変化は見られなかった。bhlh48bhlh60 二重変異体ではFT の転写産物量が野生型よりも減少していた。bHLH48 を過剰発現させたft-11 変異体は、ft 変異体と同じように長日条件での花成が遅延することから、bHLH48 (およびbHLH60 )過剰発現個体における早期花成はFT 発現量の増加によるものであると考えられる。bHLH48 およびbHLH60 のプロモーター制御下でGUSレポーターを発現させたところ、FT の発現部位である維管束細胞がGUS染色された。bHLH転写因子は、E-box(5'-CANNTG-3')シスエレメントに結合することでターゲット遺伝子の発現を制御している。FT 遺伝子のプロモーター領域には幾つかのE-boxモチーフが含まれており、bHLH48がFT プロモーター領域に結合することがChIPアッセイによって確認された。このことから、bHLH48は直接FT 遺伝子プロモーターに結合することが示唆される。GAは、bHLH48 およびbHLH60 の発現に影響しなかったが、bHLH48およびbHLH60のFT プロモーターへの結合活性を促進した。シロイヌナズナプロトプラストを用いた一過的発現解析から、RGL1はbHLH48およびbHLH60の転写調節活性を阻害することが確認された。RGL1 を過剰発現させた形質転換体は花成が遅延するが、同時にbHLH48 もしくはbHLH60 を過剰発現させると長日条件での花成時期が早くなった。よって、bHLH48 およびbHLH60 の過剰発現はRGL1 の過剰発現による花成遅延と拮抗していることが示唆される。以上の結果から、bHLH48とbHLH60はジベレリンによる花成を正に制御する転写因子であると考えられる。

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