AtBBX21 and COP1 genetically interact in the regulation of shade avoidance
Crocco et al. The Plant Journal (2010) 64:551-562.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2010.04360.x
植物は遠赤色光の割合の高い光を受けると胚軸、葉柄、茎が伸長して開花が早くなる避陰反応(SAS)を示す。光形態形成の抑制に関与するE3ユビキチンリガーゼのCONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC 1(COP1)はSASを誘導することが知られており、cop1 変異体では避陰反応が抑制される。しかしながら、COP1と避陰反応との関係について詳細は明ではない。アルゼンチン ブエノスアイレス大学のBotto らは、シロイヌナズナT-DNA挿入系統集団の中から上部からの光を遮った状態で芽生え胚軸が野生型よりも長く、光照射下、暗黒下では正常な表現型を示す変異体を選抜し、lhus (long hypocotyl under shade )と命名した。この変異体においてT-DNAはLHUS 遺伝子(At1g7540)の5'UTRに挿入されていた。この遺伝子は過去にSTH2 (SALT TOLERANCE HOMOLOG2 )として報告されており、B-box(BBX)タンパク質のAtBBX21をコードしていた。BBX21はLONG HYPOCOTYL 5(HY5)と相互作用し、胚軸の伸長を阻害することが知られている。T-DNA挿入変異体ではLHUS /BBX21 の発現量が低下しており、RNAiによりLHUS /BBX21 の発現を抑制した形質転換体も同じ表現型を示した。しかしながら、LHUS /BBX21 を35Sプロモーターで恒常的に発現させた形質転換体も遮光条件で胚軸が伸長した。シロイヌナズナの他のBBXタンパク質も芽生えの成長過程での光シグナルに対して負もしくは正の制御をするものが知られており、bbx19 、bbx21 、bbx22 変異体芽生えは遮光条件で胚軸が伸長し、bbx18 、bbx24 変異体芽生えは逆の表現型を示した。bbx21 bbx22 二重変異体芽生えでは胚軸がさらに伸長したことから、両者は遮光条件下での胚軸伸長抑制に対して相加的に作用するものと思われる。野生型植物を遮光条件下で育成するとBBX21 、BBX19 、BBX22 転写産物量が増加し、BBX18 、BBX24 転写産物量は減少した。よって、BBX19、BBX21、BBX22は避陰反応において植物成長の抑制因子として作用し、BBX18とBBX24は逆のシグナルを伝達する因子として機能しているものと考えられる。BBX21は、避陰反応で発現量が増加するPAR1 、HFR1 、PIL1 、ATHB2 の正の制御因子として機能していた。bbx21 、bbx22 、cop1 単独変異体および二重、三重変異体における避陰反応の解析から、BBX21とBBX22はCOP1の下流において作用していることが推測された。また、マイクロアレイ解析から、BBX21はオーキシン(AuxRE 、AUX1 、EOR1 )、光(ATHB52 、FIN219 )、低温ストレス(GRP3S )に関連する遺伝子の負の制御因子として機能していた。したがって、BBX21は避陰反応での遺伝子発現を制御する内生シグナルと環境シグナルの間のクロストークに関与していると考えられる。以上の結果から、BBX21とBBX22はCOP1の下流において避陰反応の調節を行なう因子として機能していると考えられる。