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植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)植物の小胞体におけるタンパク質品質管理機構

2009-08-12 21:34:50 | 読んだ論文備忘録

A plant-specific calreticulin is a key retention factor for a defective brassinosteroid receptor in the endoplasmic reticulum
Jin et al.  PNAS (2009) 106:13612-13617.
doi:10.1073/pnas.0906144106

Commentaries
Calreticulins are not all the same
Alessandro Vitale  PNAS (2009) 106:13151-13152.
doi:10.1073/pnas.0907255106

シロイヌナズナのブラシノステロイド非感受性突然変異体bri1-9 は、膜貫通型ブラシノステロイド受容体キナーゼBRI1のリガンド結合モチーフにアミノ酸置換の変異が入るために、小胞体のタンパク質品質管理機構によりタンパク質が小胞体に留まって細胞膜へ到達しない。ミシガン大学のLi らのグループは、以前にbri1-9 変異体の表現型を回復させる突然変異体(EMS-mutagenized bri1 suppressor 1ebs1 )を単離し、EBS1 は哺乳類のUDP-グルコース:糖タンパク質グルコース転移酵素(HGGT)のホモログをコードしていることを明らかにした。HGGTは小胞体において糖タンパク質の糖鎖にグルコースを付加することでタンパク質品質管理機構に関与していることが知られている。今回は新たにebs2 変異体を単離し、解析を行なった。ebs2 による変異はebs1 によるものと非常によく似ていることから、EBS2もEBS1と同様にBri1-9の品質管理に関与している変異体ではないかと考えられた。染色体ウォーキングにより、ebs2 変異はカルレテュキュリン3(CRT3 、At1g08450)遺伝子の変異によりアミノ酸置換の起こったものであることが判った。CRTは小胞体に局在する分子シャペロンで、糖タンパク質の正しい折れたたみに関与している。シロイヌナズナにはCRTが3種類(CRT1~3)あるが、CRT1/CRT2とCRT3ではC末端側のアミノ酸配列やATTED-IIデータベースによる遺伝子共発現解析結果が異なることから、それぞれの生理機能は異なっていると考えられる。CRT3の変異によりbri1-9 表現型が回復するということは、この変異によりbri1-9タンパク質が小胞体外へ輸送されることを示しており、CRT3はbri1-9を小胞体内に留める主要な因子であると考えられる。また、CRT1とCRT3でC末端のドメインスワッピングを行ない、CRT3のC末端がbri1-9の小胞体保持に関与していることが確かめられた。以上の結果は、植物に存在するカルレティキュリンも小胞体タンパク質品質管理機構に関与しており、シロイヌナズナの3つのカルレティキュリンは機能的に異なっていることを示している。

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