う~ん・・・・・・こんな程度の戦力と、展開力で、ホントに大丈夫なのかなあ・・・・・・。
これで、両チームとも、世界のトップ・レベルのチームが競い合う国際大会に、本気で乗り込もうと、いうのだろうか?
とても、優勝どころか、勝てるとは思えない。
いきなりの、厳しい書き出しとなったが、それが正直な感想だ。
先日。2月24日から始まった、旅立つ前の直前国内合宿。
日本女子サッカー代表チーム、いわゆる、「なでしこジャパン」。
彼女たちにとっては、3月5日開幕する、「2014 アルガルベ カップ」に出場するための、最終国内強化合宿。
昨年、丁度同じころ、私が連続して数本ルポ記事を書いたときは、澤穂希(さわ・ほまれ)や、宮間あやなど、いわば主力は、不参加。
その理由や背景は、元・監督の上田栄治のインタビューへの答えとして分かりやすく書いた。
結果、なでしこジャパンは惨敗。
そんな「なでしこ」の名が一気に広まったのは、2011年の女子ワールド・カップ優勝。続く翌2012年。ロンドン五輪で、宿敵アメリカと決勝で対決。接戦の末、惜しくも1-2で敗れたものの、この年のアルガルべカップでは優勝していた。
にわか「なでしこ」ファンが、急増。
それまでは、閑古鳥が鳴いていた試合会場は、一気に観客が詰めかけ、連日1万人を超えた。
男子のJリーグに、追いつき追い越せという波が押し寄せた。
ところが、なでしこジャパンが、昨年から戦力低下し始めたとたん、女子サッカーの最高峰のリーグ戦「なでしこリーグ」全体の観客動員がガタ落ち。
テレビ中継も、BSのみ。それも、INAC神戸中心。
再び、元の淋しい鳥が空を舞うようになった。
女子サッカー全体の危機と言っても、差支えない。
その足を引っ張ったと言うか、人気急落の後押しをしたのは、それまでヨイショし、持ち上げ、神輿を担いでいた、他ならぬマスコミ。
澤や、川澄奈穂美らが所属するINAC(あいなっく)神戸チームの「独り勝ち」と、さかんに報じた。
それも、メインは男子のJリーグ中心の報道。なでしこは、あくまで添え物。
結果の戦績と数字だけサッと見るなら、確かに優勝を重ねたのは、INAC神戸。
しかし、試合をつぶさに見続けていくと、独り勝ちには、ほど遠い。苦戦、また苦戦。
とりわけ、岡山湯郷(ゆのさと)や、アルビレックス新潟とは、厳しい戦いを強いられてきている。
ここ一番の土壇場、ワンチャンスに強いINAC神戸なので、逃げ切れたという試合が多かった。
見ていて、INAC神戸ファンなら、やきもき、ヒヤヒヤしたはず。
しかし、とにかく、また勝った、独り勝ちか・・・・
そんな見方と共に、観客数は見る間に減って行った。
実は彼女たち。「プロ」サッカー選手のはずなのに、チームから支給されるおカネは、わずかな金額。
現実は、企業の社員や、アルバイトをして、糊口をしのいでいるのが”厳実”だ。
サッカーの練習と試合だけをして、潤沢な生活が出来ているのは、澤など数人しかいない。
だからこそ、この国際大会で好成績を挙げ、再び、なでしこ人気復活としなければ、チームも選手も、今期、マジに死活問題なのだ。
その皮切りになるのが、「アルガルべ カップ」に臨む「なでしこジャパン」と共に、スペインの「ラ・マンガ国際大会」に、日本の女子チームとして初挑戦するのが、「U-23(23歳以下)女子日本代表」だ。
その合同の練習が、初日の2月24日と、25日の両日に渡って行われた。
初日は、わずか前半と後半、10分づつの、試合形式の練習だったという。
という、と書いたのは、そういう報道だけで、私は見に行っていないから。
それに、わずか20分では、顔見世興行みたいなもの。なかなか、実力を判断しにくい。詳しい記事は全く見当たらない。
翌日。2月25日の午後。都合をつけて足を運んだ。
写真左は、青いジャージを着込んだ「なでしこジャパン」の練習光景。
陽射しは、やわらかい。
一方、「Uー23」の(写真左側)のメンバーは、チーム練習をいったん終え、先輩格のなでしこの練習を遠目にチラチラ見ながら、試合形式の合同練習に備える。
下は高校3年生から、上はなでしこリーグのチーム同僚まで。顔見知りが多い仲間のせいもあり、和気あいあいとしているが、とても「闘う集団」という雰囲気は無い。
「ラ・マンガ」って、まるでその語感から、漫画の印象を受けるが、そこは、スペインを代表する南部の保養地。
そこで、将来世界最強を目指す6か国が集う。
なでしこ予備軍と称される「U-23」は、チーム総合力として、現時点で、どんなチカラを持っているのだろうか?
スポーツマスコミは、長らく選手個人を一本釣りして、ヨイショするやり方を、延々続けている。チーム・スポーツにもかかわらず、だ。
だから、「チームの実力」が、いつまでたっても、透けて見えてこない。
ヨイショされて、古くは前園真聖(まさきよ)や、ラモス瑠偉、今は本田圭祐のように、天狗となり、過信しまくる。
マスコミどころか、ファンにまで、シカトし、時に言いたい放題しまくってオシマイ。
幸か不幸か、なでしこにソレがいない。ファンを大切にしている。
その点は、女子ラグビーと違い、見ていてホッとした。
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取材陣、カメラ入れて20人あまり。
観客数、30人前後。この回は、何故か男ばかり。
写真で見てお分かりのように、なでしこはブルーのジャージ。片や、Uー23は、イエロー。
中央左側に立つ男性が、今回初めて、Uー23の監督として、陣頭指揮をとる、中村順。
今までは、なでしこの監督である佐々木則夫の番頭格として、チームを支えてきたので、招集された選手とは顔なじみもいる。
中村は、こう円陣の中で叫んだ。
「(プレイを)出来ないですって、最初からあきらめているんじゃない! やってもみないで、出来ないって言うんじゃない!やろうとする気持ちが、大事なんだ!」
具体的作戦は、すでにグラウンドに来る前に、宿舎で教えていたのか? 直前には、何も指示せず。
代わりに、すぐその言葉を引き取ったコーチが、「アタック」と言う言葉を出して、何か言う。
しかし、距離があり、聞き取れない。
観客席の前4段は、すべて記者・マスコミ席として確保されているのに、1人も座っていない。
アレレ・・・・・一体、何のために設置してるのやら。
なでしこの方は、左の写真のように、ホワイト・ボードに佐々木則夫が、フォーメーションと、動きを書き込み、再確認を求めるかの様に、選手に伝える。
すぐ右に立つ澤穂希が、さらに確認を求めて聞く。
あららあ、せっかくの数少ないアピールの場でもあるのに、一体、どっちが、ヤル気があるのやら?
練習試合が、始まった!
U-23のメンバーの声が、出る。そして、ゴール・キーパーが、大声で叫ぶ!
「ワイド! ワイド!!」
ワイド? グラウンドを広く使って、攻撃陣形を作れということか?
しかし、ボールが足元にあれば、一気に走り抜けるのは、なでしこが一枚上。
さらに、競り合いも、なでしこが、はるかに上。
始まって4分。なでしこが、ゴール・ポストを狙うが失敗。
おまけに、あせりか? コケル。
見ているコチラも、思わずコケル。
「コーナー!」 佐々木監督が、叫ぶ。
コーナー・ポストから、なでしこと、U-23が、いかにして攻撃をして得点を得るか?
どうやら、それがこの試合の最大課題と、時が進むにつれ、浮かび上がってくる。
浮かんだボールを上手くトラップ。そこまでは、良い。が,シュート、またも失敗!
「コーナー!」
またも、佐々木の声。今度は、Uー23の、コーナー・キックだ。
ボールが宙を飛び、競り合いの後、U-23が、ゴール・ポストに蹴り込むはずが、ボールは大きくはずれ、はるか枠の上に・・・・。続く、ヘッディングでも、失敗・・・・・。
「ワイド! ワイド!」と、Uー23のゴール・キーパー。10名の、控えが見守る。
澤穂希に、目を注ぐ。走らない、走れない。
試合前には、なでしこの中でただ1人、下にジャージを履き、練習に参加。
試合が始まると、ジャージの下には、黒いスパッツを着込み、参加(写真。上の右側)
足と、ヒザが、まだ完調じゃないようだ。冷やしてはマズイ。常に温めておく。
駆け足、そう言えば、分かりやすい。しかし、位置取りは、いつも良い。ベテランの勘は、いまだ鋭い。
Uー23、またゴール、失敗。
佐々木が、叫ぶ。
「動いているときは、ハッキリ伝えていかないと」
Uー23.ヘッディング・シュート。はなっから、枠の外。また、失敗。積極性は買うが、いかんせん、精度が極めて悪い。
12分。今度は、きっちり、なでしこのゴール・キッカーに、キャッチされる。
また、佐々木が叫ぶ。
「宮間~っ! そこ、フリー・キック!」
しかし、宮間、やってみるが失敗。
どっちも、どっち、か・・・・。
Uー23は、フル回転。だが、なでしこは、手合せ感覚。
練習も兼ねてはいるが、いわば、ある意味、Uー23の壮行試合。
15分。Uー23の控え7人。いつ入れ替えても良いように、準備運動を始める。
「この間! 入った後! 入った後~っ!」
佐々木の、いらだった声。佐々木が考えていたような動きが、双方、していないようだ。
Uー23、競り合いに負けている。安易に、ボールを奪われる。川澄奈穂美の上手さ、ずるさ、鋭い嗅覚が際立つ。
18分。Uー23、ゴール・キック!
また、ゴール・ポストのはるか上。オーバー! これで、2度目だ。精度が、悪い。
21分。Uー23、ゴールポスト目指して攻め入って・・・・また、オーバー!
これで、3度目だ。2度あることは、3度あるを、地でいっている。
「コーナー!」
また、佐々木が叫ぶ。
とことん、コーナー・キックからの展開を重視している佐々木。
28分、前半終了。
中村順の檄が飛ぶ!
「ボール奪ったら、すぐプレッシャーかけること!」
セットプレーについても、指示。
逆に、なでしこ。今度は、指示短い。佐々木の指示、アッという間。
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後半、開始。
2分。なでしこ、ゴール前に押し寄せ、シュート! ボールは、左隅へと、突き刺さった。
また、コーナーからの、セットプレー。
「ハイ、そこ、フリー・キック!」
佐々木の指示、相次ぐ。
が、ヘッディング・シュート、はずれる。
「ハイ、フリー・キック!」
また、佐々木の声。佐々木、そこからのなでしこの動きを、確かめたい。見ておきたい、ということか。
まだ、合宿2日目だ。
なでしこ、競り合いで後輩を倒す。上手いっ!
今度は、中村が指示。
「(相手に)選択させない、選択させないっ!」
なでしこ、ゴロ・キック、ゴロゴロ。当たり前のように、ゴール・キーパーにキャツチされる。
「コーナー!!」
佐々木、声を大にして、叫ぶ!
「押し上げ! 押し上げ!」
その声に反応するかのように、後半8分になって、ようやくなでしこのメンバーから、声が出始める。
たかが声。されど、声。
その声によって、チームは活気づき、躍動したりする。
また、競り合いになって、なでしこ、Uー23を倒す。キャリアの差か? 経験の差か?
今度は、Uー23のメンバーから、声が出る。
「押し上げ、押し上げ~」
だが、選手間の連係が、まだキチンと、正確にとれていない。
Uー23のセットプレイ、失敗。続けて、コーナーからの、キック、合わない、タイミング合わない・・・・・・
なでしこの、ヘッディング・シュートもはずれる・・・・・
見ていた高校生が、言う。「澤は? 宮間は?」 目で、捜しながら言う。
その疑問に、まるで反応したかの様に、澤がボールに絡む。競り合って、走り、ボールを捕える。
35歳でも、はるかに実力差がある。若さ、だけで、サッカーは勝てない。
しかし、なでしこも、ゴールへの精度。相変わらず、悪い。
「コーナー!」 佐々木の声。
後半20分、終了。基本、20分ハーフだったようだ。
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Uー23の監督、中村順の声が、途切れ途切れに聞こえる。
「・・・・継続して、やり続けていかないと・・・」
「わざと、サイドワークに、させておいて・・」
「やって欲しいのは、縦切りじゃなくって、横切り」
「君たちのチカラ、相手を見届けてから・・・」
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2本目の前半、始まる。
澤は交代し、休ませる。
おそらく、アルガルべ大会でも、フル出場はさせず、前後半、どちらかに出場させるか、チームのカンフル剤として、好機に投入というカタチになるのではないか?
スタートから、U-23、声が出なくなる。
せっかくのゴール前でのチャンスなのに、ボール処理にもたつく。
中村監督が、叫ぶ。
「横切って! 横切って!」
その作戦が、上手くいかない。逆に、なでしこの主砲、川澄奈穂美が、まあ、良く働く。常に、ボールに絡んでいる。
6分。佐々木の「コーナー」の声。
Uー23のコーナーキック。しかし、なでしこ、ヘッディングではじき出す。
8分。また「コーナー」
「集中して!」と、Uー23の中から、声が飛ぶ。
「あと何分?」と、佐々木が、タイマー・スタッフに聞く。
「11分です」
「あと5分くらいにしといて」と、佐々木。
疲れと、集中力が欠けつつあることを、見て取った佐々木。すでに、夕暮れが迫ってもいた。
U-23。残り5人。ゴール・キーパーも含め、交代。
代わったばかりのゴール・キーパーも、叫ぶ。
「ワイド、ワイド!」
13分。主将の宮間。ゴール・キック、成功!
大喜びで、両手挙げて、ガッツポーズ! この明るさが、低迷しているなでしこを、引っ張っているといえる。
「集中して!」と、佐々木。あらっ・・・・・
14分。なでしこ、ゴール・キック。しかし、ゴール・キーパーにキャッチされてしまう。
ここで、コーナー・キックからの展開練習をメインにした、壮行試合終了させる。
双方、両チーム共に、水分補給。
一息ついた後、なでしこの中で、宮間や川澄が、ゴール・ポスト目がけてキックの練習を始めた。
右75度。中央。さまざまな角度から、相次いで蹴り込む!
川澄は、まるで「仕事人」。たんたんと、蹴り込む。
ところが、宮間は、違った。
ゴールが成功すると、両腕を天に突き上げて、ガッツポーズ!
で、失敗すると、突っ伏してしまう(上の写真)
喜怒哀楽、ハッキリ! 明確!
このリズム、見てて分かりやすい。
U-23のチームは、これにて国内練習終えて、スペインの、ラ・マンガへと、旅立つと言う。
う~ん、大丈夫かあ・・・・・
佐々木、中村ら、コーチ陣が談笑。
今の戦力で、やるしかない。
マスコミには、U-23に対して、期待匂わす発言をした両監督だが、練習時の発言と、指示を見聞きしていくと、ソレとは違う「リアル言動」。
あとは、読んで戴いた方の判断次第だ。
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3月4日。現時点で、Uー23の大会における戦績、1勝1敗。
初戦の、対 アメリカ。
スコアこそ、0-1だが、いいところなし。無得点が、気になった。
2戦目の、ルーマニアに対して、1点先行された。後半、嶋田千秋が、2ゴールを挙げ、逆転して逃げ切った。
チームとして機能しての2点というより、良く知っている選手同士 の、あうんの呼吸による、パス、ゴールに結びついた得点だった。
とりわけ、2点目の弾丸シュートは、嶋田の個人技が冴えたもの。
3戦目は、日本時間、5日の深夜。
イングランド相手に、チームとして、いかにまとまれるか? いかにして、戦略が狙った通りに花開くか?
何より、声が出ていない。
期待は、したいが・・・・・