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[あの人は今]前園真聖は、この世に別れを告げていた。残された「ZONOサッカースクール」は・・・

2014-02-19 20:15:08 | スポーツ

 あの、前園真聖(まさきよ)が、この世に別れを告げていた。

 あっさりと、この世から、姿を消した。

 ・・・・・・と言っても、死去した・・・・・わけでは・・・ないと、思いたい。

 少なくとも、昨年起こした「事件」以来、留置所から出所し、囲み取材でアタマを下げた時は、生きて居た。立って、しゃべられた。

 その直後、マスコミの前からは姿を消した。逃げた、と言い換えてもいい。

 その後しばらくして、自らの名前を冠した「ZONOサッカースクール」の告知で、スクールの生徒、並びに、その親の前で釈明し、お詫びした。との、記事的なシロモノが出た。

 だが、コレ。日時、場所、人数が、スクール事務局に聞いてみたのだが、おぼろげ。キチンと特定出来なかった。

 やらせ、お作り写真の疑念は、今もって消え去らない。

 その後、中国へ、日本サッカー協会から、「自費でならば、どうぞ謝罪に行ってください」と言われたものの、行ったという噂すら伝え聞かない。

 自身のツィツターは、今もって、昨年10月12日の「これから、ネオスポ出演」で、最後。

 ブログは、さらに、ソレをさかのぼること2か月前。

 飼っていると言われるブタの誕生日の記述と、写真公開で、幕を閉じている。

 彼のマネージメントを今もしているのかどうか、「サニーサイドアップ」の女社長・次原悦子のツィツターには、その後、前園に関しての記述は無い。

 前園が暴行したタクシーの運転手との会食・和解が、その次原サイドから報じられたが、写真も含め、その事実を裏付けられるものは、これまた、何一つ無い。

 私は、稀代の詐欺師、佐村河内(さむらごうち)守が、耳が聞こえないと自称するのを、「確認する作業」を何一つせず、アタマから信じてしまった、ライターや、ディレクターたちほど、愚かでは無い。

 この手合いの「外伝」は、ハナから疑う習性が、身に付いてしまっている。

 前園の個人事務所名。付けも付けたり「マエストロ」は、もはや開店閉業状態。

 一体全体、息をしているのか、どうか?

 そのことすら、今もって分からない。

 故郷の鹿児島へ帰って、身をひそめているというハナシも舞い込んだ、。追跡したが、確証はとれなかった。

 自宅マンションの1室で、ブタと一緒に、「頓死」ならぬ、豚死してるかも? と想い、インターフォンを押して見たが、応答は・・・無かった。

 マジに、本当に自死している可能性もある。酒浸りの、果てに・・・・

 それまで、天狗だった前園の性格。

 高い鼻が、ポッキリ折れると、何一つ出来ない。

 これほどまでに、内に閉じこもってしまうとは、想像もしなかった。

 このままでは、死ぬまで、細々と、今までの貯蓄を切り崩して暮らすしかない、前園。年金は、無い。

 オーナーでは無かったものの、千駄ヶ谷にあるビルの1室に構えた「ZONOサッカースクール」の事務局は、昨年末をもって閉鎖されていた。経費削減と、規模、縮小。

 4歳から9歳までの生徒との連絡は、今井和史(かずふみ)コーチなどとの、個人間のメールで、こなしている”厳状”だ。

 スクールとしての、数少ないイベントは、2月11日。千葉県のある大型スーパーマーケットの屋上で、ひっそりと行なわれた。

 その後の予定は、無い。

 当初から、このスクールで、前園が指導をしたことは無い。

 事件を起こす以前に、顔を見せたことは、数えるほど。

 生徒は、年間1万8000円ほど払い、且つ、1回教えてもらうごとに、9000円もかかる。

 調べてみると、なんと、まだスクールそのものは、閉鎖されていなかった。

 儲け以上に、生徒に対する責任を感じているコーチがいるからだ。そこが、前園と人間性が違う。

 例えば、東京体育館の2面あるフットサル・コートでの練習は、毎週火曜日の、15時から19時まで、年齢ごとに区切って行われている。

 通常、コーチ2人が付き添い、この4時間で、延べにして、30~40名ほどの子供が来ていると、東京体育館の担当者は言う。

 今もって、前園の姿は、死んだのか、見かけられない。

 このスクール。東京体育館に対して、今年4月以降も、年間借用契約を、更新する意向だと言う。

 当初から、名前貸しのスクールではあったが、「責任」の2文字は、ゾノのアタマの片隅に、カケラも無い。

 もはや、40オトコ、前園真聖は死んだ!

 この世に、いない。

 厳しいが、そう、言い切っていい。

 


<リアル ボクシング ルポ>6月28日(金)日本スーパー・フェザー級6位 一場仁志 対 佐藤通也

2014-01-31 00:07:48 | スポーツ

 「次の試合が、決まりました!」

 一場仁志(ひとし)の声が、はずんでた。

 その一場。前の試合の2月11日、ランカーの山元浩嗣(ひろつぐ)戦で、1ラウンドに右フック1発でダウンを奪い、その後の打ち合いと、バッティングにより、一場は激しい流血。

 一見すると、かつてのプロレスさながら。血が、だらり、だらり。

 それでも、5ラウンド。レフェリーが、互いの好ファイトぶりを先行させ、3度目のドクターチェツクをさせて、ようやく試合続行が、不可能と判断させた。

 このあたりの、レフェリーの判断は、戦う2人の気持ちを優先させていて、内心、ニヤリ。

 闘う気持ちが、わずかに優っていた一場が、負傷判定で勝ち、一気にランキング入り。山元と、もろに入れ替わるかのように、日本スーパー・フェザー級6位。そして、東洋・太平洋の同級12位にランク・インされた。

 この試合については、詳しく記事化したので、ご興味のある方は、読んで戴ければと思う。

 一場とは、それ以後、会ってはいなかったが、次こそ実力が試される、試金石の試合になる。そう、思っていた。例えて言えば、初防衛戦の如く。 

 というのも、一場の担当トレーナーであった、私ですら”先生”と呼ばせていただいて、敬愛していた田中栄民(よしたみ)トレーナーが、所属ジムの社長と、ふとしたことで衝突。

 角海老宝石ジムの選手たちを支えた名トレーナーは、即日、去らざるを得なくなってしまった。以来、数か月・・・・・・・。

 いわば、一場は、片肺飛行で、空を飛んでいる飛行機みたいなもの。

 一場は、田中先生の、個性を読み取った上での、適切なアドバイスもあって、山元に勝てた部分もある。

 田中栄民を、精神的支えにしていたボクサーの中には、ジム移籍や、ヤル気を失い、落ち込み、悩み、引退を考えている者もいるほどだ。

 とにもかくにも、一場には試合がある。

 

 書かねば。そう、改めて思った。

 相手は、佐藤通也(みちや)というそうだ。試合日は、6月28日(金)。会場は、後楽園ホール。

 その6日前の、6月22日(土)に、なんと34歳の誕生日を迎えた佐藤通也。

 以前は、日本スーパー・フェザー級のランキングに入っていたこともあり、王者・金子大樹とのタイトルマッチに臨んだ過去もある。

 ランキングに入ったばかりの、一場にとって、決してあなどれない相手。いや、強敵といえよう。

 先に、初めて見る(と、思い込んでいた)佐藤通也の、ジムへと足を運んだ。

 

 

Dscf6077 ロッカーを見ると、名前の上に、坊主頭の顔写真が、張り付けてあった。まるで、中学生の卒業アルバムのなかに収まった、1枚のよう。純朴、そのもののイメージ。

 

 ジムに連絡を取った時、彼が来る時刻を聞いており、丁度ストレッチや、準備体操を始めた頃を見計らって訪ねた。ところが、なんと、「今日は早めに来ている」と、ジムの人に言われ、唖然。

 この石丸ジム。以前も、あるランキング選手が「今日は来てるよ」と言われたので、行って見たら、結局、来ず。まあ、そんな経験をしてるので、またか、と。・・・・・・仕方ないな、と。

 で、5人しか見当たらないボクサーのなか、アレ? 坊主頭ちゃんが、い・な・い!

 ジムの人に、仕方無く、聞く。

 「ああ、彼ですよ」

 指差された、奥のほうを見ると、ひたむきにバーベル上げてたり、腹筋をしてたり、長く縄跳びしてた人が、そうみたい。んでも、髪伸ばしてる。 あれ~っ?

 

 

 Dscf6079 ひたむき、無言のまま、一生懸命。

 

 なもんで、汗、びっしょり。終えて、ロッカーを開き、近づいてきたので、挨拶。

 

  全部、終わってからインタビューを、と、申し向ける。「ああ、はい」とだけ、うなずく、その人。無愛想? 言葉足らずの性格? 

 シャドーも、ミット打ちも、ましてや、スパーリングも見てない。実質的練習、見てないで、書くのかよ~? と、自問自答する。危惧、ピーン!
 

 

 

 もっとも、ココのジム。以前のときも、ミット打ちも、スパーリングもやっていなかった。また今日も、選手がジムに1歩、足を踏み入れても、誰も挨拶の声すら交わさない。ましてや、雑談も談笑も、無い。

 耳に聞こえるのは、流れるBGMだけ。

 名簿上ではなく、本当に通って来ている所属選手数が、極めて少ないため、スパーリングも組みにくく、いわゆる出稽古で、腕を上げていかざるを得ない。

 それでいて、ランキング・ボクサーがいる。逸材が、たまたまいたのか? 指導力があるのか? いまだもって分からない。今日、話しを聞く佐藤にしても、大阪帝拳ジムからの、3年のブランクの後の”移籍組”。今回も、ミット打ちすら、観られてないし・・・・・・・・。

 さて、待っていて、ひょいと裏をみると、男の尻が見えた。シャワーを浴びてる、みたい。

 はあ? さっきの、佐藤通也?・・・・・か。

 シャワー終わったら、インタビューを、とかなんとか、言ってよお~。こりゃ、下手すりゃ、かつて書いた上村和宏の二の舞かも?

  しかし、彼のブログを通読する限りにおいては、性格明るく、関西弁で打ち込まれてるせいもあり、おもろい。しかも、毎日、更新。

 勤めてるところが、築地の市場。

 なので、無口で、暗かったら、一場 対 (築地)市場。そう、一場面を、シャレで、書いてもいいか。

 それに、プロボクサーのブログの共通点ともいえる点を書いて、佐藤通也像を、浮かび上がらせる手もある。

 日々、強いられる減量苦。そのため、君はグルメか? と勘違いしてしまうほど、食い物に渇望するプロボクサーたち。

 そんな気持ちの裏返しで、食べ物の写真をひっきりなしに、載せがち。

 また、いくらトレーナーや、ジム仲間がいて、頑張れ! と励まされても、最後に頼れるのは、自分自身の内に潜むハート。

 試合が近づくと、時には、眠れないことも。そんな、ぐらつき、揺れる心をなごましてくれるのは、子犬。

 猫? 猫は、身勝手で、むしろ心を、疲れさす。恩も、知らない。

 そのため、子犬を自宅で飼っているプロボクサーは、多い。

 わがままで、そのため、男との生活も続かず、独身のまま老いてゆく、仕事が少なくなった老女優が、さびしさと、我が身のなぐさめに、子犬を飼ってる手合いが多いのとは、理由がまったく異なるが。

 さてさて、事務室で、インタビュー開始。

 

 

Dscf6091 いやあ、予断、吹き飛んだ。

 いざ始まってみると、大違い。  

 人は見かけによらぬもの。話しがはずみ、話しを次につなげるのが上手い。長く、接客業と、気の荒い人達と、仕事を重ねてきた経験からか。

 

 ひさびさに、楽しいインタビューとなった。

 

 産まれは、静岡県浜松市。今までの戦績、17戦して、9勝4敗4引き分け。9勝のうち、6つのKOと、レフェリーストップ勝ち。

 自分のパターンに持ち込むと、強いタイプ、か。

 3年ものブランクがありながら、再び勝ち上がって、ランキング入りし、昨年9月1日、日本スーパー・フェザー級タイトルマッチでチャンピオンの金子大樹に挑戦した。

 残念ながら、2ラウンド、KO負けを喫し、ベルトこそ奪えなかったものの、秘めた底力は、想像以上に、すごいものが、あるのではなかろうか?

 「自分では、右ストレート。右が良いと思います」と、キッパリ。

 「中一の時、あしたのジョーを見て、感動して。ボクシングしたくなって、地元のジムに入ったんですよ」

 やがて、彼女が出来たものの悲しいことに、振られちゃう。

 悲しみを吹っ切るかのように、大阪へ。

 大阪帝拳ジムで、さらに腕を磨いた。西部のフェザー級の新人王戦。決勝まで進んだものの、試合結果は、引き分け。

 で、残念なことに、再採点で、敗者扱いとなった。

 この先、続けていく気を無くし、引退届けを出す。

 居酒屋で働くうちに、心機一転、今度は浜松通り越して、一気に東京へ。人とのつながりが、佐藤の、まさに通り道を、変えてきた。それを、当人、大切にしているようだ。

 話しが面白く、人を惹きこむ魅力をもつ。

 で、今度は、日本の食材の市場。築地の魚屋で働くことに。

 仕事は、朝が早い。早いというより、まだ暗いうちに起き出し、バイクを疾駆させて、築地へ。

 午後、仕事を終え、いったん自宅へ戻って、ひと眠りしてから、ジムへ通う。練習終えて、数時間だけ寝たら、また未明に、築地へと走る。休みは、日曜と、祝日。そして、たまの水曜日。

 変則生活、きつくないですか? と、問うと苦笑い。

 「慣れましたから」

 3年間の、ブランクを経て、リングへ復帰。

 「ボクシングがなかったら、自分の人生、つまらないなあと、思いますね。何してるか、分かりませんね」

 写真でもわかる通り、身振り手振りで、話す。自宅には、犬がいる。それも、2匹も。

 「犬たちに、エサをきちんと上げなきゃいけないから、自宅に帰っているようなもんでね。もし、いなかったら、毎日、きちんと帰っているかどうか、自信無いっすよ((笑)」

 飾らない。どこか、正直。目下、自称、独身。

 犬たちを、散歩にも連れてく。

 

 「あっ、ペット可のところ、不動産屋で選びましたから。そこんとこは、大丈夫です」

 トレーナーを「小倉先生」と言って、慕い、尊敬しているようだ。技術うんぬんというより、精神的支柱とみた。

 人生、人とのつながりを大事にして、生きてきた印象を、さらに受けた。

 ボクサー人生で、かつて右拳を試合中に骨折。

 「パキッって音、聞こえましたもん」と、言って笑う。

 それも、2度。今はもう、完治して、痛みも、問題も無い。

 ブログの、食い物写真。こちらの、視点には、うなずき、笑った。

 「食べたい、食べたい。腹いっぱい、喰いたい。どっかにある、確かに! イメージありますね」

 過日の誕生日も、祝うどころか、厳しい空腹で迎えた。犬2匹が、エサをおいしそうに、腹一杯食べているのを横目に・・・・・・・。

 「一場選手ねえ、分かんないですね、どんなスタイルなのか。フィジカル強いな、体も強いなって、イメージはあります。そこの、フィジカルでは、負けない様にしないと」

 同じ34歳の福原力也が、誕生日の前夜、6月21日にひさびさの鮮やかなKOで勝った。福原もまた、2度も、右腕を骨折。佐藤と同じく、手術の後、再起した。

 「勝ったんですよねえ。励みになりますよ」

 本心から嬉しそうに、声をはずませた。自分も、続くぞ!とばかりに。

 かつてランキングに入り、タイトルマッチに臨む頃、毎夜、眠れない夜が、続いたこともあった。そう、ポツリと、もらした。

 ボクサーとしての定年まで、あと丸3年。チャンピオンになれば、さらに延びる。

 「気持ちの上ではですが、これで負けたら引退。そういう気持ちで、行きますよ!」

 胸わくわくするような展開、互いの気持ちと、気迫のぶつかり合い。

 そんな試合になりそうだ。

 さて、一方の一場仁志には、翌日、会いに行った。

 

 

 Dscf6139 この日は、スパーリング。それを調べあげて、出かけた。相手は、杉崎由夜(ゆうや。写真上の左側)。ガンガン、プレッシャーかけて、前へ出てくる。

 

 それに対して、一場(写真上。右側)も応戦。引かない。見ごたえのある、スパーリングとなった。

 開始前、思わず昨日の風景を思い出して、一場に言った。

 良いよねえ、選手にとっては。やろうと思えば、毎日でもスパーリング出来るんだもの。体が持つかどうかは、別にして。

 聴いて、ニコッとした一場。

 「そうですよねえ。それが、大きいココの様なジムの良い所ですよね。助かってます」

 で、言葉を継いだ。

 「相手して下さる杉崎さんも、同じ日に、後楽園ホールで試合があるんですよ」

 そう、さりげなく教えてくれる。その試合も、気にしていて、見て下さい。そういう、何気ない気配りに、聞こえた。

 杉崎の試合も、今まで何度か、見たことがある。その闘いぶり以上に、「由夜」という名前に記憶がいつも残る。印象深い名前だなと、思う。

 26歳で、すでに26試合も経験し、16勝している。一場と同じ階級ながら、9位。2歳年下の一場が、まだ自分の半分に満たない12戦(7勝・3KO、4敗1引き分け)しか経験してないのに、ランクが上。

 否が応でも、闘志は掻き立てられる、はず。

 

 

 

 蛇足ながら、のぞくと、うわあ!

 54歳の、おばちゃんが、「第20回 松本清張賞」を見事、4月23日に受賞。

 受賞作「月下上海」(げっか しゃんはい)が、単行本となって、数日前に発売されたのだという。

 おばちゃんの名前は、山口惠以子(えいこ)。テレビで見かけたが、54歳にしては、どことなく色っぽい雰囲気をかもしだしている、独り身。

 早稲田大学文学部卒業後、会社が倒産。シナリオ研究所に通ったりしたのち、シナリオや、テレビの2時間ドラマの原案・プロットを書いたりしていた。

 食堂に勤めたのは、12年前。そして、10年ほど前から、勤務の終えたあと、好きな酒をぐびりぐびりやりながら、小説を何本か書き始め、今回の受賞の栄冠を得た。

 賞金500万円。でも、浮かれることなく、作家・テレビ業界のことを知り尽くしているだけに、地に足着けて、社員食堂で昼食を作りながら、小説を書き続けていくとか。

 

 さて、本題に戻る。スパーリングが始まったのは、午後6時12分。ボクシング好きの通行人たちが、ガラス張りの外から、じっと目をこらして見つめている。

 一場。杉崎のジャブを、しっかりグローブの上から、ガード。足を使って、左に回りながら、打つ。

 回って、打つ方が、自分のタイミングとリズムがとれてるようだ。しかし、フェイントを何度か試みるが、杉崎。まったく、ピクリとも動じない。

 さすがに、キャリアと、経験の差は大きい。

 2ラウンド。一場、左からを軸にした、上下への素早い打ち分け。そこは、以前よりグンと成長。が、そこからの左フックの大振り空振りは、いただけない。

 すっかり、杉崎に見透かされ、見切られ、スカッ、また熱気をスカッと切り裂くだけ。

 左ボディ打ちは、タイミングも良く、効きそうだ。一瞬前に、フックを見せといてからが、巧み。

 

 

Dscf6148 左を差しながら、一気に行くときは、パンチが、まだまだラフ。しかし、すぐさまガードをしっかり戻す(写真左上。左側)。

 

 3ラウンドも、しっかり足を使って、リングを大きく使ってかわしながら、コーナーを回れてる。

 

 気になるのは、大振りになってしまいがちの左フックぐらいか。

 杉崎の、巧みなクリンチワークと、時に荒っぽく突いて、その瞬間放つ、鋭いパンチには、怖いものを感じた。

 しかし、全体を通して、成長の跡が、はっきり見てとれた。杉崎に打ち負けてもいなかったし

 何よりパンチに以前より、キレが出てきた。

Dscf6153 自信と、東洋・太平洋(OPBF)までもランキング入りした気持ちの持ちようというのはおそろしい。選手を成長させる。気のせいか、風格すら感じさせた。

 おごりもない。変な勘違いもしていない。

 「生活環境も、なにも変わってませんよ」と、笑う。

 残る問題は、減量苦。

 前回、「問題ないです」と、私に言っていたが、試合後、ジムのホーム・ページでのインタビューでは、こころ許した顔見知りの人が、聞いたせいか、とても苦しんだことを、正直に打ち明けていた。

 今回、一場、本人の言によれば、試合まで3週間前で、6キロオーバー。

 「まあ、大丈夫です」と、大きく苦笑い。

 「いやあ、杉崎さんの前へ出てくるプレッシャーが、すごくて」と、まず開口一番、相手をほめたたえる。

 この先、共に同じ日が試合とあって、スパーリングを重ねる予定だという。他に、スーパー・バンタム級8位の、青木幸治とも、スパーリングをしてゆき、トータル100ラウンドはするとのこと。

 

 「それでも、以前より少ない方です」

 ランカーが、ひしめきあっているだけに、出稽古しなくてもいい。もろ、ライバル心、メラメラ。私みたいなのが、入れ替わり立ち代わり。この日も、他3名が、来ていた。外からも、観られてる、書かれるは、少なくても、悪くはないようだ。

 相手の佐藤通也について、聞いた。

 「実は、金子大樹さんとのタイトルマッチ、ボク、会場に見に行ってるんですよ。同じ階級なので、気になって」

 印象は?

 「キャリアあるし、パンチにスピードあるし。計算して組み立ててるし、上手いなあと、思いました」

 「これから、もっとジャブとか、基本通りに立ち返って、スピードも上げていかないとと、思っています」

 「佐藤さん、左ジャブにスピード有るんで。ファイターだし。足も速いし」

 課題を見つけ、着実にこなしていってる。

 これは、試合としても、面白くなりそうだ。

 しばらくして、一応、「先生」が去った後のトレーナーにも、一言聞いておこうと、しばらくして、地下へ降りてみた。

 まだ、一場は汗まみれになって、コーチの振るミットの左右フックの動きに合わせて、クッと腰を落とし、勢い付けて、ボディ打ちを繰り返していた。

 よく、どこのジムでも見かけるパターンの練習だった。

 コーチに、タイミングを見計らって、佐藤対策や、相手の特徴を聞いた。

 ・・・・・・驚いた。深く調べてない。通り一辺の、答え。まだ、選手の一場の方が、佐藤を、よく見ていた。そう、感じた。

 そして、何より、他人に対する、クチのきき方が、選手時代と、殆んど変わっていなかった・・・・・・・・・。

 深い、ため息が思わず出た。

 雑誌時代も含め、今、初めて書くことだが、実は、数年前、こんなことがあった。

 やはり、この日のように、このジムに、あるボクサーの取材に行き、写真も要所要所で撮り、スパーリングを見つめていた。

 その時だ。いきなり、近くに立っていた選手が、こう私に言ってきた。

 「俺、取材してよ!」

 そちらを見ると、初めて見かける顔。

 「俺を、書いてよ!」

 はあ? 少なくとも、初対面の人に、いきなり言う言葉ではない。そう、思った。何度か、お逢いして言葉を交わして、親しくなっていたにせよ、通常の神経では、そういう言い方は、しないものだ。常識として。

 彼は、私を見かけていたのかも知れないが、挨拶すらされた事ない。したこと、無い。

 どれだけ親しくなった選手でも、私は、一定の距離を置く。心情的に心寄せる部分が、例えあってもだ。

 腐っても、書き手だから。

 一応、聞いてみたら、ある大手のジムから移籍してきたとか。どこか、書いてもらって当然! という、自信満々の風情。

 あいまいにせず、その場で断った。少なくても、自分の感性には、響くものは、カケラも無かった。

 持ち回りで、取り上げる形の業界誌ならともかく、全国に約2600人いる、プロボクサーのなかで、書きたい、取材させて戴きたい選手は、自分で決めている。

 彼は、そののち、数戦こなして、トレーナーに転身。田中先生の助手のような形で付いていたようだ。

 先生が、上記のいきさつで突然去り、彼がいきなりメインになった。だから、気負いがあるのは、分からないでもない。

 だからこそ、他人に対する対応は、選手時代の延長線のままでは、いけないのではないだろうか?・・・・・

 相手選手の、佐藤通也に対する、捉え方にもまた、驚かされた。

 「もう、終わり(のボクサー)ですから」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・言葉も、無かった。

 これが、イケイケの、現役バリバリの選手なら、許される。キャラクターとして。

 実際、そんな言い切り言葉を、原稿にしたこともある。

 しかし、トレーナーの多くは、本音や内心はともかく、担当する選手の相手ボクサーに、どこかしら、敬いの気持ちを持ちつつ、こちらにも力量を分析して話してくれ、試合のセコンドに立ち、選手を叱咤激励している。

 だから、こういう性格のトレーナーがいることが、哀しい。

 次いで、聞いてきた。

 「失礼だけどさ、喰えてるの?」

 あきれつつ、その場でテキトーにウソをかました。会社は、有る。

 どうやら、書かれなかった恨みが、残っていたのか。最近は、他人の稼ぎが、気になるらしい。

 「俺、コレで喰えてるから!」

 去り際に、言い捨てて行った。

 我が国で、ボクシング・トレーナー専業で、喰えてる人は、ほんの一握り。

 99%のプロボクサー同様、他に仕事を持って、ジムに来て教えているのが現実だ。

 彼の、キャリア、実績からして、そこに入っているとは、到底思えないのだが・・・・。

 ______________________________  

 心に砂が混じり込んできたかのような、気持ちのまま、改めて佐藤通也の戦績を追った。なにしろ、観ていないのだから・・・・・・と、想い込んでいた。

 ところが、あれ~っ!? 2月20日。後楽園ホールに、行ってるよお!

 佐藤通也 対 小林和優(かずまさ)。この時、佐藤は、日本スーパー・フェザー級10位だった。

 

 

 Dscf3204 取材を控え室でしていて、見たのは2ラウンドから。

 佐藤通也(写真上。左側)は、この日、当日のパンフレットや、ロッカーの写真と同じ、坊主頭。

 

 3ラウンドには、小林が佐藤のパンチを喰らって、鼻血を出す。

 

 4ラウンド。佐藤は、ボディ打ち。フェイントも、上手い。ワンツーのジャブは、キレ有り。だが、空振りも目立つ。

 

 対する小林。佐藤の距離の取りかたが、上手く、パンチが届かない。勢い込むと、空振りばかり。

 

 5ラウンド。ポイントを取られてると思ったのか、小林は一気にパンチ振り回し、委細構わず、突っ込んでゆく。

 

 小林のフック、ヒット!

 

 今度は、佐藤の方が、鼻血出す。ひるまず、ワンツーのストレート、見事にヒット!

 しかし、倒せるまでには、いかず。

 

 6ラウンドに入ると、小林が、連打、また連打。前へ出る。

 

 ポイントを取る流れが、交互にクロス。優劣、付けがたい。

 

 7ラウンド。佐藤、回りながらジャブ放つが、届かない。

 

 ストレート! 見事に、ドンピシャのタイミングで、相打ち! 

 

 佐藤、追ってゆきストレート、ヒット! 体、付けて、パンチ、出し続ける。このラウンドは、佐藤が、少しリード。

 最終、8ラウンドに。佐藤、ジャブ出す。対する、小林。必死に、右フックを放ち、タイミング良く、左右のフックを佐藤の顔面に叩き込む!

 

 互いに、ポイントを少しでも取って、逃げ切りたかったのか?

 

 空振りの連発。スタミナも、切れかかり、パンチのスピードも、明らかに落ち始める。

 

 パンチは流れ、体をくっつけ合って、互いに手は出すものの・・・・・・・

 

 思いを、断ち切るように、ゴングが、鳴る。

 

 アナウンスが、流れる。佐藤は左側頭部をカットし、小林の方は左目の上をカット。共に、偶然のバッティングによるもの、とのこと。

 

 判定は・・・んん・・・・・・ 

 

 一人目、77-75で小林。だが、2人目は、逆に78-75で佐藤!

 

 そして、最後の3人目。76-76!

 

 ドロー(引き分け)

 

 Dscf3211
 う~ん、佐藤(写真上。右側)も、小林(同。左側)も、苦笑いの、何とも言えぬ表情。悔いは、あるような、やり尽くしたような・・・・・・。

 

 

 

 6月28日。一場仁志 対 佐藤通也。

 当日。午後5時50分、第一試合開始。上記の試合は、第5試合だ。

 試合は、フルラウンド闘う、判定ばかりとは、限らない。

 午後6時半に入れば、大丈夫だろう。

 はたして、どんな試合結果になるか?

 

 少なくとも、佐藤、終わりのボクサーでは、無い。

 そんな、やわで、甘く(さとう)はない!

 

 そのことだけは、言っておく!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


<リアル ボクシング ルポ>佐藤通也、34歳。一場仁志に当てさせず、届かせず。巧みに試合運んで・・

2014-01-31 00:06:37 | スポーツ

Dscf6681 34歳。犬2匹と、同居。愛車、バイク。

 元ランキング・ボクサー、佐藤通也(みちや)

 8回、フルラウンド、戦って、見事な完勝だった。

 スコアを、ここにしるしておこう。

 78-75が、2人。79-74が、1人。

 「勝者~! 佐藤通也~!」

 その、コールの直前! 佐藤は、コーナーのロープに、その身を乗せて、大きく右腕を突き出し、応援してくれた人達の歓声に、応えた(写真左上)

 詳しくは、数日後に、アップするが、1ラウンドから、一場仁志に、見事に左ジャブを終始、浴びせ続けた。

 そして、遠からず、近からず。絶妙の距離を保って、一場に当てさせず、パンチを届かせず。見切って、かわした。

 佐藤通也(写真下・中央)の、見事な、完勝といっていい。

 

 

 Dscf6684
  そこに、導いた原動力は、白い帽子を後ろにかぶった、一場のトレーナー(写真・左側)のたった一言だった。

 

 それが、佐藤の心に、ボッ! と、火をつけ、燃え上がらせた。

 

 私は、「ライター」。

 

 たかが、1文。されど、1文。

 ボクサーの、心を「100円ライター」のように、燃え上がらせたい。奮い立たせたい。そう、秘かに願っている。

 

 ありのままを、リアルに書いて。

 

 はからずも、そうなった。

 

 ランキングは、山元浩嗣(ひろつぐ)から、一場仁志へ。そして、6・28、佐藤通也へと、移った。

 

 スポーツ新聞も、報じることはない、詳しい試合展開は、後日、キチンと打ちますので、お待ちください。

 

 とり急ぎ、速報として・・・・・

 

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<リアル ボクシング ルポ>「番外篇」 築地「市場」勤務で「一場」に勝った、佐藤通也とは・・

2014-01-31 00:04:51 | スポーツ

 試合結果の「速報」写真、2枚では見えなかった、その名も、佐藤通也、いわく、「チーム築地トランクス

 やはり、お金を出して、作ってあげた方々、並びに、佐藤が勤務する魚店の方々に、確かにリング上で穿いて、闘いましたという、何よりの証明として、ここに一挙大公開させてもらいます。

 私が、カネ出して、テレビに映らないわ、スポーツ新聞にも載らないわ、さらに専門業界誌にも載らないわ、じゃ、・・・・・ですもんね。

 加えて、彼に金一封でしょうか、激励賞を勝っても負けても、差し上げた「有限会社 一政水産」には、愛称? ミッチーに、なり代わりまして、御礼申し上げます。

  今後とも、奇妙な縁で知った、34歳の現役ばりばりボクサー、佐藤通也を、ごひいきにしてやって下さい。

 では、今後無いであろう「番外篇」です!

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 観て戴き、ありがとうございました


<リアル ボクシング ルポ>2013・6・28 一場仁志 対 佐藤通也 観戦記。

2014-01-31 00:02:52 | スポーツ

 佐藤通也(みちや)の、見事な、完勝だった。スコアの差以上に。

 下の写真が、この一戦を、象徴しているかもしれない。

 Dscf6652 一場仁志が、渾身の想いを込めて、ビッ! と繰り出した左ストレート(上の写真・左側)

 一見すると、相手、佐藤の右胸にヒットしているかのように見えて、良く見ると、わずか5センチほど手前で、届いていない。

 むろん、偶然ではない。

 届かせないのだ。

 言い古された表現を使わせて戴くなら、もう「絶妙の、自分の距離」。

 その直後! 瞬時に、切り返すかのように、佐藤の左ジャブが、一瞬の0・5秒!がら空きになった一場の顔面に、叩き込まれる。

 ビシッ! また、ビシッ! 痛っ!

 辛らつな表現で言うなら、面白いように・・・・。

 2ラウンドには、互いのジャブが、クロスするように、ヒット!

 しかし、佐藤。リズム良く、左フックから、左ボディへの流れで、早くも1ラウンドから、一場へ打ち込む。

 と、同時に、一場の、ストレートだけでは無い、繰り出す、あらゆるパンチの、ほとんどを、佐藤は、見切って、かわし続けた。

 ほとんど、と書いた。

 中盤、途中、一場が佐藤をコーナーに押し込み、ロープを背負わせるようにして放った右フック!

 これが、もろに、佐藤の顔面や、アゴに命中!

 佐藤が、一瞬、グラリとしたように見えたほどの威力が、あった。

 6ラウンドには、一場お得意の、ダブルフック! 7ラウンド、続く最終8ラウンドにも、起死回生の左右フックが、キレイに炸裂!

 しかし佐藤、足も使って、次のパンチを上体を揺らして、かわし、連打を許さなかった。「甘く」無い男だ。

 「あれは、正直、効きましたね。一瞬、どうして対抗しようか? と、あせりましたよ」

 試合後、佐藤は、心なしか、苦笑いを浮かべ、反省。

 

 それにしても、まさか、こんな展開になるとは、予想だに、していなかった。いや、別に、一場有利などとも、思ってはいなかった。

 ただ、こんなに、佐藤が「上手い試合運び」をするとは・・・・・。

 1戦ごとに、スタイルを微妙に変えている佐藤では、あるが、いやはや・・・・・。

 観戦しながら、私が一場なら、内心、いらだつよなあ。そう、思った。

 試合後、一場は、吹き出す汗をタオルでぬぐいながら、こう言った。

 「佐藤さんが、まさか、アウト・ボクシングをしてくるとは、予想もしていなかった。もっと、ガンガン、前に出て、打ち合ってくると、思っていたんですよ。驚いたし、正直、とまどいましたね」

 そう言い終わって、苦笑いを浮かべた。

 単なる、強打だけなら、一場の方が、少なくとも2割は、まさっていた・・・かもしれない。杉崎由夜(ゆうや)との、スパーリングで、その成長と、溢れる自信をたっぷりと、見させてもらっていたし。

 勢い込んで放った、左フック!(下の写真。右側)

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 それすら、佐藤は見切って、ひょいと、体を低く屈んで、かわした(写真左。左側)。その高低差、また、5センチほど。

 

 

Dscf6661 渾身のチカラを込め、まさに1発逆転!を狙った、大きく、うなりをあげる一場の左フックすらも、これまた、ひょいと、体をそり返しただけで、見切り、かわす(写真上)。これ、10センチ。

 まるで、あせりはじめた、若い一場のココロを見透かし、あざ笑うかのように。一場としては、珍しく、3ラウンドから、佐藤のパンチを封じようと、クリンチ。

 

 ボクシングは、いまさら言うまでもなく、当たってナンボ。当ててナンボの世界。空振りの蓄積は、スタミナも奪うが、それ以上に、あせりと、ココロの疲れを倍倍、増す。

 

 試合後半。ムチャ振りしてくる一場を、スッ!と、クリンチ。動きを、止める程度に、文字通り、押さえる。

 Dscf6641_2 一場が、意図したものでは無かったが、見た目、ホールドのカタチになると、佐藤は、両腕を上げて、自分のクリーンさを、レフェリーには、むろんのこと、ジャッジ3人と、加えて、佐藤の応援団に、これ見よがしにアピール(写真・左上)。

 

 思わず、ニヤリ。上手いなあ、この34歳と6日目。だてに、キャリア積んでない。

 内心、クスッと笑った。

 Dscf6665 佐藤が、心を込めて「小倉先生」と呼ぶトレーナーの、ラウンドごとのアドバイスを、しっかり目を見て聴く。

 4ラウンド開始前からは、大きくうなずきながら、聴いていた(写真、上)。

 その4ラウンドを終えるや、佐藤。20人余りの「チーム築地」からの声援に応え、ガッツポーズまで飛び出し、笑顔。

 おいおい、自信はおそろしい。6ラウンドからは、足もかろやかに、リングを回り、距離を取って、パンチを放つ。

 応戦する一場。まだ、パンチが、5センチ、届かない。

 

 片や、一場のコーナー。「イチ!」「イチ!」の、声援飛び交うなか、トレーナーの指示は、身振り腕振りで分かる、鋭く早い、左右のショート・フック。

 

方向転換は、この場に及んでも、一場へ無い。ああ・・・・と、思う。キャリアの無さか?

 

 先日、彼、小林生人(いくと)の師匠格であった、田中栄民(よしたみ)トレーナーに話しを聞いたとき、「まだ、未熟だからねえ~」と、一言。

 

 その”田中先生”は、とあるジムのチーフ・トレーナーに就任。

 プロボクサーはもちろんのこと、練習生も教えるかたわら、トレーナーの指導までも、乞われて担当。

 

 「もう、大変だよ。疲れるよ」と、溢れんばかりの笑顔で、こぼす。そのうち、後楽園ホールのセコンドに立つ姿も、見られることだろう。

 

 さて、試合に戻る。

 

 結果は、判定に持ち込まれた。

 そのアナウンスを待つ間の、2人の姿は対照的だった。

 

 負けを覚悟したかのように、ロープに両手を掛け、疲れ果てて、ガックリと首を、早くも垂れる、一場。

 

 佐藤の方は、勝利を確信したかのように、築地「市場」から駆け付けた、「チーム築地」の応援団席に向けて、右拳をグイッと突きだして、笑顔を見せた。

 

 湧き上がる、歓声!

 採点が、読み上げられた。

 78-75が、2人。そして、79-74。

 3対0。私も予測した通り、佐藤の完勝だった。

 Dscf6684 左腕をレフェリーに、抱え上げられ、勝者として、コールされる。

 4か月前の小林和優との、ドロー(引き分け)判定で見せた、苦笑いと違い、ひさびさの、心からの笑顔が見られた(写真・上)。

 そして、その直後だ!

 白い帽子をいつものように、逆にかぶった小林生人(いくと)トレーナーの首に、自分の腕をグイッと、締めるようにからませると、コーナーに引き連れるようにして、歩かせながら、何か言ってる。

 やったな!

 思わず、ニヤリ。

 予想通り、リング上で、こう言ったそうだ。

 「なんか、俺のことを言ってくれたんだって?」

 「えっ! 何も、言ってませんけど・・・。会っても、いないし」

 「もう、終わり(の、ボクサー)ですから、ってなあ。記者に言ったんだって? 燃えたぜ! それ聞いて。絶対、勝ってやる! そう、思ったよ!」

 そう言って、腕を解いた。

 試合後の、控え室。

 バンテージを汗まみれのまま、切り解かれながら、笑顔を見せた佐藤。本当に、34歳、まだまだ「甘く」無いところを、8ラウンド、フルに見せてくれた。

 「いやあ、あの言葉が、この試合を勝たしてくれたような、もんですよ。小倉先生と、コレ言われて、燃えなかったら、男じゃないですよねえ、って言って」

 言いつつ、笑顔。

 これで、一場が持っていた日本と、東洋・太平洋(OPBF)のランキングを、おそらく今月末には、手にすることだろう。

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 その一場が、笑顔で握手を求めに来た(写真左)。

 佐藤の、上手さ、巧みさを、その目が、称賛していた。ただし、強さじゃないですよ、ともチラリと、表情のぞかせて。あとを、無言で付いてきた、くだんのトレーナー。

 「これが、スポーツマンの、いいところですよねえ」

 佐藤が、しみじみと、言う。

 そう想わせるほど、いつも一場は、生真面目、おごったところが、無い。自分の名前が染め抜かれたのぼりがはためく入場時に、漂わせていた自信と、風格も消え去ってはいない。

 ちなみに、佐藤によれば、後日、偶然、後楽園ホールで一場と会った際に、一場が自分の携帯電話で、小林トレーナーを呼び出して、話しをさせ、2人は、「和解」したとのこと。

 そ~ゆ~気遣いが、さりげなく出来る一場。

 この男、顔だけじゃなくて、心もいい。

 さて、ボクサーには、また新たな闘いが、待っている。一場は、確実に再びランキングを取りにくるはずだし、佐藤も、再び、このクラスのチャンピオン、金子大樹(だいき)への挑戦ロードを、歩んでいくはず。

 ただ、課題も、ちらついた。

 そう思っていた、まさにその時だ。 ん? どこかで、見たボクサーが、目の前に立っていた。

 「あの~、ひょつとして、小林さんじゃありませんか?」

 「そうですが?」

 けげんな顔。そりゃそう、話すのも初めて。

 小林和優(かずまさ)。今年2月20日。今戦い終えた、佐藤通也と、ドロー(引き分け)の試合結果となった、プロボクサーだ。

 その試合のことは、すでに書いてあるので、ご興味のある方は、検索してみて下さい。

 この日は、自分のいる「RK蒲田ファミリー」のジム所属の選手が出場していたので、応援がてら、この試合も見ていた、とのこと。

 あの日の、ことを少し振り返ってもらった。とたんに、苦笑い。

 その、何とも言えぬ、ドローの瞬間の、苦笑いの写真。載せて書きましたよ。

「ああ、見ました。友達が、載ってるぞと、教えてくれて」

 「う~ん、やはり、ジャッジなら、三者三様に、見方、別れる試合内容でしたねえ・・・」

 「自分が勝ったかなあ? でも、そう見ない人も、いるだろうなあって」

 正直な、性格が言葉の端々に、のぞく。

 「まあ、仕方ないですね」

 で、今日の試合。当方の危惧する部分を、ぶつけた。例えば、佐藤の片腕ダラリと下げての、半ばノーガード戦法。

 一場も、佐藤と接近戦に引きずり込もうとしてか、2ラウンドに、完全ノーガードに出た。

 「佐藤さんのアレね、本当に失礼だけど、相手が一場さんクラスだったから、終始通用したんであって。また金子大樹さんとやった時には、ヘタすると、1発で、倒される可能性高いですね。おそらく、金子さん、そ~ゆ~ところ、絶対に見逃さない人だから」

 昨年の9月1日。佐藤は、金子の初防衛戦の相手として、後楽園ホールのリングに上がった。

 だが、金子の右が炸裂! 佐藤は、無惨にも3度、ノックダウン! 2ラウンド、KO負けを喫している。

 金子は、現在、18勝のうち、11KO&TKOの、強打ぶり。

 小林は、会場で見ていた。

 その小林は、ライト級に戻し、8月12日、この後楽園ホールで、名古屋から上京してくる、ライト級2位の、川瀬昭二を迎え打つという。

 一方、金子大樹は、それより早い8月3日、次の防衛戦を行なう。相手は、大村光矢

 大村のトレーナーが、かのアイドル・ボクサーとして、一世を風靡した、福田健吾のときから知っているが、近年の荒っぽい、出来も乱高下してるかのような闘いぶりからして、激闘になったとしても、金子の優位は堅い。

 その金子の名前を、7月9日、ひょんなところで耳にした。場所は、ワタナベジム。

 この日、試合から2か月を経て、日本最強の安定世界王者が、マスコミへ向けて練習を公開した。

 クラスは、佐藤通也や、一場仁志と同じ、スーパー・フェザー級。でも、WBA世界の冠を持つ内山高志

 年齢は、佐藤と、たった1つ違いの、まだ33歳。一応・・・独身・・・・・・。

 その内山の、次の防衛戦の期日。

 この秋の、まあ9月末か、10月。でもって、試合中継をし続けているテレビ東京の希望だと、また大晦日。

 で、相手はこれまたテレビ東京の強い希望では、最強外人。

 「でも」、と渡辺均会長は、言う。

 「次は、まあ、言っては悪いというか、誤解を招く表現をされると困るんですが・・・・。内山にとって、ラクな相手とやらしたいんですよねえ。例えば、日本人でもいいなあ、と」

 水を向けた。例えば?

 「金子大樹とかね」

 おおっ! 日本人、最強対決か。

 「ただし、興行の面もありますからねえ。周りが、このカードなら見たい! と、盛り上がってくれないことには・・・・。な~んだ、金子かよ? とか、言われちゃったりするとねえ・・・・・。それに、金子は、8月に、防衛戦をやるんでしょ? 日にちが、次なら合わないしねえ・・・・」

 まだ、金子のジムに、打診もしていない、と言う。

 意図的に、金子の炎を、燃え上がらせる”口撃”作戦だとしても、今回の佐藤 対小林の例があるので、興味深い。

 その、内山。前回の防衛戦で右の拳を痛めてた。

 でも、スパーリングは、ガンガンやってる。

 「一応、大事はとってますが、もう痛みはありません。まあ、左(拳)中心にね」

 スパーリングの相手として、のそっと、静かに登場したのは、なんと総合格闘技の現役選手。

 お名前は? と聞くと、宮川博孝(みやかわ・ひろたか)という人。身長165センチ。元バンタム級の、チャンピオンだった人と紹介された。

 「でも、立ち技、ボクシングだけです。こっちだと、ライト級にあたります」

 「宮川と書いて、みやかわ、と濁りません。博は、博士の博。孝は、親孝行の孝です」

 ふふふ、いい人だなあ、説明の引用が。さりげなく、年代も、偲ばれる。

 すいません、不勉強で。年齢も、教えて下さい。

 「内山さんと同じ、33です。いや、すいません、間違えました。この6月17日で、34になりました。すいまっせん・・・・」

 て、ことは、佐藤通也と、5日違い。おまけに、彼のブログを見たら、三島市出身ときた。7月2日のブログの写真には、のけぞった!

 15でつきあい始め、22歳で結婚。現在、8歳の長女がいると、ブログで判明。さてさて、スパーリング。

 この7月6日にも、内山と、スパーリングし、こう書いてる。

 「たくさん殴られて、ちょっと殴る」

 もう、この日も、その通り。左、1本。もはや、凶器。ババババ、ババ~ン!!

 ところが、「ちょっと」が、目を見張らせるほど、いい。おっそろしく、いい。いずれ、もっと書きます。

 Dscf6834 この方が、宮川博孝(写真・左側)。総合格闘技では、セコンドにも付き、知られた存在のようです。

 で、肝心の内山。金子大樹について、聞いた。

 相手として、どうですか? パンチ力も、あるし。

 「いや、パンチ力どうこうというより、組み立てが、ていねいですよね」

 はっ?・・・・それだけ・・・・・・。

 金子大樹、燃えるか!? 一蹴に、クソ~ッ! か。

 上には上がいる? いやいや、おんなじプロボクサー。

 34歳。「ちょつと、殴れる」

 佐藤通也。通る道は甘くはないが、倒し甲斐あり! 一場仁志もだ。

 ライター、まだまだ心に、火つけまっせえ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 


<リアル ボクシング ルポ>11月29日。まだ34歳なのに自称「おっさん」。佐藤通也は、岩井大と戦う

2014-01-30 23:58:02 | スポーツ

「もう、おっさんですよ~」

 そう、どこか自虐的に言って、明るく笑う。

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 佐藤通也(みちや・上の写真中央)。もう、というより、まだ34歳と5か月。

 生真面目な性格そのままに、ブログをこまめに更新しながら、「疲れた、疲れたあ」と、しばしば打ち込んでいる。

 そのくせバリバリ、仕事と練習を、両立させている。

 仕事場は、夜明け前から活気づく築地の市場内にある魚屋。日本全国から集まる水産物を一手に担っている所。豊洲のような、土壌汚染は無い、働く人にとって健康にもいいところ。

  今度の相手は、若いんだもん。んでもって、俺は、おっさんだよ~ん。

 そうやって、次の対戦相手を、油断させるつもりか? 

 ところが、その相手、岩井大(だい)、24歳は、あらら、まったく気をゆるめて無かった。

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  「佐藤さん。キャリアはあるし、パンチ力も、テクニックもあるし、かなり手ごわい対戦相手だと、思っています」

 練習途中、汗を滲ませて、そう言った(写真上)。

 試合近くなると、伸びた髪を刈って、クリクリ坊主にする。飲み屋にいたら、「こら! どこの高校生だ? ダメだよ、入っちゃ!」と言われ、補導されても仕方ない、幼顔(おさながお)となる。

 その若者が、キッパリと言う。

 「勝ちたいですね! もちろん、勝つつもりで、試合に臨みますけどねっ」

 「自信? もちろん、ありますっ!」

 ニコッと、笑顔を浮かべた。

 彼も毎日、仕事と練習を、マジメに繰り返している。

 それが、「プロ」ボクサーの、まぎれもない日々。

 岩井の仕事先は、なんと、カップ麺の会社。  

Dscf9277 これが、岩井の勤める会社の新商品。「BASSOの、ドリルマン 濃厚中華そば」。ファミリーマートに置いてあるそうです。味には、「自信ありますよ。うまいんです!」とのこと。1度、食べてみてやって下さい。

 この11月24日まで、連日、駒場公園で開かれている「東京ラーメンショー」にも、岩井の勤めている会社が、出店しているそうです。

 それにしても偶然か。2人とも、食品を扱う仕事に従事。んでも、一切食材偽装、無し!「誤表示」一切なし。クリーンそのもの。

 そして、互いに、相手をリングで、喰ってやる! そう、秘かに誓っている。

 岩井のブログに、いつも最後に出てくる「乙で~す」という、フレーズ。そう、甲乙丙の、「乙」。

 一体、どんな意味があるんだろう?

 いつも、読んで、気になっていた。なので、彼が練習ひと段落したとき、真っ先に、忘れないうちにと、聞いた。

 岩井、そこから聞くわけ? という、けげんな表情で、笑った。

 「ああ、それはですねえ。お疲れさまで~す。そういう意味で、「乙かれさま」に、引っ掛けて。何かいい、目につくのが、ないかなあと思ってたもので」

 ああ、なるほどと、初めて納得。

 以前のジムに居た時から、顔を知っていたし、試合も見ていた。温和で、とても人の良い性格も知っていた。

 なのに、そのジムで、練習が打ち込めない、とある状況が続き、知人等に相談し、今の三迫ジムに、思い切って同僚ボクサーたちと共に移籍。どこやらが、スキャンダルめいて書いていたが、引き抜きの事実は、一切無い。

 その後、岩井は心機一転。丸1年以上試合が出来なかったブランクがあったのに、昨年2月。敵地であるフィリピンへ乗り込み、WBCユース シルバー・フェザー級のタイトルを奪取! 

 日本で防衛戦を、というわけには、なかなかいかないベルトだが、岩井にとって、大きな自信が甦った試合となった。

 今年に入ってからも、連勝を続けている。

 この6月10日には、山元浩嗣相手に、3-0の判定勝ち。

 この試合は、事前に紹介記事化。リングを降りた岩井にすぐ感想を、聞いた。答えは、意外や「いやあ、ダメですねえ。全然、満足できる内容には、ほど遠いです。練習してたことの半分も、出せなくって・・・」

 そう言い終え、複雑な笑みを浮かべて、応援団の声援に申し訳程度に小さく応えていたのが、印象的だった。

 正直というか、彼が目指してる内容は、相当高い頂きにあることを感じた。

 続く8月30日。今度は、増田靖之に、大差判定勝ち。スコアも、78-74が2人。80-73と、フルマークが1人。内容、展開ともに、文句無しの勝利であった、はずなのだが。まだまだ満面の笑顔には、ほど遠く・・・・。

 しかし、観客の評価は高かった。というのも、岩井の試合はセミ・ファイナルだったのだが、メインがあきれるほどひどかったせいもあった。

 日本人ボクサーに、タイ人ボクサーをあてがった。そう、1ラウンド、たったの48秒。タイ人、なにも手を出さず、コテン!とダウンのKO負け。戦う意思すら、無し。

 そのタイ人。あまりにも、ひど・・・過ぎる「無気力試合」と、速攻でJBCに判断され、「永久招へい禁止処分」。

 「勝ってしまった」ボクサーは、性格が良く、罪は無いが、試合に関わった人間の神経が疑われるマッチ・メイク。「良い試合を見たい」という、ボクシング・ファンの気持ちを逆なでするものだった。

 さてさて、岩井のすごいところは、相手によって巧みに、戦法を自在に変えていけること。

 変わらないのは、常に先に左のジャブを出し続けるスタイルか。

 これで、相手を倒すのではなく、相手との距離の感覚を掴み、タイミングを計り、右フックを振りだすタイミングを取る。

 強打者というより、テクニシャンと言ったほうがいいだろう。

 その彼の、今を知りたく、ジムへと足を運んだ。「スパーリングを、します」というので、絶好の機会と判断。

 それも、相手はなんと、強打で鳴る、東洋・太平洋バンタム級チャンピオンの椎野大輝(しいの ひろき)。KO率、8割の、文字通り、ハード・パンチャー。 彼に対して、どんな力量を見せるか? これは、しっかり、目をこらして見なきゃ!

 行くと、岩井は、椎野の繰り出すであろうパンチの出入りをイメージしながら、もくもくとシャドーを、繰り返していた(写真左。中央)。

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 かたや、椎野は余裕の表情で、準備万端。静かに、リングを見つめていた(写真下)。

 岩井によれば、同じ三迫ジムということもあり、「今までも何回か、手合せして戴いてます」との仲。

 その椎野も、この12月6日。初防衛戦を控えており、自らも調整以上の意味合いを持つ、スパーリングとなるはず。なにしろ、挑戦者は、昇り調子の岩佐亮祐。激しい好勝負となるはず。

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 午後7時38分。ゴングが、鳴らされた。トレーナーに付いた
洪東植(ほん どんしく。モスクワオリンピック韓国代表選手。アマチュア戦績151戦134勝!)は、顔なじみ。「いくつ、やるんですか?」と聞いたら、「4つ(4ラウンド)」とのこと。

 この日は、お互いに軽めに当てつつ、要所要所で、ここぞ!という瞬間に、フルパンチを放つ展開。

 Dscf9176 やはり、岩井(写真左の左)。パターンとも言うべき、左ジャブから入る。椎野(同。右)のガードは、常に怠らず、堅い。ラフさは、見られない。このあたりも、椎野の強みか。

 Dscf9177 椎野の、強烈! な、右フック!

 ラウンド開始当初は、岩井はそれを見切っていたが、後半、あえて佐藤対策か、接近戦を挑んでいくと、もろに左右フックを、2~3度、ガツン! と喰らった。

 スパーリング終えたのち、苦笑いしながら、岩井が椎野に告げていた。

 「相変わらず、あのダイナマイト・パンチは、強烈ですねえ」

 言われて、椎野。ニヤッ

 Dscf9180 サッと、素早く踏み込んで右フックを放つも、上体の軟らかい椎野のガードに、はばまれる。岩井以上に、距離をうまく取る椎野。足を自在に使われると、岩井が翻弄されがちになる。

 Dscf9182 しかし、椎野のパンチを瞬時に、半身でかわす上手さも、合わせ持つ岩井。テクニシャンは、ダテじゃない。

 Dscf9184 うまく追い込み、ロープ際に詰めると、岩井の本領発揮。細かなパンチを重ね、キッチリとポイントを重ねる。上手い! 自社の、カップラーメン並みに。しかし・・・・・

 Dscf9190 インターバルで、洪が岩井にアドバイス。

 「打ち終わりを、椎野に狙われてるよ。注意して!」

 Dscf9195 距離を取られると、椎野の得意の左右フックを避けつつ、思い切って低く入り、ボディを狙い打つ。逆に、その後、ボデイががら空きになるクセを突かれ、椎野に何発か打ち込まれた。

 それにしても、岩井の体は、前のジム在籍時より、一回り大きくなっているように見えた。

 にも関わらず、すでに試合の遙か前から、体をしぼっており、出来上がっているようだ。

 「そうですか?」

 そう言って、いたずらっぽく笑った。

 「実は、内山(高志 WBA世界スーパー・フェザー級チャンピオン)さんの言葉を聴いて、考えを変えたんです。試合が決まっていなくても、いつでも試合が出来る体に、僕はしていますって、そう言ってたでしょ?」

 んん、確かに。私も、何度も聴いてる。ソレを、内山は実行している。節制、節制。女も、遊びまでも、極力。現役を終えるまでは、そうし続けると、言っていた。

 「で、僕もそうしてるんです。今も、スーパー・フェザーのリミットより、ちょつとだけオーバーくらい。いつでも、すぐ落とせる範囲にしています」

 今までの戦績。17戦して、13勝3敗1引き分け。13勝のうち、5勝が、KOや、レフェリー・ストップ。

 が、岩井。数字以上に強い。そして、上手い。

 この後も、他のジムへ行って、スパーリングをガンガンやっていくという。

 「別に、たいしたこと、無いですよ。この前なんか、試合終わって、2~3日後には、もうスパーリング、ココでしてましたから(笑)」

 目指すは、もちろんと言うべきか、世界チャンピオン。そのためにも、佐藤のパンチを、一蹴しなければならない。

 仕上がりは、良いようだ。

 直近の自身のブログでも、こう言っている。

 < 調子は、過不足なく、きています。調子は、良すぎてもダメ。悪すぎてもダメなのが、僕なので。どんな状態でも、試合前は、「普通」を、自負しております >

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 さあ、自称、おっさんは、どう立ち向かうのか?

 なんと、こちらも、強打者と、スパーリングを重ねていた

 

 Dscf8980 トレーナーを(写真左の左側)「小倉先生」と慕い、全幅の信頼を置く、佐藤通也(同、右)。

 こちらも、今は髪を伸ばしているが、「前日計量の前の日に、切りに行きます」とのこと。

 おそらく、11月29日の試合。リング上では、2人とも坊主頭となっているはず。

 それで、少しでも計りに乗る時の体重を、1グラムでも減らして・・・というのは、邪推。いざ、戦いに臨む気持ちの切り替え的な意味合いがあるのかも知れない。

 この日も、佐藤はスパーリング。やはり、こちらも、それでチカラを積み上げていっていた。

 相手は、斉藤司(つかさ)。かつては、ジムの練習の時とか、試合の前後の控え室では、ごくフツーなのに、リングに上がるや、対戦相手に額をグリグリ押し付けて、ガンを飛ばした。

 相手が打ってこないとみるや、もろに挑発! 倒すと、見下しポーズ! KO勝ちすると、さらにエキサイト!

 さすがに、JBCも放っておかれず、しばらく試合に出るのは控えて下さいと、謹慎処分を、課したほど。

 根は良い若者なんだけどなあ・・・。そのテのボクサー、実は何人か、知っている。みんな、不遇をかこって”自然引退”してしまった。

 実は斉藤。先の岩井が抜けたジムの所属。残った看板ボクサーとして、孤軍奮闘。

 昨年、WBC世界ユース・ライト級王者に輝く。しかし、今年3月16日、防衛出来ず、ベルト失った。

 再起をはかった7月29日。見事、4ラウンド、TKO勝ち。そして、このスパーリングの後の、11月8日も、見事、2ラウンド、KO勝ちをおさめた。

 付いたトレーナー、中村隆、69歳の力量が光る。このスパーリングでも、理詰め、理知的。

 極力、今までの、振り回す、チカラに頼ったパンチでは無く、上下のコンビネーション、強く打ち込むパンチと、誘い込む捨てパンチ。瞬間、相手のパンチを、半身でかわす。自由自在な、フットワーク。

 もう、まいったなあ、と思うくらい、それらを組み合わせた、一切無駄の無い指導。そして、すっかり、礼儀正しく変貌していた、斉藤。

 日本ライト級でのランキングも、おそらく指導をキチンと聞いて生かせれば、確実に上がっていくはずだ。

 さて、そんな”強敵”相手に、現在日本スーパー・フェザー級9位の佐藤通也が、スパーリングとはいえ、どう戦うか?

  ラウンドごとに、戦い方を、少しづつ変えた佐藤。岩井の研究と傾向と対策を頭の隅に置いて、拳を合わせた。

 ラウンドは、こちらも「4つ」

 Dscf8984 パンチを避けつつ、次の1打につなげようとする佐藤(写真上。右側)。

 かと思うと、あえて避けずに、踏み込んで打ってみる。強打をかいくぐって、右ボディへ連打。

 足を使って、回ってもみる。

 ときおり、斉藤のジャブを喰らって、顔が赤く染まる。

  左を多用ジャブ、ジャブジャブ!ボディ、すぐ、ジャブ

  斉藤の上下を喰う。

  じっと見守る、佐藤のトレーナーの小倉。

 かたや、中村トレーナーは、ビシバシ、指示と注意を飛ばす。すぐさま、修正する斉藤。う~ん。師弟のコンビネーションが良い。

 Dscf8989打ち終わりを狙った、佐藤の左ストレートが、ビシッ!(写真上。右側)と、決まる。

 佐藤。試行錯誤しつつ、斉藤を、仮想・岩井に見立てて、さまざまなチャレンジ。パンチの流れや、コンビネーションを試しているようだ。

 パンチは、ガチ! なもんで、佐藤の顔は、少し充血。もろに打たれ、ヘッドギアがずれて、スッ!と手早く直すことも、しばしば。

 一場仁志に完勝して、再びランキング入りしてから、丁度5か月ぶりの試合となる。

 これまでの戦績、18戦して、10勝4敗4引き分け。10勝のうち、6つのKOとレフェリーストップ勝ちを収めている。

 はまると、強い。

 今どき珍しい「中学校卒業」のみ。しかし、ことボクシングに関しては、ものすごく考えており、頭が良い。

 心が、時折り揺れるけれど・・・・・。正直な性格ゆえに。

 故郷は、静岡県の浜松市。この11月29日の試合も、旧友や悪友たちが、わざわざ大挙して応援に来てくれる。

 幸いにも、金曜日。仕事終えて、新幹線などで、すっ飛ばして後楽園ホールへ駆けつけるという。

 岩井への「傾向」と「対策」は、大丈夫か?

 そんな問いにも、正直過ぎる答えが、返ってきた。

 「若いけど、ボクシングが上手いってイメージがあって、何でも出来るボクサーって、思います。正直、苦手なタイプだけども、克服していかないと、さらに上には行けませんからね」

 「試合に向けては、前回同様で崖っぷちなことは変わらないので、今出来る最高のコンディションを作って、最高の試合して、最高の結果にしたいです」

 さあ、期待していい試合になると思う。

 10歳の差は、無い。そう、取材して思う。

 プロとしての試合数も、たった1試合しか違わない。

 崖っぷちというには、まだ早い。

 あしたのジョーの主題歌の、最後の詞。「明日は、どっちだ」をパクッたドキュメント番組で、脚光を浴びた米澤こそ、全てにおいて崖っぷちだったが、今の佐藤と、岩井は、5分5分。

 白熱した戦いの末に、レフェリーに右腕を持ち上げられる者は、どちらだろうか?

 あなたのその目で、是非見届けて欲しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






   

 

 

 

 

 


< リアル ボクシング ルポ 番外編 > 11月29日 佐藤通也 対 岩井大 いよいよ、好試合、明日

2014-01-30 23:56:39 | スポーツ

 いよいよ、明日に迫った、「佐藤通也(みちや) 対 岩井大(だい)」の試合。

 なんと、互いに順調と思われていた、体重調整だったが、予想もしないハプニングに、見舞われた。

 今日、28日の前日計量。

 佐藤の方は、リミット一杯どころか、200グラムアンダー。つまり、200グラムも下回って、1発で計量をクリア。

 もう、ここまで来りあ(クリア)、たいしたもんだい! って、カンジ。

 で、相手の岩井の方が、取材した段階では、いつでも体重を3~4キロ、すぐ絞れて、リングに上がれるように見えたのだが・・・・

 なんと、パンツを脱いで、すっぽんぽんになって、やっとリミット一杯でクリア出来た。

 いやあ、意外な苦しい滑り出し。

 むろん、オーバーではないので、すんなり試合には臨めるのだが、精神的に、佐藤”おっさん”通也のほうが、一歩、余裕をもって進める。

 とはいえ、試合はやってみなければ分からないのが、ボクシング。

 明日29日。佐藤は、写真下のトランクスでリングに上がる。

 

 Dscf9683 いかにも、築地の若旦那風の、粋の良さが、漂う。

 

 さてさて、支援者や、スポンサーのためにも、これでリングに、尻もちぺったん、ぺったんと、ついちゃあ、お店の名前が汚れっちまうってもん。

 

 かたや、岩井が、祝いの声に包まれるか!?

 

 さあ、観に行って下さい!

 

 良い試合に成ること、必至です!

 

 


<リアル ボクシング ルポ> 2013年11月29日。後楽園ホールで行われた、佐藤通也 対 岩井大は・・

2014-01-30 23:55:32 | スポーツ

 11月29日(金)。

 この日の後楽園ホールは、早くから観客の出足は良かった。

 表題にしるした、佐藤通也(みちや) 対 岩井大(だい)戦以上に、観客の関心は、メインの試合に注がれていた。

 日本人として初の、「五階級制覇王者」湯葉忠志に、今年の2月以来、再び挑む十二村喜久(とにむら・よしひさ)。

 どちらが、どう勝つか!?

 どっちに転んでも、その結果は、ボクシング・ファンにとっては、目をリング上から一瞬たりとも離すことが出来ない試合になりそうだった。

 しかし、私にとっては、その試合にも増して、佐藤と岩井の闘いに関心があった。

 わくわくしながら、両雄の登場を待った。

 試合前の控え室には、あえて行かなかった。勝った、負けた。どちらにしても、書くことになるボクサー。

 変にプレッシャーを掛けたくなかった。

 以前は、しばしば行った。そのなかで見た光景。試合前の姿勢は、大きく4パターンに分けられる。

 1) 緊張感を顔に溢れさせて、じっと折り畳みパイプ椅子に座り、押し寄せる、さまざまな感情を振り払おうと、目線を床に落とし、集中しようとしている。周囲に、トレーナーすら、寄せ付けない。ピリピリムードが、ピーン!と、張っている。

 2) あえて緊張感をまぎらわせようと、ジムの選手や、長年の親友と、バカ話に興じて、笑い転げる。このタイプは、性格がいつも明るい選手に多い。でも、ココロは、試合の展開を、グルグルと確認中なのだが。だから、話しが、プツプツと、すぐ切れる。こちらも、ひと声掛けるタイミングが、むずかしい。

 3) 控え室を出る直前まで、トレーナーの掲げるミットめがけて打ち込み、軽く汗をかきつつ、最終コンビネーション打法の確認も兼ねる。さらに、通路でも。

 心配なのだ。忘れないようにと、している。遠くから見つつ、表情などから、あらゆる心境を読み取る。

 4) 床にシートを敷き、入念にマッサージをしてもらっている。そうしてもらわなければ、最善の動きが、出来にくい体になってしまっている。目を閉じて、何か、考えを巡らしている。プロデビューして、17~18年の最強選手に多い。

 サンドバッグや、ミットや、ヒトに、強く、さらに強く!打ち込み続けてきた”拳年齢”が、限界に達しつつあることを、否応なく自覚している。

 しかし、いったんリングに上がれば、集中力はものすごく、微妙な体の痛さやキシミは、他人にはカケラも見せない。

 佐藤、そして、岩井。そのどれなのか?は、わからない。

 付かず。しかし、離れず。そんな距離を、今は心掛けている。

 客席には、分散こそしているものの、100人近い岩井の応援団。見て、すぐわかった。名前を染め抜いたTシャツと、ウチワを手にしていたからだ。

 作ったのは、内輪の人間ではなく、「岩井クンの友達」と、応援席のオバサンが言う。

 しかし、それが、大きく振られ、立ち上がって、大声援と共に左右に躍動することは、最後まで無かった。名前こそ「大」なのに。岩井のおとなしい性格が、応援団にも色濃く反映していたのかもしれない。

 片や、自称「34歳の、おっさん」こと佐藤の応援団は、岩井に較べて人数も「総勢で、40人くらいですかねえ」と、後日、佐藤本人が言うように、明らかに少ないのに、まあ、佐藤が 登場するや、ありったけの声張り上げて、大どころか、超!声援

 いいパンチを、相手に食らわそうものなら、もう、試合中も、何度も”勃ち”上がる、立ち上がる。ここに、いるぞ~!通也あ! と、ばかりに。

 さすが、築地の若衆たち。さすが、旧友の元・悪童たち。中には、「オーストラリアに、若い頃、しばらくホーム・ステイしに行っていた当時の友達も、来てくれていた」と、佐藤が言う仲間も加わった。

 でも、そんな秘められた過去を持ちながら、英語がからっきし、しゃべられないのも、佐藤。「OH! NO! イングリッシュね!」

  いやはや、いやはや、とにもかくにも、すんごい気迫!

 こちらも、揃いのTシャツ。彼のブログを見ると、作っていたみたいだが、全く気付かなかった。白いシャツに、小さな文字だったから、遠目には見えず。

 ちなみに、勤めてる店は、築地の仲買「扇留」(せんとめ)。一般のお客も、新鮮な魚類を購入出来るとのこと。

 19時5分

 「エイトマン」の曲に乗って、まず先に岩井が入場してきた。いつものように、気負いも感じられず。たんたんと、リングに上がるや、応援団の拍手と歓声が響く!

 その期待に応えるかのように、岩井は大きく2度、ポーン、ポーンと、ジャンプを繰り返し、やる気を見せた。

 次いで、佐藤が赤コーナーへと、登場。日本スーパー・フェザー級9位の、ランキング・ボクサー。

 チャンピオンの金子大樹が、大晦日に世界同級チャンピオンの内山高志に挑戦するにあたって、ベルトを返上。なので、ただいま空位。

 この試合に勝てば、新王者に最も近い内藤律樹に挑戦の可能性もある位置。ランキングは、落ちたくない想いは、誰よりも強いはずだ。

 うわあ! 佐藤が、リングに歩みを進めるや、「み・ち・や!」「み・ち・や~!!」コールと、手拍子がいっせいに会場に響き渡った。

 リングに上がった、佐藤の目つきが鋭い!

 すでに、客席は、早くも8割5分、埋まっている。

 双方の応援の声が、リング上の天空で、バチバチ、火花あげて交錯。

 19時9分、「カーン!」 ゴングが、鳴った!

Dscf9712

  <1ラウンド>

 出てきた岩井のガードが、しっかりしている。以前と違っている! 瞬時に打ち込めるように、たびたび腕が宙に浮いていたクセを修正。ヒジを折り、キチッと固めて出てきた(写真左下。白いトランクスが、岩井)。

 Dscf9714
 
Dscf9715

 佐藤が、左ジャブ、突く! 岩井も、左ジャブ!

 こ、こ、これが、見て、びっくり!これまた、以前と違う!

 以前は、自分と相手の距離を測るためのジャブであり、自分のリズムを作って、右をブン! と、出すための、あくまでコンビネーション上の、左ジャブ・・・だった。

 いわば、相手に「当てる」ジャブ、だったはず。それが、単打で相手の顔面をビシッ! と、射抜く、強く打ちぬくジャブ!・・・・に、変わっていた。

 写真上の、上。左ジャブを打ち抜き、瞬時にすぐ引き、堅いガードに転じる岩井。佐藤の体勢が、少し崩れる。

 うわあ~、コレ、ひょっとして・・・・・・。練習に付き合ったトレーナーの、洪東植(ほん どんしく)、どんな秘策を岩井に授けた?

 かまわず、左突く、突く、佐藤。すぐ、左ストレート!

 岩井の左ジャブ飛ぶ! サッと、低い姿勢でかわし、ガードする佐藤。

 お互いに、お互いを、研究し、傾向と対策を練ったうえで、リングに上がってきていることが、よく分かる。

 改めて、言うまでもないが、ボクシングは単なる殴りあいではない。それが、このたった1ラウンドを見てるだけでも分かる。むろん、基礎と、パワーと、テクニックと、そしてハートが備わってのことだが。

 早くも、分の良い距離の支配は、岩井の方。

 かまわず、佐藤、勢い良く左ジャブ。すぐ、左から、右打ち!に転じる

 ヒットは、してるし、うまく足も使っているのだが、岩井の痛烈左ジャブ! と、うまい距離の取り方が、う~ん、気になる。1ラウンド、終了。

 赤コーナーに戻った佐藤。小倉トレーナーの指示と、次なる策を、大きくうなづいて聴いている。一方の岩井の表情は、客席の位置からは見えない。

 < 2ラウンド >

 佐藤の、勢いは良い。

 左ジャブ、右フック。だが、共に、当たらず。岩井のバック・ステップに、ひょい!というカンジで、かわされる。

 出たっ! 2人、同時のフック。もろに、相打ちヒット!バチーン!

 めげずに、佐藤、今井の腹に、右ボディブローぶち込む。う~ん、少し、浅い。

 うわっ、岩井。先ほどの左ジャブ。ビシ、ビシッ!打ち抜きまくる。たまらず、佐藤、クリンチに行く。

 2人、きれいに離れ、すぐさま、同時に左ジャブを放つ!

 また、相打ち。打撃戦以上に、もうこりゃ、目を見張る頭脳戦。

 以前、佐藤が、苦笑いしながら言ってた。

 「俺、今どき珍しい中卒の上、頭良くないんすけど、ボクシングでは、頭悪くないんすよね。なぜか」 

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 この後も、2人の左ジャブの差し合い、と言うより、「刺し合い」続く。相手を倒したい! という、気迫が、ビシビシ伝わってくる。

 また、コーナーで、大きく上下にうなづいている、佐藤。小倉トレーナーに、全幅の信頼を、おいているのが、よく分かる。

  < 3ラウンド >

 佐藤、戦法変えてきた。体勢を低く構え、その上、両手ダラリと下げ、さながら、ノーガード。

 「あしたのジョー」の、矢吹丈か、力石徹か。あの劇中のスタイル、想い起こす。佐藤サイド。距離、微妙に届かないのなら、あえて誘い込んでおいて、打たれる覚悟で、さらに強く打ち込むつもり、か。

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  相手の動き、見て、時折り、得意のフェイントかける佐藤。岩井(写真左)の反応をみて、左ジャブを放つタイミング計る佐藤(同・右)。

 岩井の、左ジャブ、ヒット! 逆に、佐藤の左ジャブ、届かない。ならばと、タイミング良く佐藤、今度は絶妙の左ボディ・ブロー! を、岩井のどてっ腹に打ち込むが、また浅い。

 Dscf9725 佐藤。左からつなげて、左右のショートフックの連打。

 さらに、見て狙ってる間に、すかさず岩井の左ジャブが、バチバチ当たる。上手い!

 佐藤も、岩井の打ち終わりを狙い澄まして、合わせて打つ。岩井が出てくるところに合わせて、右フック!

 接戦が続く。だが、岩井の左フックのヒット率と、見栄えが、素晴らしく、1歩、リードか。もう、胸躍る、展開。

 Dscf9727 3ラウンドを終え、岩井が、青コーナーへ戻る。彼は、指示を耳にしつつ、自分で試合を組みたてるタイプ。次の一手、どう狙う?

 この試合で、三迫ジムのトレーナーとして最後となる、升田貴久(元東洋・太平洋ライト・フライ級チャンピオン)も、そばにいる。来年春、故郷の愛媛県へ家族とともに帰り、移り住むという。現役&トレーナー生活、15年間。心から、お疲れ様でした。

 < 4ラウンド >

 おおっ! 佐藤の右ジャブが、ビシッ! ビシッ!と、決まる。フットワークも、「おっさん」何も、衰えていない。

 あらっ? 試合、ストップ。岩井のグローブのヒモがゆるみ、締め直す。

 再開。また、流れが変わり、岩井の左ジャブが、佐藤の顔面を赤く染めだす。流血では、無い。充血。

 佐藤の右フックを、バックステップと、瞬時に体をクッと屈め、巧みにかわす。で、逆に、岩井。左右のストレート、そして、あの左ジャブ、バチーン!

 決まる、決まる! その上、再び、ガードもガッチリ固める。

 佐藤も、負けてない。左右のフックに、ボディ・ブロー。いいぞ、いいぞ! どっちも。

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   佐藤の応援団、もう、立ち上がって大歓声! 

 佐藤、岩井、両者の、気迫以上に、異常に盛り上がる、”築地軍団”

 仕事してる時よりも、活気がある。
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 一進一退。さらに、応援団の声も、高まっていく。

 両者の、みなぎる気迫! クリーン・ファイトに、拍手!

 ラウンド、終了。また、佐藤。トレーナーのアドバイスに、大きくうなづく。

 < 5ラウンド >

 佐藤が、グイッと出て、ステップ踏んで、左のパンチ飛ばしたり、下がって打ったり、さまざまな「手法」を試みる。

 見切った岩井。左ジャブ! 岩井の顔面にヒット!佐藤の空いた顔面に、またまた左ジャブ、ビシビシ、容赦なく打ち込む!

 佐藤が、足を軽快に使って、左右に動き、岩井のパンチをかわそうとするのだが、捕まりがち。

 佐藤の両目の周りが、真っ赤に染まる。それでも、出る、佐藤。

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 右フック ?。左ジャブ ?。右フック ?。また右フック ?。空振り、連続。う~ん・・・

   Dscf9756 ラウンド終了。岩井のセコンド陣では、新任の加藤健太トレーナーが、アドバイス。

 一方、佐藤陣営は、体の汗を拭いてやりながら、小倉トレーナーが変わらず、アドバイスを続ける。

 < 6ラウンド >

 先に出たのは、岩井。左右のパンチ、飛ばして、右ヒット! 続けて、左ジャブ、ヒット!

 負けじと、一気に出る佐藤。すかさず、岩井がクリンチ。

 


< リアル 大相撲 ルポ > 2014 初場所 千秋楽。相変わらず、デタラメ立会いが、横行! 

2014-01-26 16:44:25 | スポーツ

 相変わらず、大相撲力士の本場所の、土俵上での立ち合いが、デタラメのまま、横行している。

 初めて、この「基本的姿勢」の問題を、昨年に具体例を挙げて記事化したとき、検索数が徐々に増えていった。

 キチンと、取材もして、事実には自信があった。

 団体としての反省からか、デタラメ、中途半端を、統一。

 大学の相撲部員が全国から結集して戦う全国大会では、キチンと両手を付いてから、立ち上がっていた。

 力学を研究している方たちにも取材した。

 両手を付いて立ち上がっても、付くこともロクにせず、勢い付けて中腰から立ち上がっても、パワーやスピードが落ちるものでは無い、とのこと。

 むしろ、キチンと両手付いてから立ち上がった方が、力学上、スピードもパワーも大きく、激しいものが出る、と言う。

 おそらく、プロ並みにデタラメ八百長立ち合いが横行していた「中体連 相撲の部」の大会も、今年は反省し、正しい、本来の「神事」にのっとった立ち合いを、見せてくれるはず! と、期待している。

 なのに、さて、お立合い!

 大相撲の、立ち合い八百長は、何一つ変わっていない。反省も、修正もしていない。

 本日の、千秋楽。

 優勝は、白鵬と、鶴竜の、モンゴル人同士の決戦で決まる。稀勢の里のふがいなさを筆頭に、日本人力士のふがいなさを、いまさら嘆いてみても仕方ない。

 むしろ、なかなか台頭できないのは、以前のように、「八百長相撲」が激減したことの、何よりの証明ともいえる。

 鶴竜は、昨日こそ、両手を付くというより、触れるくらいで立ち上がっていたが、白鵬は、相も変わらず、右手だけ付けて、左手ちょん付き。昨日などは、右手だけ付けて、立ち上がっていた。

 このザマでは、とても横綱とは言えない

 さらにひどいのは、遠藤。幕内3場所。いつも片手付き。

 今場所では、手付かずで立った日もあった。

 相撲を舐めきっている。

 いずれ、日大相撲部時代の、悪行の実話も書く日が来そうだ。

 こんなのに、三賞を渡しては、「神事」が汚れる。

 それにしても、少しおかしいのが、行司

 私が、この問題を指摘する前は、行司は、序の口の取り組みから、「両手付いて!」と、土俵上でハッキリ注意していたのに、何故か、、初場所から、言う行司が激減!

 立場が、極めて弱いのは、以前、私が書いたまま、何一つ変わっていないのだが、これはひょっとして、協会から、クチにしなくていい!と、「圧力」が、かかった可能性が考えられる。

 初場所が終わったあと、改めて取材してみるつもりでいる。

 正しい、古来より伝えられた「神事」にのっとった相撲を、見たい。ただ、それだけなのだが・・・・・

 


<リアル ボクシング ルポ>とあるボクシングジムでの、とある出来事。取材中にいきなりサンドバッグが!

2014-01-21 23:24:24 | スポーツ

 最初の印象は、最悪だった。

 古ぼけた、築30年以上は、とうに過ぎている、小さなマンション。

 その地下に、なんとボクシング・ジムがあった。

 

 明かりは無いに等しい。暗く薄汚れた階段を、おそるおそる降りて、地下室へ。

 左に、靴箱があるが、誰もココが、ボクシングジムとは思わないだろう。

 スリッパに履き替え、ドアを開けると、そこには、リングが見え、サンドバッグに、パンチング・ボール。さらに、よく目をこらすと、腹筋台もあった。

 選手は、誰も来ていない。

 あらかじめ、ジムには前日、電話を入れておいた。あるボクサーの練習ぶりを見たくて、明日ジムに来るかどうか?を、聞いた。

 「う~ん、来るんじゃないかなあ・・・・」

 なんとも、頼りない答え。

 で、とにもかくにも、ダメでもともと。行って見たというわけだ。

 で、「今日は、来ないみたい。さっき、電話あった」

 あちゃあ! ならばと、いくつか、聞いて帰ろうと。

 練習生も含めて、何人くらい、いつも来てるんですか?

 名前だけか、どうか? 20人以上が、並んで書き込んであった。

 「う~ん、分かんないんだよねえ。来たり、来なかったりする者が多いんで。もう、ひどいのになると、見学に来て、それっきりだったり、1回か2回来て、それで来なくなったり」

 「おっ!続けて1か月くらい来てたんで、やる気あるんだ。そう思ってたら、ぷっつり。月会費、未納の者が多くってさあ。どういうことなのかなあ?」

 話しを聞いてるうちに、1人、来た。ドアを開けて入っても、何の挨拶も、声も無し。

 聞いていたのは、トレーナーだという人。その人も、選手に声も掛けない。静かだ。

 他の知っているジムとは、雲泥の差。

 明るさの、カケラも感じられない。


<リアル 女子フィギュア・スケート ルポ>あの安藤美姫の「全日本選手権」の滑りを見つめて

2013-12-22 23:29:11 | スポーツ

 いやあ、鬼の目にも涙、ではないが、あの安藤美姫(みき)のスケーティングを見ながら、何故だか、涙が溢れてきた。

 そんな自分に、自分でも驚いたが、本日の彼女の「ショート・プログラム」は、完璧な出来だったように思う。

 かねてより、ここ1発に強いことは、以前取材して書いた原稿では書かなかったが、知っていた。

 それが、本日も、発揮された。

 今まで、パソコン上で3本、彼女の厳実について書き、多くの検索を戴いた。

 その後も、付かず離れず、情報を集め、取材を続けていた。

 コレが、出場する最後の大会になるであろうことを知り、予感もしつつ、その滑りとジャンプを見ながら、彼女の想いを重ね、巡らしていた。

 それで、・・・・・・・。

 それでも一転、採点で「厳実」を突きつけられた。

 精一杯。自分が、今、出来ることをやれたはず。見せられた、はず。

 その結果が、64・87。

 最終順位は、5位。

 首位は、浅田真央(まお)。73・01.

 この差が、明日の「フリー・スケーティング」で縮まることはあっても、ひっくり返ることは、あり得ない。

 そして、今の安藤には、2位では、ソチ五輪には出場出来ない。

 ちなみに、2位以下は、鈴木明子、村上佳菜子、宮原知子。そして、安藤。

 上位5人全員、良い出来、観客を感動させるものを、抱えて、魅せていた。胸がグッときた。

 両足首には、ぶ厚いテーピング。肌色で包んでいたり、シューズをはいて、隠してはいるが、美しさを見せるための厳しい裏側をしのばせる。

 明日で、日本で見せる、安藤美姫の競技者としてのスケーティングは、ラストになる。

 鈴木明子も、別の意味でラスト。

 そして、1度書いたことのある、西野友毬(ゆき)は、全30人中、22位の、45・49。

 彼女も、これで公式競技会から去る。

 それぞれが、万感の深い深い想いを込めて、明日23日。さいたまアリーナの、特設氷上に立つ。

 じっと、見つめて、目に焼き付けておいて欲しい

 

 


<リアル ボクシング ルポ>「拳王」清田祐三  甦った! 2013・12・10のリングで!

2013-12-20 09:33:34 | スポーツ

 試合前に、思っていた。相手の松本晋太郎には失礼だが、清田”拳王”祐三が、勝つだろうな、と。

 ただ、会場にまで足を運んで、見届けたかったのは、勝利の結果だけではなく、清田が、「拳王」の名にふさわしい勝ち方を、いかにするか!? どんな流れで、勝ちをおさめるか!? に、関心があったからだ。

 以前は、試合後の深夜ではあるが、フジテレビ系列の地上波で放送されていた清田の試合。それが、どうやら、放送されないと聞いた。

 フジは、村田諒太と、井上尚弥の兄弟を、看板に押し立てて、全面バック・アップ。それは、あざといほど。だが、しょせんテレビ局は、報道機関では無く、商売営利企業。仕方ないか・・・・・・。

 しかし、「拳王」の試合の4日前に行なわれた村田の相手が、実は2年半近く、試合をしておらず、事実上引退の身だった、元ボクサーと知ったら、ボクシング・ファンは、どう思うだろうか?

 復帰して、1戦。判定勝ちこそしたものの、そこからまたブランクあり。

 村田と拳を合わせるために、日本のリングに上がった体つきを見た観客・観衆は、あまりの醜さに、のけぞったはずだ。

 上下動から、打つためのステップをするたびに、たるみきった胸板と乳首が揺れる。その上、ぶよぶよに成り果てた腹のたるみを隠すために、ぶ厚い腹巻状の布を何重にも巻いた、特注トランクス・・・・・・

 そんな、”昔の強かった戦績で、出てい~ま~す”相手に、なんとKOを見せるどころか、苦戦してしまった金メダリストに、この先、何を、どう期待しろというのだろうか・・・・・

 俗に言うゴールデンタイムにも関わらず、視聴率は、わずか6・6%。前回の6・9%を下回り、さらに関西地域の数字は、もっと低い。

 スポンサーも、村田&井上タッグの1戦ごとに、離れる傾向にある。費用対効果が、見込めないからだ.

 コマーシャルに出て、稼ぐばかりでは納まらず、愚にも付かぬバラエティー番組にでて、へらへらと愛想笑いをしてるようでは、早くも三流タレント内藤大助の、二の舞を予感させる。

 この年末・年始の特番に、村田は数多くの収録にのぞんだのではないか?

 だから、その前に間違いなく、輝かしい経歴に傷付かぬ、楽に勝てる相手を選んで、日本に,わざわざ呼んだ、ということか。なんとも、淋しいオハナシだ。

 それに較べ、一般の知名度こそ、村田に及ばないが、ひたすら、「拳王」の名にふさわしい道を、清田祐三は歩んでいる。

 今年、その清田の出稽古の練習風景を何回か見た。相手は、佐々木左之介(現在は、すでに、目を傷め引退)。スパーリングを重ねつつ、佐々木の質問に対し、具体的戦法を体で覚えさせていた。

 その性格からしても、遠い将来、ボクシング界に関わるのであれば、良いトレーナーや、ジム会長になりそうな気がする。

 そんなさなかで、ポロッと、リップ・サービスを、清田のトレーナー、古里光明が、披露してくれた。

 「近々、いい発表が出来ると、思いますよ。楽しみにしていてください」

 おっ! 清田の相手が、記者が活字にしたがるボクサーだな?

 ということは!?

 で、いろいろ探っていくなかで浮かび上がったのが、かの村田諒太。

 間違いない!村田が、1階級上の、スーパー・ミドル級でもやりたいと公言していたし、ノンタイトルで、体重を揃えれば、最も今、ボクシングファンが、見たいカードになる!

 そう思い、書いたら、あららあ?~

 フタを開けてみたら、なんと、世界戦だった。

 古里さん、「村田と?」と聞いた時、首を振るなり、「違うよ」と言って欲しかったなあ(笑)。

 相手は、WBOスーパー・ミドル級チャンピオン ロバート・シュティークリッツだった。

 「世界戦は、もちろん望んでいたんですが、オファーがあって、すぐ1か月ぐらいで試合を、みたいな感じになりますが、この飛び込んできたチャンスを生かし、思い切ってベルトを取りに行ってきます」みたいなことを、当時話していた。

 試合日は、今年の7月13日。場所は、ドイツのドレスデン。

 試合前後の環境は、フェアだった。

 佐藤洋太のように、クーラーを切られたリング周辺の温度、37・7度のなか、1時間半も待たされ、サウナに入っていたような後、挑戦者がクーラーの効いた控え室から出てくるという、汚い手口や、

 冨樫直美のように、「契約書」に、試合会場が書き込まれていなかった例もある。いざ当日になったら、とんでもなく高い山を2つ超えて、日本でいうと、北海道にある十勝岳頂上の高さにリングを組んだところで、試合させられた。

 「もう、2ラウンド終わったら、息が切れて、立っても、いられなくなっちゃつた」と、帰国して富樫は話してくれた。

 ・・・・・・で、2人とも、ベルトを失った。

 そんなひどいことは、ドレスデンでは、されなかった。

 が、実力と、巧妙な、ずる賢いテクニックに・・・・・負けた。

 相手のロバート。初防衛戦ながら、44勝(うち25勝の、レフェリー・ストップ&KO)3敗。

 しかし、いざ戦ってみると、清田がうなりを挙げたパンチを打ち込むと、すかさずクリンチ。というより、ホールド連発。

 ガッチリと、清田の腕や首を締め上げ、ねじあげる。その一方で、巧みに打ち込む。

 今後、そんな相手とも、闘わねば、ベルトは取れないことを、試合映像を見ていて痛感させられた。

 8ラウンドに、清田が、偶然のバッティングで左まぶたを出血。激しい流血は、止まる事無く、ついに、10ラウンド、見た目でも清田は持ちこたえられずに、試合をストップされ、それまでのスコアで、負傷判定へ。

 スコア、90-99.89-100.90-99.

 かなり、ロバートに身びいき判定。しかし、そう付けられても、仕方の無い完敗であつた。

 流血が無くとも、判定負けになっていた、と思う。

 しかし、通用する部分も垣間見られ、この先の世界へのベルト挑戦には、生かせられるなと、思った。

 なお、この試合結果は、のちにレフェリー・ストップ負けに、変更されている。

 それから5か月振りの、いわば「再起戦」が、この日の試合となった。

 体調不良で無い限り、勝てる公算が大きい。そう思いつつ、客席に着いた。

 この試合の前に行なわれた、日本フライ級タイトルマッチが、まさに「激闘」そのもの。素晴らしい試合だった!

 チャンピオンの粉川(こがわ)拓也も、挑戦者の村中優(すぐる)も、すべてを出し切った末に、判定を迎えた。

 結果は、わずか1ポイント差。それも、2-1で村中が、新チャンピオンに!

 観客は、リングを降りた2人に熱い拍手を注いだ。当然だった。

 その熱気がまだ冷めやらぬ20時57分、先に清田祐三が入場。

 金髪に染め、いつもながら、変わらぬ逆三角形の上半身。筋肉の盛り上がりが素晴らしく、今度は、今年3月のように減量に失敗して、救急車で病院に担ぎ込まれたとの噂も無く、キチンと仕上げてきたようだ。

 リングに登壇する前に、しばし、勝利を願ってか、祈る。

 その後、松本晋太郎が入場。こちらも、胸には、十字架のようなペンダント。

 どんな強打者でも、神頼み、か。いや、ツワモノ、だからこそ、最後に、何かにすがるのかも知れない。

 松本のこれまでの戦績。13戦して、10勝3敗。勝ち星のうち、8勝を、レフェリー・ストップ&KO勝ち。つまりは、KO率、8割。期待を持たせる数字だ。

 が、3敗のうち、1敗は、今から戦う「拳王」に、惨敗したもの。

 2人は、実は昨年3月に対戦。タイトルを奪いに行った松本だったが、打ち込まれ、7ラウンド終了で、松本陣営から、「棄権」の意思表示。

 それだけに、松本にとっては、単なる再戦以上の気持ちで、リングに上がっていた。

 対する清田は、松本と年齢は、わずか2つ上の30歳だが、倍以上の、試合を経験済み。

 それも、28戦して、23勝4敗1引き分け。23勝のうち、レフェリー・ストップ&KO勝ちが、なんと21!

 つまり、9割以上の、KO勝利率。8割 対 9割。

 タイトルに付けた、KO必至、というのは、そういうことでもある。

 試合

 

 Dscf0184 

 

<つづく>

 

 

 


< リアル ボクシング ルポ > 負けても、王座防衛? 亀田大毅騒動に、とどめを刺す!

2013-12-17 22:54:58 | スポーツ

 また、亀田かあ・・・・・。今までは、あえて、書かないで来た。

 ところが、本日に至って、[法廷闘争に]な~んて、見出しが躍った。

 あおり文句。野次馬感覚の、見出し。そうとは、知りつつも、もはや、書かなくてはいけないな! 動かしがたい「証拠」を、明示して。

 そう思い直して、今、キーを叩いている。

 長らく、亀田組・亀田一家を取材し、何度も、京成線 お花茶屋駅で下車。

 彼らの拠点であったジム前や、周辺に通い、彼らの生活や、練習の実態や、「本当の強さ」を、徹底取材。壁にまで、耳当てたことも、数度。懇意になった近所の人たちもいる。

 亀田一家が、隠したがった裏側までも、記事にしてきた私にとっても、このたびの、亀田大毅の、負けても、王座に居座る騒動には、またかよ! と、いささか、あきれ果てている。

 すでに、ボクシング・ファンや、騒動が大好きなネット・おたくらは、そのいきさつについては、ある程度知っていると思うので、ここでは、再度、書かない。

 今回の疑惑の前の、興毅が韓国に渡って行なった試合でもそうだったが、採点発表が、とりわけ、3兄弟の試合では、いずれも遅い。遅すぎる。

 そんなに、時間がかかるはずは、ありえない。なにしろ、毎ラウンドごとに、採点票を集め、そのたびに、集計しているのだから、ものの1分もかからず、集計出来なければ、おかしい。

 最高でも、120。小学生の低学年でも、足し算で出来ること。ところが、興毅の韓国の試合では、なぜか、ついに放送時間内に発表出来ず。おかしな話題となったばかり。

 今回の大毅の試合では、双方の選手のスコアを、逆に1人のジャッジが書き込んでいたので、訂正に時間がかかってしまったという、おかしな、言い訳。

 だから、ますます、あらぬ疑惑までも、膨らんでいく。

 かつて、日本ボクシング・コミッション(JBC)に、聞いたことがある。

 ーーあの待たせている間に、書き直しを、こそっとして、勝敗の結果を、すり替えることが、可能なんではないのか?

 「いえ、それは、無いはず。ありえない」

 そう、「・・・はず」より、さらに、強い意味で、言われた。もう、性善説、まっしぐら。

 だけど・・・・・。疑惑、疑問は、いまだ消えない。ことに、「亀田」だから。決して、思い込みでは、なく。

 人の記憶からは、消え去りつつあるが、、大毅の前回の試合。亀田一家が、JBCの職員を軟禁し、ドアの外に聞こえるくらいの怒声で、詰問し、震え上がらせた過去がある。

 もはや、やりたい放題。

 父の史郎は、日本での試合では、セコンドに立つことは、出来ない。永久追放処分を喰らっているためだ。

 しかし、外国では、問題ないじゃろうが! とばかりに、先の韓国の興毅の試合では、セコンドに立った。

 折しも、賭博をしに韓国に来ていた、とある演歌歌手が「君が代」を歌った。

 そして、今回の、亀田大毅の試合。ソリスに負けて、IBFの王座は、はく奪され、王座は空位になるものだと、誰しもが思っていた。

 なにしろ、IBFの立会人、リンゼイ・タッカー自身が、記者団に対して、そう、試合前日の12月2日、「調印式」にあたって、明言したのだから。むろん、その後に行なわれた、双方の陣営も交えての会議でも、それが、確認されている。

 実際、亀田3兄弟の、オフィシャル・サイトである、「KAMEDA 3BROS」でも、12月2日付けで、こう打ち込まれている。

 Dscf0732 「ソリス選手が勝利した場合は、IBF,WBA、共に王座が空位という状態になります」

 さらに、大毅自身のブログでも、同じ日の、19時0分16秒の、打刻で、こう打っている。

 Dscf0730 「ソリス選手が勝った場合は、両方の王座が、空位になる」

 今日現在、この日の「大毅」のブログのくだりは、削除や、抹消されていないので、興味ある方は、自分の目で確認してみて下さい。

 ところが! 先に掲載した「KAMEDA 3BROS」の、「しかし、」からの2行が、すっぽり、突然削除された。

 残してあった、ボクシングのブログで、名をはせている「拳論」から、その部分を、勝手ながら、転載させて戴いた。

 削除した代わりに、「KAMEDA 3BROS」では、12月6日付けで「お詫び」の題で、こうおかしな言い訳をしている。

 

 Dscf0734 「この文は、私が、報道されていた記事から引用したもので、この1文には誤りがございましたので、削除させて戴きました。私の認識不足により・・・」

 「スタッフ」というだけで、一体、誰なのかが分からない。

 試合後の、先の立ち合い人、リンゼイ・タッカーが、「大毅が、王座を防衛した」と、とんでもないことを言い出したことから、この騒動・事件が始まった。

 しまいには、「王座が空位になる、なんてことは、私は言っていない。君たちの聞き間違いだ」と言うに至っては、もはや、日本のボクシング界を、バカにし、たーかーをくくっていたとしか、思えない

 幸か不幸か、WBOと違い、誰もが強い、最強と認めるチャンピオンは、IBFには、皆無に等しい。

 それでなくとも、認定料欲しさに、暫定王座乱発で、WBAやWBCに、好きなように振り回されているJBCとしては、その方が良い。

 騒動になって、亀田サイドは、リンゼイと、口裏を合わせる様に、試合前日には、大毅が、例え負けても、王座は失わないということを知っていた、と言い出したが、肝心の大毅は、恒例の「一夜明け会見」を拒否して、マスコミや、ボクシングファンの前から逃走。

  しかし、大毅のブログの一文は、残っており、今となっては、まさに「動かぬ証拠」。

 亀田一家が、裏で「意思統一」されていない証しでもあるのは、笑える。

 元凶は、相手が前日計量で、規定体重を1グラムでもオーバーすれば、大毅が負け続けても、永遠にチャンピオンでいられる、おかしな制度を創ったIBFではある。

 だが、それにしても、亀田一家のデタラメさにも、あきれ果てる。

 なにやら、猪瀬直樹にも似て、今後の発言が、2転3転どころか、七転八倒しそうだ。

 大毅が、平気で、ペロッと2枚舌で言うんだろうなあ。

 「勘違いしとった」な~んてさ

 

 

 

 

 

 

 

 


<リアル ボクシング ルポ>続報記事。12月11日、プロテストに湾野健太(船橋ドラゴンジム)は見事合格

2013-12-14 23:30:14 | スポーツ

 先日、書いた記事の、いわば続報と、いっていい。

 船橋ドラゴンジムへ取材に行った際に知った、C級プロテスト受験者、湾野健太(写真下。縄跳びをしている)は、見事、合格していた

 Dscf9946 ちなみに、その左で、真紅の上下ジャージを着込んで、シャドーボクシングをしているのは、このジムの会長・渡辺昌龍(63歳)。

 合格はしたものの、アルバイトと、学校への通学の日々のなか、どう折り合いをつけて、デビュー戦に臨めるかは、未知数だが。

 且つ、スタミナの課題もある。

 いつの日か、デビュー戦の記事を書きたい。あの右フックは、得難い。

 なお、顔も知らないが、同じ日に受けた、松本成月(なつき)や、秋月望夢(のぞむ)も、合格。

 この日の、C級プロテスト、受験者数、48名。そのうち、合格者数、31名。合格率、64・6%。

 3人に1人は、不合格。

 相変わらず、プロとしての入り口からして、厳しい世界。

 その後、12月20日のデビュー戦で頭部に変調をきたし、救急車で搬送され、緊急入院。緊急手術を受けたものの、年が明けて1月6日。

 残念ながらこの世を去った、岡田哲慎の関連で、ボクシングの「ボ」の字も知らないとしか思えない、2チャンネルの類いがネット上に溢れた。

 その中に、少子化のため、プロテストでは、全員を合格させている。まだチカラの無い者が、プロとなってリングに上がるから、こういう事が起こるのだ、という書き込みがあった。

 事実を、キチンと調べることもしないで、テキトーに書き(打ち)飛ばすバカがいる。

 ボクシングの「プロ」としての厳しさを、知って欲しくて、追加補筆した。


<リアル ボクシング ルポ>おおっ!2戦2勝(1KO)の、その名も「徳岡平等院」。現役、迷いつつ続行

2013-12-10 15:35:56 | スポーツ

 アレッ? 2試合戦って、全勝。11月18日、3-0の判定勝ちする前から、確か「引退」表明してたはずの、その名も「徳岡平等院」(写真下)が、ジムのリングで堂々とシャドー・ボクシング

 

 Dscf9902_2 疑問が湧いたら、聞くのが、記者。タイミングを見計らって、”平等院”に、尋ねた。

 実は、彼を取材に、この「船橋ドラゴンジム」に来たわけじゃない。目的は、このジムにいる、スーパー・フェザー級 名雪貴久(なゆき・たかひさ)。が、ネットでジムの「試合レポート」で見た髪型とは、違っていて、おまけに失礼ながら、顔が違って見えた。

 しかし、同じ坊主頭で、ネットと同じだったのが、この「平等院」。

 もう、分かりやすい顔。1度聞いたら忘れない、明らかなリングネーム。試合写真で見たトランクスには、「京都 宇治」とある。ははあ、それで「平等院」か。おそらく・・・。

 見るからに気さくそうな印象だったので、まっ先に聞いた。 

 --引退したんじゃなかったんですか? ジムの「試合レポート」で、そう書いてありましたけど?

 とたんに、それ聴いて、本人、苦笑い。

 「いやあ、そのつもりでいたんですけど、まだやれるかな?と。何か、やり残したことがあるような気がしてきて。それで、まだやりたいなと。ジムにお願いして、続けております」

 リングネームは、やっぱり、想像した通り、郷里の宇治市にある、国宝の平等院にちなんで、命名したとのこと。

 その上、恐れ多くも、「世界遺産」。どんな建物かは、10円玉を見れば分かる。にしても、こりゃまた、すんごいリングネームをつけたもんだ。ちなみに、階級は、フライ級。

 試合では、友人たちが、「徳岡平等院を、世界遺産に!」と大書した横断幕を、堂々と掲げるほどだ。

 なので、3連敗でもしたもんなら、故郷に恥ずかしくて帰れないかも。

 ーーでは、来年3月くらいには、次戦を?

 「いや、そうもいかないなと。仕事が、あるんで」

 聞けば、六本木のジムで、インストラクターをしている、正社員。会社も、あくまで仕事優先の方針。試合前、試合後に数日間も、自己都合で休まれてはかなわない。ならば、多くのボクサーのように、アルバイトやれば? と思うが、それでは、将来の生活と安定が望めない。

 「正社員」で、「プロボクサー」

 この両立は、我々や、ボクシングファンが想像する以上に難しい。ましてや、出世しようと思ったら、さらに大変だ。

 以前、「大川泰弘」というボクサーを、取り上げたことがある。興味のある方は、「リアル」から打ちだして、検索してください。

 その大川は、結婚し、子供も生まれ、そして、会社の協力と承諾を取り付け、今年8月5日、ようやく2年3か月振りに試合に出場。

 激闘の末、勝利を手にし、強打者のランカーを破った。そして、同僚たちの大声援を背に、次の試合の許可も、その夜、会社幹部から得た。

 現在、日本ウエルター級7位。この12月18日。4か月半ぶりに、後楽園ホールのリングに立つ。負けたら、おそらく次の試合は、無い!

 今、「平等院」が、どんな立場にあるのか、詳しいことは聞いてない。

 シャドーボクシングをしている上の写真を見ると分かるが、リーチ(腕)が、長く見える。

 「ハイ、そうなんです」と、当人。

 それを生かした、左右のストレートが、際立って良い。2試合とも、それが、生きた・・・らしい。

 おっ! ヘッドギアをして、スパーリングが始まった。本来の目的の名雪が、入念過ぎるくらいにストレッチを繰り返しているので、その間を縫って、そのスパーリングを見る。

 Dscf9907 右の、全身が細い方が、平等院。ちなみに、本名は忠司(ただし)。

 で、相手の背の低い、赤いヘッドギアとグローブを付けた若者の名前は、・・・聞いてなかった。ニコニコとして、愛想が良い。

 やはり、平等院のストレートが、キレイに良く伸びきっており、赤を踏み込ませない。これが、今後も試合を重ねられていけるならば、という条件付きだが、武器になりそうだ。

 マスよりは激しく、しかし100%ではなく、70~80%のチカラで打ち込んでいる。片や、赤は、フル回転。

 思い切って、打たれるのを覚悟の上で、勢いよく放った左右のフックが、パパーン!と、小気味いい音を響かせて、平等院のヘッドギアにヒット!

 それが、2度、3度。折しも、練習しにジムに入ってきた女子練習生が、目を丸くして驚いていた

 むろん、全体の流れは、平等院があしらうカタチでは、あったが。

 その赤の青年に聞く。名前は? 「わんの・・・・わんは、湾です。湾野健太です。平成4年の12月14日、生まれです」

 なんと、この12月11日(水)に、「プロテスト」を受けると言う。

 合格すれば、3日後に、嬉しい気持ちで、21歳の誕生日を迎えることが出来る。落ちれば、・・・・・辞めたくなりがちになる。

 Dscf9918 山田昌洋(まさひろ)トレーナー(写真上。右側)の構えるミット目がけ、パンチを入れ込む

 

 「力まなくて良いから! 無駄なチカラを入れずに」と、山田のアドバイス

 実は、今まで1度、受ける予定でいたのだが、仕事が入り、直前で行けなくなってしまったこともあったと、ジムの渡辺昌龍(元・日本ライト級1位)会長が、教えてくれた。

 湾野は、アルバイトしながら、あるお堅い公務員を目指すための学校にも通っていると、会長。

 めちゃ、多忙。だから、「練習も、休みがちなんだよねえ。良いモノは、持っているのにさ」と、会長。

 むしろ、練習熱心なのは、渡辺会長。

 なんと、見てたら、シャドー・ボクシングや、縄跳びを始めた。オントシ、63歳!

 「もう、7~8年、毎日続けているんだよ。身体、軽いよ。糖尿病にはなりたくないんでねえ」と、ニッコリ。

 いやあ、いろんなジムに行ったが、会長自ら、今も毎日やっている人は、初めて見た。おったまげた!

 かたや、仕事優先の湾野。なかなか来れないために、ジムの人達がクチを揃えて言うのが、「スタミナが、無い」ということ。

 もっと練習を重ねなければ、デビュー戦の4ラウンドは、持たないのでは?と、皆が言う。

 プロテストには、ジムから、松本成月(なつき)と、秋月望夢(のぞむ)も受ける。

 「時代だよねえ。こういう名前、昔はいなかったもんねえ・・・」

 会長が、ポツリ。

 受験料は、6300円。ボクシングの知識を問う、ペーパーテストと、体重測定と、健康診断。そして、ヘッドギアと、マウスピースを付けて、スパーリングテストを実施し、合格・不合格が決定する。

 1ラウンドは、3分ではなく、2分半。それを2ラウンドこなす。相手も、同じ受験生だ。

 合格定員は、無い。だから、全員合格の時もあれば、3分の一の時もある。全員不合格という可能性もある。

 結果発表は、後楽園ホールの控え室前の廊下に貼ってあるのを、見かけることがある。あとは、業界誌の片隅に小さく載るくらい。

 しかし、これがプロボクサーの、スタートだ。合格が、全ての始まり。非公開が”厳則”だ。

 さて、湾野は、どうなる?

 翌日、ジムに行くと、アララ、姿見えず。さぼり?

 会長が、言う。

 「いやね、世界戦のチケットが、回ってきてね。もらえたので、観にいくか?と聞いたら、行きたいというのでね。今頃、観てるんじゃないかな」

 それを観て、湾野、どう刺激を受けたか? 

 どう、自分の夢を広げたか? 

 はたまた、仕事との兼ね合いが、どうなっていくか?

 もし、1度、不合格になっても、めげるな!

 実は、何度も取材させて戴いている、佐藤通也(みちや)という、プロボクサーがいる。

 彼、最初のプロテストに、残念なことに、落ちた。2度目で、やっと!・・・・・・また、落ちた。3、・・・・4・・・・・・・

 なんと、合格したのは、5度目の挑戦で!

 それでも、無類の生真面目さと、努力と、強さで、ケガにもめげず、なんと、日本スーパー・フェザ―級のランキングに、2度も入った!

 それだけでは無い。同級チャンピオンの金子大樹(現在、大晦日に内山高志の世界タイトルに挑戦するため、タイトル返上)に挑戦。タイトルマッチにも、絡めるまでになった。

 負けはしたものの、不屈の闘志を持ち続ければ、不合格など、屁でもない実例だ。

 おそらく、彼しかいない、極めて稀有な例ではあろう。しかし!

 佐藤通也は、プロテスト合格を目指す、すべての受験生に向けて、言う。

< 1回位、落ちた位で、プロボクサーの夢をあきらめる選手もいると思うんですが、僕みたいに5回目で受かっても、頑張って、あきらめなければランキングに入れた。        

 正直、落ちた時は、めげましたよ。でも、もう1回、もう1回と、頑張り続ければ、良い結果が、必ず、出ます。これからの選手への励みになれれば、と思っています! > 

 東洋・太平洋や、世界のチャンピオンで、デビュー戦、KO負けスタートの選手も、私、何人か知ってます。

 

 

 湾野健太。

 12月11日。さあ、夢のスタート、迫る!