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D.H.ロレンス(1885ー1930)『切符をお切りします!』Tickets, Please(1919):①男への復讐、②男への未練!③女と女は味方、④女と女は敵!

2019-02-28 09:24:04 | 日記
(1)イングランド中部地方、単線の電車が炭坑地帯を走る。乗客の多くは坑夫で気が荒い。車掌は元気な若い娘たち。彼女たちは不正乗車を許さない。乗客が彼女らを怖がるほどだ。
(2)車掌たちの監督は、若く男前のジョン・トマス・レイナー。彼は、車掌(娘たち)と昼は軽口をたたき、夜は口説いた。人当たりがよく口のうまい彼は、ひとり、またひとりと娘たちをものにしていった。
(3)車掌のアニーは、手強い相手で、ジョン・トマスを寄せ付けない。しかし11月の定期市の日、彼女はついにジョンに抱かれ、それから、彼とつきあうようになった。
(4)アニーはやがて、彼を「夜のお相手」というだけでなく、一個の人格、一人の人間として考えたくなった。だがジョン・トマスにその気がなかった。
(5)女性特有の所有本能に目覚めたアニーから、ジョン・トマスは離れた。
(5)ー2 アニーは愕然とし、動揺し、自信を失った。やがて激怒と憤り、わびしさと惨めさに泣けてきた。
(5)ー3 だがジョン・トマスは相変わらず図図しくなれなれしく、しかもだれか別の女に興味を移し楽しんでいる。アニーは復讐の決意を固めた。
(6) アニーは、ジョンに遊ばれ捨てられた娘(車掌)たちに、働きかけ始めた。「まったく恥知らずで図図しいにもほどがある」とアニー。すると恨みのあるノーラが「痛い目にあわせたい」と言う。「そのうちふたりでやっつけてやりましょう」とアニー。
(6)ー2 こうしてアニーは、ひとりひとり、ジョン・トマスのかつての恋人たちをまわって歩いた。彼女たちは、彼に恨みを持っていた。
(7) ついにある日、6人の娘たちが車庫の控え室に集まった。最後の電車が車庫に戻ると、ジョン・トマスが気安く娘たちの控え室にやってきた。娘たちに取り巻かれ、彼は上機嫌だった。
(7)ー2 「今夜はだれと一緒にお帰りなの、ジョン・トマス」とミューリエルが聞いた。「今夜は一人で帰る」とジョン・トマス。「帰さないわよ。みんなこやって待ってたんだもの」とポーリーが言った。
(7)ー3 「帰りたいなら、誰かひとり選びなさいよ。公明正大に、はっきり誰って言いなさいよ」とローラ。アニーも言った。「一人だけ、あたしたちの中から選ぶのよ!」
(7)ー4 「結婚する相手を選ぶのよ」とミューリエル。ジョン・トマスは一瞬、ためらった。ドアは鍵がかけられている。「ちきしょう、ドアをあけろ!ばかな真似はやめろ。」彼は、いかにも上司らしく偉そうな口ぶりだった。
(8) アニーが、ベルトを振り回し、バックルで彼の頭に鋭い一撃を加えた。彼はアニーにつかみかかった。すると他の娘たちがどっと飛びかかり、彼を引っ張り引っかき殴りつけた。彼女たちはもうすっかり腹を立てていた。
(8)ー2 娘たちは、目を異様にぎらつかせ、ジョン・トマスを襲い、彼を倒し、膝で押さえつけた。彼は打ち負かされるままになった。そして恐怖と敵意で気を失ったように横たわった。
(8)ー3 「あんたなんか、ほんとは殺されちまえばいいんだわ。」とアニー。「彼に選ばせなきゃ」とポーニーが言った。「もちろんよ」と、ローラの言い方には復讐の決意がこもっていた。
(9) ジョン・トマスはしかし、打ち負かされた今も、娘たちに心から屈服したわけでない。「よしわかったよ。それじゃ、アニーを選ぶ」と奇妙な恨みがましい声で言った。
(9)ー2 アニーが不快感をあらわにして、彼のそばから離れた。「こんな人ごめんよ。もう一回選びなおしゃいいんだ。」
(9)ー3 「だれかこの人いらない?」とローラが乱暴に叫んだ。「誰も欲しかないわよ」全員が軽蔑したように言った。だがアニー以外、誰もが、彼が自分のほうを見てくれるのを待ち受け期待していた。
(9)ー4 アニーは、胸の中で何かが壊れた。
(10) 「事が終わった」という沈黙が流れた。ジョン・トマスはちぎれた服の切れ端を拾い集め、オーバーを着て鍵のかかったドアの前に立った。「これでおあいこってわけ。あんたも男なんだから、恨みっこなしよ」とノーラが鍵を開け、言った。
(10)ー2 「あれで思い知ったでしょ」とローラ。「ぼこちん」とノーラ。「もうやめて、お願いだから!」アニーは責め苦を追わされたように、悲鳴をあげた。
(10)ー3 娘たちは今や、みな帰りたがっていた。みな黙りこくり、呆けたような顔つきで、大急ぎで帰り支度を始めた。

《感想1》
元気な男勝りの娘たちも、恋に弱い。若い男の上司にだまされる。娘たちが一人また一人と遊ばれる。彼女らが「結婚してくれ」と言い出しそうになると、男は上手に娘を捨てる。
《感想2》
男に捨てられた娘たちが男に復讐する。だが彼女らの心は、両価的だ。①捨てた男への復讐。②だが男への未練。
《感想3》
さらに捨てられた女たちの協力も両価的だ。③一方で男への復讐では女同士が協力する。女と女は互いに味方だ。④しかしある女が捨てられたのは、他の女のせいだ。女と女は互いに敵だ。
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