DIARY yuutu

yuuutunna toki no nikki

沖田瑞穂(1977-)『すごい神話』36.「現代の呑みこむ少女母神――FGO『キングプロテア』」(その2):ブラフマーの昼間43億2千万年後に世界は滅亡し、夜間43億2千万年後再び世界が始まる!

2023-10-08 10:51:21 | 日記
※沖田瑞穂(1977-)『すごい神話』(2022)第三章 女神と女性の神話(31~41)

《参考5》ヒンドゥー教の終末思想!
インドでは紀元前8世紀頃に奥義書「ウパニシャッド」が編まれ、このころに「輪廻思想」(※循環宇宙論)が成立した。ヒンドゥー教の世界観は「輪廻思想」に基づき、世界の創造と破壊が繰り返されるとする。
Cf.  「ウパニシャッド」:サンスクリットで書かれたヴェーダの「奥義書」。「ヴェーダーンタ」とも言われる。約200以上ある書物の総称。仏教以前、紀元前8世紀から、紀元後16世紀に作られたものまである。ウパニシャッドの最も独創的要素は、「仏教」興起以前に属す。ウパニシャッドの語源は「近くに座す」であり秘儀・秘説という意味だ。その中でも10数点の古い時代に成立したものを特に「古ウパニシャッド」と呼ぶ。「古ウパニシャッド」はゴータマ・ブッダ(前6-4世紀頃)以前・以後に成立した。
Cf. 「ヴェーダ」:インドの最古の文献の総称。「知識」を意味する。ヴェーダ祭式で讃歌を詠唱するホートリ祭官、祭歌を歌うウドゥガートリ祭官、祭式行為を実行するアドゥヴァルユ祭官の職掌のもと、それぞれ『リグ・ヴェーダ』『サーマ・ヴェーダ』『ヤジュル・ヴェーダ』の3伝承があり,さらに呪術を扱う『アタルヴァ・ヴェーダ』の伝承が加わる。各伝承は(1)讃歌,歌詞,祭詞,呪文を集めた「サンヒター」(本集)、(2)祭式の意味を解釈する「ブラーフマナ」(梵書)と(3)「アーラニヤカ」(森林書)、(4)哲学的思想を述べた「ウパニシャッド」(奥義書)の四つのジャンルからなる。普通「ヴェーダ」といえばそれぞれのサンヒターをさす。
Cf.   「ウパニシャッド哲学」:「ウパニシャッド」の思想の中心は、「ブラフマン」(宇宙我)と「アートマン」(個人我)の本質的一致(「梵我一如」)である。宇宙我は個人我の総和でなく、自ら常恒不変に厳存しつつ、しかも無数の個人我として現れる。
Cf. 「古ウパニシャッド」(13ウパニシャッド)は成立時期によって、以下に分類される。〈初期〉「古散文ウパニシャッド」(紀元前800-紀元前500年に成立)。〈中期〉「韻文ウパニシャッド」(紀元前500年-紀元前200年に成立)。〈後期〉「新散文ウパニシャッド」(紀元前200年以降に成立)。

《参考5-2》ヒンドゥー教の終末思想!(続)
(a)世界が始まる前の原初の海では竜王アナンタに寝そべった「ヴィシュヌ」の臍から一本の蓮の花が咲き、そこから「ブラフマー」が生まれ世界を創造する。(ただしこれはヴィシュヌ派の神話であり、もともとはブラフマーの臍からヴィシュヌが生まれたという神話だ。ヴィシュヌを至上の神とするヴィシュヌ派によってその役割が逆転した。)
(b)世界はその「ブラフマー」の1日の始まりの際に作られ、1日の終わりに破壊される。この「ブラフマーの1日」のうち「昼間」の時間は、人間の時間では「43億2千万年」だ。
(c)ヒンドゥー教の時間を示す概念には以下のようなものがある。
・「1神年」=360年。神々にとっての1日は人間の1年にあたり、人間の360年が神にとっての1年となる。
・「マハーユガ」=12000神年(人間の時間で432万年)。
・「カルパ」(劫)=1000マハーユガ(1200万神年;人間の時間で43億2千万年)。ブラフマーの1日は昼間が1カルパ(43億2千万年)、夜1カルパ(43億2千万年)の2カルパ(86億4千万年)からなる。(Cf.  弥勒はゴータマ=釈迦の入滅後56億7千万年後にこの世界に現われる。)
(c)-2「ユガ」は、12,000神年=432万年にあたる「マハーユガ」を前から4:3:2:1の割合で分割した期間である。それぞれの「ユガ」は段々と悪い世界になる。「ヴェーダの法と正義」もそれぞれの期間で4:3:2:1の比率で減り、悪がはびこる。
 1.「クリタ・ユガ」(4800神年)(172.8万年)すべての法と正義が保たれ、人は病気にならず、400年の寿命を持つ。
2.「トレター・ユガ」(3600神年)(129.6万年):法と正義が4分の3まで減った世界。人間の寿命は300年。
3. 「ドヴァーパラ・ユガ」(2400神年)(86.4万年):法と正義が半分になり、その分悪がはびこる世界。人間の寿命は200年。
4. 「 カリ・ユガ」(1200神年)(43.2万年):法と正義が4分の1まで減った世界。人々は神から遠ざかり、悪が世界を支配する。人間の寿命は100年になる。「カリ・ユガ」は人間の時間では43万2千年続く。カリ・ユガの時代では人々はヴェーダの教え(「ヴェーダの法と正義」)から離れて宗教的に堕落し、神々は信仰されず、支配者は理性を失い、世界ではあらゆる悪が行わる。現在の私たちが生きる時代はこの「カリ・ユガ」に当たる。「カリ」は対立・不和・争いを意味し、またこの時代を支配し世界を悪で満たす「悪魔カリ」を指す。この「カリ」を倒すために登場する救世主がヴィシュヌの化身「カルキ」だ。「カリ・ユガ」の終末期、カルキは白馬に乗った騎士、又は馬頭の巨人として登場し、世界の悪を滅ぼす。世界を救い使命を果たしたカルキが天界に帰ると「カリ・ユガ」の時代は終わり、また法と正義で満たされた「クリタ・ユガ」の時代が始まる。

(c)-3 こうしてひとつの「マハーユガ」(12000神年;人間の時間で432万年)が終わるが、ブラフマーの一日(昼間)が終わるのは1000マハーユガ(「1カルパ」;1200万神年;人間の時間で43億2千万年)が経った時だ。ブラフマーの一日(昼間)の終わりには地下・地上・天上の三界で生物が死に絶え、世界はヴィシュヌの炎によって焼き尽くされ、続いてヴィシュヌが吐き出した雲から降る雨で水に沈められる。その後ヴィシュヌは雲を吹き払ってブラフマーを飲み込み、原初の海で竜王アナンタに寝そべる。こうして世界が始まる前の状態へと戻り、1カルパ(43億2千万年)の眠り(ブラフマーの1日のうちの夜にあたる)の後にまた新たな世界(つまりブラフマーの新たな1日の昼と夜)が始まる。(ブラフマーの1日のうち昼は1カルパ=1000マハーユガ;1200万神年=人間の時間で43億2千万年。またブラフマーの1日のうちブラフマーが眠る夜も1カルパ=人間の時間で43億2千万年。)
(c)-4またブラフマーの一生はブラフマーの時間での100年(ブラフマーの1日は2カルパ86億4千万年;ブラフマーの1日のうちの昼間43億2千万年の終わりに世界は滅亡し世界が始まる前の状態へと戻る;ブラフマーの1年は360日=720カルパ;ブラフマーの一生は100年すなわち72000カルパ、これは人間では72000×43.2億年= 311兆400億年)とされており、ブラフマーの一生(311兆400億年)が終わる際には世界はより大きな規模で破壊され、最終的には宇宙の根本原質であるヴィシュヌ自身に飲み込まれる。そしてブラフマーは改めてヴィシュヌの臍から生まれなおし、世界の創造を始める。(※これは「循環宇宙論」である。)
(c)-5 世界の創造・維持・破壊はブラフマーの1日(昼間43億2千万年)ごとに起こる。世界の破壊消滅後、その日の夜間43億2千万年ブラフマーは寝る。ブラフマーの1年は360日だから世界の創造・維持・破壊が360回起こる。ブラフマーの一生は100年だから世界の創造・維持・破壊が3万6000回起こる。(ブラフマーの一生は311兆400億年だ。)そしてブラフマーの新たな1生(世界の創造・維持・破壊が3万6000回であり、311兆400億年だ)がまた始まる。おそるべき「輪廻思想」(循環宇宙論)だ!
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

沖田瑞穂(1977-)『すごい神話』36.「現代の呑みこむ少女母神――FGO『キングプロテア』」 :女性「サーヴァント」(使い魔)キングプロテアは「呑み込み死をもたらす」少女母神だ!

2023-10-08 10:23:43 | 日記
※沖田瑞穂(1977-)『すごい神話』(2022)第三章 女神と女性の神話(31~41)

「呑み込む女神」(「呑み込み死を与える」女神)は現代の作品にも現れる。スマホゲーム『FGO』(Fate/Grand Order)では人類史の修復を試みるため様々な「サーヴァント」を使い魔として召喚する。そのひとりに「キングプロテア」という女性サーヴァントがいる。キングプロテアは身長5メートル以上の少女で彼女の「宝具」(必殺技)は「乳の海に敵を沈める」ことだ。これはインドの「乳海攪拌」神話を背景にしている。「乳の海に敵を沈める」ことは、世界の始まりを説明する創世神話すなわち「乳海攪拌」神話におけるように「生命を原初の状態に引き戻す」ことだ。つまり「乳の海に敵を沈める」ことは、母神の「呑み込む」働き、「死」をもたらす働きを象徴している。女性「サーヴァント」(使い魔)キングプロテアは「呑み込み死をもたらす」少女母神だ!

《参考1》「乳海攪拌」神話:古代インドの大叙事詩『マハーバーラタ』・『ラーマーヤナ』にある天地創世神話。神々とアスラ(悪魔)が「乳海」を「撹拌」することでさまざまなものが生じた。
太古、①不老不死の霊薬「アムリタ」をめぐり、神々とアスラが壮絶な戦いを繰り広げたが、両者は疲労困憊し、「ヴィシュヌ神」に助けを求めた。ヴィシュヌ神は言った。「争いをやめ、互いに協力して大海をかき回せばアムリタが得られるであろう。」
そこで①-2 ブラフマー神とヴィシュヌ神は「竜王アナンダ」に命じて海の中に「マンダラ山」を運ばせた。
②神々とアスラたちは、天空にそびえる「マンダラ山」を軸棒とし、「亀の王クールマ」の背中で軸棒を支え(支点として)、そして「大蛇ヴァースキ竜王」をその山に巻きつけ「撹拌」のための綱とした。
③その竜王(大蛇ヴァースキ)の両端を神々とアスラ(悪魔)が持ち、すなわち神々が「大蛇ヴァースキ」の尻尾を、アスラたちがその頭をつかんで、引っ張り合って山をまわし、また上下に揺さぶり始めた。
③-2 「ヴィシュヌ神」はマンダラ山の頂上から、皆に力を与えた。
③-3 すさまじい炎と煙が大蛇の口から立ち上り、そこから雷雲が生じ大雨を降らせ始めた。だが「アムリタ」は出てこない。
④神々とアスラはさらに大海を撹拌し続けると、大海はかき混ぜられてやがて「乳海」となった。しばらくして良質のバターである「ギー」が湧き出て、そこから「ヴィシュヌ神の妃ラクシュミー」(シュリ―女神)、「ソーマ(神酒;酒の女神)」、「太陽」、「月」、「宝石」(宝珠カウストゥバ;ヴィシュヌ神の胸を飾る)、「家畜」、「白馬」などが次々と現れ、ついに「アムリタ」の入った白い壷を手にした「医の神ダンワタリ(ダヌヴァンタリ)」が姿を現した(海から出現した)。
ここから⑤「アムリタ」をめぐる神々とアスラの争奪戦が始まった。
⑤-2 アスラ(悪魔)たちは「アムリタ」を独占しようと企てた。すなわちアスラたちは、なんとかして「アムリタ」と「女神ラクシュミー」を奪い去ろうとしたが、ラクシュミーに姿を変えた「ヴィシュヌ神」がその美しい姿で欺くと、アスラたちはヴィシュヌ神に「アムリタ」を渡してしまった。ヴィシュヌ神が、神々のためにアスラたちから「アムリタ」を奪い返したのだ。
⑥アスラたちは終結して神々に襲いかかった。その混乱の中で、ヴィシュヌ神から「アムリタ」を受け取った神々は、分け合って飲み出した。
⑦その中に神に化けた(変装した)「ラーフ」という名のアスラがいた。ラーフがアムリタを飲みはじめた。アムリタがラーフの喉まで達した時、「太陽」と「月」がそれを見破り気づいてヴィシュヌ神に知らせた。ヴィシュヌ神は円盤を投げつけ、ラーフの巨大な頭を切り落とした。
⑦-2 断末魔の叫び声とともに、「ラーフの首」は天空へ舞い上がった。それ以来、ラーフは「頭」(「ラーフの首」)だけが不老不死となった。
⑦-3このときから「ラーフの首」と「太陽」・「月」との間に憎悪が生まれ、ラーフの首が太陽と月を飲み込む度に「日蝕」と「月蝕」が生じるようになった。
⑧さて「アムリタ」の争奪を繰り広げていた神々とアスラだが、ついに「ヴィシュヌ神」の力に圧倒されアスラたちは逃げ去り「アムリタ」は神々のものとなった。すなわち神々はアスラ(悪魔)との戦闘に勝利し、「アムリタ」を安全な場所に隠し、その守護を「インドラ神」(仏教では帝釈天)にゆだねた。

Cf. 「乳海攪拌」神話は、原初の海をかき混ぜて乳の海にし、「太陽」と「月」などがそこから生じたということで、世界の始まりを説明する創世神話である。

《参考2》「シヴァ神」はリンガ(男根)を象徴とし、男根崇拝と結びついて崇められる。
《参考2-2》ヒンドゥー教の「シヴァ神」の仏教における姿は「大自在天」(マヘーシュヴァラ;摩醯首羅マケイシュラ)だ。仏教で「大自在天」は「色界」の頂に住する三千世界の主である。(「色界」は「無色界」の下にあり、「欲界」の上にある。)

《参考3》ヒンドゥー教の神々
(ア)「インドラ」:最初期の神々への讃歌集『リグ・ヴェーダ』においてはインドラに捧げる讃歌が約4分の1と最も多く、アーリア人を保護する理想的な戦士として描かれ、神々の王とされた。神酒ソーマを好み、強大な武器ヴァジュラ(金剛杵)を持つ。「雷」を象徴する英雄神だ。(Cf. 仏教では「帝釈天」である。)
(ア)-2リグ・ヴェーダの時代には神々の中心だった「インドラ」も、時代が下り、ヒンドゥー教が成立した時代になれば、神々の中心の座は「シヴァ」や「ヴィシュヌ」などに譲る。
(イ)「ヤマ」:インド最古の聖典『リグ・ヴェーダ』において、最初の人間が「ヤマ」である。最初に死んだ人間で、死者の道を発見した。かくて「ヤマ」は冥界の王で最高天にある理想的な楽園を支配する。死者の霊はヤマの使者である二匹の犬に導かれこの楽園に赴き、祖先の霊たちとともに楽しく暮らす。後世になると「ヤマ」は死神そのものと考えられるようになった。「閻魔」(エンマ)と漢訳された

(ウ)「カーマ」:愛の神。矢を放ち愛欲をもたらす。元来「カーマ」の語は「愛欲・欲望」を意味する。
(エ)「クベーラ」:財産の神。ガネーシャと並んで人気がある。太鼓腹で財布と棍棒を手にしている。日本では「毘沙門天」(ビシャモンテン)。四天王の一尊の武神で「多聞天」または「北方天」とも呼ばれる。
(エ)-2 「ヤクシャ」(夜叉):財宝の神クベーラ(毘沙門天)の従者。ヤクシャは鬼神である反面、人間に恩恵をもたらす存在でもある。
(オ)「サラスバティー」:学問・英知・音楽の女神。日本では「弁才天(弁財天)」で、七福神 (恵比寿・大黒天・「毘沙門天クベーラ」・「弁財天サラスバティー」・布袋・福禄寿・寿老人)の一柱。

(カ) 「ブラフマー」:宇宙原理ブラフマンが擬人化されたもので、世界の創造をつかさどる神。叙事詩『マハーバーラタ』・『ラーマーヤナ』の時代には、シバ、ビシュヌに命令する最高神の地位を占めた。「ブラフマー」、「ビシュヌ」、「シバ」の三神がそれぞれ宇宙の創造、維持、破壊をつかさどる。

(キ)「シバ」(シヴァ):妃は「パールバティー」。「シバ」の特徴・性格は「シバの千の名前」に列挙される。シバは形の無い、無限の、超越的な、不変絶対の「ブラフマン」であり、同時に世界の根源的な「アートマン」(自我、魂)である。「ブラフマン」は宇宙の根理。自己の中心である「アートマン」はブラフマンと同一(等価)とされる(梵我一如)。
(ク)「パールバティー」シバ神の妃。「山に住む女神」(ヒマラヤ山の娘)の意味。慈愛に満ちる反面、時に恐ろしさも含む。例えば「ドゥルガー」(血なまぐさい女戦士;獅子に乗り10本の手に武器を持ち悪魔を殺す)、「カーリー」(牙のある口から長い舌をたらし黒く瘦せ細った姿; 4本の腕に捕縄パーシャ,頭蓋骨のついた杖カトバーンガ,剣,生首を持つ)。軍神「スカンダ」(クマーラ)、および象面の「ガネーシャ」(聖天)はパールバティーの息子。
(ク)-2 詩聖カーリダーサ(4、5世紀頃)は、シバとパールバティーとの恋愛を叙事詩『クマーラサンババ』(クマーラの誕生)に著した。ヒマラヤは娘のパールバティーに、苦行するシバの身の回りの世話をさせた。悪魔に悩まされた神々は、シバに軍神となるべき息子(軍神スカンダ;クマーラ)をつくらせるため、愛神カーマを派遣してシバに愛欲をおこさせようとした。カーマは怒ったシバに焼かれた。パールバティーは苦行に専念しシバの愛を得て彼と結ばれた。
(ケ)「ガネーシャ」:シバ神と妃パールバティーの間に生まれた「智慧と幸運の神」つまり「富や愛をもたらす幸福の神」。象の頭をもち鼠に乗る。日本では「聖天」(ショウデン)または「歓喜天」(カンギテン)。
(コ)「スカンダ」:戦争の神。シバとパールバティーの子とも言われる。軍神「インドラ」に替わり新たな神軍の最高指揮官となる。日本では「韋駄天」(イダテン)。

(サ)「ビシュヌ」:シヴァと並ぶヒンドゥー教の代表的な神。(Cf. ブラフマー、ビシュヌ、シヴァの三神がそれぞれ宇宙の創造、維持、破壊をつかさどる。)「ビシュヌ」の化身(アヴァターラ)は有名で、①魚マツヤ、②亀クールマ、③猪バラーハ、④人獅子(ヒトジシ)ヌリシンハ、⑤小人(侏儒)バーマナ、⑥パラシュラーマ、⑦ラーマ(後述)、⑧クリシュナ(後述)、⑨仏陀(後述)、⑩カルキ(後述)の10の化身がよく知られている
Cf.  ④「人獅子(ヒトジシ)ヌリシンハ(ナラシンハ)」:ヴィシュヌの第4の化身(アヴァターラ)で、ライオンの獣人(人獅子)である。アスラ族のヒラニヤカシプを退治した。
Cf.  ⑤「 小人(侏儒)バーマナ」:悪魔バリから世界を奪還するためにビシュヌは「バーマナ」となって、悪魔バリに自分が3歩歩く広さの土地を譲ってくれと依頼する。バリが承知すると,彼はもとの姿に戻り3歩歩いたが,それは天,地,地下の世界を闊歩するものであった。
Cf.  ⑥「パラシュラーマ」:ヴィシュヌの6番目の化身。聖仙ジャマダグニとレーヌカーの間に生れた子とされる。邪悪なクシャトリヤを滅ぼし,バラモン至上の社会をつくった。シヴァ神から武器の斧 パラシュを得た。
(シ)「ラクシュミー」:幸運・繁栄の女神。ビシュヌの妻。ビシュヌは10の化身を有するが、ラクシュミーもまたそれらにふさわしい姿になる。仏教における「吉祥天」(キチジョウテン)。

(ス) ⑦「ラーマ」:ビシュヌの第七番目の化身。叙事詩『ラーマーヤナ』の主人公。ラークシャサ(羅刹)の王(魔王)ラーバナとの戦いでは、ラーバナに捕まった妻シーターを、猿神ハヌマーンなどの援助によってランカー島(セイロン島)より奪還した。
(セ)「ハヌマーン」:猿の神。叙事詩『ラーマーヤナ』でラーマ王子が妻シーターを悪魔の王ラーバナから助け出すのに協力した。無限の尾をもち、空中を飛び回り、その活躍にラーマから永遠の命と永遠の若さを与えられた。

(ソ)⑧「クリシュナ」:ビシュヌ神の第八番目の化身。紀元前7世紀ころ実在した人物が神格化されたといわれる。ビシュヌと一体視され、さまざまなクリシュナ伝説が生まれ、ヒンドゥー教の神話の中で活躍がもっとも著しい。しばしば青い肌で表現される。叙事詩『マハーバーラタ』(バラタ族の戦争を物語る大史詩)の中で「クリシュナ」はヴィシュヌの化身として主要人物の一人である。『マハーバーラタ』の中の『バガバッド・ギーター』(神の詩)はパーンダヴァ軍の王子「アルジュナ」と、彼の導き手であり御者を務める「クリシュナ」との対話という形式をとる。

《参考4》 ヴィシュヌ神の化身(アヴァターラ)である⑨「仏陀」と⑩「カルキ」:ヒンドゥー教の終末思想!
A  「仏陀」はヴィシュヌの化身としてヒンドゥー教に受容されている。ヒンドゥー教は「仏教」をヒンドゥー教の一派であるとする。仏陀はヒンドゥー教の神とされる。
A-2  「仏陀」はヒンドゥー教の前身であるバラモン教の環境で育ったので、仏教にはバラモン教の要素が多く見られる。これは仏教と同時期に成立した「ジャイナ教」にも共通で、ジャイナ教も仏教と共にヒンドゥー教の一派とされる。
Cf. 「 ジャイナ教」は紀元前6-5世紀頃、仏陀とほぼ同時代にマハービーラによって創設された。「ジャイナ教」はアヒンサー(生きものを傷つけないこと、不殺生)の誓戒を柱とする厳格な禁欲主義で知られる。

A-3 「仏教」は(ジャイナ教も同様だが)祭祀とバラモンを極端に重視する「バラモン教」への批判として発展した。これに対し、バラモン教側では見直しや改革が盛んにおこなわれ、これがヒンドゥー教の成立・発展へと繋がる。

B ヴィシュヌの化身としての⑨「仏陀」は「仏教という異教を魔族に教えヴェーダから遠ざけて、魔族を惑わせる」という否定的な役割を演じる。
B-2  ⑨「仏陀」の登場はヒンドゥー教における世界の終末期である「カリ・ユガ」の到来を意味する。「カリ・ユガ」の時代の救世主がヴィシュヌの10番目の化身「カルキ」だ。「カリ・ユガ」は人間の時間では43万2千年続く。カリ・ユガの時代では人々はヴェーダの教え(「ヴェーダの法と正義」)から離れて宗教的に堕落し、神々は信仰されず、支配者は理性を失い、世界ではあらゆる悪が行わる。現在の私たちが生きる時代はこの「カリ・ユガ」に当たる。「カリ」は対立・不和・争いを意味し、またこの時代を支配し世界を悪で満たす「悪魔カリ」を指す。この「カリ」を倒すために登場する救世主がヴィシュヌの化身「カルキ」だ。「カリ・ユガ」の終末期、カルキは白馬に乗った騎士、又は馬頭の巨人として登場し、世界の悪を滅ぼす。世界を救い使命を果たしたカルキが天界に帰ると「カリ・ユガ」の時代は終わり、また法と正義で満たされた「クリタ・ユガ」の時代(172.8万年続く)が始まる。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする