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沖田瑞穂『すごい神話』42.「日本人にもなじみがあるインドの神――ヴェーダの神々」:ヴェーダ聖典に基づくアーリア人の宗教が「バラモン教」だ!最古の『リグ・ヴェーダ』は前1200年頃成立!

2023-10-16 15:52:02 | 日記
※沖田瑞穂(1977-)『すごい神話』(2022)第四章 インドの神話世界(42~52)

(1)ヒンドゥー教:最高神ヴィシュヌ(ビシュヌ)とシヴァ、民衆に人気のあるクリシュナ(ビシュヌ神の第八番目の化身)!
A  「ヒンドゥー教」では、最高神である「ヴィシュヌ」と「シヴァ」、そして民衆に人気のある「クリシュナ」は、現代でも信仰されている生きた神だ。

《参考1》「クリシュナ」:ビシュヌ神の第八番目の化身。紀元前7世紀ころ実在した人物が神格化されたといわれる。ビシュヌと一体視され、さまざまなクリシュナ伝説が生まれ、ヒンドゥー教の神話の中で活躍がもっとも著しい。しばしば青い肌で表現される。叙事詩『マハーバーラタ』(バラタ族の戦争を物語る大史詩)の中で「クリシュナ」はヴィシュヌの化身として主要人物の一人である。『マハーバーラタ』の中の『バガバッド・ギーター』(神の詩)はパーンダヴァ軍の王子「アルジュナ」と、彼の導き手であり御者を務める「クリシュナ」との対話という形式をとる。

《参考1-2》(a)世界が始まる前の原初の海では竜王アナンタに寝そべった「ヴィシュヌ」(ビシュヌ)の臍から一本の蓮の花が咲き、そこから「ブラフマー」が生まれ世界を創造する。(ただしこれはヴィシュヌ派の神話であり、もともとはブラフマーの臍からヴィシュヌが生まれたという神話だ。ヴィシュヌを至上の神とするヴィシュヌ派によってその役割が逆転した。)
(b)世界はその「ブラフマー」の1日の始まりの際に作られ、1日の終わりに破壊される。この「ブラフマーの1日」のうち「昼間」の時間は、人間の時間では「43億2千万年」だ。

《参考1-3》「ビシュヌ」(ヴィシュヌ):シヴァと並ぶヒンドゥー教の代表的な神。(Cf. ブラフマー、ビシュヌ、シヴァの三神がそれぞれ宇宙の創造、維持、破壊をつかさどる。)「ビシュヌ」の化身(アヴァターラ)は有名で、①魚マツヤ、②亀クールマ、③猪バラーハ、④人獅子(ヒトジシ)ヌリシンハ、⑤小人(侏儒)バーマナ、⑥パラシュラーマ、⑦ラーマ、⑧クリシュナ、⑨仏陀、⑩カルキの10の化身がよく知られている。

(2)インド=ヨーロッパ語族に属するアーリア人が、紀元前1500年頃カイバル峠を超えてインドに侵入!
B ヒンドゥー教が確立する以前、インドには「バラモン教」があり、バラモン教の聖典であるヴェーダの神々が崇拝されていた。バラモン教の担い手はインド=ヨーロッパ語族に属するアーリア人であり、紀元前1500年頃、カイバル峠を超えてインドに入り、馬・二輪戦車・青銅の武器で先住民と戦い、インダス川上流域に進出し領土を広げた。
《参考2》中央アジアの牧畜民であったアーリア人は、前1500年頃、インド北西部のパンジャブ地方に進入し、先住民(インダス文明をつくった)を征服した。 前1000年をすぎると、アーリア人(アーリヤ人)はより肥沃なインド東部のガンジス川の上流域へと移動し定住農耕生活が定着する。

《参考2-2》人類史上で最初に起きた文明としては、メソポタミア文明(開始は前3500から前3000年頃で、シュメール人による都市国家が多く形成された)、エジプト文明(前3000年頃エジプト第1王朝が成立)、インダス文明(紀元前2600年 - 紀元前1900年頃)、黄河文明の4つを「四大文明」あるいは「四大河文明」と(日本・中国では)呼ぶ。また「肥沃な三日月地帯」(東のペルシア湾からチグリス川・ユーフラテス川流域のメソポタミア、さらにシリアを経て西はパレスチナ、エジプトに至る半円形)は「文明のゆりかご」(Cradle of civilization)と呼ばれる。

(2)-2 ヴェーダ聖典(4ヴェーダ)を絶対の権威と仰ぐアーリア人の宗教が「バラモン教」だ!最古の『リグ・ヴェーダ』は紀元前1200年頃成立!他の3ヴェーダは紀元前1000~前800年頃成立!
C  インドに侵入したアーリア人の宗教である「バラモン教」の最古の聖典が『リグ・ヴェーダ』で紀元前1200年頃成立した。この頃、アーリア人は半農半牧の生活だった。
C-2  インダス川流域に居住していたアーリヤ人は紀元前1000~前800年頃次第にガンジス川流域に移動していく。そして次第に定住農耕生活へと移っていった。この頃に成立したのが『サーマ・ヴェーダ』(歌詠の集成)、『ヤジュル・ヴェーダ』(祭式に必要な文言の集成)、『アタルヴァ・ヴェーダ』(まじないの言葉の集成)だ。
C-3 これら3つのヴェーダに『リグ・ヴェーダ』を合わせて4ヴェーダと呼ばれる。

Cf. 「ヴェーダ」:インドの最古の文献の総称。「知識」を意味する。ヴェーダ祭式で讃歌を詠唱するホートリ祭官、祭歌を歌うウドゥガートリ祭官、祭式行為を実行するアドゥヴァルユ祭官の職掌のもと、それぞれ『リグ・ヴェーダ』『サーマ・ヴェーダ』『ヤジュル・ヴェーダ』の3伝承があり,さらに呪術を扱う『アタルヴァ・ヴェーダ』の伝承が加わる。各伝承は(1)讃歌,歌詞,祭詞,呪文を集めた「サンヒター」(本集)、(2)祭式の意味を解釈する「ブラーフマナ」(梵書)と(3)「アーラニヤカ」(森林書)、(4)哲学的思想を述べた「ウパニシャッド」(奥義書)の四つのジャンルからなる。普通「ヴェーダ」といえばそれぞれのサンヒターをさす。

Cf.   「ウパニシャッド哲学」:「ウパニシャッド」の思想の中心は、「ブラフマン」(宇宙我)と「アートマン」(個人我)の本質的一致(「梵我一如」)である。宇宙我は個人我の総和でなく、自ら常恒不変に厳存しつつ、しかも無数の個人我として現れる。
Cf. 「古ウパニシャッド」(13ウパニシャッド)は成立時期によって、以下に分類される。〈初期〉「古散文ウパニシャッド」(紀元前800-紀元前500年に成立)。〈中期〉「韻文ウパニシャッド」(紀元前500年-紀元前200年に成立)。〈後期〉「新散文ウパニシャッド」(紀元前200年以降に成立)。

C-4 これらヴェーダ聖典(4ヴェーダ)を絶対の権威と仰ぐアーリア人の宗教が「バラモン教」だ。
C-4-2  バラモン教は、ヴェーダに記されている「祭式」の忠実な執行を最も重要な義務と考えていた。例えば、祭司であるバラモンが日の出の儀式を怠ると、太陽が出てこないと考えるなど、「祭式」は宇宙の運行すら左右すると信じられていた。

(2)-3 「バラモン教」の最古の聖典『リグ・ヴェーダ』の神々!太陽神スーリヤ、戦神インドラ、冥界の王ヤマ(閻魔)、神酒ソーマ神(月の神)、火神アグニ、医薬の神アシュヴィン双神、「ヴァルナ」神(宇宙の秩序を支配する最高神、「水天」)、「サラスヴァティー」(河の女神、「弁才天」)、曙の女神「ウシャス」!
D 『リグ・ヴェーダ』には「太陽神スーリヤ」(仏教の「日天」)が登場する。太陽は昼間つねに万物の頭上にあるので、太陽神スーリヤは人々の善行悪行の一切を監視するとされた。

E 『リグ・ヴェーダ』で最も多くの讃歌をささげられているのは、「戦神インドラ」だ。水の怪物「ヴリトラ」を退治し水を解放したという「ヴリトラ退治」が特に名高い。
Cf.  最初期の神々への讃歌集『リグ・ヴェーダ』においては「インドラ神」に捧げる讃歌が約4分の1と最も多く、インドラ神はアーリア人を保護する理想的な戦士として描かれ、神々の王とされた。神酒ソーマを好み、強大な武器ヴァジュラ(金剛杵)を持つ。「雷」を象徴する英雄神だ。(仏教では「帝釈天」である。)ただしリグ・ヴェーダの時代には神々の中心だった「インドラ」も、時代が下り、「ヒンドゥー教」が成立した時代になれば、神々の中心の座は「シヴァ」や「ヴィシュヌ」などに譲る。

F  『リグ・ヴェーダ』における死の神(冥界の王)は「ヤマ」である。ヤマは「最初の人間」であり、したがって「最初の死者」だった。ヤマは死んで「死者の道」を発見した。以後人間は死ぬとヤマの使者である二匹の犬に導かれ「死者の道」を辿り、ヤマの支配する天界の楽園に行って、祖先の霊たちとともに楽しく暮らす。ヤマはヒンドゥー教に入ると、地獄の支配者としての側面を強めていく。(ヤマは仏教では「閻魔」エンマと漢訳された。)

G バラモン教では、ヴェーダの規定に基づいた祭式を行い、人々は神々と交感した。祭式の中心は浄化した神聖なる飲料ソーマを祭火に注いで神々にささげ、残りを祭官と出席者がのむことにあった。かくてソーマと祭火は神格化され神酒「ソーマ神」、そして「火神アグニ」として崇拝されるにいたった。
G-2  「ソーマ」は、祭式にもちいる聖なる飲料であり、原料の植物名であり、神格化された神の名であり、詩人たちの力の源、インドラ神の武勇の源である。
G-3  「ソーマ」はその効用として「不死をもたらす」「病を癒す」ので、「ソーマ神」は「不死」「蘇り」を象徴する「月」と結び付けられ、後に「月の神」とされた。

H 『リグ・ヴェーダ』において「インドラ」、「アグニ」、「ソーマ」に次いで多数の讃歌が捧げられている神が「アシュヴィン双神」(不離一体の双子神)である。彼女らは若く美しい神で「医薬の神」である。Ex.  チャバナという年老いた聖仙を老衰から救い青春を回復させた。
I  『リグ・ヴェーダ』の神々には、他に「ヴァルナ」(宇宙の秩序を支配する最高神、日本では「水天」)、「サラスヴァティー」(河の女神、日本では「弁才天」)、曙の女神「ウシャス」などがある。

Cf. 「ヴァルナ」神:ヴァルナは、古代インドの神であり、「ミトラ」神とならぶ最高神である。(a)「ヴァルナ」の起源は古く、紀元前14世紀頃のミタンニ・ヒッタイト条約文には、ミトラ神とヴァルナ神の名があげられている。 (b)しかしヴェーダの時代には「ヴァルナ」の地位は下がり始め、(b)-2 またインドラのように人々に親しまれる神にもならなかった。(c) 『リグ・ヴェーダ』では「ヴァルナ神」は、雷神インドラ、火神アグニとともに重要な位置にあり、天空神、司法神(契約と正義の神)、水神などの属性をもった。(c)-2  しかしこの段階ですでに「ブラフマー」神によって始源神としての地位を奪われていた。(d)「ヴァルナ」神と水との関係は強まり、やがてヴァルナは水の神、海上の神とされた。(d)-2「ヴァルナ」は蛇(竜)とも関連づけられ、『マハーバーラタ』の中ではナーガ(蛇神、竜王)達の王だとされる。(e) 「ヴァルナ」神が仏教に採り入れられた際には十二天の一つで西方を守護する「水天」となった。

Cf. 「ミトラ神」:古代アーリヤ人(インド・イラン人)の男神。光,真実,盟約をつかさどる。(ア)前15世紀にまでさかのぼる『リグ・ヴェーダ』は,「ミトラ」の名を伝える最古の文献であるが,そこでは太陽神ともされ,またソーマ酒や牝牛(メウシ)をめぐる神話と関係がある。(イ) 「ミトラ神」について、次に古い史料は前14世紀の「ボアズキョイ文書」であり,そこではミトラ神はヒッタイト人とミタンニ人の盟約の神として現れる。(ウ)イラン人のゾロアスター教の聖典『アベスター』では「ミトラ賛歌」においてミトラ神は死からの救い主、祝福を与える者、勝利者、戦士、牧場の主などと称される。
Cf. 「ゾロアスター教」:紀元前六世紀の予言者ゾロアスター(ザラスシュトラ、ツァラトゥストラ)を開祖とする古代ペルシアの民族宗教。『アベスタ』(『アヴェスター』)を経典とする。世の初めに善、悪二神が存在し、光明・生命・清浄の神アフラ=マズダと、暗黒・死・不浄の神アングラ=マイニュ(アーリマン)との戦場がこの世であるが、究極的には善神が勝つと説く。道徳的色彩が濃い。善神を象徴する聖火を拝し、死体を塔上に放置して鳥葬にする。3世紀初頭に成立したサーサーン朝ペルシアでは「ゾロアスター教」は国教とされ、サーサーン朝期に聖典『アヴェスター』が整備された。中国では拝火教と呼ばれた。

Cf. 「サラスバティー」神:学問・英知・音楽の女神。日本では「弁才天(弁財天)」で、七福神 (恵比寿・大黒天・「毘沙門天クベーラ」・「弁財天サラスバティー」・布袋・福禄寿・寿老人)の一柱。

Cf.  曙の女神「ウシャス」:天空神ディヤウスの娘で、夜の女神ラートリーの妹。太陽神スーリヤの母あるいは恋人といわれる。『リグ・ヴェーダ』に登場する女神の中では最も多くの讃歌を持ち、独立讃歌は20を数える。
Cf.  天空神「ディヤウス」:雷、雨、豊穣を司る神。地母神プリティヴィーの夫であり、曙の女神ウシャス、火神アグニ、戦神(雷神)インドラの父。『リグ・ヴェーダ』では、諸々の河はディヤウスの末娘とされる。 他の印欧語族の天空神、ギリシア神話のゼウス、ローマ神話のユピテル、北欧神話のテュールと起源、語源を共有する。初めは主神であったが、インドラなどにその地位を奪われていく。
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