※沖田瑞穂(1977-)『すごい神話』(2022)第三章 女神と女性の神話(31~41)
(1)『鶴女房』(『鶴の恩返し』)!
A 日本の昔話『鶴女房』(『鶴の恩返し』)では「機を織る部屋を開けて見ないでくださいね」と妻が言ったのに、男(夫)は見てしまい、女房(妻)が鶴であることが明らかとなり、妻(鶴)を失う。「見せるな(or見るな)の禁」を男(夫)が破った。
A-2 これは「異類婚姻譚」である。人間界と異類界の境界が「隠される」ことによって人間と異類の結婚が可能だった。「見せるな(or見るな)の禁」は人間界と異類界の境界を「隠す」掟だ。〈人間か異類かの所属〉すなわち〈人間界と異類界の境界〉を「隠す」ことで成り立っていた結婚が、「見せるな(or見るな)の禁」を破ることで、〈人間か異類かの所属〉すなわち〈人間界と異類界の境界〉が顕在化し、別離に至る。
(2)インド神話:「カエル女房」!
B インドの昔話(神話)に「カエル女房」がある。パリクシット王は蓮池のほとりで一人の美しい娘を見初め、結婚を申し込んだ。娘は「私に水を見せないでください」という条件で承諾した。二人は楽しく暮らしていたが、ある時、王宮内に池があるのを見て、王が妃に「池の中に入りなさい」と言った。妃は池に入り、そのまま戻ってこなかった。王は狂ったようにあちこち探し、池の水を抜くと、そこにカエルがいた。王はカエルが妃を呑み込んだと思い王国のすべてのカエルの殺戮を命じた。大殺戮のさなか、カエルの王が苦行者に変身し王のもとに行き告白した。「王妃であった女は自分の娘のスショーバナーで、人間の王をだます悪い癖があるのだ」と。王が「妃をもどしてください」と頼むので、カエルの王は娘を王に与えた。
B-2 これも「異類婚姻譚」である。カエルのスショーバナーは「自分が属する異類世界のもの(水)を見せないでください」と言った。ところが人間界と異類界の境界を「隠す」ことで成りたつ結婚が、「見せるなの禁」を破ることで、異類界(カエル世界=水)が顕在化し、異類であるカエルは異類界(水)にもどり、人間の王との別離に至った。
《感想》カエルの王の「告白」により王妃がカエルだと知ったのに、やはり「カエル女房」(王妃)スショーバナーを愛するパリクシット王は、よほどこの女房(カエルの王の娘)を気に入っていたのだ!
《参考》日本で「蛙女房」とは、目を妻(メ)にかけて、蛙の目は上にあるところから、主人より年上の女房を言う。
(3)インド神話:天女ウルヴァシー!
C これもインドの「異類婚姻譚」だ。天女ウルヴァシーが、人間の王プルーラヴァスと恋に落ち、結婚する。結婚の時に天女ウルヴァシーは「あなたの裸身を私に見せてはならない」と約束を交わさせた。二人は長く幸せに暮らし、やがてウルヴァシーは子を宿した。これに半神族のガンダルヴァたちが嫉妬して、ウルヴァシーのかわいがっていた子羊を盗んだ。ウルヴァシーの悲嘆の声を聞いて裸で駆け付けたプルーラヴァスを、ガンダルヴァたちが雷光で照らし出した。こうしてウルヴァシーは夫の裸身を見てしまい、姿を消した。プルーラヴァスは半狂乱になって妻を捜し出し、苦難の末に妻を取り戻した。
C-2 「異類婚姻譚」では結婚は、人間界と異類界の境界を「隠す」ことで成り立つ。天女にとって異類である人間の王プルーラヴァスは、「異類」の証明である人間の「裸身」を、天女ウルヴァシーに見せてはならない。「見せるなの禁」を破り、人間の「裸身」を見せたことで、天女にとっての異類界(人間世界)が顕在化し、天女ウルヴァシーは人間界を去り、姿を消した。
(1)『鶴女房』(『鶴の恩返し』)!
A 日本の昔話『鶴女房』(『鶴の恩返し』)では「機を織る部屋を開けて見ないでくださいね」と妻が言ったのに、男(夫)は見てしまい、女房(妻)が鶴であることが明らかとなり、妻(鶴)を失う。「見せるな(or見るな)の禁」を男(夫)が破った。
A-2 これは「異類婚姻譚」である。人間界と異類界の境界が「隠される」ことによって人間と異類の結婚が可能だった。「見せるな(or見るな)の禁」は人間界と異類界の境界を「隠す」掟だ。〈人間か異類かの所属〉すなわち〈人間界と異類界の境界〉を「隠す」ことで成り立っていた結婚が、「見せるな(or見るな)の禁」を破ることで、〈人間か異類かの所属〉すなわち〈人間界と異類界の境界〉が顕在化し、別離に至る。
(2)インド神話:「カエル女房」!
B インドの昔話(神話)に「カエル女房」がある。パリクシット王は蓮池のほとりで一人の美しい娘を見初め、結婚を申し込んだ。娘は「私に水を見せないでください」という条件で承諾した。二人は楽しく暮らしていたが、ある時、王宮内に池があるのを見て、王が妃に「池の中に入りなさい」と言った。妃は池に入り、そのまま戻ってこなかった。王は狂ったようにあちこち探し、池の水を抜くと、そこにカエルがいた。王はカエルが妃を呑み込んだと思い王国のすべてのカエルの殺戮を命じた。大殺戮のさなか、カエルの王が苦行者に変身し王のもとに行き告白した。「王妃であった女は自分の娘のスショーバナーで、人間の王をだます悪い癖があるのだ」と。王が「妃をもどしてください」と頼むので、カエルの王は娘を王に与えた。
B-2 これも「異類婚姻譚」である。カエルのスショーバナーは「自分が属する異類世界のもの(水)を見せないでください」と言った。ところが人間界と異類界の境界を「隠す」ことで成りたつ結婚が、「見せるなの禁」を破ることで、異類界(カエル世界=水)が顕在化し、異類であるカエルは異類界(水)にもどり、人間の王との別離に至った。
《感想》カエルの王の「告白」により王妃がカエルだと知ったのに、やはり「カエル女房」(王妃)スショーバナーを愛するパリクシット王は、よほどこの女房(カエルの王の娘)を気に入っていたのだ!
《参考》日本で「蛙女房」とは、目を妻(メ)にかけて、蛙の目は上にあるところから、主人より年上の女房を言う。
(3)インド神話:天女ウルヴァシー!
C これもインドの「異類婚姻譚」だ。天女ウルヴァシーが、人間の王プルーラヴァスと恋に落ち、結婚する。結婚の時に天女ウルヴァシーは「あなたの裸身を私に見せてはならない」と約束を交わさせた。二人は長く幸せに暮らし、やがてウルヴァシーは子を宿した。これに半神族のガンダルヴァたちが嫉妬して、ウルヴァシーのかわいがっていた子羊を盗んだ。ウルヴァシーの悲嘆の声を聞いて裸で駆け付けたプルーラヴァスを、ガンダルヴァたちが雷光で照らし出した。こうしてウルヴァシーは夫の裸身を見てしまい、姿を消した。プルーラヴァスは半狂乱になって妻を捜し出し、苦難の末に妻を取り戻した。
C-2 「異類婚姻譚」では結婚は、人間界と異類界の境界を「隠す」ことで成り立つ。天女にとって異類である人間の王プルーラヴァスは、「異類」の証明である人間の「裸身」を、天女ウルヴァシーに見せてはならない。「見せるなの禁」を破り、人間の「裸身」を見せたことで、天女にとっての異類界(人間世界)が顕在化し、天女ウルヴァシーは人間界を去り、姿を消した。