※沖田瑞穂(1977-)『すごい神話』(2022)第三章 女神と女性の神話(31~41)
《参考5》ヒンドゥー教の終末思想!
インドでは紀元前8世紀頃に奥義書「ウパニシャッド」が編まれ、このころに「輪廻思想」(※循環宇宙論)が成立した。ヒンドゥー教の世界観は「輪廻思想」に基づき、世界の創造と破壊が繰り返されるとする。
Cf. 「ウパニシャッド」:サンスクリットで書かれたヴェーダの「奥義書」。「ヴェーダーンタ」とも言われる。約200以上ある書物の総称。仏教以前、紀元前8世紀から、紀元後16世紀に作られたものまである。ウパニシャッドの最も独創的要素は、「仏教」興起以前に属す。ウパニシャッドの語源は「近くに座す」であり秘儀・秘説という意味だ。その中でも10数点の古い時代に成立したものを特に「古ウパニシャッド」と呼ぶ。「古ウパニシャッド」はゴータマ・ブッダ(前6-4世紀頃)以前・以後に成立した。
Cf. 「ヴェーダ」:インドの最古の文献の総称。「知識」を意味する。ヴェーダ祭式で讃歌を詠唱するホートリ祭官、祭歌を歌うウドゥガートリ祭官、祭式行為を実行するアドゥヴァルユ祭官の職掌のもと、それぞれ『リグ・ヴェーダ』『サーマ・ヴェーダ』『ヤジュル・ヴェーダ』の3伝承があり,さらに呪術を扱う『アタルヴァ・ヴェーダ』の伝承が加わる。各伝承は(1)讃歌,歌詞,祭詞,呪文を集めた「サンヒター」(本集)、(2)祭式の意味を解釈する「ブラーフマナ」(梵書)と(3)「アーラニヤカ」(森林書)、(4)哲学的思想を述べた「ウパニシャッド」(奥義書)の四つのジャンルからなる。普通「ヴェーダ」といえばそれぞれのサンヒターをさす。
Cf. 「ウパニシャッド哲学」:「ウパニシャッド」の思想の中心は、「ブラフマン」(宇宙我)と「アートマン」(個人我)の本質的一致(「梵我一如」)である。宇宙我は個人我の総和でなく、自ら常恒不変に厳存しつつ、しかも無数の個人我として現れる。
Cf. 「古ウパニシャッド」(13ウパニシャッド)は成立時期によって、以下に分類される。〈初期〉「古散文ウパニシャッド」(紀元前800-紀元前500年に成立)。〈中期〉「韻文ウパニシャッド」(紀元前500年-紀元前200年に成立)。〈後期〉「新散文ウパニシャッド」(紀元前200年以降に成立)。
《参考5-2》ヒンドゥー教の終末思想!(続)
(a)世界が始まる前の原初の海では竜王アナンタに寝そべった「ヴィシュヌ」の臍から一本の蓮の花が咲き、そこから「ブラフマー」が生まれ世界を創造する。(ただしこれはヴィシュヌ派の神話であり、もともとはブラフマーの臍からヴィシュヌが生まれたという神話だ。ヴィシュヌを至上の神とするヴィシュヌ派によってその役割が逆転した。)
(b)世界はその「ブラフマー」の1日の始まりの際に作られ、1日の終わりに破壊される。この「ブラフマーの1日」のうち「昼間」の時間は、人間の時間では「43億2千万年」だ。
(c)ヒンドゥー教の時間を示す概念には以下のようなものがある。
・「1神年」=360年。神々にとっての1日は人間の1年にあたり、人間の360年が神にとっての1年となる。
・「マハーユガ」=12000神年(人間の時間で432万年)。
・「カルパ」(劫)=1000マハーユガ(1200万神年;人間の時間で43億2千万年)。ブラフマーの1日は昼間が1カルパ(43億2千万年)、夜1カルパ(43億2千万年)の2カルパ(86億4千万年)からなる。(Cf. 弥勒はゴータマ=釈迦の入滅後56億7千万年後にこの世界に現われる。)
(c)-2「ユガ」は、12,000神年=432万年にあたる「マハーユガ」を前から4:3:2:1の割合で分割した期間である。それぞれの「ユガ」は段々と悪い世界になる。「ヴェーダの法と正義」もそれぞれの期間で4:3:2:1の比率で減り、悪がはびこる。
1.「クリタ・ユガ」(4800神年)(172.8万年)すべての法と正義が保たれ、人は病気にならず、400年の寿命を持つ。
2.「トレター・ユガ」(3600神年)(129.6万年):法と正義が4分の3まで減った世界。人間の寿命は300年。
3. 「ドヴァーパラ・ユガ」(2400神年)(86.4万年):法と正義が半分になり、その分悪がはびこる世界。人間の寿命は200年。
4. 「 カリ・ユガ」(1200神年)(43.2万年):法と正義が4分の1まで減った世界。人々は神から遠ざかり、悪が世界を支配する。人間の寿命は100年になる。「カリ・ユガ」は人間の時間では43万2千年続く。カリ・ユガの時代では人々はヴェーダの教え(「ヴェーダの法と正義」)から離れて宗教的に堕落し、神々は信仰されず、支配者は理性を失い、世界ではあらゆる悪が行わる。現在の私たちが生きる時代はこの「カリ・ユガ」に当たる。「カリ」は対立・不和・争いを意味し、またこの時代を支配し世界を悪で満たす「悪魔カリ」を指す。この「カリ」を倒すために登場する救世主がヴィシュヌの化身「カルキ」だ。「カリ・ユガ」の終末期、カルキは白馬に乗った騎士、又は馬頭の巨人として登場し、世界の悪を滅ぼす。世界を救い使命を果たしたカルキが天界に帰ると「カリ・ユガ」の時代は終わり、また法と正義で満たされた「クリタ・ユガ」の時代が始まる。
(c)-3 こうしてひとつの「マハーユガ」(12000神年;人間の時間で432万年)が終わるが、ブラフマーの一日(昼間)が終わるのは1000マハーユガ(「1カルパ」;1200万神年;人間の時間で43億2千万年)が経った時だ。ブラフマーの一日(昼間)の終わりには地下・地上・天上の三界で生物が死に絶え、世界はヴィシュヌの炎によって焼き尽くされ、続いてヴィシュヌが吐き出した雲から降る雨で水に沈められる。その後ヴィシュヌは雲を吹き払ってブラフマーを飲み込み、原初の海で竜王アナンタに寝そべる。こうして世界が始まる前の状態へと戻り、1カルパ(43億2千万年)の眠り(ブラフマーの1日のうちの夜にあたる)の後にまた新たな世界(つまりブラフマーの新たな1日の昼と夜)が始まる。(ブラフマーの1日のうち昼は1カルパ=1000マハーユガ;1200万神年=人間の時間で43億2千万年。またブラフマーの1日のうちブラフマーが眠る夜も1カルパ=人間の時間で43億2千万年。)
(c)-4またブラフマーの一生はブラフマーの時間での100年(ブラフマーの1日は2カルパ86億4千万年;ブラフマーの1日のうちの昼間43億2千万年の終わりに世界は滅亡し世界が始まる前の状態へと戻る;ブラフマーの1年は360日=720カルパ;ブラフマーの一生は100年すなわち72000カルパ、これは人間では72000×43.2億年= 311兆400億年)とされており、ブラフマーの一生(311兆400億年)が終わる際には世界はより大きな規模で破壊され、最終的には宇宙の根本原質であるヴィシュヌ自身に飲み込まれる。そしてブラフマーは改めてヴィシュヌの臍から生まれなおし、世界の創造を始める。(※これは「循環宇宙論」である。)
(c)-5 世界の創造・維持・破壊はブラフマーの1日(昼間43億2千万年)ごとに起こる。世界の破壊消滅後、その日の夜間43億2千万年ブラフマーは寝る。ブラフマーの1年は360日だから世界の創造・維持・破壊が360回起こる。ブラフマーの一生は100年だから世界の創造・維持・破壊が3万6000回起こる。(ブラフマーの一生は311兆400億年だ。)そしてブラフマーの新たな1生(世界の創造・維持・破壊が3万6000回であり、311兆400億年だ)がまた始まる。おそるべき「輪廻思想」(循環宇宙論)だ!
《参考5》ヒンドゥー教の終末思想!
インドでは紀元前8世紀頃に奥義書「ウパニシャッド」が編まれ、このころに「輪廻思想」(※循環宇宙論)が成立した。ヒンドゥー教の世界観は「輪廻思想」に基づき、世界の創造と破壊が繰り返されるとする。
Cf. 「ウパニシャッド」:サンスクリットで書かれたヴェーダの「奥義書」。「ヴェーダーンタ」とも言われる。約200以上ある書物の総称。仏教以前、紀元前8世紀から、紀元後16世紀に作られたものまである。ウパニシャッドの最も独創的要素は、「仏教」興起以前に属す。ウパニシャッドの語源は「近くに座す」であり秘儀・秘説という意味だ。その中でも10数点の古い時代に成立したものを特に「古ウパニシャッド」と呼ぶ。「古ウパニシャッド」はゴータマ・ブッダ(前6-4世紀頃)以前・以後に成立した。
Cf. 「ヴェーダ」:インドの最古の文献の総称。「知識」を意味する。ヴェーダ祭式で讃歌を詠唱するホートリ祭官、祭歌を歌うウドゥガートリ祭官、祭式行為を実行するアドゥヴァルユ祭官の職掌のもと、それぞれ『リグ・ヴェーダ』『サーマ・ヴェーダ』『ヤジュル・ヴェーダ』の3伝承があり,さらに呪術を扱う『アタルヴァ・ヴェーダ』の伝承が加わる。各伝承は(1)讃歌,歌詞,祭詞,呪文を集めた「サンヒター」(本集)、(2)祭式の意味を解釈する「ブラーフマナ」(梵書)と(3)「アーラニヤカ」(森林書)、(4)哲学的思想を述べた「ウパニシャッド」(奥義書)の四つのジャンルからなる。普通「ヴェーダ」といえばそれぞれのサンヒターをさす。
Cf. 「ウパニシャッド哲学」:「ウパニシャッド」の思想の中心は、「ブラフマン」(宇宙我)と「アートマン」(個人我)の本質的一致(「梵我一如」)である。宇宙我は個人我の総和でなく、自ら常恒不変に厳存しつつ、しかも無数の個人我として現れる。
Cf. 「古ウパニシャッド」(13ウパニシャッド)は成立時期によって、以下に分類される。〈初期〉「古散文ウパニシャッド」(紀元前800-紀元前500年に成立)。〈中期〉「韻文ウパニシャッド」(紀元前500年-紀元前200年に成立)。〈後期〉「新散文ウパニシャッド」(紀元前200年以降に成立)。
《参考5-2》ヒンドゥー教の終末思想!(続)
(a)世界が始まる前の原初の海では竜王アナンタに寝そべった「ヴィシュヌ」の臍から一本の蓮の花が咲き、そこから「ブラフマー」が生まれ世界を創造する。(ただしこれはヴィシュヌ派の神話であり、もともとはブラフマーの臍からヴィシュヌが生まれたという神話だ。ヴィシュヌを至上の神とするヴィシュヌ派によってその役割が逆転した。)
(b)世界はその「ブラフマー」の1日の始まりの際に作られ、1日の終わりに破壊される。この「ブラフマーの1日」のうち「昼間」の時間は、人間の時間では「43億2千万年」だ。
(c)ヒンドゥー教の時間を示す概念には以下のようなものがある。
・「1神年」=360年。神々にとっての1日は人間の1年にあたり、人間の360年が神にとっての1年となる。
・「マハーユガ」=12000神年(人間の時間で432万年)。
・「カルパ」(劫)=1000マハーユガ(1200万神年;人間の時間で43億2千万年)。ブラフマーの1日は昼間が1カルパ(43億2千万年)、夜1カルパ(43億2千万年)の2カルパ(86億4千万年)からなる。(Cf. 弥勒はゴータマ=釈迦の入滅後56億7千万年後にこの世界に現われる。)
(c)-2「ユガ」は、12,000神年=432万年にあたる「マハーユガ」を前から4:3:2:1の割合で分割した期間である。それぞれの「ユガ」は段々と悪い世界になる。「ヴェーダの法と正義」もそれぞれの期間で4:3:2:1の比率で減り、悪がはびこる。
1.「クリタ・ユガ」(4800神年)(172.8万年)すべての法と正義が保たれ、人は病気にならず、400年の寿命を持つ。
2.「トレター・ユガ」(3600神年)(129.6万年):法と正義が4分の3まで減った世界。人間の寿命は300年。
3. 「ドヴァーパラ・ユガ」(2400神年)(86.4万年):法と正義が半分になり、その分悪がはびこる世界。人間の寿命は200年。
4. 「 カリ・ユガ」(1200神年)(43.2万年):法と正義が4分の1まで減った世界。人々は神から遠ざかり、悪が世界を支配する。人間の寿命は100年になる。「カリ・ユガ」は人間の時間では43万2千年続く。カリ・ユガの時代では人々はヴェーダの教え(「ヴェーダの法と正義」)から離れて宗教的に堕落し、神々は信仰されず、支配者は理性を失い、世界ではあらゆる悪が行わる。現在の私たちが生きる時代はこの「カリ・ユガ」に当たる。「カリ」は対立・不和・争いを意味し、またこの時代を支配し世界を悪で満たす「悪魔カリ」を指す。この「カリ」を倒すために登場する救世主がヴィシュヌの化身「カルキ」だ。「カリ・ユガ」の終末期、カルキは白馬に乗った騎士、又は馬頭の巨人として登場し、世界の悪を滅ぼす。世界を救い使命を果たしたカルキが天界に帰ると「カリ・ユガ」の時代は終わり、また法と正義で満たされた「クリタ・ユガ」の時代が始まる。
(c)-3 こうしてひとつの「マハーユガ」(12000神年;人間の時間で432万年)が終わるが、ブラフマーの一日(昼間)が終わるのは1000マハーユガ(「1カルパ」;1200万神年;人間の時間で43億2千万年)が経った時だ。ブラフマーの一日(昼間)の終わりには地下・地上・天上の三界で生物が死に絶え、世界はヴィシュヌの炎によって焼き尽くされ、続いてヴィシュヌが吐き出した雲から降る雨で水に沈められる。その後ヴィシュヌは雲を吹き払ってブラフマーを飲み込み、原初の海で竜王アナンタに寝そべる。こうして世界が始まる前の状態へと戻り、1カルパ(43億2千万年)の眠り(ブラフマーの1日のうちの夜にあたる)の後にまた新たな世界(つまりブラフマーの新たな1日の昼と夜)が始まる。(ブラフマーの1日のうち昼は1カルパ=1000マハーユガ;1200万神年=人間の時間で43億2千万年。またブラフマーの1日のうちブラフマーが眠る夜も1カルパ=人間の時間で43億2千万年。)
(c)-4またブラフマーの一生はブラフマーの時間での100年(ブラフマーの1日は2カルパ86億4千万年;ブラフマーの1日のうちの昼間43億2千万年の終わりに世界は滅亡し世界が始まる前の状態へと戻る;ブラフマーの1年は360日=720カルパ;ブラフマーの一生は100年すなわち72000カルパ、これは人間では72000×43.2億年= 311兆400億年)とされており、ブラフマーの一生(311兆400億年)が終わる際には世界はより大きな規模で破壊され、最終的には宇宙の根本原質であるヴィシュヌ自身に飲み込まれる。そしてブラフマーは改めてヴィシュヌの臍から生まれなおし、世界の創造を始める。(※これは「循環宇宙論」である。)
(c)-5 世界の創造・維持・破壊はブラフマーの1日(昼間43億2千万年)ごとに起こる。世界の破壊消滅後、その日の夜間43億2千万年ブラフマーは寝る。ブラフマーの1年は360日だから世界の創造・維持・破壊が360回起こる。ブラフマーの一生は100年だから世界の創造・維持・破壊が3万6000回起こる。(ブラフマーの一生は311兆400億年だ。)そしてブラフマーの新たな1生(世界の創造・維持・破壊が3万6000回であり、311兆400億年だ)がまた始まる。おそるべき「輪廻思想」(循環宇宙論)だ!