DIARY yuutu

yuuutunna toki no nikki

沖田瑞穂『すごい神話』44.「悠久の時を生きるヴィシュヌ――ヴィシュヌとシヴァはどちらが偉い? 1」:「悠久の時を生きる」ヴィシュヌが、「生成と消滅を繰り返す」シヴァよりも偉大だ!

2023-10-25 17:07:08 | 日記
※沖田瑞穂(1977-)『すごい神話』(2022)第四章 インドの神話世界(42~52)

ヒンドゥー教の最高神の中でも勢力を二分するヴィシュヌとシヴァ。どちらがより偉いのか?まず「ヴィシュヌが最も偉大だ」とする神話がある。この神話は「生成と消滅を繰り返すシヴァ」よりも、「悠久の時を生きるヴィシュヌ」の方がより偉大だと述べる。

A 「神々の王」インドラが、ものづくりの神ヴィシュヴァカルマンに宮殿の造営を命じた。インドラの要求は際限なく、壮麗な宮殿をヴィシュヴァカルマンが造るたびに、さらに立派な宮殿を建てるよう命じた。
A-2  たまりかねたヴィシュヴァカルマンは「ブラフマー神」に助けを求めた。
A-3  ブラフマー神は、「ヴィシュヌ神」のもとへ赴いて助けを乞うた。

B その翌朝、インドラの宮殿に10歳ほどの大変美しい少年(ヴィシュヌ神)がやってきた。少年は王宮の広間に入ってきた蟻の行列を見て、「神々の王」インドラに言った。「1匹1匹の蟻は、前世で1度は『神々の王』であったものです。ですがその後、多くの命を繰り返し生きるうちに、みな蟻になったのです。」
B-2  インドラは、それまで輝かしい栄光に包まれていた自分が、無にも等しい小さな存在になったように感じた。インドラは「際限なく壮麗な宮殿を造らせたい」との自分の欲望の無意味に気づく。

C そこに一人の胸毛をもった苦行者(シヴァ神)が現れた。苦行者は言った。「私の胸毛の1本が抜けるごとに、1人の『神々の王』インドラの世が終わります。すでに胸毛の半分がなくなりました。胸毛の残りが抜けると『創造神ブラフマー』の命が終わり、私(シヴァ神)も消滅します。」
C-2  「1人のブラフマー神の命の長さは、『ヴィシュヌ神』のまばたきの間にすぎません。」
C-3  「ましてや、ブラフマー神以下の神々も、人間も、泡のように生まれて消えるだけです。」
C-4  このように「輪廻転生」の思想においては、人間も神々も、生まれては死に、死んでは生まれる。現世は儚く短いのだ。

D 苦行者(シヴァ神)が姿を消すと、少年(ヴィシュヌ神)の姿も消えた。あとに残されたインドラからは「宮殿をもっと壮麗にしたい」との際限ない欲望はすっかり失われた。

E  この神話では「生成と消滅を繰り返すシヴァ神」よりも、「悠久の時を生きるヴィシュヌ神」の方がより偉大だと述べる。
E-2  1人の「ブラフマー神」の命の長さは、1人の「苦行者(シヴァ神)」と同じである。ところが、その長さはなんと「ヴィシュヌ神」の「まばたき」の間にすぎない。
《感想》ここでは「ヴィシュヌ神」が、「ブラフマー神」よりも、また「シヴァ神」よりも、悠久・偉大だと主張されている。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

沖田瑞穂『すごい神話』43.「三人の最高神が司る世界――ヒンドゥー教の神話」(その2):ブラフマー神、ヴィシュヌ神、シヴァ神の「トリムールティ」(三神一体)の教理!

2023-10-25 11:14:36 | 日記
※沖田瑞穂(1977-)『すごい神話』(2022)第四章 インドの神話世界(42~52)

(3)ブラフマー神:ヴィシュヌとシヴァの二神に比べて影が薄い!
A ヒンドゥー教は多神教であるが、その頂点に立つのがブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァという三柱の最高神である。
A-2  ブラフマー神は、ヴィシュヌとシヴァの二神に比べて影が薄く、ヴィシュヌとシヴァがヒンドゥウ教の中で勢力を二分している。
A-3  ヴィシュヌ神は『ヴェーダ』にも現われるが、『ヴェーダ』ではそれほど重要な位置を占めていない。
★ブラフマー神

《参考》「ブラフマー」:宇宙原理ブラフマンが擬人化されたもので、世界の創造をつかさどる神。叙事詩『マハーバーラタ』・『ラーマーヤナ』の時代には、シヴァ、ヴィシュヌに命令する最高神の地位を占めた。「ブラフマー」、「ヴィシュヌ」、「シヴァ」の三神がそれぞれ宇宙の創造、維持、破壊をつかさどる。

(4)ビシュヌ神:十の「アヴァターラ」(化身)!
B 「ヒンドゥー教」に至って最高神の座を占めるようになったヴィシュヌ神の最大の特徴は、「アヴァターラ」(化身)を持つことだ。ヴィシュヌ神は、①魚「マツヤ」、②亀「クールマ」、③猪「バラーハ」、④人獅子(ヒトジシ)「ヌリシンハ」、⑤小人(侏儒)「バーマナ」などに変身して何度も世界の危機を救った。
B-2  ヴィシュヌ神のアヴァターラには、このほかに⑦『ラーマーヤナ』の主人公ラーマ王子、⑧『マハーバーラタ』で活躍する英雄クリシュナ、⑨仏教の開祖である「ブッダ」などがある。
B-3  また⑩未来において人々を救済する「カルキ」という化身もある。このカルキは、仏教において未来に現れる仏、弥勒菩薩からの影響があると言われている。
★ヴィシュヌ神

《参考》「ビシュヌ神」の化身(アヴァターラ)は有名で、①魚「マツヤ」、②亀「クールマ」、③猪「バラーハ」、④人獅子(ヒトジシ)「ヌリシンハ」、⑤小人(侏儒)「バーマナ」、⑥斧を持った大英雄「パラシュラーマ」、⑦「ラーマ」(叙事詩『ラーマーヤナ』の主人公)、⑧「クリシュナ」(『マハーバーラタ』の中の『バガバッド・ギーター』は王子「アルジュナ」と導き手かつ御者の「クリシュナ」との対話という形式をとる)、⑨「仏陀」、⑩「カルキ」(白馬に乗った騎士または馬頭の巨人で、世界の終末期である「カリ・ユガ」の時代の救世主だ)の10の化身がよく知られている。
★ヴィシュヌ神と10の化身

《参考(続)》なおビシュヌの妻「ラクシュミー」は幸運・繁栄の女神。ビシュヌは10の化身を有するが、ラクシュミーもまたそれらにふさわしい姿になる。仏教における「吉祥天」(キチジョウテン)。
★ラクシュミー

Cf. ①魚「マツヤ」:ヴィシュヌの第1の化身。「マヌ」が守ってあげた小さな金色の魚マツヤは、どんどん成長し、巨大魚となった。ある日「マツヤ」が「7日後に大洪水が起こり全ての命を滅ぼす」と予言した。マヌは巨大魚マツヤがヴィシュヌの化身であることに気づく。「マツヤ」がマヌに「船を用意して七人の聖仙と全ての種子を乗せるように」言い、魚は姿を消した。やがて大洪水が起こり、マツヤ(ヴィシュヌの化身)はマヌの船にヴァースキ(巨大な蛇;竜王)を巻きつけてヒマラヤの山頂まで引張った。こうして「マヌ」は生き残り「人類の始祖」となり、地上に生命を再生させた。
★マツヤ

Cf.  ②亀「クールマ」:乳海攪拌の際、攪拌棒に用いられたマンダラ山を海底で支えた巨大な亀。ヴィシュヌの第2の化身。
★クールマ

Cf.  ③猪「バラーハ(ヴァラーハ)」:ヴィシュヌ神の第3の化身。アスラ(悪魔)族のヒラニヤークシャによって、大地(地母神プリティヴィー)が海底に沈められてしまった時、ヴィシュヌ神の鼻孔より現れた猪「ヴァラーハ」が、牙に引っかけて大地を引き上げ、ヒラニヤークシャと1000年もの間の戦いの末、勝利を収めた。
★ヴァラーハ

Cf.  ④人獅子(ヒトジシ)「ヌリシンハ(ナラシンハ)」:ヴィシュヌの第4の化身(アヴァターラ)で、ライオンの獣人(人獅子)である。アスラ族のヒラニヤカシプを退治した。(ヒラニヤカシプの体を素手で引き裂いて殺した。)
★ナラシンハ

Cf.  ⑤ 小人(侏儒)「バーマナ(ヴァーマナ)」:ヴィシュヌの5番目の化身。悪魔バリ(マハーバリ)から世界を奪還するためにビシュヌは「バーマナ」となって、悪魔バリに自分が3歩歩く広さの土地を譲ってくれと依頼する。バリが承知すると,彼はもとの姿に戻り3歩歩いたが,それは天,地,地下の世界を闊歩するものであった。
★ヴァーマナ(ヴァーマナは3歩目でバリの頭を踏み付け、バリは不死身にされ今も地底世界に棲む)

Cf.  ⑥聖仙「パラシュラーマ」:ヴィシュヌの6番目の化身。聖仙ジャマダグニとレーヌカーの間に生れた子とされる。インド神話の「斧を持った大英雄」。邪悪なクシャトリヤを滅ぼし,バラモン至上の社会をつくった。シヴァ神から武器の斧 「パラシュ」を得た。
★パラシュラーマ

Cf. ⑦「ラーマ」:ビシュヌの第7番目の化身。叙事詩『ラーマーヤナ』の主人公。ラークシャサ(羅刹)の王(魔王)ラーバナとの戦いでは、ラーバナに捕まった妻シーターを、猿神ハヌマーンなどの援助によってランカー島(セイロン島)より奪還した。なお、ラーマ王子が妻シーターを悪魔の王ラーバナから助け出すのに協力した「ハヌマーン」(猿の神)は、無限の尾をもち、空中を飛び回り、その活躍によってラーマ(ビシュヌ)から永遠の命と永遠の若さを与えられた。
★ラーマ王子(妻シーターとともに)

★ハヌマーン

Cf. ⑧「クリシュナ」:ビシュヌ神の第8番目の化身。紀元前7世紀ころ実在した人物が神格化されたといわれる。ビシュヌと一体視され、さまざまなクリシュナ伝説が生まれ、ヒンドゥー教の神話の中で活躍がもっとも著しい。しばしば「青い肌」で表現される。叙事詩『マハーバーラタ』(バラタ族の戦争を物語る大史詩)の中で「クリシュナ」はヴィシュヌの化身として主要人物の一人である。『マハーバーラタ』の中の『バガバッド・ギーター』(神の詩)はパーンダヴァ軍の王子「アルジュナ」と、彼の導き手であり御者を務める「クリシュナ」との対話という形式をとる。
★クリシュナ

Cf.  ⑨「仏陀」はヴィシュヌの第9の化身(アヴァターラ)としてヒンドゥー教に受容されている。ヒンドゥー教は「仏教」をヒンドゥー教の一派であるとする。また仏陀はヒンドゥー教の神とされる。ヒンドゥー教では「仏陀」は「仏教という異教を魔族に教えヴェーダから遠ざけて、魔族を惑わせる」という否定的な役割を演じる。「仏陀」の登場はヒンドゥー教における世界の終末期「カリ・ユガ」の到来を意味する。
★仏陀

Cf.  ⑩「カルキ」はヴィシュヌの10番目の化身であり、「カリ・ユガ」の時代(世界の終末期)における救世主だ。「カリ・ユガ」は人間の時間では43万2千年続く。「カリ・ユガの時代、人々はヴェーダの教え(「ヴェーダの法と正義」)から離れて宗教的に堕落し、神々は信仰されず、支配者は理性を失い、世界ではあらゆる悪が行わる。現在の私たちが生きる時代はこの「カリ・ユガ」に当たる。「カリ」は対立・不和・争いを意味し、またこの時代を支配し世界を悪で満たす「悪魔カリ」を指す。この「カリ」を倒すために登場する救世主がヴィシュヌの化身「カルキ」だ。「カリ・ユガ」の終末期、カルキは白馬に乗った騎士、又は馬頭の巨人として登場し、世界の悪を滅ぼす。世界を救い使命を果たしたカルキが天界に帰ると「カリ・ユガ」の時代は終わり、また法と正義で満たされた「クリタ・ユガ」の時代(172.8万年続く)が始まる。
★カルキ


(5)シバ神(シヴァ神):一方で恐ろしい破壊神であり、他方でめぐみ深い神、特に子授けの神である!
C シバ神は、『ヴェーダ』(インドに侵入したアーリア人の宗教である「バラモン教」の最古の聖典が『リグ・ヴェーダ』で紀元前1200年頃成立した)の暴風神ルドラがその前身と考えられている。その一方でシバ神は「インダス文明」の古い神に起源を有するとの説もある。
C-2 シバは二つ側面を持つ。一方で恐ろしい破壊神であるとともに、他方でめぐみ深い神、特に子授けの神である。(Cf. 「シヴァ」は「吉兆」を意味する。)
C-3  シヴァ神のシンボルは、リンガと呼ばれる円筒形の男性性器である。
★シヴァ神

《参考》シバ神の妃は「パールバティー」。「山に住む女神」(ヒマラヤ山の娘)の意味。慈愛に満ちる反面、時に恐ろしさも含む。例えば「ドゥルガー」(血なまぐさい女戦士;獅子に乗り10本の手に武器を持ち悪魔を殺す)、「カーリー」(牙のある口から長い舌をたらし黒く瘦せ細った姿; 4本の腕に捕縄パーシャ,頭蓋骨のついた杖カトバーンガ,剣,生首を持つ)はパールヴァティーの凶暴な相とされる。軍神「スカンダ」(クマーラ)、および象面の「ガネーシャ」(聖天)はパールバティーの息子。
★パールバティー

★ドゥルガー

★カーリー

Cf. 詩聖カーリダーサ(4、5世紀頃)は、シバとパールバティーとの恋愛を叙事詩『クマーラサンババ』(クマーラの誕生)に著した。ヒマラヤは娘のパールバティーに、苦行するシバの身の回りの世話をさせた。悪魔に悩まされた神々は、シバに軍神となるべき息子(軍神スカンダ;クマーラ)をつくらせるため、愛神カーマを派遣してシバに愛欲をおこさせようとした。カーマは怒ったシバに焼かれた。パールバティーは苦行に専念しシバの愛を得て彼と結ばれた。
Cf. 「ガネーシャ」:シバ神と妃パールバティーの間に生まれた「智慧と幸運の神」つまり「富や愛をもたらす幸福の神」。象の頭をもち鼠に乗る。日本では「聖天」(ショウデン)または「歓喜天」(カンギテン)。
★ガネーシャ

Cf. 「スカンダ」:戦争の神。シバとパールバティーの子。軍神「インドラ」に替わり新たな神軍の最高指揮官となる。日本では「韋駄天」(イダテン)。
★スカンダ


(6)「トリムールティ」(三神一体):ブラフマー神、ヴィシュヌ神、シヴァ神!
D  ヴィシュヌ神を信仰するヴィシュヌ派はヴィシュヌを唯一の最高神と考え、シヴァ神を信仰するシヴァ派はシヴァを唯一の最高神と考える。だがやがてヴィシュヌとシヴァは同一の最高原理の異なる顕れだとされるようになる。かくて宇宙の最高原理がまずブラフマー神として宇宙を創造し、次にヴィシュヌ神として宇宙を維持し、最後にシヴァ神として宇宙を破壊するという「トリムールティ」(三神一体)の教理が生み出された。
★トリムールティ
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする