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「1970年代 記録文学の時代」(その4):「体験型ノンフィクション」:鎌田慧『自動車絶望工場』、堀江邦夫『原発ジプシ―』!Cf. 山本茂美『あゝ野麦峠』!(斎藤美奈子『日本の同時代小説』2)

2022-02-17 19:06:37 | 日記
※斎藤美奈子(1956生)『日本の同時代小説』(2018年、62歳)岩波新書

(17)「取材型ノンフィクション」(1960年代):上野英信『追われゆく坑夫たち』(1960)、森崎和江『まっくら』(1961)、山本茂美『あゝ野麦峠』(1968)!
D  ノンフィクションは大雑把に、「取材型ノンフィクション」(資料や取材を中心に事実を追う)と「体験型ノンフィクション」(書き手自身の体験を描くつまり労働を一人称で書く)に二分できる。(56頁) 
D-2 「 労働者を書く」という課題を「聞き書き」という形で実現させた先駆的作品が、先にあげた上野英信(エイシン)『追われゆく坑夫たち』(1960)や森崎和江『まっくら――女坑夫からの聞き書き』(1961)だ。(56頁)
D-2-2  さらにもう1冊上げるなら山本茂美(1917-1998、男性)『あゝ野麦峠――ある製糸女工哀史』(1968、49歳)だ。取材当時60~90歳代の元製糸工女380人からの聞き書きにもとづく。彼女たちは明治・大正時代、飛騨高山から信州岡谷へ出稼ぎに出た。(56-57頁)

(17)-2 「労働を一人称で書くノンイクション」(「体験型ノンフィクション」)(1970年代):鎌田慧(サトシ)『自動車絶望工場』(1973)、堀江邦夫『原発ジプシ―』(1979)、小関智弘『春は鉄までが匂った』(1979)!
D-3 「取材型ノンフィクション」に対し、1970年代に労働を一人称で書く「体験型ノンフィクション」が出現した。まず鎌田慧(サトシ)(1938-)『自動車絶望工場』(1973、35歳)だ。トヨタ自動車本社工場で1972年3月から73年2月まで季節工として働いた5か月間を、日記の形式でまとめた。花形産業のウラを暴いたルポは経済大国日本に冷水を浴びせた。大宅賞にノミネートされたが「取材方法がフェアでない」という理由で落選した。(57-58頁)
D-3-2  堀江邦夫(1948-)『原発ジプシ―』(1979、31歳)も「体験型ノンフィクション」だ。美浜、福島、敦賀3カ所の原発で計6か月、原発の「検査」(実際はゴム手袋とマスクでの過酷な「掃除」)に従事する。原始的なローテクに支えられた最先端原発!(58-59頁)
D-3-3  以上2冊と違った角度から工場で働く人々を描いたのが、小関智弘(1933-)『春は鉄までが匂った』(1979、46歳)だ。著者は、すでに東京都大田区周辺の町工場に20年以上、勤務した旋盤工だ。一度失職後、新しく務めた町工場、また周辺の工場の熟練工たちの素顔を伝える。(59頁)

(17)-3 昭和初期の「プロレタリア文学」は労働者の現場が正確に描かれていない(Ex. 『蟹工船』)!戦前も「私小説の手法で書かれたプロレタリア文学」(「私小説的プロレタリア文学」)があった:佐多稲子『キャラメル工場から』、野澤富美子『煉瓦女工』!労働者家庭の生活を描く:豊田正子『綴方教室』(1937)、安本末子『にあんちゃん』(1958)!
D-4  戦前のプロレタリア文学は、階級には敏感でも、労働者の現場が正確に描かれているとは言えなかった。例えば、小林多喜二『蟹工船』(1929)を読んでも、蟹缶詰の製造工程は不明だ。(59-60頁)
D-4-2  これに対して鎌田慧『自動車絶望工場』(1973)、堀江邦夫『原発ジプシ―』(1979)は「私小説の手法で書かれたプロレタリア文学」だ。(60頁)
D-4-2-2 戦前も「私小説的プロレタリア文学」があったと、斎藤美奈子氏は言う。佐多稲子(1904-1998)『キャラメル工場から』(1928、24歳)、野澤富美子(1921-2017)『煉瓦女工』(1940、19歳)(※ベストセラー)こそ「プロレタリア文学の原点」だったかもしれない。(60頁)
D-4-2-3  ベストセラーとなった豊田正子(1922-2010)『綴方教室』(1937、15歳)も安本末子(1943-)『にあんちゃん』(1958、15歳)も、労働者家庭の生活を描いている点では、「私小説的プロレタリア文学」だ。(60頁)
D-4-2-4 「プロレタリア文学」の側にいた宮本百合子(1899-1951)、佐多稲子(1904-1998)、平林たい子(1905-1972)らは、みな「私小説」の書き手だった。戦前の「私小説」と「プロレタリア文学」は派閥争いせず、互いの弱点を補い手を結ぶべきだったろうと、斎藤美奈子氏は言う。(60頁)
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