木工挽物という仕事

基本的には時代遅れの仕事
正反対の位置にいるブログから発信してみます
でもブログも先端じゃなくなりましたね

采配

2014-05-14 23:59:48 | 生活
こんな機械で仕事をしてる


どんどん品物が出来てくる


出来てくるときに木くずも一緒に排出される


それを選別するために「通し」をくぐらせる


篩にかけると品物の候補が残る


品物として通りそうな物と廃材と思われるものを選り分けた


もうすでに1万数千個出来てるはずだ。
出来てるものはほとんど製品として通るもののはず
しかし、例えば最後の一個だとかたまにある材料の不良のため廃材の箱に入れざるを得ないものもある
それを選ぶのは僕だ
自分の目で見て良品の箱へ、つまりこれからも生きていけるその製品としての命を与える
一方僕がこれはダメだと判断したものは不良品の箱に放り込んでその木の命の終わりを決定する
僕がこの仕事をしている間はこの製品たちの未来を決定する
つまり神様なのだ

そうすると、神様の仕事を考えることになる
良い物は良いから命を与えるのだが、良い物のはずがどうかすると普通は通ってしまうはずのない「通し」の網をかいくぐって木くずの中に埋もれてしまう
生きてゆけるはずのその製品の命を誤って奪ってしまうことがある
反対に、ここで捨てるべき不良品の不良を見落として一時的に命を与えてしまうこともある
それはそのあとにまた命の選択を迫るときが用意されてはいるけれど
不良品の選択ミスは取り返しがつくけれど、良品の命を奪ってしまえば、彼の命はそこで絶たれる
神の選択ミスはこうやって形成されていくわけだ。

何かの拍子に良い製品を不良品箱の中に投げ込んでしまったその瞬間にミスに気付いてそれを救い上げることもある
彼は九死に一生を得たのだ。


弟を亡くした時、神の選択を恨んだ
奪われるはずのない命を奪われた理不尽は何年経っても消えることはないけれど
こんな仕事をしていると、沢山の命を預かる神は過ちを犯してしまうこともあるかもしれないと思ってしまう


例えば船、若い命が奪われるたびに、神の選択の理不尽さに涙する
その采配を恨みながらも、次にすべきことを成さねばならない





人間として、いくつかの選択を潜り抜けてここまで来た
明日も明後日も、それはまた続く





コメント (2)
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