道草あつめ

日常思いついた由無し事を、気ままに拾い集めています。

「東日本大震災」

2011-07-31 20:31:37 | 言葉
 名前の付け方というのは、非常に大切なことである。名前一つで、受ける印象が全く異なるし、実際の利害も変わって来る。

 今回の震災は、どうやら「東日本大震災」ですっかり定着したようだ。岩手・宮城・福島のみならず、茨城や千葉、更には東京でも被害があったのだから当然、ということなのだろう。被災者に寄り添ったネーミングとは謂えるかもしれない。しかし、これは、国益という観点からすると、あまりよろしくないのではなかろうか。

 以前、ハイチの大地震と豪華客船のことについて、少し書いたことがある(「ハイチに豪華客船」)。簡単に説明すれば、「被災地から160kmも離れたところへの旅行が無神経として非難されるのは不当であり、それで旅行がキャンセルされて現地の産業は困っているだろう」という内容。
 我々にとって、ハイチという国は、世界地図か地球儀でしか見ることはない。つまり、実に小さな島の、西半分でしかない。こんな小さな国で「ハイチ地震」なる大地震が起こったのだから、ハイチ中が壊滅状態だろう、という想像が働く。実際に、大手メディアでは、壊滅した光景しか放送されなかった。故に、そんなところに豪華客船なんて不謹慎だということになり、ハイチが実は2万7千平方kmも面積があり、全く壊滅していないで通常営業中の観光地があることには思い至らない。
 しかし、これがもしも「ハイチ南東部大地震」というネーミングだったらどうか。もっと多くの人が、問題の観光地がどこにあるかを調べ、160kmも離れているのか、じゃあ大丈夫だろう、ということになっただろう。

 「東日本大震災」も同様である。中国でも「東日本大震災」「東日本大地震」として報道され、その結果、「東京も東日本だろう。甚大な被害を受けたのだろう。旅行に行くのはやめよう」という話になる。何しろ、彼らにとっての日本は、日本人にとってのハイチ以上に、小島である。普段は世界地図でしか見ることのない存在である。仙台と東京の距離感など全く分からない。
 よく調べれば、東京は大した被害を受けていないが、すぐに分かる。しかし、旅行先は日本でも韓国でもヴェトナムでも良い、というくらいの気持ちで休暇を楽しもうとする人たちにとっては、よくよく調査するなどという面倒なことをする前に、「じゃあ日本に行くのはやめて韓国にしよう」ということになる。

 決してその他の場所で被害がなかったということではないが、「東東北茨城大震災」くらいにしておいた方が良かったのではないか、と思う(「東東北」というのは、まるで十六方位の一つみたいだが)。

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