タルティーニ「ヴァイオリン・ソナタ ト短調」には、「悪魔のトリル」という呼び名がある。
非常に難しい技法が散りばめられ、中でも悪魔の如く意地悪なトリルがあるためにこのように呼ばれるようになったのであろう。
しかし、タルティーニ自身が語ったものとして、彼が夢の中で悪魔に教わったメロディーを用いて作ったから「悪魔のトリル」と名付けた、と云う話もある。
何とも人を食った話であるが、実際に聴いてみればなるほど然り、悪魔のような美しい曲である。
ヴァイオリンが妖艶な旋律を奏で、時折チェンバロがきらびやかな音色を発す。曲の流れはあくまで端正に、しかしその動きは聴く人をゆさぶる。深夜、真っ暗で静まり返った部屋の中、漆黒の闇の中から浮かび上がる真紅の絹織物。そんなイメージが湧き起こる。
この曲を初めて聴いた時は、何といけすかない曲なのだ、と思った。そして、その感想は今でも変わらない。こんないやらしい曲を作るタルティーニは、きっと、性格がゆがんだ嫌なヤツであったに違いない。性格がゆがんでいなければ、こんなにも美しく艶やかで素晴らしい曲は作れないのではないだろうか。
――ともあれ、私も、悪魔の啓示に備えて、枕元には紙と筆記用具を置いておくことにしよう。
非常に難しい技法が散りばめられ、中でも悪魔の如く意地悪なトリルがあるためにこのように呼ばれるようになったのであろう。
しかし、タルティーニ自身が語ったものとして、彼が夢の中で悪魔に教わったメロディーを用いて作ったから「悪魔のトリル」と名付けた、と云う話もある。
何とも人を食った話であるが、実際に聴いてみればなるほど然り、悪魔のような美しい曲である。
ヴァイオリンが妖艶な旋律を奏で、時折チェンバロがきらびやかな音色を発す。曲の流れはあくまで端正に、しかしその動きは聴く人をゆさぶる。深夜、真っ暗で静まり返った部屋の中、漆黒の闇の中から浮かび上がる真紅の絹織物。そんなイメージが湧き起こる。
この曲を初めて聴いた時は、何といけすかない曲なのだ、と思った。そして、その感想は今でも変わらない。こんないやらしい曲を作るタルティーニは、きっと、性格がゆがんだ嫌なヤツであったに違いない。性格がゆがんでいなければ、こんなにも美しく艶やかで素晴らしい曲は作れないのではないだろうか。
――ともあれ、私も、悪魔の啓示に備えて、枕元には紙と筆記用具を置いておくことにしよう。