おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

「最後の秘境 東京藝大 」おススメです!

2020年01月28日 | 書籍紹介
この本の存在を以前からご存知の方もいらっしゃると思いますが、私は今年知りました・・

この本には音楽学部と美術学部両方の学生さんの話がたくさん出てきます。
専攻によって人種も様々。
音楽でも楽器によって特徴があるものですが、美術も専攻によって随分特徴が異なるようで興味深いです。

音楽学部のピアノ以外の楽器の学生さんの話が私には新鮮で、自分の中で曖昧な感覚でいたことをはっきりと言ってくれているのがとても勉強になっています。

詳しく書くわけにはいきませんが、バロック楽器を勉強されている学生さんの話で印象的だったことを少し。

「今の楽器は音程が取りやすかったり、・・中略・・進化して、合理化されているんです。バロック楽器はその点・・中略・・楽器が助けてくれません。自分の息で頑張って調整しなければならないことが多いです。でもその分、出せる音色の柔らかさが全然違うんです」

もうひとつ、ああこれだ・・と私がスッキリしたこと。

「バロック音楽は作曲家の感情でも、演奏者の感情でもなく、曲の感情」
「演奏するときは生きたものを出さなきゃって思います。その音楽が最も輝ける形で、生きた状態で生み出したいんです」

私はピアノを習う前からバロック音楽が好きでした。ピアニストになりたいと思ったことはありませんが、オルガニストになりたいと思ったことはあります。
ピアノが上手くなったらオルガンを習えるものかと思っていましたが、いつまで経ってもその時が来ることはなく、あれは特別に選ばれた人しかできないものなんだなと思うようになりました。

バロック音楽にある熱のようなものを生徒に伝えることがいつもうまくいかず、人が持っている感情とは違うエネルギーが何なのかよくわかりませんでした。

この学生さんの「曲の感情」という言葉。
これだ!と思いました。曲自体が持っている感情、エネルギー。そう捉えて良いのだと思いました。

楽器が助けてくれないという話も、なるほどと思いました。

電子ピアノは合理的に作られた楽器で誰が弾いても同じ音で弾けます。
しかしアコースティックピアノはそうはいきません。音は自分で作るのです。
そのために身体の使い方をレッスンで教えているのです。耳が一番の先生です。

楽に弾けてしまうことからは得られないものがアコースティックピアノにはあります。
耳と感性と感覚と頭脳を磨き、研ぎ澄まし、少しでも美しいもの、本物に近付こうとすること。

藝大の教授が「私たちは音楽の末端でしかない。けれど、その末端は本当に美しくなければならない」とおっしゃったそうです。

電車で読んでいてジ~ンときました。

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