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永井路子『氷輪 下』を読み終えました

2012-12-22 21:40:34 | 日記


 こんにちは。

 永井路子『氷輪 下』中公文庫・298頁 を読み終えました。

【カバーにある紹介より】 
 藤原仲麻呂と孝謙女帝の抗争が続くうちに女帝は病に倒れた。その平癒に心魂かたむける道鏡の愛におぼれる女帝ーが、遂に夢破れて近江に潰滅する策士仲麻呂一族。奈良の都の狂乱の日々を綴る、昭和57年度女流文学賞受賞作。

【本書によるストーリー展開】

藤原仲麻呂が力をもつ→760年:仲麻呂の権力の後ろ盾であった光明皇太后が没→761年:孝謙上皇と淳仁天皇が近江国の保良宮(ほらのみや)へ行幸→この頃、孝謙上皇と道鏡が出会う→孝謙上皇・道鏡VS.淳仁天皇・仲麻呂→764年:藤原仲麻呂の乱→孝謙上皇が重祚し、称徳天皇として即位→766年:道鏡が法王となる→藤原氏の不満が高まる→769年:宇佐八幡宮神託事件(道鏡が天皇になろうとしたが、なれなかった事件)→770年:称徳天皇崩御(光仁天皇即位)→道鏡は下野へ左遷→藤原氏の復権

763年:鑑真没→その後も唐律招提は不遇が続くが、少しずつ寺として形を整えていく→著者によると779年頃までには「唐招提寺」になったのではないかとされている。

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【感想】
 下巻は、藤原仲麻呂、称徳天皇、道鏡、藤原氏の権力闘争がメインであり、鑑真たち唐僧の話はかなり少なくなっています。
 たしかに、唐律招提が唐招提寺になっていくためには、権力者たちとのかかわりがありました。しかし、東大寺や薬師寺などといった大寺とは比べるべくもなく、その苦労はかなりのものだったようです。
 戒律を厳格に守る(政治に関係せず、修行が大切)ことを求める鑑真や唐僧たちの気持ちとは逆に、日本の僧たちの中には政治に深く関係していくものたちがでてきます。その典型が道鏡で、その嘆きが鑑真の高弟である如宝たちの口をかりて語られます。「何のために、波濤をこえてやってきたのか・・・」といったことばが、胸に迫るものがあります。 
 これまで数回唐招提寺にいったことがありますが、今度行ったときにはこれまでとはちがった気持ちで、お参りできる気がします。

 これで『氷輪 下』を終わります。

 次は、何を読みましょうか・・・。『天平の甍』ではありません(笑)。

 今日も来てくださってありがとうございました。