こんにちは。
今日は、読み終わった本について、メモしておきます。
吉村昭 著『ニコライ遭難』(新潮文庫・全379ページ)
【内容】有名な大津事件(1891年)の話です。
ロシア皇太子ニコライが来日し各地で歓迎をうける(長崎・鹿児島・神戸・京都・大津)
→大津で、津田三蔵 巡査に襲われる
→ロシアの報復をおそれ津田を死刑にしたい政府首脳・法律通りに無期徒刑としたい大審院長の児島惟謙(こじま これかた・いけん)の対立
→津田に対する事情聴取
→裁判の様子・判決
→その後の津田・ニコライを救った二人の車夫・ニコライの話
【興味をもった箇所】
・ニコライは最初の上陸地である長崎で、入れ墨をいれた(p.51)
・車夫の向畑治三郎と北賀市市太郎は、それぞれニコライより2500円(恩賞金;一時金)と1000円(年金;毎年)をもらった。(p.193)
(当時の1000円は国会議員の年俸に相当する・当時の巡査の初任給が8円)
→(初任給8円を15万円とすると、1000円は「1875万円」になる)
・政府首脳には薩長土出身者が多く、司法に関わる者たちはその藩閥政治に対する反発があったのではないか(薩長土以外の英才たちは司法に進むことが多かった。政界に入り込めなかった)。(p.281)
・西郷隆盛は西南戦争を生き延び、海外に逃げた西郷隆盛をニコライが一緒に連れてくるのではないかという噂が流れた。もし西郷が帰ってくれば、必ず政治で主導権を握るに違いない。そうすれば、西南戦争で功があった津田は勲章をとりあげられると信じていたらしい)(文庫のカバーに、西郷とニコライが一緒に描かれているので注目です)(p.248)
・児島惟謙は直接裁判をおこなっていない(堤正己が裁判長)。(p.284)
・津田三蔵は釧路で死んでいる(病死)。(p.363)
【感想】
・吉村昭の小説は以前『冬の鷹』、『戦艦武蔵』、『長英逃亡』を読みました。久しく吉村昭の著作を読んでいませんでしたが、緻密で丁寧な文章が心地よく感じられました。(以前は、少々読みにくいと感じていました)
・津田は死を覚悟していたが死刑にはならなかった。思いもかけない大金を得た車夫たちは身を持ち崩したり、ロシアから大金を得たことで後ろ指(後に日露戦争があるため)をさされる。ニコライは栄華を極め続けるはずが革命により殺害される。
どういう人生が幸せなのだろう。幸せを探すのではなく、生きることそのものが大切なのだろうか。「いい人生」なんてないのだなと思いました。本の内容とは、ずれているかもしれませんが、そのようなことを感じました。
次は、 永井路子著『氷輪 (上・下)』(中公文庫) を読みます。
日本に来た後の鑑真和上の話です。
『ニコライ遭難』の後、司馬遼太郎『坂の上の雲』を読んで、吉村昭『ポーツマスの旗』を読もうと思いましたが、この本を読みます。
今日もきてくださってありがとうございました。