二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

西住「飛んで!あんこう!」 (ガールズ&パンツァー×沈黙の艦隊)

2013-10-23 00:23:27 | 習作SS

「駆逐艦が3隻、接近しているぞ」

聴音機を回していた冷泉麻子が呟く。
発令所は俄かに緊張感に包まれ、思わず天井を見上げる。

「このまま静座してやり過ごします、全員音を立てないでください」

西住みほが声をひそめて命令する。
彼女の言葉を聞いた部員は素早くその意思に従い音を立てずにじっと待つ。

聖グロリアーナ女学院戦で緊張感に耐えられず騒いでしまった一年生も、
この時は口に手を当てて音を出さないように健気に堪え、恐怖に耐えていた。

やがて、聴音機を付けている冷泉だけでなく、
発令所にいた部員も駆逐艦のスクリューが海中をかき回す音を耳にした。

駆逐艦特有の甲高い音が真上を通過する。
ここで爆雷が投下されるかどうかは、まさに神のみぞ知ること。
だから、どうか見つかりませんように、神様仏様と各々が祈りを込める。

操舵担当の五十鈴華は特に祈らずぼんやりと天井を見ていたが、
周囲から祈りの声が聞こえたので、視線を隣の親友に移動させると日本の神や仏だけでなく、
北欧の多神から地中海の神々と多岐にわたって眼を瞑ってぶつぶつを祈っているのを見る。
そんなに祈った所で御利益が分散するような、そんな疑問を抱きながらさらに周囲を見渡す。

発令所は10人にも満たない人員しかいないとはいえ辺りはシン、と静まりかえっている。
魚雷室担当の風紀委員や別室の聴音担当の冷泉麻子がどうしているかは分らないが恐らくここと同じような感じだろう。
生徒会のメンバーなども神やら仏に頼んでいたが、西住みほだけでは違っていた。

彼女だけは一寸の隙間なく、
まるで真上を通過する駆逐艦を睨むように真っすぐ上を見ていた。
普段のどこかぼんやりと、悪くいえば気が抜けた雰囲気は抜け落ち、
代わりに今の彼女は「完璧な潜水艦の艦長」としての空気を纏っていた。

――――このギャップが西住さんが皆を引きつける要因かもしれませんね。

ふと、五十鈴華はそう思った。

そして、10分程だろうか?
やがて、駆逐艦の音は徐々に遠ざかり、元の静寂に満ちた海へと戻った。

「ふぅー、なんとか気付かれずにすみましたね、西住殿」

秋山優香里が顔に吹き出た汗をふきつつ言う。
なお、彼女はマニアが高じた結果、艦長に次ぐポジョンの副長担当である。

「だが秋山。見つからなかったのはいいが、何時までも静座しているわけにはいかないぞ」
「そうそう、西住ちゃんどうする?」
「早く沈めないとまけちゃいますし…」

同じく冷や汗をぬぐい問いかける河嶋桃と角谷杏、小山柚子の生徒会メンバー一同。

さて、ここで一つ解説したい。
この「潜水艦道」では2つの武道が合同で行うものである、
すなわち「潜水艦道」と「対潜道」の両者が対決し、それぞれが

・輸送船団を護衛する護衛艦隊
・それを襲撃する潜水艦群

といった形で行われ、
潜水艦側は無人誘導の輸送船、または護衛を沈めることでポイントを稼ぎ、
制限時間内に稼いだポイント数によって「潜水艦道大会」のトーナメントに勝ち上がる。

対して護衛艦隊側は如何に素早く潜水艦を沈め、
また、輸送船を守り切るかでポイントが付き「対潜道大会」試合の勝敗を決める。
なので、大洗校潜水艦部はいつまでもじっとしているわけにはいかず、いずれは襲撃しなければいけな

ただし、問題があるとすれば相手が聖グロリアーナ女学院に次ぐ「対潜道」における名門校こと、
アナポリス大学付属大学サンダース高校で、護衛空母を含んだ40隻以上の艦船を有しており、

昨年までは全ての公式戦では参加艦船の制限が掛っていたが、
より大会を盛り上げることを名目に、それとは別に無制限ルールの大会が今年開始された。
これを聞きつけた角谷杏は、学校存続の危機を回避するには一か八かでより派手な実績を証明しなければならなかったため、
強引に参加した結果、たった1隻の潜水艦が40隻近くの艦船に追いまわれ、現在に至る。

「はい、一応考えはあります。
 ――――中島さん来てくれませんか?」

伝令管から機関室担当の自動車部を呼ぶ。

「はい、はーい、西住艦長。どうかしましたかー?」

直ぐにスパナを片手に機関担当の中島が陽気な声と共に発令所に来た。
油汚れがツナギだけでなく頬にもついていたが、元々自動車部、
というより整備部の名称が似合うほどの機械オタクだったので本人は全く気にしていなかった。

「中島さん、最大速度。どのくらいだせますか?」
「…艦長、それはあのいまいち聞き分けの悪い子、ヴァルターちゃんを含めてですか?」

中島はみほの質問に意図にわくわくし、面白そうに答えた。

潜水艦は水中を機動するため、排気ができないため水中は基本電気推進である。
だが、燃料推進と比較して燃費に馬力に欠けており、電池が切れたら燃料推進で水上航行し電池を溜めなければいけない。

水上を航行する潜水艦はただの的でしかなく、潜水艦の最大の武器である「潜水」が意味をなさない。
なので、現実において永久に潜り、かつ移動できる反応炉推進の潜水艦が各国で建造された。
そして、もう1つ別の道として1937年に考案されたのが非大気依存推進機関、
つまり現在に続くAIPの始まりであり、それがヴァルターちゃんことヴァルター機関である。

基本的な原理は潜水艦内部で酸素を作ってしまい、
内燃機関に送り込んで通常の内燃料機関と同様に動かしてしまう事である。
が、問題があるとすれば高濃度の過酸化水素を使用するため扱いは極めて慎重に行わねばならず、
池や泥に沈んだ戦車でも完全に復活させてしまうだけの技量を有する自動車部でもやや扱いは難しかったが、

「過酸化水素タンクの容量もあるけど、
 できれば一度に長時間の運用はおススメできないね。
 ――――けれで、あれこれ弄ったから5分間の全力なら26ノットは出せるはずだよ」

26ノット!その言葉に発令所にいた部員はどよめく。
まさか、学園艦の奥で眠っており、とりあえず装備したはずが最大の武器になるとは誰もが予想し得なかった。

「――――わかりました、それなら何とかなりそうです」

そして、その言葉でみほは決意を固め、艦内マイクを手に取り口を開いた。

『みなさん、聞いてください。
 これより浮上してサンダースを迎え撃ちます』

サンダースを迎え撃つ、
ついに始まったと部員は興奮するが同時に不安の気持ちが出る。

『海上には合計40隻の艦隊が待ち受けています
 ――――けど、訓練通り落ち着いて行動してください
 例え相手が40隻でも全部沈めてしまえばいいだけです』

一度、言葉を区切る。

『初めての大会、そして初めての困難。
 みなさんの不安は間違っていません、わたしも今この瞬間も不安で一杯です――――けど諦めたら負けなのです』

再度区切る。

『諦めたら負けなのです』

そして繰り返し強調した。

みほは何時の間にやら持ち場を離れて発令所に集合した全員を見渡す。
幾ら策はあるとはいえ、博打な代物だしそれは全員の協力があってこそ成功するものである。
だからこそ挫けた士気を盛り上げるためこうして激励したが、彼女らの瞳には戸惑いしか浮かんでいない。

「……っ」

やはり無理だったのだろうか?
やっぱり自分は「潜水艦道」に向いていないんじゃないのか?
みほはそこまで考え、スカートの裾を握りしめたが、

「…西住殿の言うとおりです」

秋山が呟く。

「わたしたち、諦めたら負けなのです!」

そして心を込めて叫んだ。
それが切欠に皆の心に一本の杭が打ち込まれた、諦めたら負けだと。

「諦めたら、負けか…」
「そうだな、諦めたらまけでござるよ」
「いや、浮上ってもう無理……だけど頑張るか」
「うん、諦めた負けだよね!」
「うんうん、そうだね―――ーだったら頑張ろっか」

皆がして口にする、諦めたら負けだと。
わたしたちはまだ戦える。だから、次の指示を。
そう視線がみほに集中する。

「みぽりん、行こう」
「西住さんとなら、私はどこまでも付いていきます」

武部沙織、五十鈴華がみほの手を握る。

「……みんな」

信じあえる仲間と友達。
一度無くしてしまったもの、手から零れ落ちたもの。
それらが今みほの目の前にあった。

「やれやれだぜ、感動のシーンだけど――――今の声で気づかれたぞ」

聴音機を忙しなく回す、冷泉麻子。

「これは…すごいな、全部こっちに向かって来ているぞ」

その言葉の意味にいち早く気づき、動いたのはみほだった。

「全員配置についてください!!機関始動!メインタンクブロー!!」
「了解!機関始動、メインタンクブロー!」

みほの一声で部員たちは一斉に持ち場へ戻る。
非常灯に切り替わり、戦闘態勢へと以降する。
電気推進の機関の振動が低く響き、あんこう号ことUボートXXI型、
ヴァルター機関装備改装型は30度の角度で海底から海面へ飛翔する。

「これよりサンダースを迎え撃つ、トビウオ作戦を行います――――ヴァルター機関、接続、全速浮上!」

みほの言葉に応じるようにあんこう号はさらに加速し、待ち受けるサンダース校の真正面から突撃を開始した。





「蒼き鋼のアルペジオ」のイオナの中の人か西住殿だったからこんなネタが思いついたww
コメント
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