ワタシ・・・私は異世界TS転生者だ。
しかも「ストライクウィッチーズ」という物語の主要な人物、ゲルトルート・バルクホルンに転生した。
とはいえ、ウィッチであるこのを除けば特別際立った技能なんてなかった。
それよりも自分が転生者であると自覚した直後に、記憶と言語が混濁して色々大変だった。
しかも、いわゆる【原作知識】があっても【原作】にたどり着くまでの道中は文字通り手探りで模索するしかなく、
それでも今日まで無事戦争を生き残り、悲願であったネウロイを撃破。
ブリタニア、ガリア、ベルギガを経由してついに首都を解放し、故郷の奪還を成し遂げた。
だが、戦争が終わった先はどうすれば良いのか私は何も知らない。
転生者だから20歳を過ぎてもウィッチとして空を飛べる、なんて淡い期待も虚しく、
坂本少佐と同じくシールドで防げた筈の攻撃が貫通するなど、魔法力の減退は徐々に始まりつつあった。
ウィッチとして築き上げて来たこれまでの自分と別れを告げねばならない事態に対し、
私は何かと理由や言い訳をして現実逃避して来たが、ハンナとエーリカが私にこう述べた。
「バルクホルン中佐・・・いや、バルク、後は任せろ。
昔、アンタが私を守ったように、今度は私が部隊の部下を、
後輩魔女たちを守ってみせるさ・・・ハルトマンと一緒に、な」
「私だけじゃ、不安だろうけど。
ハンナと一緒なら、トゥルーデだって安心でしょ?」
この時、私は悟った。
私がいなくとも、意思を継ぐ者はいる。
そして私の、ゲルトルート・バルクホルンがなすべき物語の役目は終わったのだと・・・。