二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

GATE~続いたネタ41 夢幻会、彼の地にて戦いけり

2017-02-23 00:05:55 | 連載中SS

世間一般的には日本はテロとは無縁の国。
そう思われているが、その当時はテロとは呼ばれていなかっただけで、
現在からすれば立派なテロに該当す事件がいくつも起こったことを忘れている。

例えば地下鉄サリン事件。
毒ガスを使用した都市型テロ。
という点では世界初とされる事件で、
21世紀の炭そ菌テロに影響を与えたと言われている。

例えば三菱重工爆破事件。
「帝国主義的」と断じられた企業が爆弾を仕掛けられる。
負傷者は300名を超えており、中東の爆破テロと手法は何ら変わりはない。

そんな重要な出来事をなぜ忘れたか?
それは大多数の日本人が彼ら、あるいは彼女らの思想に共感を覚えなかったからだ。
やがて歴史の闇に埋もれ消滅は免れないはずだったが表向きの看板を「革命」から「人権」に変えることで生き残った。

だが暴力的かつ選民的な思想は変わらず、
おまけに「目的のためなら手段を選ばない」傾向にあり、
銀座で行われた嶋田総理と本位総理の合同慰霊祭で爆弾を持ち込んだ人間が捕まったのも必然であった。

「確保ーーー!!」

警備を担当していた警察が爆弾を持ち込んだ人間を取り押さえる。
先ほどまで「打倒軍国主義者」とプラカードを掲げ騒いでいた団体に対しても、
「爆弾発見のために警護ならびに任意同行」の名目で機動隊が取り囲み隔離している。

「まあ予想通りと言うか、何というか・・・」

先ほどまでの慰霊の雰囲気は吹き飛び、
テロ未遂事件が露見したことで周囲は騒がしいものになる中、嶋田は思わずそう独白する。
続けて戦乱が続く昭和の日本とのギャップに苦笑し、ある意味平和なこの現代日本の在り方にある種の懐かしさすら覚えた。

「で、焚きつけたのはお前か?村中少将」
「その通りであります」

そしてこの騒ぎを扇動したであろう人物の名を口にし、
背後を振り返るとまるで最初からそこにいたかのように村中孝次が佇んでいた。

「正確には背中を押しただけです。
 彼らが信ずる思想を純化させる手助けをしました。
 言うならば慈善事業を行ったにすぎません、彼らがそれを望んでいたのですから」

「人はそれを扇動工作と表現するのだよ、少将。
 おまけにこの私を危険に晒すような真似までして何を考えている?」

背筋に氷を差し込むような威圧感を嶋田は発する。
海軍軍人、国家の指導者、そして原爆を落とした男だけが出せるカリスマで場の空気に緊張が走る。
だが、村中は薄ら笑みを浮かべるだけで、続けて言葉を綴る。

「遅かれ早かれ閣下の命は狙われたでしょう。
 ならば制御できる今の内に彼らを暴走させました。
 万人がいる場で醜態をさらけ出し、権威を失墜させるように」

「北朝鮮の拉致問題のように、か?」

嶋田の言葉に村中が無言でうなずく。
かつて拉致など妄言と長らく言われ、
その存在を話す人間は右翼と罵倒されるだけならまだよく、平和の敵とまで言われた時代があった。
だが北朝鮮自身がその事実を認めたことでこれまで妄言と決めつけていた文化人や政治家の権威は失墜した。

「それだけではありません。
 これを機に日本政府は・・・」

「今回の騒動で左派の脅威を日本政府は認知することになった。
 何せ危うく総理大臣と招いた要人が暗殺される可能性が十分あったからな。
 日本側は我が帝国に対しまた1つ借りを作ることになり、今後の外交交渉で有利に働くだろう」

言葉を発しようとした村中を嶋田は制止させ、言わんとしていた事を代わりに口にする。
 
「閣下から賞賛を受けるとは、至極恐縮であります」

「ふん、これを称賛と受け取るのか?
 貴官の性格の悪さと優秀すぎる頭脳に呆れてるだけだ」

有能すぎる諜報員ほど厄介な存在はなく、
帽子を脱ぎ恭しく頭を下げる村中に対し忌々し気な視線を嶋田は浴びせるが、
肝心の相手は変わらず受け流しており辻の方がまだ可愛げがあるな、と嶋田は感じた。










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