おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

めちゃめちゃ楽しい「釣女」 @ 相生座

2010年06月05日 | 文楽のこと。
◆めちゃめちゃ楽しい「釣女」 @ 相生座

 今年も来てしまいました。3年目の相生座。恒例の鏡割り、今年も最前列のポールポジションだったのに、升をゲットすることはできず…。三度目の正直を果たせませんでしたが、鏡割りを見に行ったわけではなく、文楽を観に行ったのだから、良しとしよう(と、自分を慰める)

 昨年までご出演だった千歳さん、清志郎さんを、日付がバッティングした「寛治を聞く会@奈良県」に取られてしまったことが、寂しくもあり、痛手でもあり。でも、床チーム的には、寛治師匠に指名されたら、当然、断れないというか…名誉なことでもありましょうし…致し方の無いことですね。

 さて、最初の演目は「釣女」。初見です。 狂言の「釣針」を、昭和初期に文楽用にアレンジしたもの。なんとも他愛ないストーリーなのですが、これが、めちゃめちゃ楽しいのです。

 大名と太郎冠者が連れだって西宮戎神社にお参りに行く。2人の願いは「美人と結婚できますように」。昔も、今も、結婚祈願は神社参りの定番かということか?

 大名は戎さまから授けられた釣竿を使って、お嫁さんを釣り上げる。最初から分かっているのだけれど、お嫁さんが被布を取った瞬間、会場からは、「ああ、やっぱり美人さんだぁ」という感じで「ほっ~」とため息が漏れる。

 美男美女カップルの誕生に焦った太郎冠者が、「自分にも釣竿で嫁を釣るぞ」と意気込む。果たして、針にかかったのは… 被布を被った赤姫。有頂天の太郎冠者は「比翼の鳥、連理の枝のように一生添い遂げよう」とかなんとか調子のいいことを言い、赤姫ちゃんはうっとり。でも、観客には、被布の下におてもやんのような真っ赤なほっぺが透けて見えるから、もう、会場は大爆笑。もう、このあたりから、舞台の上は吉本新喜劇のように見えてくる。

 被布をとった後の、太郎冠者の言いようが酷い。「フグに等しき醜女」「鬼か化け物か、消えてなくなれ~」。嫌がる太郎冠者に「何言っているの、さっき、夫婦ずっと離れずにいようって言ってくれたでしょ」とスリスリしようとする。嫌がる太郎冠者、それに気付いているのかいないのか、らぶらぶオーラを出しまくるおてもやん。なんか、山田花子みたい♪ 勘十郎さまと、簑師匠の滑稽なやり取りに、もう笑いが止まらない。

 太郎冠者は往生際悪く、大名のお嫁さんの美人さんにちょっかいを出して、連れて逃げようとする。「我が妻を連れていくな~」と追いかける大名。さらに、太郎冠者の振舞いにキレたおてもやんが「腹がたつ、喰い咲いてやる~」と追いかける。会場中、和やかな笑いに満ちて幕。

こんな、楽しい演目なら、本公演でも大爆笑なのにと、思いましたが…。きっと、無理なんでしょうね。こんなに笑いが止まらないのは、勘十郎さまと簑師匠がやるからこそ、一つ一つの動作、表情が生き生きしていて見えるからなんですよね。でも、本公演では、景事にスーパースター2人も投入できないわけで。もちろん、若手でやっても、ほどほどに楽しいとは思いますが、ここまでは、大爆笑にはならないだろうなぁ…。