杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・大飯原発再稼働の禁止判決を巡る憲法を考える

2014-05-22 07:42:19 | 原発問題
昨日(2014.5.21)、福井地方裁判所が大飯原発の3号機と4号機の運転を再開しないよう命じる判決を言い渡しました。

判決の中では
「電力会社側は原発の運転が電力供給の安定性やコストの低減につながると主張するが
、多くの人の生存そのものに関わる権利と電気代の問題を並べて判断することは法的に許されない」
と述べられています。

この判決に対して
菅官房長官は午後の記者会見で、
福井地方裁判所が大飯原発の3号機と4号機の運転を再開しないよう命じる判決を言い渡したことに関連し、
原子力規制委員会で安全が確認された原発は運転再開を決定する政府の方針に変わりはないという考えを示しました。

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この中には二つの大きな問題点が示されています。

一つは、判決が、人の生存を守るという基本的な価値を人格権(憲法13条)として尊重すべきことを明言した点です。

現在の政治の姿勢は、人の生存やその生活を尊重するという視点に欠けているように感じます。
「電気代と比較すべきでない」という言葉は、まさに電気代と比較していいと考える昨今の企業や政治のあり方の誤りを指摘しています。

この発想は、平和を考えるときにも、安易に「血を流す」ことを選択しようとする政府の基本的な考え方にも共通します。
「電気代より安い」、「血を流すこともかまわない」と考える側の人たちは、
『安い命・なくなってもいい命』の側にはまわらないという格差のもとにいるのだと思います。
そんなことは、憲法は認めていません。憲法は平等な(14条)人の尊厳性を謳っているのです(13条)。



もう一つは、菅官房長官の司法を一顧だにしない発言に見られる、行政の司法に対する尊重の意識のなさです。
これは、三権分立という国の権力の構造の理解の問題です。

政治は様々な要素によって動かされており、
そのために憲法で守るべきとされた価値から逸脱した動きをすることがあります。
私たちは多数決や民主主義だけでこの国を進めてもらいたいと考えるのではなく、
憲法が定めた価値(例えば先に述べた「平等」な「人権の尊重」)を守りながら行ってもらいたいわけです。

この政治の動的な、時として非情な動きを、あるべき価値観で修正していくのが司法です。
ですから、司法の判断については、行政や立法は尊重するという姿勢が必要であり、
そういう関係を意味するのが三権分立です。

ところが、行政は、司法判断を「一顧だにしない」姿勢です。

これは、先の嫡出子と非嫡出子の平等を認めた最高裁判決http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130904154932.pdf
が出たときにも、議員の間で司法軽視の発言があったことが話題になりましたが、
政治部門にこのような考え方があふれているのではないかと感じます。


近時、とみに立憲主義(憲法の価値は守らなければならないという考えかた)についての理解が足らないといわれる政府ですが、
人の命を平等に尊重するために作られた憲法や国の構造(三権分立)について、
もう一度私たちはしっかり見直して、
そのことを理解できた人だけを政治家として選びたいです。

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