杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・慰安婦問題~事実はどう判断するか。

2007-03-11 12:29:08 | Weblog
慰安婦問題について、その強制的な連行の有無が問題にされています。
また、コメントにもその真偽についてのご意見をいただいていますので、再度書きます。

阿部首相は、強制したという証拠がでてこないから、強制はなかったといっています。
しかしながら、私たちはいわゆる慰安婦の女性たちから、連行され、監禁され強姦され続けたという事実を聞き取っています。それも、ひとりだけではないのです。私がかかわっているのは少数民族の女性たちが被害者で、中国の同じ省の中の被害者でも、一山越えれば言葉が微妙に違い、口裏合わせなどできようもないのですが、連行態様、連行場所なども一致しているのです。また、同地に出兵した日本兵も、そのことを証言しています。
このような事実があるので、私は少なくとも自分の扱っている慰安婦事件については拉致・監禁・強姦があったと考えています。

 例えば、強盗事件が起こって、被害者が被害の実情を述べているのに、加害者が強盗はしていないといったときに、加害者側の言い分のみで認定されていいでしょうか。
すなわち、自己の不利になる側が、「(自分に不利な証拠は)存在しない」といったからといって、それを鵜呑みにしていいかということです。とりわけ、「慰安婦」事件では、自分が被害者であるとあえて名乗り出るメリットは何もないだけでなく、逆に大きな負担を負います。補償目当てに自分や自分の家族を好奇の目にさらすことなど考えられません。
被害者、加害者どちらの言い分を信憑性のあるものと見るかは一目瞭然だと思います。裁判では、加害者側のそのような言い分のみで事実を認定することはありません。
本件事件では、裁判は拉致、監禁、強姦の事実を認めました。


最後に、元「慰安婦」の女性から聞き取った事実の一部を掲載します。
・・・・・・・・・・・・・・・・

  これから、私が、第2次大戦のとき海南島を侵略してきた日本軍に「慰安婦」とされたときのことをお話したいと思います。
私は、1927年12月10日に生れました。私が、生まれたところは中国(現在)海南省の陵水県の〇〇〇村です。当時、私は、両親と妹、それに私の4人家族でした。私の母は目が見えず働けなかったので、父1人が働いて一家の生活を支えていました。
1 私が、ちょうど14歳のとき、稲を担ぐ道具をもって、村の田畑で働いているとき、村に日本軍が入ってきたのです。私は、日本軍を見つけたので一生懸命走って逃げました。しかし、追いかけられ追いつめられて、後ろから大きな声で「止まれ」というよう命令されました。日本語の意味は分かりませんでしたが、そのような感じの声でした。
 私は、恐怖感で一杯になり、思わず逃げるのを止めました。そうしたら、突然、日本兵が後ろから抱きついてきて、顔に口づけをされ、服を脱がされたうえ後ろから性器を押しつけられたのです。私は、そのとき抱きついてきた日本兵士の手を噛んだところ、その兵士は私を殺そうとしました。
 私は、そのとき「殺される。」と思ったのですが、上官の兵士が何か叫んだところ、その兵士は、殺すのを止めました。気が付いたら、私は10人ほどの日本兵士に取り囲まれていました。
2 そのとき私は事なきを得たのですが、家に帰ろうとした私にその上官の兵士がついてきたのです。家に着いたところ、私は家の中に押し込まれその上官の兵士に強姦されました。
 家には母がいたのですが、目が見えない母には何が起こっているか分からず、日本兵士にされるがままに強姦されてしまいました。事が終わってから私は泣きながら母親にごく間近で行われた蛮行について抱き合って泣きました。私は、そのときあまりの悲しさに自殺しようと思ったのですが、母親に止められ、踏みとどまりました。
 私は、その日、強姦された自宅にそのまま止まることができず、近くの家に行って一晩泊まらせてもらいました。一晩中泣き続け、翌朝を迎えました。
 翌日、日本軍が私の家に突然、何人も来て、「娘はどこにいる。」と詰問し始めました。両親が「知らないと答えたら。」、両親を殴り始めたのです。私は、見るに耐えられなくなり隠れていた近くの家から出て行きました。
そうしたら、その場で日本軍は、私の服を脱がして強姦したのです。その日から、しばらくの間、日本兵は、日が暮れると毎日のように家に来て、私を強姦しました。
3 そんなつらい日が何ヶ月続いたでしょうか、私は〇〇〇村の日本軍の駐屯地に無理矢理連れて行かれました。
  そこは、駐屯地の中にある日本軍の慰安所でした。そこには、同年代の5人が一緒に住まわされました。そこでは、掃除、洗濯、麻袋を編むなどの労働もしました。そこでは、昼、夜を問わず、しょっちゅう日本兵が来ては強姦されました。あるときには監禁されていた5人が一緒に強姦されたこともありました。


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7 コメント

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Unknown (宇宙戦士バルディオス)
2007-03-11 12:39:42
>私たちはいわゆる慰安婦の女性たちから、連行され、監禁され強姦され続けたという事実を聞き取っています。

 では、加害者にされている日本兵の側からも事実の聞き取り調査を行うべきでしょう。中帰連のような中国の収容所で洗脳された者ではなく、一般の復員者を探し出し、裏付を取るべきです。


>強盗事件が起こって、(中略)加害者が強盗はしていないといったときに、加害者側の言い分のみで認定されていいでしょうか。

 被害者側の言い分のみで認定してはならないのは、当然のことです。


>自己の不利になる側が、「(自分に不利な証拠は)存在しない」といったからといって、それを鵜呑みにしていいかということです。

 自己に有利になる側の主張を、鵜呑みにしてはなりません。


>裁判では、加害者側のそのような言い分のみで事実を認定することはありません。
本件事件では、裁判は拉致、監禁、強姦の事実を認めました。

 当事者主義により、日本国側が事実を争う姿勢を示さなければ、史実がどうあろうと、加害者側の「証拠」のみに基づいて、「事実」は一方的に認められてしまいます。現実に起こった「史実」とは、一切関係なく。

 なお、海南島の占領は、日華事変の一部として行われたと記憶しております。日華事変は、中国側が上海租界を警備していた日本海軍特別陸戦隊に対して、先制攻撃を行うことによって始まったのであり、日本の侵略戦争ではありません。日本は、海南島を占領はしても、「侵略」はしておりません。
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事実を真剣に争うことですね (杉浦ひとみ)
2007-03-11 14:59:46
宇宙戦士ヴァルディオさま

「当事者主義により、日本国側が事実を争う姿勢を示さなければ、史実がどうあろうと、加害者側(ママ)の「証拠」のみに基づいて、「事実」は一方的に認められてしまいます。現実に起こった「史実」とは、一切関係なく。」

おしゃるとおりです。

ガップリ組んでいただきありがとうございました。
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思ったより (宇宙戦士バルディオス)
2007-03-11 15:26:42
 柔軟な方ですな。
 これまで左翼を相手にすることは多かったけど、このように話のかみ合う相手に遭遇することはありませんでした。しかも、自由な書き込みを認めてくださる点でも異例です。
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「左翼」について(茶茶入れごめんなさい) (Devlin)
2007-03-11 19:19:52
>これまで左翼を相手にすることは多かったけど

あの、ですねぇ、杉浦さんご本人は否定なさいませんが、いわゆる「左翼」ではないと思いますよ。宇宙戦士ヴァルディオさまは、一方で厳密な論旨を展開なさりながら、対話の相手を「左翼」とおっしゃるのはあまりに雑駁ではないでしょうか。

いわゆる「左翼」は、ほぼ、自滅してしまいました。いまや社会民主党に所属している議員のほとんどはリベラルだと思います。社会主義協会派に所属して積極的にその運動を続けていらっしゃる議員は皆無、ではないかな……(?)。かつて同じ会派に所属されていた國弘正雄さんも、三木武夫元首相の元秘書官で、社会主義・共産主義との接点はほとんどなかった、と記憶しています。

保坂展人さんが新宿高校を追放された頃はいざしらず、1980年代に入って東京から船をチャーターして高知県窪川町で脱原発野外フェス『生命の祭り』(1981年8月)を実現させるなど、教条的ないわゆる「左翼」なら目を剥きそうな派手な大風呂敷を広げたりしていました。そのころの若いスタッフは「うそだろー、そんなことできるわけがない」と言ってたのを実現させてしまったんです。
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/eb0aa5fe1ccc40fa0a67e2b09b4b282c

辻元清美さんもそう。「左翼」運動なんか見向きもせず、世界中を船で回ることに夢中になっていた人。いわゆるピースボートね。

この二人に共通しているのは、実りのある「遊び」にうつつを抜かしていた、ということ。どちらも、誰もが考えなかった破天荒な夢を実現させた。当時真剣に遊んだ経験を、いま活かしている。こういう人たちを、ふつう「左翼」とは呼びません。

党首の福島さんも同じ。議員になる前は、法務省に日参して役人といっしょに夫婦別姓の法案を練っておられたと聞いていますが、法案が煮詰まった段階で「これ以上法律的に詰めるべきところはない、あとは世論次第」と役人に言われ、彼女が催した集会は「楽しくやろう、夫婦別姓」というものでした。「楽しくやろう」なんて、いわゆる「左翼」とはかけ離れた発想です。戸籍制度を否定する人にまで手紙を出しまくって集まった人たちで盛会となりました。
参考→「福島瑞穂にきく」http://www.sakamura-lab.org/tachibana/hatachi/fukusima.html

いわゆる「左翼」が消滅して相対的に左寄りに見えるようになっただけ。いま活躍している人のほとんどは「左翼」ではなくリベラルと呼ぶべきでしょう。左翼の消滅の結果、リベラルの人たちが「左翼」と呼ばれる現象はとても奇妙に見えます。左翼で現役なのは、共労党(共産主義労働者党)を立ち上げた、いいだももさんや、いわゆる新左翼の残党(失礼)くらいなものだと思いますよ。いいださんはもうお歳を召されたせいか、ほとんど消息は聞こえてきませんが。ああそうか、フェミニズムに転身なさった上野千鶴子さんも、元左翼と言えば言えますけれども。

日本語で自由主義と訳されるリベラルには、柔軟な人が多くて当然です。いずれにせよ、日本語は正確に使いましょう(笑)。
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茶茶入れを本題に戻せば (Devlin)
2007-03-11 23:57:22
茶茶入れのご採用ありがとうございます。本題の話を少し書きましょう。

相当たくさんの文献を読んでいますが、再度読み直して検証することなく雑駁に。慰安婦関連で戦犯容疑を免れるため極めて多数の書類を焼却してしまっただろうという多くの記述が記憶に残っています。罪証湮滅ですね。事実をなかなか証明できないのはそのあたりにある、と考えられます。公文書として役所に保管されていた書類を多数焼却している。それを指示・命令した文書が、どこかに残っているはず。ですが、その文書の内容は制限列挙ではなく例示列挙だった可能性があります。阿吽の呼吸があったかも。具体的に何を燃やせとは書いてないだろうとは思います。ですが、末端にまでその命令を漏れなく行き渡らせるべく軍の従軍慰安婦に関する書類を全て焼却する何らかの工夫があったはず。そういった分析はすでにされているんでしょうか?

また、宇宙戦士バルディオスさまがおっしゃった加害者側の証言についてですが、現在日本で平穏に暮らしていらっしゃる方で実名を名乗ってまで加害事実を公開される方は極めて少ないというのが実情です。何件か私的に加害証言をいくつか聞いたことはあります。けれど私的な場面に限る、という事例しか知りません。ご本人の家族や地域での地位と名誉を考えると、「どうして今更」というケースが多いだろうことは容易に推認できると思います。ご家族も「なぜ今そんなことをいまさら」という方々は多いでしょう、加害者は復員後普通の生活をしているのですから。そういった事情で、加害者側のカミングアウトは難しい。もっと簡単に言えば、もう余命の少ない高齢の老人をいじめてどうする、という話になります。中曽根元首相を追及する意味はそこにあると思います。

確かに証明は難しい。ですが国家・日本軍(なぜか軍だけしか問題にされず、大日本帝国政府が抜けているような気がします)が関与していた高度の蓋然性はあまりにも明らかです。当初安倍首相を擁護していた米国共和党議員が次々と匙を投げ、不支持の立場を明らかにしているのは、過去の罪証は認めつ、すでに謝罪は済ませたという理由で擁護してきたのに、開き直って謝罪はしないという姿勢に反発する共和党議員。これがヨーロッパにも波及する気配も。

勝負の決着はこれからです。
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それはあり得ない (宇宙戦士バルディオス)
2007-03-12 22:06:00
>慰安婦関連で戦犯容疑を免れるため極めて多数の書類を焼却してしまっただろうという多くの記述が記憶に残っています。罪証湮滅ですね。

 捕虜虐待等とは異なって、当時あくまで慰安所は合法的な存在であって、それに関与したところで違法行為、いわんや裁判になるなどと想像できる者がいたとは思えない。731も戦艦大和も軍機事項だから、全て焼却されたはずなのに、実際には多数の文書資料が残っているように、全ての資料を焼却、抹殺することは現実には不可能です。私は、現実に上官から焼却を命ぜられた資料を、密かに隠して保管していた元兵士から、その資料を見せられたことがある。

>加害者側の証言についてですが、現在日本で平穏に暮らしていらっしゃる方で実名を名乗ってまで加害事実を公開される方は極めて少ないというのが実情です。

 実際に、悪事を働いていないから名乗り出る者がいないのでしょう。やってはいないことを、自白はできないのです。吉田某のような職業的詐話師や、撫順戦犯管理所で洗脳された者は別として。

>国家・日本軍(なぜか軍だけしか問題にされず、大日本帝国政府が抜けているような気がします)が関与していた高度の蓋然性はあまりにも明らかです。

 その蓋然性、日本の公権力が違法なことを行ったと示す証拠が存在しないから問題なのです。証拠がないから、「蓋然性が高い」というようなことしか言えない。
 別にアメリカが絶対善ではない以上、匙を投げられたとて、気にはなりませんね。米国だって、日本政府に命じてRAAという慰安所を設けさせた。ベトナムでも、GIは大勢の現地人の娼婦を抱いた。アメリカにこの点で日本を批判する資格はないのです。もちろん、中国、韓国、北朝鮮、ロシアはなおさらです。日本のやったことが不良中学生レベルなら、米中韓朝露は暴力団レベルでしょう。
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議論はうち切りましょう (杉浦ひとみ)
2007-03-14 12:50:12
宇宙戦士バルディオスさんのコメントの中に
次のようなくだりがありました。

Devlinさんの引用
「加害者側の証言についてですが、現在日本で平穏に暮らしていらっしゃる方で実名を名乗ってまで加害事実を公開される方は極めて少ないというのが実情です。」
宇宙戦士バルディオスさんのコメント
「実際に、悪事を働いていないから名乗り出る者がいないのでしょう。やってはいないことを、自白はできないのです。」

事実があっても言わない、言えないことは世の中にいくらでもあります。
セクシャルハラスメントを受けながらも、正社員の地位を失いたくなくて会社には何も言わずに平静を装い仕事を続ける女性。知的障がい者施設から帰省するたびに体調の不良を訴え施設に戻りたくないとぐずる子をむしろ「お世話になっています」と頭を下げて送り届ける親。毎日無視され、暴力をふるわれ、金を脅し取られながらも「学校は楽しいよ」と家では話して、いじめを訴えずに耐える子ども。

 事実の存否が問題となっているときに、このような問題において、名乗りでないのは事実がないから、という書き方をされるのは、人の心の機微を感じられない方なのか、あえてそれを無視して強弁されるのか。
(甘ちゃんの私は、それでも筆が…キーが滑ったのか、と思いたいのですが)

事実を明らかにすることが重要という点では一致できました。ただ、事実の判断の仕方について、考える前提が同じでないこともはっきりしました。

この問題については、これ打ち切りにしたいと思います。
ありがとうございました。

P.S.慰安婦裁判では、国は事実についてまったく反論しません。バルディオスさんの論によれば「反論できる事実がないから反論しない」ということになりそうですが、私たちはそこで思考を止めることはしません。

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