日本弁護士連合会では、会長が社会の中の出来事などについて法に照らして、社会に向けて意見を発表しています。
内容によって、声明であったり、談話であったりしますが、新聞にも掲載されていることもあります(地味ではありますが)。
今回、会計検査院の懲戒処分要求を防衛相が拒否した、という事件についての談話がでました。
新聞にわずかに掲載されただけで、マスコミも取り上げず、多くの市民が知らないままになっている事件だと思います。
日弁連は、慎重な表現になりますが、私たち下世話な者からすれば、戦前軍部が台頭し、戦争に突き進んだという過去の歴史と、どうしてもオーバーラップしてしまいますし、
また、戦前を知る方たちが、昨今の日本を大戦前夜に似ている、などと評されることとも
平仄が合い、一層危惧感が高まります。
それを、なぜマスコミは何も言わないのか。
せっかく会計検査院が57年ぶりで伝家の宝刀(?)を抜いたのに、
結局憲法の制度は“たけみつ”だったということになってしまいます。
憲法を生かすも殺すも、私たち次第だということを自覚しなければ、と思った事件でした。
以下にその会長談話を貼り付けます。
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会計検査院の懲戒処分要求を防衛省が拒否した件に関する会長談話
米軍普天間飛行場の代替施設建設を巡り予算措置に重大な過失があったとして、会計検査院が那覇防衛施設局(現・沖縄防衛局。以下「施設局」という。)の元局長2人を懲戒処分にするよう防衛省に要求していた問題で、防衛省が6月3日付けで「懲戒処分は行わない」と会計検査院に通知していたことが報道された。
本件は、施設局が民間業者4社に海底地質調査などを約8億4000万円で委託契約したが、その後、警戒船の発注など契約外の作業が追加されたため、経費が予算を大幅に超えたにもかかわらず、追加業務について契約を変更せず、民間業者への支払いを拒否したことから業者側と裁判になり、結局、施設局側が業者に対して前渡金の2億5000万円のほか約22億円を支払うこととなったというものである。
この追加支出には、以下に述べるように憲法が定める財政民主主義に関する重大な問題が含まれている。すなわち、会計法令等によると、各省各庁の長は、財務大臣の承認を経た支出負担行為の実施計画について変更を要するときは、その事由を明らかにし、財務大臣の承認を求めなければならない(予算決算及び会計令18条の5第1項、支出負担行為等取扱規則6条参照)。そのため、支出負担行為担当官が支出負担行為をする際には、支出官(各省各庁の長及びその委任を受けた者)に金額が超過しないことの確認を受けなければならないこととされている(会計法13条の2参照)。
しかし、元局長2人は支出行為担当官であるにもかかわらず、それらの追加変更手続をとらなかったのであるから、本件の追加支出は、憲法83条などが定める財政の民主的コントロールの趣旨に真っ向から反するものである。
さらに、元局長のうち1人は、代替施設建設に反対する地元住民等の阻止行動に対応するため、警戒船を大量に導入するという追加発注がなされたにもかかわらず、適切な手続を踏まなかったことも重大な問題である。
会計検査院が2007年度決算検査報告で会計法令等に違背した事態が見受けられたことを指摘したところ、防衛省が責任者だった元局長2人を「注意」と軽い処分にとどめたため、会計検査院は2009年12月に懲戒処分の「戒告」にするよう求めた。会計検査院の省庁への懲戒要求は57年ぶりだった。しかし、それにもかかわらず、防衛省は、この要求に従わず会計検査院の元局長2人に対する懲戒処分要求を拒否した。
自衛隊の合憲性についてはさておき、国の予算に対する民主的コントロールをないがしろにすることは、憲法が決して容認しないところである。また、国についての公金支出の違法性を問う司法手続がいまだ整備されていないという問題もある。
そこで、当連合会は、政府(防衛省)及び国会に対し、本件追加支出の経緯について徹底的に調査し、再発防止策を講じるよう求めるとともに、当連合会が2005年6月に提言した「公金検査請求訴訟制度」の創設について早急に検討するよう要望する。
2010年(平成22年)7月30日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児
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内容によって、声明であったり、談話であったりしますが、新聞にも掲載されていることもあります(地味ではありますが)。
今回、会計検査院の懲戒処分要求を防衛相が拒否した、という事件についての談話がでました。
新聞にわずかに掲載されただけで、マスコミも取り上げず、多くの市民が知らないままになっている事件だと思います。
日弁連は、慎重な表現になりますが、私たち下世話な者からすれば、戦前軍部が台頭し、戦争に突き進んだという過去の歴史と、どうしてもオーバーラップしてしまいますし、
また、戦前を知る方たちが、昨今の日本を大戦前夜に似ている、などと評されることとも
平仄が合い、一層危惧感が高まります。
それを、なぜマスコミは何も言わないのか。
せっかく会計検査院が57年ぶりで伝家の宝刀(?)を抜いたのに、
結局憲法の制度は“たけみつ”だったということになってしまいます。
憲法を生かすも殺すも、私たち次第だということを自覚しなければ、と思った事件でした。
以下にその会長談話を貼り付けます。
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会計検査院の懲戒処分要求を防衛省が拒否した件に関する会長談話
米軍普天間飛行場の代替施設建設を巡り予算措置に重大な過失があったとして、会計検査院が那覇防衛施設局(現・沖縄防衛局。以下「施設局」という。)の元局長2人を懲戒処分にするよう防衛省に要求していた問題で、防衛省が6月3日付けで「懲戒処分は行わない」と会計検査院に通知していたことが報道された。
本件は、施設局が民間業者4社に海底地質調査などを約8億4000万円で委託契約したが、その後、警戒船の発注など契約外の作業が追加されたため、経費が予算を大幅に超えたにもかかわらず、追加業務について契約を変更せず、民間業者への支払いを拒否したことから業者側と裁判になり、結局、施設局側が業者に対して前渡金の2億5000万円のほか約22億円を支払うこととなったというものである。
この追加支出には、以下に述べるように憲法が定める財政民主主義に関する重大な問題が含まれている。すなわち、会計法令等によると、各省各庁の長は、財務大臣の承認を経た支出負担行為の実施計画について変更を要するときは、その事由を明らかにし、財務大臣の承認を求めなければならない(予算決算及び会計令18条の5第1項、支出負担行為等取扱規則6条参照)。そのため、支出負担行為担当官が支出負担行為をする際には、支出官(各省各庁の長及びその委任を受けた者)に金額が超過しないことの確認を受けなければならないこととされている(会計法13条の2参照)。
しかし、元局長2人は支出行為担当官であるにもかかわらず、それらの追加変更手続をとらなかったのであるから、本件の追加支出は、憲法83条などが定める財政の民主的コントロールの趣旨に真っ向から反するものである。
さらに、元局長のうち1人は、代替施設建設に反対する地元住民等の阻止行動に対応するため、警戒船を大量に導入するという追加発注がなされたにもかかわらず、適切な手続を踏まなかったことも重大な問題である。
会計検査院が2007年度決算検査報告で会計法令等に違背した事態が見受けられたことを指摘したところ、防衛省が責任者だった元局長2人を「注意」と軽い処分にとどめたため、会計検査院は2009年12月に懲戒処分の「戒告」にするよう求めた。会計検査院の省庁への懲戒要求は57年ぶりだった。しかし、それにもかかわらず、防衛省は、この要求に従わず会計検査院の元局長2人に対する懲戒処分要求を拒否した。
自衛隊の合憲性についてはさておき、国の予算に対する民主的コントロールをないがしろにすることは、憲法が決して容認しないところである。また、国についての公金支出の違法性を問う司法手続がいまだ整備されていないという問題もある。
そこで、当連合会は、政府(防衛省)及び国会に対し、本件追加支出の経緯について徹底的に調査し、再発防止策を講じるよう求めるとともに、当連合会が2005年6月に提言した「公金検査請求訴訟制度」の創設について早急に検討するよう要望する。
2010年(平成22年)7月30日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児
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素直にまとめられた文章だったので、短歌ブログに引用させていただきました。ありがとうございます。
宇宙戦士さんのおっしゃる、後段の点、現在の司法試験の制度については、本当に大変な問題です。
お金持ちの子どもでなければ司法試験は受けられなくなっています。試験に3回で受からなかったら、受験資格がなくなるとか、のプレッシャーもすごいものがあります。
また、合格してからも給料なしの修習時代を借金しながらすごし、法律家になったときには既に何百万円かの借金からスタート。
社会正義などといっていられなくなります。
いくらなんでもそれはひどすぎるのではと思います。
左右問わず被疑者の人権を擁護するのは職業倫理の上で当然のことであり、思想が気に食わないからといってギルド的な独占体がそのサービスの提供に対して制限を加えるなどということはあってはならないと思いますが、有形無形・明示暗示関係無くそのような事があるのでしょうか?
思想信条は職業倫理に優先するのでしょうか?
私は弁護士会こそ政治的思想的に中立であっていただきたいと願うのですが、それは無理な相談ですか?
瞳さん教えて。
「思想信条は職業倫理に優先するのでしょうか?」
ですが、思想信条はもちろん弁護士であっても尊重されます。思想信条が内心にとどまる間は、それが邪なものであっても、(弁護士に限らず)制限はされません。
弁護士倫理に反する行動をとっているとすれば、それは思想信条にとどまっているとは言えないということになります。