成人検査を通過した子供たちは、「教育ステーション」と呼ばれる宇宙ステーションに送られ、コンピューター「マザー」の指導の下、大人社会に順応する「教育」を受けることになります。
その「マザー」の申し子とも呼ばれる少年、キース・アニアン。成績優秀にして武道にも優れ、常に冷静沈着で感情の起伏が少ない。
若年にしてメンバーズ・エリート(地球〈テラ〉国家中枢に参画できる)の権利を持ち、誰からも一目置かれる彼に、セキ・レイ・シロエという少年が執拗に勝負を挑んできます。
そのあまりのしつこさに、普段冷静なはずのキースが思わず激してしまい、シロエを殴り倒します。
思わぬ行動をとらせた、シロエの強い「意思」に戸惑うキース。シロエは成人検査によって母や故郷の記憶を消されたことに恨みを持っていました。大好きだった母や故郷の記憶を消したマザーに対する憎悪。それはS.D体制への批判精神を呼び起こし、体制の申し子といわれるキースへ、激しい敵愾心を抱くに至ったのです。
シロエはキースが、母や故郷の記憶を初めから持ち合わせていないという事実に着目し、キースの履歴を調べ、そして遂に、キースの「秘密」を知るに至ります。
「自分で確かめろ、真実を…」シロエに促され、キースはあるセクションに足を踏み入れます。
そこにあったものは、巨大な水槽の中に漂い、感情のない目でこちらを見つめる少年の眼差し。
それは、人の受精卵を培養して育てられた人造人間の培養槽でした。
キースは自分もまた、こうして「作られた」人間であることを知るに至るのです。
あらゆる人間的なしがらみに捕らわれず、「無垢なる目」を持って体制を維持し、飛球環境を復活させ人類を導く指導者たるべく、コンピューター「マザー」によって生み出された者。
それが、キース・アニアン。
抗えぬ己の運命に慄然とするキース。そこへ、シロエが宇宙艇を奪い脱走したとの連絡が入ります。マザーの命を受け、追跡するキース。
型通りの警告を発し、キースはシロエの乗った宇宙艇を撃墜します。人間臭さが故に、体制に従えなかった者の末路でした。
己の仕事を型通りに遂行したキース。ヘルメットを外したその目には、一筋の涙が……。
その時ジョミーは、空間を誰かの想いがよぎり、消えていったのを感じました。
とても切なく、哀しく、しかし「強い」思い。
まるでソルジャー・ブルーのような……。
つづく
サムはのちに精神を病んでしまい「子供帰り」をしてしまうんです。そうして母親のことばかりを口にするようになる。母と故郷の記憶だけは完全には消えてしまわないようなんです。
私はこのシロエやサムのエピソードは、キースに母性というものを考えさせ悩ませる一つの要素として使われたんだろうと思っています。いずれにしろ「母性」は、この作品の重要なテーマの一つですね。
男の子にとって母親は特別な者だという、竹宮流「少年観」があるのかもしれませんね。
だって記憶を消されてるのに大好きだったことは覚えてるなんて…。
それにこの設定だとただのマザコンの氾濫みたいだし…。
私は竹宮恵子さんが、マザーコンピューター(支配的な母性)を否定する作品の補完として、母性全てを否定してないよとのメッセージというか、言い訳のために入れたんじゃないかと訝っていたんです。笑
話がそれますがこういった支配的は母性に対する抵抗の作品に対して、エヴァンゲリオンは「子供(自分)を取り込んで一体化しようとする母性」への抵抗とも言われていますね。
やっぱり人間は、自立を阻もうとするものに抗うものなんですねー。
とにかくシロエ好きな私としては、シロエが支配に反抗する理由は、もう少しアクの強いものにして欲しかったなー。