テレビ時代劇に引き続き、今度は時代劇映画の個人的ベスト10をご紹介いたします。
なにかと家にいることの多い昨今、ゆっくりと時代劇を楽しむのも一興かと。
では、早速。
第10位:『るろうに剣心』2012
監督、大友啓史。出演、佐藤健。武井咲。吉川晃司。蒼井優。青木崇高。江口洋介。香川照之。
この作品を時代劇として認めないという、往年の時代劇ファンもおられるでしょう。よくわかります。ただ私は、漠然とですがこの作品に時代劇の未来を鑑みるヒントのようなものが、あるように思われます。ただしこの作品における殺陣、というよりアクションは、しっかりと世界観が構築されたこの作品内だからこそ、生きるもの。この作品以降、似たような「疑似時代劇」が何本か制作されたが、いずれも低レベル。そういう意味では、現実は厳しい。
第9位:『たそがれ清兵衛』2002
原作、藤沢周平。監督、山田洋次。出演、真田広之。宮沢りえ。田中泯。岸恵子。
真田広之も良いですが、この映画一番の功績者はなんといっても宮沢りえ。この時代の武家の女性の、凛とした気品を見事に演じていました。たすき掛けをする動きの無駄のなさは、真田広之の殺陣よりも見ごたえがあった、と言っては語弊があるかな(笑)耐える、耐え忍ぶ、この時代の日本人の美しさには深く感じ入るものがある。舞踏家・田中泯の俳優としての資質を発掘した点でも、見逃せない一本。
第8位:『人斬り』1969
監督、五社英雄。出演、勝新太郎。仲代達矢。石原裕次郎。三島由紀夫。
幕末、土佐の「人斬り以蔵」と称された男、岡田以蔵を勝新さんが演じた作品。勝新さんの躍動感溢れる演技、もちろん殺陣も凄まじい。仲代達矢は土佐勤王党党首、武市半平太役で出演。以蔵の「人斬り」の才能を利用する、冷徹かつ狂気な政治家を演じています。仲代さんはこういう役がハマりますねえ。石原裕次郎は以蔵の旧友、坂本龍馬役で出演、裕次郎さんは役云々というより、とにかくカツラが似合わない!この方は時代劇には合いませんね。そしてなんといっても三島由紀夫。薩摩の「人斬り」田中新兵衛役で出演。最期の割腹シーンは、後のことを知っているだけに、少々背筋が寒くなるものを感じます。座頭市以外での、勝新さんの殺陣が楽しめる一本。
第7位:『御用金』1969
監督:五社英雄。出演、仲代達矢。中村錦之助。丹波哲郎。浅丘ルリ子。
海に消えた幕府御用金。村人が丸ごと「神隠し」にあった漁村……。物語はサスペンス・タッチで始まり、やがて物語は、裏で暗躍する丹波哲郎、これを阻止せんとする仲代達矢、さらには御用金の行方を探る幕府隠密の中村錦之助が加わり、スリリングな展開へと発展していきます。その展開には思わず見入ってしまう、見事な娯楽作品に仕上がっています。撮影は極寒の津軽で行われ、仲代さんは木に吊るされたり、雪の中に埋められたり、切り立った崖を登らされたり、メチャメチャ身体張って頑張ってます。
第6位:『魔界転生』1981
原作、山田風太郎。監督、深作欣二。出演、千葉真一。沢田研二。緒形拳。室田日出男。真田広之。若山富三郎。佳那晃子。丹波哲郎。
柳生十兵衛vs宮本武蔵、柳生十兵衛vs柳生但馬守宗矩など、時代劇ファンなら一度は見てみたいと思う夢の対決を実現させた一編。沢田研二演じる天草四郎の妖艶さ。緒形拳演じる老宮本武蔵は、どこか哀しい。そして若山富三郎演じる但馬守、若山さんは「要するにオバケだろ?」ということで、瞬きを一切しない演技で臨み、その不気味さは魔界衆の中でも群を抜いています。その若山但馬守と千葉十兵衛との、激しく燃え盛る炎の中での決斗シーンは、映画史に残る名シーンだと断言します。あんな危険な撮影、今じゃ出来ないんじゃないかな。
第5位:『椿三十郎』1962
原作、山本周五郎(『日々平安』より)。監督、黒澤明。出演、三船敏郎。仲代達矢。加山雄三。平田昭彦。田中邦衛。志村喬。藤原鎌足。入江たか子。伊藤雄之助。
三船敏郎と仲代達矢との、ラストシーンでの一騎打ちは、世界の映画史に残る、未だに語り継がれている迫力の名シーン。三船さん演じる三十郎の、バケモノじみた強さが強烈なインパクトをもって迫ってくる。こんな殺陣の出来る人、もういない……。緊迫感溢れる中、入江たか子さんや伊藤雄之助さんらの、ユーモラスでゆったりした、柔らかい雰囲気が映画に緩急を与えており、このバランス感覚の見事さはさすが世界のクロサワ。是非にも見て欲しい一本。
第4位『山桜』2008
原作、藤沢周平。監督、篠原哲雄。出演、田中麗奈。東山紀之。篠田三郎。村井国夫。檀ふみ。富司純子。
田中麗奈ちゃんの「目」がなければ、この映画は成立しなかった。登場人物は必要最低限の事以外、基本的に喋らない。己の気持ちは心の内に秘めている。その分演者たちは、ちょっとした表情やしぐさ、目の動きなどで、心の内を表現していく。喋らずとも、ちゃんと心の動きが分かるように演出されているのが素晴らしかった!藤沢周平時代劇のもつ、耐え忍ぶことの美しさ。ヒガシ演じる真っすぐな青年武士と、田中麗奈演じる出戻りの武家の女性との、口に出されることのない、ほのかに秘められた恋情……。この時代の日本人は本当に美しかった。そんな感慨に耽る一本。
第3位『羅生門』1950
原作、芥川龍之介。監督、黒澤明。出演、三船敏郎。森雅之。京マチ子。志村喬。千秋実。上田吉二郎。
映画ファンならば当然知っているべき、名作中の名作。人間の汚さ、狡さ、弱さ、儚さを描きつつ、最後に一筋の希望を見出して終わる珠玉のラストシーンは、時代を越えて心を打つ。あまり多くは申しません。黙って観ろ!そして感じろ!
第2位:『十三人の刺客』1963
監督、工藤栄一。出演、片岡千恵蔵。里見浩太朗。嵐寛寿郎。西村晃。山城新伍。内田良平。菅貫太郎。
いわゆる「集団抗争時代劇」の魁。追う者と追われるものとの探り合い、駆け引き。一つの要塞と化した宿場町での大抗争シーンの凄まじさ。血沸き肉躍るとはまさにこのこと。男たちの命がけの死闘に酔いしれよ!
第1位『用心棒』1961
監督、黒澤明。出演、三船敏郎。仲代達矢。東野英治郎。志村喬。藤原鎌足。山田五十鈴。土屋義男。加東大介。司葉子。
三船敏郎の凄まじい殺陣の実力を、強烈に印象付けた最初の作品。これあってこその『椿三十郎』なわけだし、ストーリーもこちらの方がよりシンプルで入りやすい。もう言葉なんていらないね。映画は娯楽、理屈抜きで楽しめる珠玉の傑作時代劇。四の五の言わずに見やがれってんでえ!
そして、これら傑作郡をすべて抑え、頂点に君臨する時代劇のCHAМPIONといえば、もうわかるよね、こちらの作品。
👑CHAМPION:『七人の侍』1954
監督、黒澤明。出演、三船敏郎。志村喬。加東大介。千秋実。稲葉義男。宮口精二。木村功。土屋義男。左卜全。山形勲。高堂国典。
上映時間3時間半。しかし全く飽きることなく一気に観させてしまう見事さね。アクションとしての時代劇と、人間ドラマとしての時代劇と、どちらも優れている珠玉の一本!これ以上の作品はないと、敢えて断言しよう。こういう作品がある、日本の時代劇というものを、私は心から誇りに思う。
時代劇映画ベスト10、いかかがでしたか?
では、また
機会があれば次回。