大前研一のニュースのポイント

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東京都は、五輪招致よりも優先すべきことがある

2009年02月24日 | ニュースの視点
9日、東京・築地市場の約770の水産仲卸業者が加入する同市場最大の「東京魚市場卸協同組合」の理事長選挙があり、豊洲地区への移転に賛成する候補と、反対する候補が15票ずつを獲得し、新理事長選任は17日の理事会以降に先送りになった。

市場移転問題について、あらゆる問題・課題が宙に浮いてしまって、一向に解決の糸口が見えてこないのは、東京への五輪招致が原因になっている。

東京都の新年度予算案に、2016年の東京五輪招致の経費として46億2000万円が計上されるとのこと。

五輪招致の予算は3年間で100億円になる見通しだが、招致イベントの開催費用として都内の全区市町村に一律1000万円を支給するなど、都議会などで妥当性を問う声も出ている。

まず五輪招致に対する現状について、東京とシカゴ(米国)の一騎打ちの様相という趣旨の報道が目立っているが、私はリオデジャネイロ(ブラジル)も対立候補として有力だと思う。

東京の立場は、日本で報道されているほど強くないだろう。

また実際にシカゴと一騎打ちになったとすると、相当「不利」な立場に立たされる可能性が高い。

なぜなら、最終的にシカゴが五輪の候補地として残ってくれば、シカゴとの関係が深いオバマ米大統領が登場する可能性が高いからだ。

そして、すでにシカゴはこの戦略で動き出している。13日に公表されたシカゴの2016年五輪招致に向けた立候補ファイルは、「オバマ効果」を最大のセールスポイントにしたものになっている。

もしオバマ米大統領が演説したら、日本の石原都知事では到底太刀打ちできないだろう。

東京がシカゴに対して分が悪いかどうは別として、私は基本的に今回の東京への五輪招致には反対だ。

というのは、五輪招致という「お祭り」に興じる以前に東京都には「都市機能」を働かせるためにもっと優先すべき事項がたくさんあるからだ。

その1つが築地、晴海、豊洲といった地域の開発だ。

この地域を東京都の都市機能としてどのように活用するか、そしてそのためにはどのように開発を進めるべきかということは、とても重大な課題だ。

それを棚上げにして、五輪招致という「お祭り」に興じてばかりいるのは本末転倒だと思う。

あまつさえ五輪招致にあたって、「全区市町村に一律1000万円を支給する」というのは、常識外れの愚策と言わざるを得ない。

五輪のテーマとして「エコ」や「フレンドリー」を掲げる機運が出てきているが、100億円ものお金を招致活動にばら撒いておいて「エコ」と言えるのか甚だ疑問を感じる。

東京への五輪招致というのは甘美な香りを放っているのだろう。「お祭り」に興奮する人は多いのも確かだ。

しかし東京都のトップマネジメントという立場ならば、現在「東京都」という都市が抱える課題は何か、その中でも優先して対処すべき課題は何か、ということを考えるべきと私は思う。

石原都知事、都議会議員、都の幹部職員の方にも、こうした意識を持って頂きたいところだ。

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