大前研一のニュースのポイント

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厳しい状況にある電機業界。副業容認なら、もっと大胆な提案を

2009年02月17日 | ニュースの視点
上場製造業全体の2009年3月期の連結最終損益が赤字になる見通しになった。赤字転落は決算が連結中心になった00年3月期以降、初めてとのこと。

588社もの企業の最終赤字総額が1兆を超えるというのは、いかに今回の不況が製造業全体にとって急激な出来事であったのか、そして不況への準備が整っていなかったのかということを物語っていると思う。

ところがその製造業のなかでも「派手」な落ち込みを見せているのが、電機業界だ。

電機大手9社の2009年3月期の連結業績見通しによると、デジタル製品や半導体の急速な落ち込みで、7社が最終赤字になる見込み。

合計の赤字額は1兆9100億円と、過去最大だったITバブル崩壊時の2002年3月期とほぼ同額になる。

大手電機各社の純利益を見てみると、日立を筆頭にして、パナソニック、NEC、東芝、ソニー、シャープ、富士通という電機業界の最大手7社が赤字に転落する一方で、パナソニックに合併されることが決定している三洋電機がかろうじて赤字を免れる見込みというのは何とも皮肉な話だ。

電機業界の大手が軒並み苦労する状況の中、2009年2月2日号の日経ビジネス誌に「ソニー 四面楚歌のテレビ事業」という記事が掲載されていた。

日経ビジネス誌は、一貫してソニーのハワード・ストリンガー会長を支持する考えを表明してきたが、この期に及んで手のひらを返したかという印象だ。

当初からストリンガー会長ではソニーを立て直すことはできないと主張してきた私としては、今頃になって「ソニーのテレビ事業に問題がある」などと指摘し始めるのは、ジャーナリズムとしていささか情けないと指摘したいところだ。

さて、こうした厳しい状況の中、ついに電機大手各社もリストラ策を発表し始めた。

パナソニックは2010年3月末までに国内外で正社員を含む1万5000人を削減すると発表。

また、電子部品大手のアルプス電気は、今年3月までに国内外の従業員1万3000人を削減すると発表している。

一方で、富士通と東芝は減産を実施している半導体などの工場の社員を対象に、副業を容認することを明らかにした。

今までの日本企業は「就業規則で副業禁止を定め、その代わり一生会社が面倒を見ます」という姿勢だった。それを大きく変化させたという点で、これは非常に面白い施策だと思う。

ただし、私ならもっと大きな提案をしたいところだ。

例えば、中途半端に正社員のままにするのではなく、全員契約社員にする方が合理的だろう。

夫婦で働いているなら自分達で会社を設立してその会社から東芝や富士通に派遣されているという契約にするのだ。

給料の額は同じでも、所得税を引かれずに手元にお金を残した上で、パソコン代など必要経費を計上できるように認められればかなりの節税ができ、結果的に所得の増加になるからだ。

契約社員として副業を専門とする立場になることに不安を感じる人もいると思う。しかし、もはや正社員でもリストラを避けられない状況だ。

正社員にしがみつくことだけを考えていても、いざリストラにあったらスキル不足で困り果てるという結果になってしまう。

その点、契約社員として副業専門という立場になると緊張感が生まれてくるので、自ずと自分を磨いてスキルアップしていくことにもつながっていくと思う。

実際このようにしなければ、大企業に勤めている人は打たれ弱い人が少なくないので、「サラリーマンという枠の中で副業を」という意識のままでは現実的に成功しないだろう。

オイルショックや円高など、日本はこれまでにも同じような厳しい事態に直面してきた。その度に、企業も個人も強くなることで、1つずつ荒波を乗り越えてきたと言える。

今回の不況・リストラといった状況は確かに厳しいものだが、悲観材料として考えるのではなく、ぜひ自らのスキルアップのために役立てやろうという意識を持って欲しいと思う。

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