大前研一のニュースのポイント

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真に民営化を目指すなら、まず土地資産を国民に返却するべきだ

2007年10月16日 | ニュースの視点
1日、郵政民営化がスタートした。

独立行政法人の日本郵政公社は持ち株会社である日本郵政の下に4つの事業会社を分社し、金融2社の資産が338兆円という巨大グループに生まれ変わった。

小泉内閣の目玉の1つであった郵政民営化がいよいよスタートしたが、事前に民営化作業委員会で議論されていたことが実現されるのか、私は甚だ疑問に感じる。

例えば、民営化後も、裏では国債を購入し、結果として国の借金を国民に肩代わりさせるような財務省の狙いは、以前と何ら変わりがないのではないかと思う。

また、「民業を圧迫しない」「4つの郵政事業はそれぞれ独立させる」など、他の民間企業と対等の立場での事業展開をするという約束もかなり疑わしい。

郵政民営化が始まって、日本郵政が民間企業として事業を営む実力があるのかどうかという点を問題視する人も多いようだが、私はこの点については不安を感じない。

ゆうちょ銀行社長の西川氏が就任してから、かなり内部の体質が変わってきているからだ。

むしろ、私は、土地という優良な資産をきちんと国民に返さずに、かつての国鉄のときと同じような有利な条件だけを手にして民営化が進んでしまうことを懸念している。

東京中央郵便局をはじめとして、他の民間企業では考えられないような駅前一等地に優良な不動産を数多く抱えているが、本来、これらの土地は国民のものだ。かつて国鉄の民営化の際にも、結局、土地という優良資産は国民に返却されることはなく、結果として、国民は国鉄の借金だけを担がされた。

同じトリックにはまらないために、すぐにでも土地という資産を国民に返却することを私は強く主張したい。

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