大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

中国の軍拡は日米関係にも大きく影響/すでに負け犬状態の日本

2010年08月31日 | ニュースの視点
米国防総省は16日、中国の軍事力に関する2010年版の年次報告書を公表した。それによると中国軍が太平洋の東側海域やインド洋まで活動範囲を拡大させる可能性があると警戒感を示したほか、中国としては初の国産空母の建造を年内に開始するとの見方を示した。また、クローリー米国務次官補は16日の記者会見で、日米安全保障条約による米国の日本防衛の義務が尖閣諸島に及ぶかどうかにについて、「適用対象」であるとの見解を明言した。

防衛費の推移を見ても、中国軍が大きく拡大していることは明白だ。さらに中国自身は軍備の近代化のためには「12兆円が適正」だと主張している。そして、航空母艦の建造にも力を注ぎ始めるなど、中国は「米国やロシア並み」の国防力を求める動きを見せている。

中国の軍事力が爆発的に大きくなれば、太平洋地区の軍事バランスが崩れる。現在、日本では沖縄を含めて「米国には出て行ってもらおう」という意見が強くなっているが、こうなってくると沖縄に対する見方も変える必要があるだろう。

日本のマスコミは盲目的に沖縄の肩を持つような報道が目立つが、今後はもっと冷静に「防衛の観点」から沖縄を見る必要があると私は思う。

沖縄県も今までのように自分たちの意見は何でも通ると思うべきではないだろう。そして日本政府は「沖縄に頼らない」という選択肢も持っていくことが大切だ。中国の状況を見ると、これまでのように悠長に沖縄県と付き合っている暇はないと私は感じている。

内閣府は16日、中国の4~6月期の名目GDPが日本を上回ったとの試算を発表した。それによると中国は1兆3369億ドルだったのに対して、日本は1兆2883億ドルだったということで、これについて米国の各メディアは一斉に速報し、今後は中国の存在感が一段と増すことなどを指摘したとのこと。

日本の名目GDPは95年に5.3兆ドルのピークを迎え、その後15年にわたって、ほぼフラット状態だ。最近少し上昇傾向が見られますが、これは円高のためで実際には「ほぼフラット」な状態に変わりはない。対して中国の名目GDPは95年には1兆ドルにも満たなかったのに、この数年で特に急激に伸び、ついに日本を逆転した。

話は少し変わるが、メディアの沖縄報道を鵜呑みにできないのと同様に、一流誌の報道だから間違いないという認識を改める事例を最近発見した。

今回のニュースについて海外のメディアが積極的に報道しているのに対して、日本のマスコミからは「議論を深めていく」様な報道が見られない。対策の動きを見せない日本政府に、諦めムードの漂った国民、そんな印象さえ受けてしまう。

私はこんな日本を見ていて、まさに「尻尾を巻いて逃げる犬」を連想してしまった。強い相手に立ち向かうことなく、「負け」を見ているかのようだ。日本のマスコミはトップニュースで取り上げながらも、「まだ挽回できるから、がんばれ」という類のメッセージを発していない。

まだまだ挽回できる方法はいくらでもあるし、私はその方法を何度も提言している。負けを認めてあきらめるのではなく、問題を解決しそれを乗り越えていく姿勢を見せてほしいと思う。


【今週の問題解決視点のポイント】

問題解決を学ぶと正しく考え、正しく表現し、正しく行動出来るようになる。

41 コメント

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Unknown (Unknown)
2010-08-31 11:02:59
>沖縄県も今までのように自分たちの意見は何でも通ると思うべきではないだろう。

沖縄の人はどう思いますか、この発言。
沖縄がどれだけ苦労してきたのか考えたこともないようです。
恫喝的ともいえる重大発言ですね。
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2010-08-31 12:29:35
「沖縄県も今までのように自分たちの意見は何でも通ると思うべきではないだろう。」



逆だろ。何もわかってないな。
今まで沖縄の意見なんか一つも通った事が無いからこそ訴え続けてるんであってゴネ得なんか狙っていない。
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負け犬 (猿のケツ)
2010-08-31 12:43:57
自分達の祖国が衰退しているのを、見て見ぬふりのメディア。

国債の危機(通貨の危機)や国防の危機といった、日本国存亡の危機の前でも、低俗な番組で、国民を愚弄するメディア。

新聞やテレビのレベルが余りに低すぎますよね…。

批評家にしても、テレビに出る人ほど、レベルが低いと思います。

こんな状態だと、先生のおっしゃる、国民的議論なんて、夢物語ですよ。

だって頭が悪いほど、人気者になるんですよね…。

今の日本は…。
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2010-08-31 13:03:31
国は治安維持の為に、‘国内に向けては警察力’を、‘国外に向けては軍事力’が絶対に必要てあること、そしてその軍事力についてはアメリカに‘全てを’頼っていることを国民に知らしめる必要があると考えます。
今後何を変化させるにせよ、そこを意識せずに国民的な議論は出来ないのではないでしょうか。

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Unknown (Unknown)
2010-08-31 14:37:44
負け犬ってかさ、自国の地政学的立場と無資源国の資源獲得方法の維持についてまともに議論も何もされてこなかった結果でしょ?
大陸に影響を与える、又影響を受けるリムランドの主権・主張・防衛をどうするかを、さらに無資源国の資源の自国への輸送路の防衛をちゃんと国民に話して、どうするかを考えてなかったからね。
まともに考えると、北から南まで防衛基地を配備して浮沈空母化する。輸送路の安全確保には、補給艦も含む交代も含めての2個護衛艦群を配備する。太平洋戦争で資源の輸送路の安全確保の大事さを学んだ日本ならこれくらい考えるだろうけどさ。
自衛隊は理解してるだろうけど、自分のイスしか興味のない議員や情報統制で飼い慣らされた国民は理解なんて示さないだろうね。
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Unknown (Unknown)
2010-08-31 19:39:17
長島☆自演乙
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ロスを最小限に留めて沈みましょうね (成田悦子)
2010-08-31 22:06:48
冷静に「防衛の観点」から沖縄を見る必要はあります。沖縄がどう思うかは関係ありません。防衛というものは、国民と国土を守る為に行うもので、最良、最高の場所に目的の基地を構える、それが鉄則です。

私は、戦争はただの殺人であり、破壊であり、国家による窃盗だと考え、国家による殺人を許し、個人による殺人を無期懲役、或いは死刑にするのは間違っていると考えます。しかし、防衛庁はあり、防衛費は国家予算に組み込まれています。ならば、最高の防衛をと願わざるを得ません。

私は今日の次には平和な明日が来ることを望みます。防衛などこの「裸の弧島」には意味がないと考えています。

それにしても、この細長い痩せさらばえた日本という小島、何処かの国の国勢維持の為に使われるだけの価値しかなくなってしまっているようです。私はそのことを非常に残念に思っています。

何故そうなったか?それは、第二次世界大戦の戦後処理を誤ったまま今日に至っているからです。日本の現状は、もう教育からしてどうにもならない状態にあります。君が代をどうこうとか、国旗掲揚をするしないの問題ではありません。もっと基本的なものが教育の場に欠けています。

教師の不在、著しい質の低下ですが、それは今後何十年経っても下がる一方で、上向くことはありません。一度失われた「人の欠如」は、容易に埋めることが出来ません。歴史上、下降線に向かうしかないのが、大前さんも仰ったように、「モラル」です。「モラル」は、下に触れると底まで落ちて、人をたちどころに腐らせ、腐敗は伝染します。

学問も、政治も、司法も、国民の日々の生活も「モラル」がなければ、不安を呼ぶだけで、不安の上に築くことの出来るものは、あらゆる意味での国力の不安定化です。怖くては、明日のいのちがどうなるか分からないのでは、皆家に閉じこもって何も買わない、何もしません。これが現在の日本の状態です。

日本では沖縄を含めて「米国には出て行ってもらおう」という意見が強くなっている・・これは本当にそうでしょうか?日本の国民はおそらく何も考えていません。国民は、国家に軍事的なことで背くとどうなるかをよく知っています。

沖縄に関する報道には偏りがあり、信用できません。沖縄の方々の声は、基地反対一辺倒ではないはずです。騒音よりも生活優先と考える方も多いでしょう。しかし、その事は一切報道しません。出て行きたがっていると言うより、アメリカべったりのまま、日本が米国並みの軍事力、兵力を沖縄に注ぎ込んで欲しいとアメリカが思っているのではないでしょうか?徴兵制云々の話も出ている昨今です。アメリカの思い通りにしたいのが、戦後処理を行った方々の子孫です。真に国民と国土防衛を考えての増強ならば許せもしましょう。私利私欲に走った防衛力増強には問題があります。

日本の名目GDPはピーク後15年に亘りほぼフラット状態ということですが、違うのではないかと考えます。日本は正しい数字を出しているでしょうか?私はもっとひどい状態にあると考えます。GDPの計算方法を詳細に知っている訳ではありませんが、ちらっと見た限りでは、これはどうにでも出来る数字だな、という感想を持ちました。

強い相手に立ち向かうことなく、「負け」を見ているかのようだ。・・・強い相手とは中国のことですね。中国に軍事的脅威を与えて来たのは日本であり、アメリカです。経済的に負けてしまうのは仕方のないことで、国土の広さ、資源の豊かさ、国民の多さ、一人当たりの所得の低さだけでも負けます。未だ欲しい物を手に入れていない国民と、手に入れて私のように何も欲しくない国民の差です。

中国は優秀な国民を潰そうとする日本と違って、お金をかけて優秀な人材を育て上げ、起用することが実に上手です。合理的なものの考え方をしますから、税金の使い方にも無駄がありません。年から年中予算委員会だと言っては、予算のことなど陰でこそこそ話し合い、他政党の中傷をTVに写してまで繰り返す、選挙好きの日本の政治の在り方とは違います。

日本は、じたばたするより、静かに、と私は願います。その賢さは国会議員にも誰にも求めようもありませんが、静かに沈んで行き、ちょうどいい具合の所で止まるのです。沈むのなら、目立たずに沈むとロスが少なくて済み、何処まで沈んだ所で止まるかも計画しましょう。

それにしても、新聞から海外ニュースが消えました。右寄りの書籍だけが幅を利かせています。かなり「日本は怖いな」と世界に悟られています。防衛も静かにそっと行わなければ防衛になりません。
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Unknown (しそ)
2010-09-01 00:42:10
閉塞感はありますね。
戦争は怖くて恐ろしいものだから、知りたくない、知らないでいれば、戦争に巻き込まれることもなく、平和と豊かな生活を享受できるという、平和ボケした人があまりにも多すぎます。
悪いことを語ると、それが現実になってしまう、言霊という言葉がありますが、この場合は現実に目を背け続けてきた結果があると思います。
そして、現実に目を背けてた公約で政権を取った政党が居座っているわけですから、状況が改善される筈もありません。危機感を感じて、その話をすること自体が危ない人扱いです。
NHKの夏の恒例番組も、今年はアッツ島玉砕の話でしたが、行った兵隊すべてが被害者という視点でしか話がされていませんでした。こうして戦争は嫌で恐ろしくて、鎮魂すべきものという考え方を押し付けられるわけですが、今の、この状況下で、嫌なものから目を背ける考えはどうにかならないものかと思います。
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Unknown (Unknown)
2010-09-01 08:56:17
総ての人が平和で平穏な生活を維持することを目的とすることに誰も異存はなく、利害対立に対して「交渉」は必ず必要で、自らの「大儀」の比較で決着を求める。決着がつかなければ、「仲裁」を求め、仲裁がなければ、力関係が結果を左右し自ら失うものの価値次第では、「闘争」を手段として、大儀を上回る基準での結果を求める。
 市民レベルでは仲裁が裁判であり、法は自力救済を禁止している。国レベルにおいては、交渉は「外交」であり、東西冷戦時代のような仲裁可能な大国があれば紛争にはならないが、現在のような世界状況では大儀を上回る客観的な基準である力(軍事力)を信奉するのも当然な帰結。平和な日本だが、敗戦後にどれだけ世界各地に紛争があったことか。中国にいたっては、周辺国との紛争、国内での紛争処理にどれほど軍事力を用いたことか。この原因も日本とアメリカの責任なのか。
 平和(自らの生存)を維持するための外交の延長線上に手段として軍事力があり、究極の外交交渉の状況としての「戦争」の覚悟を捨てた時点で、自らの生存が唯一の価値となり服従・隷属を受け入れることになる。戦争は手段であり外交の延長線上にあることを認識し、軍事力の不十分な日本にあって外交が成り立っているのは、安全保障の「仲裁」があったからで、今やこの安全保障も機能が弱まっている。
 戦争は誰もがいやだが、北朝鮮しかり戦争の覚悟のある国との外交は大儀も通用しない。
 
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国家の持つ病を治したい (成田悦子)
2010-09-01 10:49:26
まだまだ挽回できる方法はいくらでもあるし、私はその方法を何度も提言している。負けを認めてあきらめるのではなく、問題を解決しそれを乗り越えていく姿勢を見せてほしいと思う。
【今週の問題解決視点のポイント】
問題解決を学ぶと正しく考え、正しく表現し、正しく行動出来るようになる。
・・・
・・・
書き忘れてしまいました。
大前さんがいつも政府に提言して下さっていることに感謝致します。
こうすれば良いと分かっているのに、政府が動かないのを見ているのは実に辛いことです。

私は、経済や軍事は、「人から遠い」という考え方をします。
何かに付け、夫も子供も「一生ゆめをみていなさい」といつも言いました。
今もゆめをみています。
勝つとか負けるという言葉ではない、その言葉が人間同士や、国家間の互いの関係を壊す本になるのではないかと考えます。
ですから、その言葉が出て来ると、考え込んでしまいます。

挽回できる方法はあります。
大前さんは知識プラスアイディアを、私は日本という国家の持つ病の治療について考えます。
どんなに何を積み上げて行っても、病気ではどうにもなりません。
病気を糾す政党も、司法も組織も国民もいません。
どうにでもなることは、何一つこの国にはありません。
多くの国民を犠牲にして富を築いても、それは貧しい国を更に貧しく薄汚く見せるだけです。
大前さんが仰った「モラル」が何事に置いても大切です。
貧しい国家でも、「モラル」のある国はそれなりにやって行くことが出来ます。

「問題解決を学ぶと正しく考え、正しく表現し、正しく行動出来るようになる」
今週はこの言葉の通りに生きます。
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