大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

戦略なき政治家、戦略なき日本国家の問題

2010年09月07日 | ニュースの視点
日中両政府の経済閣僚が集まる「日中ハイレベル経済対話」が28日、北京で開かれた。ハイブリッド車(HV)や省エネ家電の部品生産に使われる「レアアース(希土類)」の 輸出枠を中国が大幅に削減した問題で、日本側は「世界全体に大きな影響がある」などとして削減の再考を求めたが、中国側は採掘に伴う環境問題などを理由に応じず「ゼロ回答」に終わった。

ここでの問題は「日本の対応に戦略が全くないこと」だ。直嶋正行経済産業相にしても岡田克也外務大臣にしても、ただ「頼むだけ」だからあっさりと断られてしまうのだ。

この点、非常に上手だと感心するのが台湾のやり方。台湾の場合、例えば中国に合弁事業を持ちかける。そして台湾でモーターなどの製作を担当し、そうした部品を作るにあたって「レアメタルが必要なので下さい」と頼む。一方的に「どうか下さい」と頼むのではなく、商談と絡めつつ調達するという方法だ。

ただ仮に中国からのレアメタルの調達が困難だとしても、それほどパニックになる必要はないと私は判断している。確かにレアメタルの生産量では中国が圧倒的なシェアを誇っているが、埋蔵量では中国36.4%、CIS諸国19.2%、米国13.1%、豪州5.5%、インド3.1%となっていて中国以外の選択肢があるからだ。

また、実は日本もかなりの量のレアメタルを「埋蔵」していると見ることもできる。それは都市鉱山と呼ばれている既存製品に利用されているレアメタルだ。秋葉原にあるレアメタルの量は世界に匹敵するのではないかと言われるほどだ。こうしたものを回収し、再利用する手立てを考えれば、日本国内だけでも相当量のレアメタルが補えるはずである。

焦って戦略も戦術もないままに、ただ「譲って下さい」と頼んでいる日本の大臣の姿は惨めだと感じる。こうした状況を踏まえれば、私はこの問題が大きくなってしまう可能性は低いと見ている。

中国で開かれた日中韓観光相会合が、23日共同声明を採択し、閉幕した。声明には3カ国を相互に訪問する旅行者の数を2015年に2600万人に拡大する目標などが盛り込まれた。

観光業というのは自動車産業を凌ぐ世界で最も大きな産業であり、ここを軽視するべきではない。外国人が訪問したときに、いかにお金を落としたくなる施設を作るかを真剣に考えるべきだ。日本は「安全・安心」という点で優位性があり、富士山など魅力のある場所も抱えている。しかし魅力のあるモノが少ないのが難点だ。今年の中国から日本への訪問者数は、昨年から倍増して200万人を超えるだろう。しかし日本はそのための準備が全く出来ていない。なぜここに戦略的な考え方を持ち込めていないのか、非常に残念でならない。

日本が国家としての戦略を持つと考えたとき、私は予てから「徴兵制度」の導入を検討するべきだと述べてきた。

ドイツの連立与党内で成人男性に6カ月間の高齢者介護などの社会福祉活動を義務付けている制度を存続させるかどうかが争点に浮上した。徴兵制度のあるドイツでは連邦軍での勤務を拒否した場合は、その代替措置として社会福祉活動に携わる必要があるが、独政府が徴兵制を凍結する検討に着手したため、福祉国家を支える社会奉仕活動も揺らいでいるとのこと。日本でもこのような議論を積極的に展開して欲しいと私は思う。

「徴兵制度」を導入する目的は「ピストルを撃つ方法を学ぶ」ということではなく、厳しい環境の中で半年間苦労に耐える経験を積むことにあると思う。また「徴兵拒否の代替活動」や「徴兵免除の条件」をどのように定めるかによって、国家としての戦略を反映させることができる。

ドイツのように「徴兵拒否」の代替として社会福祉活動に携わらせるのも1つの選択肢だし、あるいは台湾のように「徴兵免除」の条件として工学部の大学院生と定めることもできる。台湾がエンジニアリングに強くなり、チャイワンと呼ばれるまでになったのは、徴兵制度の仕組みの影響が強いと私は思う。

こうした台湾の学生に、アルバイト三昧の日本の学生が敵う道理はないだろう。「日本という国をどのような国にしたいのか」という全体戦略が欠如したままでは、日本は今後さらに世界から取り残されてしまうことになると私は危惧している。


【今週の問題解決視点のポイント】

正しく考え、正しく表現し、正しく行動することが出来るようになるためのトレーニングを積む。

43 コメント

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おっしゃるとうり! (xc70)
2010-09-07 12:22:08
 今回のコラムには賛同してます。 若者の質という点で日本はアジア諸国に対して大きく後退してしまいました。今や日本の私立大学の成績上位者が中国を筆頭にアジア諸国の留学生が占めている現実。  経済もそうですが日本の若者の現状は3流国家そのもの。行政がなにも生み出さない事に予算をばら撒いてきた結果でしょう。徴兵制度は極端かもしれませんが、若者を鍛える場を官民一致して提供すべきと思います。
Unknown (Unknown)
2010-09-07 12:36:44
全共闘内閣だもの。
Unknown (太郎)
2010-09-07 12:40:36
>xc70さん
 はじめまして。私はアジアの先進国であるシンガポールに住んでいる27歳の男です。実際に現地で様々なタイプの“若者”と触れ合ってきました。シンガポール国立大出身のエリートや、クラブで遊んでいる若者まで。また、近隣諸国(北は中国から南はインドネシアまで)の若い人たちとも交流を持つ機会が多くありました。友人も多いです。
 その経験から言わせてもらえば、日本の若者は決して負けていないと実感しました。賛否あるかと思いますが「日本の若者の現状は3流国家そのもの」といった批評は、どうも日本国内しか見えていない“大人”の意見に聞こえます。
 そもそも大前さんも「こうした台湾の学生に、アルバイト三昧の日本の学生が敵う道理はない」と仰いますが、それは比較がずるい。優秀な台湾の学生と、さほど勤勉でもない日本の学生を比べることに意味はありません。よもや日本の学生は誰もかれもがバイト三昧で遊んでばかりいるなどと主張するわけでもないでしょう。
 諸外国の優秀な若者に色々と刺激を受けることもあるのでしょうが、それをもって日本の若者批判に結び付けるという思考が僕にはいまいち理解出来ません。
Unknown (Unknown)
2010-09-07 12:58:42
 大前氏の論理によると、「日本という国をどのような国にしたいのかという全体戦略が欠如」した若者は、「徴兵制」によってその欠如を克服することが可能だということになる。
 しかし、それは根本的な解決ではない。徴兵制はあくまで安全保障上の手段であって、国民の精神性向上をそこに求めるのはあまりにも安易すぎる。
 韓国ではその精神性の強さを徴兵制に求める声もあるが、20代前半の最も柔軟な発想ができる時期に2年間も従軍することにより、基盤産業、基礎技術を育む土壌がなくアメリカにも似た空洞化した経済発展しかできないことを忘れてはならない。
 徴兵制の前に、謝罪外交、自虐史観に基づく教育、低劣はマスコミ、米国への事実的従属など変えるべきことは多い。
自由に若い時代を生きて、道を選択することが出来た (成田悦子)
2010-09-07 14:48:43
レアアースはレア、「まれな資源」ですから、大切にしなければなりません。私は免許証も持っていませんし、家電も省エネに越したことはありませんが、必要最低限の機能を備えた製品が最高だと考えます。そういった商品は自ずと省エネです。

今後老人や、単身者が増え、様々な機能を押し付ける製品よりも、使えれば良い程度の安価で、シンプルな電化製品を求める方が多くなります。又省エネ機能がなくても、省エネ商品の開発は出来るはずです。この金属が無ければ洗濯機は作ることが出来ないという事はありません。出来なければ日本人の能力を持って、レアメタルに代わるものを開発すれば良いのです。

炊飯器にしろ何にしろ、「この釜で炊くと美味しい」と買ってみても、ガスの火で、底の厚い鍋で炊いた方が美味しいですし、釜によってさほど味は変わるものではありません。お米の品質さえ良ければ、どの炊飯器も同じです。それと同じことが他の電気製品にも言えます。

昨年2台のTVを購入しました。消費者にとっては迷惑とも言えますが、リモコン操作の複雑さにはいつも辟易します。私のTV購入のポイントは、最低限の機能、シンプルで分かり易いリモコンボタンを持ったTVです。

人口も減り、日本人の購買能力も落ちますから、思った以上に省エネの必要もなくなるでしょう。おそらく、そうしたことよりも、経済と産業の更なる発展を考えてのCO2削減目標なのでしょう。省エネ機能に関しては、そう意味のあることだとは思えません。

国内の需要は、人口の急激な下降と共に、今後激減します。ハイブリッドカーを購入出来る若者が今どれだけいますか?若者が買うことの出来ない車は、終わります。老人が経済を引っ張って行く国家は、死んで行く国家です。レアメタルが無くてはならない車、そういった車を作らなければ良いことです。又、大前さんが仰るように徹底的な回収を行えば良いことです。車の場合は、今後ますます新車購入比率は下がりますから、そう回収出来ない、其処が問題です。

日本は、車産業に依存し過ぎです。何から何まで自動車業界の意のままに動いています。非正規雇用拡大は、その最たるものです。車産業の為に法律が改正され、日本の雇用制度は崩壊、健康保険、年金制度も破綻に向かっています。尤もそれが狙いなのかも知れません。破綻でもさせない限り、これまで行われて来た厚生労働省の様々な不正、出鱈目は解消出来ません。

アメリカの弱体化に伴い、自前で軍隊を持ち、米兵に取って代わることを、アメリカは日本に要求していると考えます。そこで、徴兵制導入の話が盛んに言われています。

大前さんは、「半年間の軍隊生活で厳しさを」と仰います。確かに、家庭、学校、何処をとっても信じられないだらしなさで、私には孫はいませんから、つくづく「いなくて良かった」と思っています。厳格さと罰を勘違いし、人間性の形成とは逆の子育てが行われています。しかし、良く考えて下さい。人間というものは得るものがあれば何かを失います。又軍人にどういう教育が出来ますか?彼らは非常に単純なものの考え方をします。保ち守るという姿勢から生まれるものはありません。厳しさを教えなければならないのは家庭です。軍隊に入ったからといって解決することではなく、去勢された人間を更に去勢することになります。

世界は一つに、地球は一つになろうとしています。私や大前さんがどうじたばたしようと、地球は平和に向かいます。徴兵制導入は単細胞人間を増産するだけで、そういった人間に未来を切り拓く能力はありません。

大前さんは私より6歳年上で1943年生まれです。貧しい日本を知っています。しかし自由な教育の中で育っています。私も同じです。貴方と私は考え方は異なりますが、大前さんは一方向からものを見たり考えたりせず、考え方を押し付けることもなく、道理が分かっている方です。それは、やはり自由な状況に在って、自由に貴方が若い時代を生きて、道を選択することが出来たからではないでしょうか?
夢物語 (Unknown)
2010-09-07 16:55:00
呼称を「徴兵制」とするかどうかはさておき、
「本質的な意味合いで何にもしていない若者」(※)
に対して心技体の面でのトレーニング(=本人のためになるもの)を課しつつ、その人的リソースを財政負担軽減のために活かすのは大賛成ですが、(※)を的確に抽出する仕組みがないのもまた事実です。
個人的には・・・中学3年までのカリキュラムを内容を減らさず時間だけ圧縮して(高校入試なども9~10月に完了させる)半年程度の時間をつくり・・・(1)農業・介護・兵役などの基本の実地トレーニングを1日8時間 (2)英語トレーニングを1日4時間 (3)残りの1日12時間は自由時間 (4)但し、中3終了時の英語の試験が一定以上・・・TOEICで700~800点の間くらい?・・・の場合は役務免除でその半年間に中国語など他の語学習得トレーニングを受けられる
・・・なんていう強制的な制度があれば、それになりに進学校を経た自分としても時間のロスにならないな・・・と感じます。もちろん、こんな制度があったら英語テストのクリアを目指しますが、テストの結果的にどっちに転んでも人生的に悪くないんじゃないかなと思います。以上、夢物語ですが。。。
強制には反対します (李康大)
2010-09-07 20:53:32
リバタリアンの私からすれば、徴兵等の強制的な制度には断固反対します。

日本の若者に問題があるのかも知れませんが、放っておけばいいでしょう。

パナソニックやファーストリテイリングの例を見てもわかるように企業にとって学生の国籍はもはや無意味です。

日本の学生も必要に迫れば、努力するようになるでしょう。

埋蔵量よりも (Unknown)
2010-09-07 21:08:10
磁石の材料となる、ネオジウム、サマリウム、コバルトの鉱脈は
ウラン、ラジウム等の放射性重金属類に近いので
人道的、政治的理由で採掘できない地域が多いようです。

中国が国際的に有利なのはまさにこの点であり、
また、先行して市場を押さえるという意味でも、
現在の最大供給国という事実は非常に重いですね。


また、電子部品に入っているレアメタルは、
当たり前ですが同種の電子部品にしか転用できません。

レアメタルという単語だけで産業を混同するのは避けるべきかと思います。
日本語もレア (long)
2010-09-07 22:27:52
日本で学ぶ外国の若者は優秀であると聞く。何を持って優秀であるかと聞かれても答えられないが、私の側にいる留学生を見ても「何を学ぶのか」という目的意識を持っている。「土木技術を学んで、自国のインフラ整備に貢献したい」といった具体的な学目的を持っている。ように見受けられる。
狭い見識ではあるが、私が中国の人と話をした際に、「中国の優秀な学生は、日本には留学しない。欧米に留学する。日本に留学する学生は、ランクが中より下である。」と聞いたことがある。
アフリカの留学生のように、「自国のために」ではなく「自分のために」と中国の若者も考えているようだ。
日本は「ニート」などと呼ばれる若者があふれているようだが、自分の親が蓄えた資産を、年金のように食いつぶしているのではないかと思えてくる。
ほんのひと時でもいいから「日本のために」と「徴兵制」のような制度で、自国の将来を思う時期があっても良いのではないかと思う。(こんなことを言うと、「お国のために」などと、戦時中を思い起こし、許されない言動だ!と決めつけてものをいう人がいるが)
なにも、戦うために、「徴兵制」を敷けと言っているわけではなく、国を思い、親を、家族を、自分を思う気持ちを持つことで、違う世界観が見えてくるのだと思う。
話は変わるが、レアメタルに関すると、「レアメタルは同種の電子部品にしか転用できません」とあるが、十分でしょう。リサイクルの方法を考えればいいのであって。新たな活用方法を見出せば(研究開発)いいだけでしょう。
Unknown (Unknown)
2010-09-08 07:48:25
この国をどういう国にしたいのか?
民主党からは何も見えてこないですね。

大きな目標や方向をリーダーが決めて、その中で、政治家や官僚が個々の問題を解決していかなければならないのに。

環境立国というのは、目標だと思いましたが、いつの間にかどこかに消え去ってしまいました。

今の政府はその場しのぎだけ。

沈みゆく日本丸に開いた穴をふさぐだけ。

今こそ日本人は古い日本丸を捨て、海に飛び込んでいきましょう!

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